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第六話

 ある日、王都の公爵家に話し合いのため、公爵、ライオネル、キース、エドモンド、そして結婚の準備のため公爵家で暮らしているリリアが集められていた。


 公爵が部屋に集まっている面々を見渡す。


「諸君、集まって貰って申し訳ない。座ってくれ」


 その声を聞くやいなや、五人で座るようにセッティングされた席を見たリリアはライオネルの横に行こうとする。が、ライオネルを守るようにキースとエドモンドが阻止する。


「私~ライオネル様の横が良い~」


 主張するリリアを横目にキースがてきぱき指示をする。


「リリア嬢、君は僕の横。レオの横はウィアー君。もちろん上座は叔父様で」


 リリアは助けを求めるようにライオネルの方へ向いた。


「ライオネル様~」


 ライオネルに甘えた声を出すリリアにライオネルはきっぱりと返した。


「リリア、キースの言う通りにして」


「リリア嬢、レオとウィアー君はこれから共に領地を守ってもらわねばならん。これからを考えると何事も一緒にして行く第一歩だから二人は隣同士。君はここだよ」


 とキースの隣の一番下座を指された。


 助け船が出なさそうなので、嫌そうに渋々リリアはキースの横に座る。それぞれ指定された席に座ると公爵が話始める。


「早速だが、次期公爵はキースに任せることにする。書類が整い次第、養子縁組の手続きをしようと思う」


 リリアが立ち上がって公爵へ顔を向けた。


「え~ライオネル様が公爵ではないのですか~」


 あきれた顔の公爵はリリアに諭すように言うのだった。


「結婚相手が公爵夫人の素質がないのに、どうやって公爵になれると言うんだ」

「リリア、頑張りました!!」

「頑張ればいいと言うものでもない」

「でも~」


 話を続けようとするリリアにしびれを切らしたキースが怒ったように言う。


「リリア嬢、話の途中だ。叔父上が言われる内容をすべて聞くべきだ!!」

「……はい」


 キースの剣幕にリリアは小声で返事をして座ったのだった。


「キース、ありがとう」


 公爵がキースを見て礼を言い、話を続ける。


「そして、ライオネルとウィアー君は領地にて警備に当たってもらう。私兵団の団長と副団長として領地へ行ってもらおう。うちの領地は国境と接しているから二人の北の砦での経験を生かしてもらえるだろう」


 そして、公爵はリリアを見る。


「リリア嬢には結婚後もこのままこの屋敷で過ごしてもらう」


 当然、自分も領地へと行くであろうと思っていたリリアは自分だけ除け者にされたためすねた様子で公爵へ願い出る。


「リリアもライオネル様について領地に行きますぅ~」

「いや、ライオネル達は忙しいから、貴女を監視する暇はない」

「か、監視ですか?」


 公爵の即答と監視と言う言葉にびっくりするリリア。


「公爵家に迷惑をかけられたら困るからな」


 公爵はリリアに冷たく言い放つのだった。


「迷惑なんてかけたことありません~」


 リリアの言った言葉でその場の四人はビックリして固まった。

どういう解釈で迷惑をかけてないと思えるのか考えると頭が痛くなった四人だった。


 そして、公爵は書類をリリアへ差し出す。


「陛下に許可されたライオネルと貴女の結婚だが、正直この結婚はメリットがないどころかデメリットだらけだ。貴女をこちらで引き受ける代わりにこの書類に書いてあることを厳守してもらおう」


 出された書類にリリアは目を通す。その書類には以下のように書かれてあった。



一、ライオネルの私部屋に入らない事

一、公爵家の後継ぎは公爵家の血縁者より養子を迎えるため夫婦の子供は望まない事

一、行動は好きにしても良いが、公爵家の者として恥ずかしくない立ち振舞いをする事

一、公爵家に問題を起こさなければ交遊関係に口をはさまないが、子供ができるようなことがあれば、ライオネルの子供でないため、実家に戻す事



 唖然としたリリアはムッとした顔した。


「これはどういうことですか~ライオネル様のお嫁さんなのに部屋に入れないっておかしいです~それにライオネル様の子供を望まないって……」

「うちの跡はキースが継ぐ。後継問題を起こされると困るからライオネルには子供ができないようにさせる。それに、ライオネルの部屋への入室の許可は本人が出さないだろう」

「どういう事ですか? ライオネル様~」


 リリアが怒った顔でライオネルに顔を向けた。ライオネルは申し訳なさそうにリリアを見るのだった。


「リリア、申し訳ない。公爵家の者としてせねばならないことをしようとしないのに、あまりにぐいぐい来られて、引いてしまったと言うか、なんか無理なんだよ。部屋に入られるの」

「ライオネル様、リリアの事、嫌いになったの?」


 リリアは(すが)る様にライオネルを見つめる。


「人の事言えないんだけど、嫌いになったと言うより成さねばならない事から逃げてばっかりの君を見てると呆れたと言うのが正解かも。結婚が決まっていろいろなチャンスがあったけれど、この一年ちょっとの間、逃げてばかりだったよね」

「ひど~い、ライオネル様!!」


 説明するライオネルにこの一年の自分の行動を否定される様で、リリアは怒っていた。しかし、ライオネルは余程言いたいことが溜まっていたのか、話を続けるのだった。


「僕も酷いかもしれないけれど、君も酷いよね。陛下に許可された結婚だから必ずしなければならなかったのに公爵家の人間になるための教育を放棄していたんだから」

「できなくてもライオネル様が何とかしてくれると思って……」

「前にも言ったよね、出来る事と出来ない事があると」


 (とが)めるように言うライオネル。


「リリア、今から頑張る!!」

 

 焦った様子のリリアは決意を語る。しかし、ライオネルは呆れた顔をしたのだった。


「今からではもう手遅れだよ。陛下に許可された結婚をこれ以上伸ばすことはできない。公爵家を継がなくても結婚はしないといけないから」


 ライオネルが話終わるやいなや公爵が集まる四人を見回す。


「リリア嬢、貴女には結婚後このまま王都のこの屋敷にて過ごしてもらう。その代わり公爵家の者としては恥ずかしくないようそれなりの装いなどはそろえさせてもらおう。これは貴女の父上とも話のついていることだ」


 さすがに男爵から公爵へとやかく言う事が出来なかったようだ。ここまで決められていては否とは言えない。ここで暮らすしかないリリアは数か月の公爵家での暮らしを思い出し、男爵家ではあり得なかった質の高い生活を過ごしたことを思い出す。そして、それらを投げ出すことは得策ではないと考えて承諾することにしたのだった。


「し……承知いたしました」


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