第四話 籠った代償
俺は練習場にこもっていた。
「はぁっはぁっ!3611ぃ!」
すごく疲れる。流石の身体能力増加もここまで腕立て伏せをすると音をあげるようだ。
「つぎぃ!ダンベルゥ!」
次はダンベルを上げる。俺は、練習場にトレーニングルームを設置し、筋トレをしていた。
この練習法はすごく効果的で、【身体能力増加】は1分使う事に魔力を1消費する。なので2分で1総魔力量が増加することになる。【最大能力値増加】が発動するのは10分に1度のようだ。10分に1度総魔力量が5上がっている。
だが、当然今の俺では【身体能力増加】は最大でも50分、魔力枯渇を避けるならば40分程しか使用できない。そこで登場するのが【魔力変換Ⅰ】だ。
この【魔力変換Ⅰ】は何かの不可視のステータス(体力、生命力など)を魔力に変換することの出来る固有能力だ。
これを使い体力を魔力に変換しつつ維持して、おかげで今のステータスはこうだ。
ーーーーーーーーー八重島 剣人ーーーーーーーーーーーー
魔力:410 総魔力量:410
物理耐久値:400→4000 魔法耐久値400→4000
適正魔法:付与魔法 身体能力増加 最大能力値増加
固有能力:言語理解 付与固定Ⅰ 付与魔法Ⅰ 空踏 剣戟強化 隙見 威圧 身体能力増加Ⅰ 最大能力値増加 魔力操作Ⅰ 物理耐性Ⅹ 魔法耐性Ⅹ 超再生Ⅰ 魔力変換Ⅱ
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総魔力量が360も上がってる!よし!410もあれば上級魔法の付与もギリギリ付けれる。
「おはよ〜早いわね、剣人。ステータスどんな感じになったの?
「おはよう!小晴!見てくれよ魔力がすげぇ増えたんだ!」
俺は素直にステータスを見せる。
「へぇ…凄いじゃない!360も増えてる!…ん?」
「どうしたんだ?小晴。」
「いや、あなた【身体能力増加】しか使ってないのよね?」
「ん?ああ。そうだけど?」
「…増加量が360…【身体能力増加】の消費魔力が1分で1…【最大能力値増加】が消費魔力の2分の1を加算させるから…720、つまり720分、12時間ピッタリ…!?」
俺は、ダッシュで走り出した。
「あ、コラ!まてぇ!あなた寝てないでしょ、ダメじゃない!今日は魔狼が動き出すのよ!?何考えてるの!今からでも遅くないわ、寝なさい!」
小晴も追ってくるが、俺には【身体能力増加】と【最大能力値増加】によって走り込みをしまくってたんだ、追いつかれねぇぞ…!
「ッ!?速ぁ!ちょ、剣人!まじで寝ないとやばいわよ!戦闘中にぼーっとしちゃったらダメでしょ!?」
「んむ…おはよう、2人とも。どうしたんだ?鬼ごっこなら僕も混ぜてくれ。」
「あ、翔、いい所に!剣人が、剣人がぁ!」
「んん?剣人がどうかしたのか?」
ま、まずい、翔って怒ると怖いんだよ!今のうちにダッシュで逃げとかねぇと!
「剣人が昨日の6時から寝てないの!12時間よ!?12時間!」
「剣人…?ほんとなのか?いや、逃げてるしホントか…」
やばい!ヤバいって!まぁ流石の翔でも今の俺には追いつけまい…!
「ちょっと寝とけ、剣人。闇魔法【夢堕とし】」
俺の意識はその詠唱を省いた声を聞いた後、数秒で闇
の中へと堕ちて行った---
「…ふぁんん!あれ?俺いつの間に寝て…?」
俺が起きると、前には怒った感じの翔がいた。あれ?俺なんかしたっけ?
「で、弁解を聞こうか?なんで寝なかった?」
あ、思い出した!俺寝ずに鍛錬してて、寝かされたんだった!
「いや…そのぉ…楽しくて…」
「…まぁ今回は初犯だから許すけど、次からは許さないぞ?今日は魔狼も来るし、睡眠は大切だ。」
「分かったよ…あれ、てかさっき詠唱してなかったよな?どうやったんだ?」
「ん?固有能力の【詠唱破棄】の力だよ。詠唱いらずなんだ。」
「へぇ、あんな強力な魔法をねぇ…」
「いや、あの魔法に7秒くらい耐えてた剣人も充分すごいよ?あの魔法、魔法耐性が相当高くないと耐えられないからね。」
ん?魔法耐性が4000でも数秒耐えられる程度の魔法を無詠唱って…やばくね?あれ?その攻撃を受けた…それも【最大能力値増加】を使用した状態で…って事は…!
「おいおい、まさか…!ステータスオープン!」
ーーーーーーーーー八重島 剣人ーーーーーーーーーーーー
魔力:415 総魔力量:415
物理耐久値:400→4000 魔法耐久値2400→24000
適正魔法:付与魔法 身体能力増加 最大能力値増加
固有能力:言語理解 付与固定Ⅰ 付与魔法Ⅰ 空踏 剣戟強化 隙見 威圧 身体能力増加Ⅰ 最大能力値増加 魔力操作Ⅰ 物理耐性Ⅹ 魔法耐性Ⅹ 超再生Ⅰ 魔力変換Ⅱ
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魔力量も上がってるがそうじゃねぇ!おいおいマジか
よ…!
「お、おいどうしたんだい?剣人。急に慌ててステータスなんか見て。」
「こ、これを見てくれよ。」
「…?ステータスなら小晴から聞いて…ってええ!?魔法耐久値2万4千!?え、何があったのさ、これ!」
「多分、お前の魔法を受けて元々の魔法耐久値である4千を超える魔法ダメージを受けたことでその半分、2000が数値的に追加された。」
「ほうほう…それから?」
「で、その追加された数値が2千4百で、魔法耐性Ⅹの影響で10倍されて…!」
「…これ、やばくない?【夢堕とし】」
「…全然効かねぇ!」
「僕じゃもう勝てる気がしないのだけれど…」
こうして、俺は魔法の攻撃がほとんど効かなくなった。あれ?これってあれだよね?戦闘の途中に強くなっていってるってのが魔法的に出来るってことだよね?すっげぇや!
そんなこんなで魔法が効かなくなった頃、魔狼達が雄叫びを上げた。
「お、今って何時くらいなんだ?」
「今?正午ピッタリくらいじゃないかな。そろそろ魔狼が動き出す頃だよ。」
「ふーん…今の声、襲い出す前の号令みたいな感じかねぇ」
「その可能性も充分あるな…よし、僕も精霊を呼び出してみるか!」
そういった翔は呟く。
「【精霊召喚】」
その一言を放った途端、黄緑がかった魔力が、翔の周りを渦巻いていく---
次回は明日の正午を予定しています