急に求婚なんて困ります②
春は白蓮の後について行くが、少し白蓮はフラフラとしていた。
「…白蓮さん大丈夫ですか?」
「…私を名前で呼んでくれるとは…嬉しい」
ふわりと嬉しそうに白蓮は微笑むが、直ぐに表情が消え歩き出す。
「いや、そういうことではなくて…」
春は白蓮の隣に並び白蓮を支えた。
「頼りないかもしれませんが、支えます」
白蓮は少し黄色の瞳を丸くした後、目を細めて小さく笑った。
「結婚しよう、春」
春も小さく笑った。
「ごめんなさい」
春にはまだやらなくてはいけないことが沢山ある。
叔父の遺品(主に骨董品)の整理、叔父の四十九日、一周忌法要はもちろん、夏には叔父の…
「春」
白蓮のヒラヒラとした服の袖で涙を拭かれている事に気付いた。
「何が春を悲しませている?」
「…家族の死です」
「そうか」
ふわりと白蓮に包み込まれて春は顔を埋めた。酷く懐かしかった。
「春が悲しい気持ちなら、私も悲しい」
白蓮は黄色の瞳からポロポロと涙を流す。
春は一緒に悲しんでくれる人がいてなぜか安心した。その後泣き止んだ春と白蓮はまた歩き出した。すると大きな白の宮殿が見えた。
「ここは秋ノ宮だ」
「…綺麗な建物ですね」
「春は前に来た事がある」
そう言われても記憶には残っていない。
「白蓮さん」
「なんだ」
「そういえばここって、日本なのですか?」
「日本では無い。ここは妖が住む世界『妖界』だ」
妖怪…妖界?
「白蓮様、白蓮様!」
その時、大きな宮殿から春の腰辺りまでの高さの男の子と女の子がこちらに走って来た。
「お帰りなさいませ、白蓮さ…」
古代中国風な服を着た男が春を見て驚く。
「春様!春様ではありませんか!」
「200年ぶりでしょうか!」
男の子と女の子が興奮気味で話す。
200年ぶり?春は白蓮を見る。
この小さい子達で200年以上生きているってことは…
「春、私の歳を当てることが出来れば人間界に帰してあげよう」
「500歳代」
「春、結婚しよう」
不正解だったようだ。
「白蓮様は700代ですよ」
「ちょっと秋明っ」
白蓮は700歳代…春の約39倍長く生きている。
だが白蓮は20代のように若々しく、普通の人間よりも遥かに美しい。
白蓮はやはり人間では無かった。
「白蓮さん、私は200年も生きられませんし、きっと違う春ですよ」
「違わない。春は春だ」
「…私は白蓮さんの事覚えていませんよ?」
「構わない。これから知ってもらう」
「お話中失礼致します。白蓮様、そろそろ王宮にお戻りください」
オレンジ色の髪の長い女性がふわりと白蓮の元に現れた。
「あぁ。凛、秋明。春を頼む」
「はい!」
「はい!」
白蓮は春に微笑んで、オレンジ色の髪の女性と消えた。
「さぁ、春様」
「春様!」
凛と秋明に案内されて宮殿の中に入った。