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第三話

※「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく」の「後日談:もうひとつの結婚 中編2」と同じ内容です。


 そんなある日、砦の入口が騒がしくなる。なにがあったのかと隊長とライオネルが駆けつけると、そこには半年ぶりに見るリリアがいるのだった。


「ライオネル様!!」


 リリアがすがり付こうとするとライオネルは思わず後ろに下がってしまった。


「……リリア?」

「ライオネル様、会いたかったです~」


 リリアがさらにライオネルに近寄ろうとするとその間に割り込んでくる者がいた。北の砦の隊長だった。


「レオ、こちらは?」

「隊長、婚約者のリリア・バインズ男爵令嬢です」

「レオ??」


 ライオネルを愛称で呼ぶ隊長をリリアは睨み付ける。


「私だってライオネル様を愛称で呼べていないのに、あなた、どう言うこと?」

「リリア、隊長に失礼だろう。それより君は何故ここにいる?ミラルデル修道院にいるのじゃあなかったのか?」

「あんな大変なところ無理よ。ライオネル様、助けて」


 ライオネルが呆れた表情を見せた。


「リリアよ、メルヴィン王に命じられた修行なのにそれもできないのか? 私たちが結婚するために必要なことだとわかっていないのか?」

「だって~」

「そんなことで公爵夫人が勤まると思うのか?」

「そこはライオネル様が何とかしてくれるでしょ?」


 リリアが縋り付こうとするが、ライオネルは隊長の後ろにいて近づけない。


「何ともできないから、ここにいるんだろう? そろそろ気付いてくれ」

「ライオネル様、ひど~い」


 隊長もあまりのリリアの痛さに呆れている。


「リリアとやら、ライオネルはそもそも誰のせいでここにいる?」

「リリア悪くないもん。ライオネル様が王妃にしてくれるって言ったのに……」


 頬を膨らませて言うリリアにライオネルは困ったような顔をした。


「リリア、そんなこと言わないでくれ。私達は陛下に許可された結婚をするしか道はないんだから、修道院での修行を無事勤め上げてくれ」

「無理~」

「リリア殿、レオを困らせるのは止めてやってくれ」

「困らせてない~」

「いや、明らかにレオを困らせているだろう」

「ライオネル様、リリア、ライオネル様の事、困らせてる?」

「言いにくいが、困ってるよ。以前は結婚したいと思ったが、成さねばならないこともできないようでは、公爵家に入れることにためらいを感じるよ」

「え? ライオネル様、リリアのこと嫌いになったの?」

「好きも嫌いもなく、リリアがこのままなら、結婚は許されないだろう」

「許されないの?……リリア、修道院で頑張る! そしてライオネル様のお嫁さんになる!」

「リリア、どのみちそうするより他はないんだから、頑張っておくれ」

「うん! 頑張る! じゃあ修道院に戻るね」

「リリア殿、誰かに修道院まで送らせよう」

「ライオネル様、リリアを修道院まで送って~」


 隊長は更にライオネルをリリアから隠すように体を動かした。


「リリア殿、申し訳ないが、レオはわたしが用事を頼んでいて手が離せん。悪いが他のものに送らせる。」

「リリア、ごめんね。半年後、楽しみにしてるよ」

「ライオネル様、私も楽しみです。ライオネル様、大好き~」


 リリアがライオネルに抱きつこうとするが、隊長に阻止される。


「リリア殿、申し訳ないが、ここは男ばかりなので刺激の強いことは勘弁してくれ」

「え~せっかくライオネル様に会えたのに~」


 ライオネルは隊長の体を盾にするようにしてリリアを見る。


「リリア、ゴメンね。体には気をつけて」

「ライオネル様も気をつけてね」


 しぶしぶリリアは隊長に連れられて出て行ったのだった。

 

 ライオネルはふうっとため息をつく。



 暫くすると隊長が戻ってきて、謝るのだった。


「レオすまん。お前の婚約者が抱きつこうとするのを思わず止めてしまった」


 ライオネルは許すと言わんばかりに首を振った。


「いいえ、良かったのです。半年前何故あれほど結婚したいと思ったのか今は不思議です」

「レオ、好きだったんじゃあないのか?」


 ライオネルは遠い目をする。


「あの時は確かにそうでした。今は好きとは言えなくなってます」

「そうか、安心した」

「隊長、安心ですか?」


 予想しない答えにびっくりしたライオネルだった。

 隊長は先程のリリアを思い出してむかついているような顔をするのだった。


「ああそうだ。あの婚約者が、レオに抱きつこうとするのを何もせず見逃すなんてことができなかった」


 ライオネルは不思議そうに首を傾げた。


「なぜ?」

「なぜって? 最初に、レオに会った時は公爵家の嫡男が何かやらかしてやって来たのをからかってここから逃げ出させようとしたが、お前はそれを乗り越えてここに馴染もうとした。そんな頑張り屋なレオを好きにならないわけないだろう?」

「頑張り屋? 隊長が僕のこと好き?」

「頑張り屋だろう。正直、ここは上位貴族のおぼっちゃまにはキツイところだ。来ても大抵すぐに逃げ帰る。だが、レオは耐えて馴染もうとした。並大抵の努力ではないはずだ。俺の恋愛対象は本来女なんだが、お前は別だ。そんな頑張り屋なお前をいつのまにか好きになっていたんだ」


 ライオネルはびっくりして瞬きができない。じわじわ喜びが体を駆け抜けていく。


「隊長、嬉しいです。僕、子供の頃から公爵家のものはこうであれ、出来て当然、頑張るのは当たり前と厳しくされてきたので、そのように頑張っているって言ってもらうの初めてです。まぁ今思うと元婚約者との差があったせいからだと思いますが…」

「よく頑張ったな、レオ」


 と言ったかと思うと、隊長はライオネルの背中に腕を回して抱きしめた。20センチほど身長の低いライオネルは隊長に包み込まれる。


「隊長、嬉しい」


 ライオネルは隊長を見上げ、ニッコリと微笑み抱きしめ返した。

 二人はそのまましばし抱き合っていたのだった。



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