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リン子のトラピーズ番外編:ラベンダー色のアンクレット

作者: 日ノ野 黒
掲載日:2020/03/25

 その日、リン子は似合わないほどに気分が落ち込んでいるようだった。



 久々に早めに部活を終えたのでメッセージアプリで連絡をしてみたけど返事がなく、校門で待っていたら力無く歩いているリン子を見かけたのでその後について歩いた。


 五分ほどして信号待ちで気づいたらしく「うわぁ! 舞か。いつからいたんだよ」とか大ボケかましてくれたのでちょっと拗ねてみた。


「学校からずっと一緒に歩いてたのに気づかないんだもん」

「え? いや、わりぃ」


 頭を掻きながらの返事で、まるっきり上の空。



 信号が変わって並んで歩く。リン子にしては珍しく口数が少ない。西日の逆光で見えた横顔は暗く沈んでいるようだったが、リン子には悪いけど私はレアな一面が見れてちょっと楽しかった。



 リン子が口を尖らせながら話してくれたところによると、同じヨットのパートナーのミキちゃんと喧嘩したらしい。


「それなら単純に謝ればいいじゃない」

「そんな簡単なことじゃないんだよ」


 否定的な言葉だったけど、素直に返事してくれるところをみると独りで籠もりたい訳ではないんだなと察した。


「リン子は単純なんだから、簡単なことは難しく思わないで実行しちゃえばいいのに」

「ウチはそんなにアホなのか?」


 悔しそうに空に向けて言い放ったリン子に思いが伝わっていなかったと訂正する。


「……違うよ。リン子だからシンプルな想いが伝えやすいんだよ」


 会話はここで一旦途切れた。私から言いたいことは伝えたのだから後はリン子が自分の想いをまとめたらいい、とそう思った。


 シンプルに行動できてそれが皆に認められているリン子。普段のリン子がシンプルであるからこそ、こんな問題をもシンプルに解決する手段がある。

 私には到底真似できない。そのシンプルさは恵まれていることで私にとっては羨ましい程の価値があるのに、きっと本人は今も気づいていないんだろうな。



 とりあえず、今日はリン子を励まそうと雑貨店に連れ込んだ。

 目についたアクセサリーを手に会計を済ませ、店の外でリン子に見せて言った。


「リン子、もし頭に血が上ちゃったらこれ見て冷静に判断できるようになりなさいよ」


 リン子は驚いた様子だったけど、素直に礼を言ってもらった。

 封を開けるとラベンダーをモチーフにしたような色合いで、薄い紫と濃い紫が数珠つながりになったガラス玉がキラキラと光っている。手首に垂らしてカニカンで留め具をロックした。


 リン子が手を開いて顔をそばに寄せる。その仕草を見ながら「よく似合ってる」と伝えた。無意識に口角を上げたリン子は、その手を上にかざす。リングがクルクル回りながら腕の辺りまで落ちてきた。


「あれ? 舞、これ男物なんかな? ウチの腕には太すぎるみたいだけど」


 同封されていた小さな紙を確認すると『足輪アンクレット』と書かれていた。


「これ、足につけるみたい……」


 私は思いっきり吹き出してしまった。自分が間違ってしまったのがおかしかったのと、リン子の目を丸くしてつぶやいた一言と、腕にぶら下がっている少し大きめの輪っかに納得がいったのと。すべてがおかしくて笑いが止まらなくなった。


 ひとしきり笑ってから歩きだして、また思い出して笑う。度々立ち止まってはお腹を抱えて肩を震わせる私を見て呆れ顔だったリン子も駅に着く頃には釣られて笑っていた。



 リン子の最寄り駅で電車を降りる頃にはスッキリした顔をしているように見えた。


「明日、ミキちゃんと仲直りしなよ」


 私の問いにリン子は右手を挙げて答える。


「あぁ、ありがと」


四話が2000文字いかないので急遽書き足してみたのですが、やっぱり話の勢いとあわないので載せなかったエピソードです。


舞のボート部の二次創作を書いているのですが、その伏線になりそうな、そうでもないような……そんな番外編でした。ボート部の話はまだプロットしか書いてないので、これが公開されるのはおそらく来年の今頃でしょうね。


少し興味を持ってもらえるようにザックリあらすじを書いておきます。



舞のボート部での強みは他人にシンクロできることだった。高校一年生の頃から「舞と一緒に乗ると倍以上の力が出ているように感じる」などと、もてはやされて楽しくボートに乗れていたが、高一の秋に同学年のミカサと乗った時にあまりの力の差(物理)でシンクロできずに別艇に乗ることになった。


やがて舞は高校二年生へと進級して後輩が入部する。


アキナは中学生の時に舞と共にボートを漕いだ経験から舞のいる鳥海高校へと進学した。その実力はボート部の二年生をも上回る。

「この成績ならミカサともペアが組めるかもね」と合宿に合流したアヤチーから声を掛けられるもアキナの胸中では舞とペアを組みたいという想いがつのっていた。


一方、今年こそミカサとペアを組めるように闘志を燃やす舞、鳥海高校ボート部は新人戦に向けてどのように対策していくのか。



『舞のペアテスト(仮)』



まぁ、そこそこ面白そうじゃないでしょうか。

ちなみに主人公はアキナです。後輩目線で舞と対峙するような話になります。


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