"タナバタ"・終わり
「山賊の真似事じゃなかったのか?」
サドルペローンは納得したように言った。
「ご名答」
俺はそう答えた。この時代で山賊といえば示すのは二つの山賊団、ピーターラビットと虎群奮盗。
そのどちらも超科学現象により失業した者達が生きるために山賊に成ったのが成り立ちだ。
そして俺の親父は虎群奮盗の首領だった。虎のマスクで顔を隠し物流を止めた。考え得る最悪の親父だったと言っていい。このことを知っているのは俺の家族だけだ。ずっと秘密にしてきた。ただ、虎作の名前はありふれているとはいえ親父は虎作の名前で報道された。
ただ、嫌いじゃなかった。優しい人だった。家族を守るために山賊をしていたのは理解している。
五年前、虎群奮盗とピーターラビットと…… 優厳の戦いがあり。最後に残ったのは優厳一人だった。
優厳のことを恨んでいないといえばウソになる。これまで出来る限り触れないように考えないように忘れるように心がけてきた。
だって、悪いのは親父だ。
だけど、悪くても親父を肯定してやりたい、親父のことを救ってやりたい。そう、思った。
優厳から託された膝アーマーが光り輝いた。そして膝アーマーから力が溢れてくる。
「なあ、一から十まで教えてやるよ、虎群奮盗の掟って奴をな。アホなサドルペローンにな」
俺は精一杯格好付けた。
「ふざけるな」
そうしてサドルペローンは赤いビームを放った。
俺はよけなかった。俺が山賊になっていることを信じて瞬間記憶喪失も使わなかった。
「一つ、ありとあらゆる物事には許されるラインと許されないラインがある。それを軽々しく越えてはいけない。山賊はそのラインを越えた存在なので軽々しく生きてはいけない」
俺は叫んだ。俺は正気を保っていた。山賊の力が親父の力が俺を守ってくれたんだ。
「なんだと!?」
サドルペローンはビームが効かなかったことよりも俺の言葉に苛ついているようだった。
「お前、軽々しく生きすぎなんだよ。だから妬みをこんな形でしか発散できない」
「ふざけるな。中坊が」
サドルペローンは炎を放った。
「二つ、全ての生命は何かを作って生きている。それを奪う山賊行為は奪った物に関わった全ての人間に感謝しておこなうこと」
俺が何もせずとも炎は俺には届かなかった。
「お前は何を作っている? 何に感謝している?」
俺はサドルペローンに聞いた。
「ボクチンは神だぞ。そんなことを聞いてくるなんて不敬だ」
サドルペローンは稲妻を放った。
「三つ、自分の感情は適度に発散させること。イライラしたら周りに共感してもらえる範囲でストレス解消すること」
またも稲妻は俺に届かなかった。
「お前のやること成すこと。まったく共感できないんだよ。妬みまでだ分かるのは」
「ボクチンの理念の崇高さが分からないお前はなんて悪い奴なんだ。死んじまえ」
サドルペローンはとうとう俺に殴りかかってきた。
「四つ、善悪なんてのは人間が勝手に分けたものだ。どっちも最初から人間は持っていて優劣はない」
俺はそう言ってサドルペローンのパンチをかわした。
「たとえ神でも悪人は死ねって神ならゴメンだね。最後の最後まで抗うさ」
「屁理屈をこねるな。だいたい妬みって事が分かるなら味方だろ。彼女もいないだろうし」
サドルペローンはローキックをしかけてきた。
「五つ、山賊に二言はない」
今度はかわさなかった。俺の足はローキックを弾いた。
「屁理屈こねてるのはお前だよ」
俺は叫んだ。サドルペローンが飛びかかってきた。
「六つ、命よりも仲間を大事にすること、仲間よりも誇りを大事にすること、誇りよりも命を大事にすること」
俺はそう言いながらヒラリとかわした。サドルペローンはすっころんだ。
「どれが大事かは自分で考えろ。そして全てを大事にしろって事さ」
「七つ、飯は美味しく食べる」
俺はそう言いながらサドルペローンの頭を踏みつけた。
サドルペローンは無様に泣き叫んだ。
「八つ、汚れは心を病ませる。清潔であれ」
俺はそう言いながらサドルペローンを蹴り飛ばした。予想以上に吹っ飛んだ。
「九つ、山賊には帰る場所があると思うな」
こう言いながらサドルペローンの元へ走った。
「十つ、誇り高き悪であれ」
俺はサドルペローンを思いっきり殴った。
サドルペローンは倒れた。
優厳から託された膝アーマーが壊れた。
これは親父の使っていたものだったと確信できた。
「これにて一件落着かな。明日からまた学校だ。とりあえず今日は学校休んでもう寝よう」
俺はそう言うと大きくため息をついた。
満身創痍でまだ母親が帰っていない家に帰り、着替えずに寝た。
そして朝日で目が覚めた。
サドルペローンは優厳たちの活躍により無事倒されたと報道されていた。優厳は俺の父親について考えていたようだし気遣ってくれたらしい。ありがとうな、優厳。そして俺は学校へ向かった。道すがらヨウゾウにタナバタ"の戦いを語った。Fin