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異世界とつながった世界で生きていく  作者: ゆうごろう
第一章 繋がりの始まり
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第七話 必要なもの

~~編、と言うのをやめ、その話その話にタイトルを付けようかなと思います。これより前の話は気が向いたらタイトルをつけて行こうかな。


前回のあらすじ


魔狼『ぐああ!』

剣人&翔「やったぜ」

小晴「わぁ!呪術!」

剣人&翔「なにぃ!?」

西塔「八重島ァ!」

剣人「ザンッ!」

グレイア「裁き!」

剣人「効かん!」

グレイア「えぇ…何できかんのぉ?」

剣人「ごめんね」

グレイア「また来るぜよ!」


それでは本文をどうぞ

 僕は、何も出来なかった。敵の魔法に囚われ、自慢の魔法も封じられ西塔君を殺すのを剣人に任しっきりにしてしまった。


 僕は多分、躊躇しただろう。僕は、剣人とは違うから。剣人は、感情が欠落している。だけど、それは何も思わないって訳ではなくて心の奥底で自分の心をすり減らしているんだ。本人は知らないけれど。


 彼は知らない。自分の心がわからない。今自分が何を感じているのかが分かってないんだ。彼の父親がかけたのは、そんな洗脳。


《マスター、それは洗脳ではありません。恐らく、魔法です。》

(…は?マ、マリ、それは…こっちの世界にも魔法があったってことか?)

《はい、何事にも例外はあります。恐らく八重島様のお父様は闇魔法の使い手であり、闇魔法【感情操作】により感情を封じられているのだと考えられます。》

(闇魔法…解除は出来るのか?マリ。教えてくれ)

《おそらく可能かと。なんなら魔法生成でオリジナル魔法の作成により可能です。》


 それを聞いた僕は、剣人の元へと急いだ。





★八重島剣人


 あぁ、殺り損ねた。俺は移動中、そんなことを考える。


 昨日グレイアが去ってから、自衛ができる自信のある者のみ帰っていいとの決定があった。これには反対した教師も多かったらしいが、神の使徒によると、二つの世界は繋がったのであって重なったのではなく、境界線があるらしい。


 この話は世界中にも伝えられており、一種のデモが行われたりもしたが境界線を閉鎖するとの事。まぁ、空間魔法の使い手には無意味な上、そんな即興の壁なんぞ魔物には直ぐに崩されそうではあるが。


 そんなこんなで、まだ街中に魔物がいるなんてことは無いだろうと帰ることを許された俺達は、小晴の解呪のために翔が作り出した魔法、【浄化の光】を発動させるために材料を集めようとしていた。


 その材料とは大量の魔石で、あっちの世界(世界では魔界と呼ばれている)に行って魔物を狩らなくてはならなくなった。


「そもそも魔石ってのはなんなんだ?」


 気になったので翔に聞いてみる。


「ああ、マリによると、「超高密度の魔力が結晶化したもの」らしいぞ。魔物はその結晶化した魔力を媒体にして魔法を発動させるらしい。」

「ほう…じゃあ魔石を使えば魔法が使えない人でも使うことが出来るんじゃないか?」

「いや、それは無理らしいよ?魔石を取り込んだら出来るかもだけど、魔石が体に馴染むまでに体細胞や魔核を傷つけるらしいから、下手したら死ぬ見たいだ。」


 うーむ…魔石をくったら死ぬのか…危ない危ない。俺は口に近付けかけた魔石を空間魔法で収納する。


「じゃあ、魔石ってエネルギーとかには出来ないのかね?出来たら魔物を狩るだけでエネルギー問題が解決しそうじゃないか?」

「んー…マリに聞いてみるよ。………おぉ!出来るらしいよ!なんでも、魔力操作を使えば魔石から魔力を引き出すことも可能だし、その魔力を電気などに変換することが可能らしい。ま、それをするのが魔法だから、それはいけるね。」


「じゃあ、その機械を作るのが肝ってことか。ふーむ…」


「あ、マリが通信を剣人に繋げたいらしいけど、どうする?」

「え?そんなこと出来んの?頼む頼む。」


《聞こえますか?八重島様》

「お、聞こえる聞こえる。これって考えたらいいの?」

《思念を持って考えれば私も読み取れます。》

(こんな感じ?)

《はい、そんな感じです。》


(じゃあ、1個聞きたいんだけど、魔石って魔力伝導率高かったりする?)


 そう、魔力伝導率が高ければ付与魔法の効果が上がる。付与魔法は付与しても魔力量などを調節できず、一定の威力しか出ないのだが、素材の魔力伝導率によって威力が変わる。高ければ高いほど高威力ってことだ。


《はい、伝導率は高いですよ。しかし、問題なのが狙いが定まりにくいですね。伝導率が高すぎても魔力は霧散してしまいますので、高い魔法コントロールが必要かと。》

(そうか…ありがとう)


 魔法コントロール、か。魔力操作Ⅰなんだけど大丈夫かな?まぁ魔力操作とはちがう技術だろうし、大丈夫でしょ。そう信じよう。


「剣人、まだ話してなかったんだけどさ…決めたよ。僕は話す。」

「どした?唐突に。」

「実は…お前は親父さんに洗脳されてたんじゃないんだ。魔法をかけられてたんだよ。」


 は?何言ってんだ?親父が魔法??


「【浄化の光】はこの魔法の解除も可能なんだ。どうする?」


 解除?それって…戻ってくるってことか?戻ってきて欲しいのか?俺は。どうなんだろう。戻ってきたところでどうなる?


「剣人…悩むのはわかる。だが、その感情は取り戻さなきゃダメだと思う。別に価値観を押し付ける訳でもないけど、その感情は人に必要なものだ。」


 翔の言葉に耳を貸し、考える。


 俺は、何がしたい?ーーー自由に、何者にも縛られずに生きたい


 自由とは、なんだ?ーーー自分で考えて行動できることだ


 なら、答えはひとつ。俺は何者にも縛られない。それが、たとえ魔法だったとしても俺は打ち破る。


「翔、俺の魔法も解いてくれ。俺には、その感情が必要だ。」


 その言葉を聞き、翔は微笑んだ。



 そんなこんなで魔界との防壁(魔界防壁とか呼ばれていた)に到着した。


「すみません、魔界に行きたいのですが…」


 翔が近くにいた自衛隊?っぽい人に聞く。


「ダメだ。お前達みたいな子供が遊び半分で入っていいようなところじゃない。あそこは化け物共の巣窟だ。」

「友達を助けるために、どうしても行かなきゃダメなんです!」

「友達を助ける?どうやって?魔界に行けばその方法があると?んな迷信信じてるんだったら解放してやれよ。とにかく、ここを通す訳には行かねぇ。」


 ちっ、頭の硬ぇこって。しょうがない。いま、俺達はなりふり構ってはいられないからな。


「翔、正面突破で行くぞ。」


 俺は翔にそう伝えると、【身体能力増加】を発動させる。翔も覚悟したようで、【精霊融合】を発動させた。


 自衛隊?の人は異変を感じたらしく、焦ったような顔をしていた。


「じゃ、また帰ってくるから、名前教えてくんね?」


 自衛隊?に問う。


「へ?お、織宮(おりみや)だけど?…ってええ!?」


 名前を聞いた俺達は、防壁を一気に駆け上がった。翔は飛んでたからまぁ分かるだろうが、俺は文字通り駆け上がった。壁を垂直に。



 そうして俺達は魔界へと突入して行った。



 魔界は、はっきり言うと地獄だった。だってさ、木まで動いて攻撃してくるんだぜ?やってらんねぇよ。まさか魔石の生成される生き物の中に植物まで入っているとは思わなかった。てか、いつかうちの世界にまであー言うのが出来んのかな?被害者続出だな。


 しかし、地獄だったのは間違いないが魔物の数も多く、短時間で必要な数だけ集まった。


 必要数集まった後、予備で数個、自分用に数十個取った後、入ってきた位置と同じあたりで壁を越え、織宮さんの元へと向かった。


「お、お前ら…良かったちゃんと戻ってきたんだな。お前らが死んだとあっちゃ怒られるのは俺だからよ、勝手な行動は控えてくれ。」

「じゃあ正式に入る資格をください」

「お、おう…で、どうだった?」


 俺の言葉にちょっと引いてた。


「植物までもが魔物化していました。早急に対策を取った方がいいかと。」

「植物も…てことは討伐されるってことだよな?じゃあ、あっちの世界の酸素ってどうなってるんだ?」


 確かに、考えてもいなかったな。植物が魔物化するんだったら焼き払った方が安全だが、酸素の供給が止まってしまう。


「あぁ、恐らくは魔物化するのは一部の植物のみで、その魔物化する種類の方が稀なんでしょう」


 マリに聞いたのであろう、翔がはっきりと答える。


「…上に連絡入れて、お前らに正式に入れるようにしてやる。だから、時間があれば情報の交換をさせて欲しい。」


 ふむ、いい案だな。上って言うと国かな?自衛隊レベルじゃ国全体には行き届かないだろうし。


「分かりました。では、僕達はだいたい高校にいますので、用があったらそこへ来てください。」

「いや、翔。俺が魔導具を作った方が早い。【通信魔法】だってあるし。」

「【通信魔法】?俺に使えるようになるのか?」


「いや、俺は【付与魔法】が使えるんだ。ちょうどいい感じの魔石があるから【通信魔法】を付与して渡すよ。【コンフィグレーション】対象:魔石 付与魔法:【通信魔法】」


ーーーザザッ設定者の魔力を確認ーーー 


ーーーザザッ設定対象の存在を確認ーーー


ーーーザザッ設定対象の魔力伝導率を確認ーーー


ーーーザザッ魔法の付与を申請ーーー成功。


ーーーザザッ魔法の付与を開始ーーー完了しました。


 アナウンスが頭の中に流れてくる。通信魔法は上級魔法で消費魔力は少し特殊だ。通信1分につき魔力を1消費する、【身体能力増加】と同じタイプ。1分以内だったら魔力の消費はないらしい。


 なるほど、こう言うタイプの魔法の付与は1分で消費する魔力の10倍か。なら、量産が楽だな。大した修行にもならないが。


「これを使ってくれ。魔力を流して対象…まぁこれにはペアを作る。【コンフィグレーション】対象:魔石 付与魔法:【通信魔法】…おし、で、これに設定して…と。使ってみてくれ、魔力を流したらできるはずだから」


 俺の言葉に驚きながらもしっかり使ってくれる。俺の方の魔石が振動する。


「まんま電話だな。」


 そういい、俺は魔石に魔力を流し込んだ。


『聞こえるか?』

『ああ、聞こえるよ。じゃあ用がある時はこれを使ってくれ。』


 俺と翔は学校へと戻って行った。





 学校へと着くと、そこには教師陣と各クラスから1人ずつ代表が集まっていた。


「おお、藤崎、八重島。ちょうどいい所に。今から会議を始めるのだが、参加するか?」

「いえ、これから小晴…木野宮を直しに行くので、また今度にします。」

「ふん、そんなもの1人でいいだろう。藤崎が直している間、八重島でもいいから会議に参加しろ。」


 校内嫌いな教師ランキング第1位を飾る現国の教師、白松(しらまつ)が言ってくる。あだ名はクソ松だった気がする。


「すみません、剣人も必要なんです」

「何故だ?」


 はぁ、こう言う詮索してくるタイプは嫌いだよ。だから嫌われてるってことに気づいてないしな。


「…剣人は!」

「いや、いいよ、翔。俺が出たらいいんだろ?ならでるさ。別にあれは俺は後でもいいはずだ。」

「でも…」

「いいから、小晴を救ってこいよ、俺たちのヒーロー」


 翔は一瞬戸惑いながらも、小晴の元へと向かっていった。さて、胸糞わりぃ会議が始まる予感がするぜ。



「生徒は校内で過ごすべきだ。危険が多すぎる。第一、俺達に神殺しなんぞ出来ん。なら、学校にこもって大人しく神が殺されるのを待つのが最善だ。」


 クソ松がなんか言ってんな。


「まて、それは問題がある。学校に籠るにしたって不便が多すぎていつかデモが起こる可能性がある。それに、家族のことが心配なやつもいるだろう。なら、学校は捨てるべきだ。利用したい者が利用すればいい」


 ふーん…さすがこうちゃんだな。俺はこうちゃんに賛成だ。


「ふん。どうせ生徒にデモを起こす気力など無いさ。それに不便が多すぎるだと?それぐらいどうとでもなる。家族?なら、家族も皆学校へと連れてこればいい。」

「それだと入り切らなくなり溢れる人達が出てくる。何故そんなにここにこだわる、白松。」

「あいつらは高校生だ。どうせ冒険だなんだと言って余計なことをやらかすに決まっている。例えばそこの八重島とかな。」


「ん?ああ、俺か。すまないが、もう魔界には行ったよ。」

「敬語を使え、八重島」

「こんな世界で上下関係って関係あるか?なんで敬わなくてもいいようなやつを敬わなくなきゃダメなんだ。んなクソどうでもいいこと考えるくらいなら打開策をだせ。もっとマシな、な」


「打開策?だから言っているだろう。籠るんだよ、学校に。」

「それを人に付き合わせる必要がどこにあるんだよ。籠りたきゃ勝手に籠れ。俺は自衛のために自分の技を磨く」

「やはり馬鹿だな。まだ世の中を甘く見ているクソガキだ。」

「甘く見ているのはどっちだよ。籠ってたら解決するって思ってるような甘ったれた考えで人を縛るお前に甘いって言われても全然だな。」


「昨日の狼を見ていれば分かるだろう。あんなもの、別にどうとでもできるさ。心配なら自衛隊かどっかに銃火器を貰えばいい」

「どうやって自衛隊と連絡をつける?」

「それを今から考えるのだろう。」


「はぁ…まぁそれはこの際どうでもいい。一応言っておくが、やはり舐めているのはお前だぞ?あの狼に銃火器なんぞが効くとは思えん。避けられて終わり、当たっても傷はほとんど付かんだろうよ。」

「何を言っている?貴様は昨日スパスパと斬っていただろう?あれだって無茶で甘く見ているからこその行動だ。」

「スパスパと斬ることができていたのは固有能力のおかげだ。あと、刀とな。あの狼の力をあまり舐めない方がいい」


「固有能力?まさか、ステータスとかいうやつを入手したのか?あんな得体の知れないものをとるなんぞ、頭がおかしいんじゃないか?」


 …ん?ちょっと待て、その言い方だと…


「こうちゃ…上村先生。まさか、ステータスの取得の件、説明してないんですか?他クラスには」

「こうちゃんと呼ぶな。あぁ、そうだがどうした?」

「なっ?まさか、あんな得体の知れないものを生徒に使わせたのか!?」

「状況が状況だろう?その得体の知れないものに縋らねばならん状況だった。恐らく、私たちが処理していなければあの魔狼共は街に行き、それだけで私達は全滅していた。まさに藁にもすがる思いというやつだ」


 えぇ…こうちゃん勇気あるなぁ、そんなことするなんて。


「そんな勝手なことをするのなら、処分を検討しなければならんな。」

「こんな状況でクビになったとて、なんのデメリットがある?むしろ教師という職業に縛られない分自由に行動できるだろうよ」


 おぉう…こうちゃん、元からやる時はやる人だと思ってたけど、すげぇやる人だった…かっくいい


「他の生徒にもステータスのことを説明する。私は生徒を守りたい。」

「なら、お前はもう教師じゃない。勝手にしたらいいだろう」


「ま、まあまあ白松先生。落ち着いてくださいよ。確かに、上村先生の行動は軽率でした。しかし、その行動のおかげで助かったのもまた事実。ここは、皆さんの自衛のため、ステータスを取得すべきではないでしょうか。」

「…そうですか。まぁ私は反対しておきますよ。」


「とりあえず、次に行こう。私は八重島の意見に賛成する。籠っていても始まらない。外に出たいものは出るべきだ」

「だから、馬鹿な夢を見る奴が死ぬかもしれないと言っているんだ!わからないのか!」


 不毛だな、この話し合い。いるのか?クラスの代表達は代表達で萎縮してなんも喋らんし。


「あ、あの!私は、八重島さん?に賛成です!今こうしている間にも魔界を隔離している壁は破壊されていっています!籠っていても意味はありません!」


 お、3年の先輩が言ってる。


「剣人!準備が出来た!すぐ来てくれ、剣人の力が必要だ!」

「分かった!すぐ行く!では、俺は行きますね」


 俺は返事を聞かず、会議室を飛び出した






「剣人、お前の魔法を解く。」


 翔が言ってくる。


「あぁ、分かってる。魔石の数は足りるか?」

「元々、魔石は足りない魔力を補う為のものだ。足りなくても、僕はやるよ」

「おいおい、頼むから倒れてくれるなよ?俺と小晴が助かって翔が死ぬなんて嫌だぞ?」

「そうならないよう気をつけるさ」


 そうして、俺達は保健室へと向かっていった。

次回の投稿は明日の正午を予定しています。

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