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”タナバタ”・反撃

 俺は目覚めた。ニュースをつける。流れている内容を見るのは三回目。


 さっそくアンカタの公式SNSにメッセージを送った。{月を見ろ}ってな。


 馬のいななきが聞こえた。


 まもなく俺の家のベルが鳴らされた。


 俺はさっそく玄関を開けた。その先にいたのはアンカタだった。


「アンカタ。俺は戦うよ。大事なことに気がついたんだ」


「そうですか。何故でしょう、名前も知らないあなたのその言葉に希望を感じるのは?」



「そっか、今から俺がいう相手と連絡をつけてくれ。『リア充に天バツ』を倒すために必要なことなんだ」


「誰に連絡を付ければいいですか?」


「今動ける正義の味方全員だ。とりあえずエスパーポリスの偉い人と牛乳軍団戦闘員の司令官と先人のキセキ(ドーロ・ロード)。それに……」

 俺はあいつの名前を呼ぶべきか迷った。


 だけど、呼ばなきゃいけない。


「勇者の息子、優厳だ」


「ムチャ、言いますね。でも、分かりました。今、都合を付けます」


「えっ、そんなにトントン拍子に進むのか?」


「ええ、そういう風に出来ているんですよ」

 アンカタはそう言いながら馬型ロボットが背負っている鞄から仮面を取り出して俺にかぶせた。


「これはVR空間へ簡易的にアクセスするためのヘッドセットです。あなたがさっき呼んだ方々はもう待っています」


「ありがとう、アンカタ」

 俺はVR空間に入った。そこには俺でも知っている有名人がズラリと並んでいた。


「なあ、お前は何者だ? 軽く調べたが超科学能力者として登録されてはいなかったが」

 エスパーポリスの長官が俺に聞いた。


「俺は…… 天夫だ。よろしくなぁ」

 張り切って挨拶したが冷たい目で見られている。


「こほん、俺は未登録だが超科学能力者だ。生まれつきか後付けかは知らないが俺の目は魔眼だ。眼を閉じ開くという一連の動作で能力が発動する。左目の能力は瞬間(またたきのあいだ)保温だ。目をつぶってから開けるまで物の温度を一定に保てる。ぶっちゃけ使い道の限られた能力だ」


「それがどうしたというんだ?」

 牛乳軍団指揮官が失望したように言った。


「本題は右目の能力、瞬間(またたきのあいだ)記憶喪失だ。右目を開くと俺が右目をつぶっていた間の記憶を忘れてしまうんだ。そして俺はこの能力を寝る前に自分にかけてしまっていた。まあ、寝る前に考えていたことや夢の内容を忘れてしまうだけで大きな実害はなかった。だが、俺は"タナバタ"の朝を今日で三回過ごしている」

 俺がそう言った瞬間、ここにいる全員の顔つきが変わった。


「一日目ではサドルペローン以外の『リア充に天バツ』のメンバーは倒されたが一万人規模の死者が出た。二日目だとその7倍の被害が出て『リア充に天バツ』のメンバーは大半が生存していた」


「俺たちが負けたのか?」

 優厳はショックを受けたようだった。


 だが、『リア充に天バツ』の戦いを見て気がついたことがある。


「奴ら、二日目は相性の良い相手としか戦っていなかった。つまりこちらの相性の良い組み合わせをすれば勝てる」

 俺はその後、『リア充に天バツ』の情報を話した。


 そして会はお開きになりかけたのだが、優厳が妙なことを言い出した。


「天夫さん、あなたにこれを託します。僕には必要のない物ですから」

 そう言って優厳は左膝のアーマーを俺に渡そうとした。しかしすり抜けた。簡易的なVR空間なので当たり前だ。


「あははは、エスパーポリスに運ばせますね。そして、サドルペローンを倒すのは任せましたよ」

 優厳がそう言うと次々にメンバーたちがログアウトしていった。


「天夫さん。そのVRマスクには簡易的ですが一日前の私がサドルペローン対策に作ったプログラムがかけてあります。ご武運を」

 アンカタはそう言うとログアウトして馬型ロボットに乗って走り去っていった。




「バカな、あり得ない! なぜだ?」

 サドルペローンは部下たちが予定と異なる相手と戦っていることに驚いた。


 まず、エスパーポリス200人がベガルタイル駆除のため集まった。


 超能力を燃料にした空中バイクでベガルタイルを三次元的に包囲して、エスパーガンで一斉射撃したのだ。


「エスパーポリスが事前に情報をもらえればこんなもんよ。なにせエスパーポリスは最強だからな。ガハハハハ」

 エスパーポリスの長官は笑いながらベガルタイルが倒される様を見届けた。



 続いて、文 フミ江と牛乳軍団の戦いの幕が落とされた。


「英語で言えばミルキーウェイの天の川を利用して超科学結界を貼ろうとするとは牛乳軍団が許さないぞ」

 牛乳軍団指揮官が言った。


「おや、牛乳軍団の兵隊さんとはね。それにしても牛乳なんて舶来品をありがたがっているようじゃ底が知れるよ」

 文 フミ江はそう言って戦闘態勢に入った。


「文 フミ江、そもそもサドルペローンの部下になってていいのか? サドルって舶来品だろ?」

 牛乳軍団の兵士が聞いた。


「私はサドルペローンの部下じゃない。ただクリスマスから"タナバタ"を恋人の日にするために力を合わせているだけさ」


「文 フミ江、どうして国外の物を敵視する?」

 牛乳軍団の兵士の人が聞いた。


「それはね、日本という国が素晴らしくて、それ以外の物は等しく下劣だからだよ。江戸時代や第二次世界大戦中等、国の結束が必要なときは海外の物を閉め出したのはそういうことを本能的に分かっていたからさ。天下の徳川が閉めだした異教徒の祭りにイチャイチャする恋人など許せぬわ。イチャイチャするなら日本の伝統的な日である"タナバタ"に決まっておるだろうが」

 文 フミ江はそんな理屈を振りかざした。



「なあ、知っているか文 フミ江、"タナバタ"も中国伝来の祭りだぞ」

 牛乳軍団の兵士の人が言った。


「ひょえええ」

 文 フミ江は動揺した。異国伝来の祭りをそうとは知らず恋人たちがイチャイチャする日にしようとしていたという自己矛盾に耐えきれなかったのだ。


 すかさずその隙をつき牛乳軍団は牛乳連拳という特殊な格闘術で文 フミ江を倒した。


「日本の良さの一つはそうやって他国の物を自分色に染め上げて日本色に染め上げる事だと思うぜ」

 牛乳軍団の兵士が言った。


 そして40メートルの巨大な牛を倒すために1000人ものエスパーポリスが集まり避難誘導を行った。

 ベガルタイルと同じくエスパーガンの一斉射撃で攻撃したものの大したダメージが入っていないようだった。


 巨大な牛は山に特攻した。そして避難が完了していないところに向かって土砂崩れが発生した。


 その余波でとても態度が悪くなかなか避難指示に従わない老人に大岩が飛んできた。


 その大岩に特攻して大怪我を負いながら老人を助けたエスパーポリスがいた。


 そのエスパーポリスに助けられた老人は怪我をしたエスパーポリスに向かって「貴様の血が付いたわ。この服、どう弁償してくれるんじゃ!?」と怒号を浴びせた。


 それに怒った仲間のエスパーポリスが超科学能力で老人を眠らせた。


「おい、お前。ちょっと前まで無能力者を見下していたじゃないか。あんな下等な奴のために命を張るなんてゴメンだって、なのになんで?」

 エスパーポリスの人間の中ではそう言った差別意識は珍しいものではなかった。


「俺さ、無能力者の女に一目惚れしたんだ。それで、分かったんだ。能力者も無能力者も関係ない。同じ人間なんだって」


「もういい、しゃべるな」


「"タナバタ"って願いを叶えてくれるんだろ。だったらあの牛を殺してくれ」

 そう言うと大怪我したエスパーポリスは意識を失った。


 そして牽牛星(アルタイル)から光が降り注いだ。"タナバタ”を悪に染められてたまるものかという星の願いと身を挺して態度の悪い老人を守ったエスパーポリスの願いがキセキを起こしたのだった。


 光は50メートル大のティラノサウルスの形になった。


 アルタイルから降りてきたティラノサウルス、Rティラノから巨大な牛は必死に逃げた。本能で肉食獣にかなわないことが分かったのだ。


 巨大な牛はRティラノに捕まり補食された。


 Rティラノは役目を終えて光に戻り消えていった。


 ところ変わって先人のキセキ(ドーロ・ロード)はギリスと戦っていた。


 ギリスは植物のツタを操り先人のキセキ(ドーロ・ロード)に攻撃するが大したダメージを与えられない。


「今の地球は異常だ。天罰が必要なんだ。それを何故分からない?」


 そう叫ぶギリスに先人のキセキ(ドーロ・ロード)は答えた。


「本当に天罰が必要なら神様が下すさ。ドーロ・ラリアット」


 ドーロ・ラリアットを受けたギリスは倒れた。


 アンカタはマートーキと戦っていた。


「なあ、人に作られた物なんかに分かるわけないんだ。俺の気持ちは……」


「そう言う言い方、ムカっときます」

 アンカタは馬のロボットに乗りながらマートーキに刀を構えた。


 マートーキは全身にくくりつけた銃火気でアンカタを攻撃した。


 しかし、アンカタは傷一つついていなかった。全ての銃撃を切り刻み無効化していたのだ。


「諸事情で遠距離恋愛を強いられて彼女の気持ちも離れ別の男に取られる屈辱が機械に分かってたまるか?」


「ええ、わかりません」

 そうして一太刀のもとマートーキは倒された。


 続いて優厳対トカウノミコン。


「あはははは、優厳くんか動画見てたよ。家族が嫌いで一般人の振りして動画上げてたんだよね」

 トカウノミコンは笑った。


「ええ」

 優厳はそう言いながら魔法の準備をした。


「俺もそんな感じさ、家族全員超能力者で俺だけ無能力者。一人だけ人間として扱われなかったよ」


「そっか」


「家族のことを隠して動画投稿していた君なら分かるだろ僕の気持ち」


「ええ、気持ちは分かります。ですが、マシな手段はいくらでもあったはずだ。全属性(オールエレメンツ)暴雨(スコール)


「ははっ、僕にダメージを与えられる属性はたった一つ、それも一秒ごとに無作為に変わるんだ。つまりほとんどの魔法が常に効かないのさ」

 トカウノミコンは笑いながら優厳の攻撃を受け、倒れた。全ての属性で攻撃されたのでダメージを受けてしまったのだ。


「そんな、バカな。部下たちが全滅だと? 使えないな、おい。"タナバタ"に大事件を起こすことにより"タナバタ"のイメージを『リア充に天バツ』の物として"タナバタ"の魔力を意のままにする計画のループ回数を増やす必要があるじゃないか!?」


「それはさせないぜ」

 俺こと虎作 天夫はサドルペローンの前に現れて言った。


「何奴?」


 俺の親父はこう問われたらいつもこう返した。


「冷奴ってな」


「山賊の真似事か? フン、だがこのボクには勝てる道理があるまい」


「いいや、ただの一般人にお前は勝てない」


「何だと? ナメるのもいい加減にしろ」

 サドルペローンは炎を放ってきた。だが、俺は左目の力で俺の体の温度を維持し炎のダメージを受けなくした。


「炎が効かないだと? ならば、食らえ、サドルペローン様最高ビーム」

 そう言ってサドルペローンは赤い光を俺に当てた。


「このビームは当たった相手を完全なドレイにデキるんだぞ。こうやって部下を集めたんだぜ! さらに効果は弱まるものの地球の全てに今日は"タナバタ"と信じ込ませ疑似的にループさせるという使い方も持っているんだ」


 ああ、名残惜しい。ある意味、今の俺は死ぬ。そういうシステムだ。仕方がない。


 俺はアンカタからもらったVRメットにより強制的に右目を開かされた。


 アンカタはこの洗脳能力に勝ち目があるのは俺しかいないと悟り洗脳の範囲外の月に特殊な暗号メッセージを隠し対策プログラムを組みこのVRメットに組み込んでいたのだ。


 俺はこれまでの戦いと洗脳を完全に忘れ去った。


「第何ラウンドだ? サドルペローン」


「バカな、洗脳が効かないだと?」


「お前は凡人である天夫が倒す」


「この崇高な使命であるイチャッ#ラブッ#している者達に裁きを与えるという計画を邪魔するのか?」


「ただ、羨ましいだけだろ。それで人の恋路を邪魔するなよ凡人でも怒るぜ」

 そう言ってサドルペローンを殴った。


 サドルペローンに殴り返された。


「何が凡人には勝てないだ? もう一回言ってみろ」


 俺は数メートル吹っ飛ばされた。立ち上がる気力もない。アンカタからもらったVRメットも壊れた。


 俺が勝てなかった理由は分かっている。本当に凡人のヨウゾウが同じ能力を持っていてこの状況ならサドルペローンに勝っていただろう。


 ただ、俺は凡人じゃない。


 俺は親父の形見の虎の仮面と優厳からもらった膝アーマーを付けた。

「俺の名前は虎作 天夫だ」


「なにい、虎作だと……!」

 サドルペローンは明らかに動揺した。

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