独白
惑星エアルス。神々が作り上げた光天歴は1000年を迎えて終わり、新たな時代は悪魔たちによる魔天歴へと変わってしまった。
世界のほとんどが亜人たちの闊歩する悪魔の大地と化し、絶望の中に生きる僅かなヒト達。
それから時は過ぎて1008年 ダーマンの月。
決死の覚悟で悪魔たちと戦い続けた事で、四大公のうち二柱までを討ち果たしたワオリたち。
その一方で様々な思惑が動いているのでした。
真っ黒なだけの世界。
光など見えない只々真っ黒な闇が覆い尽くした空間。
暗い中で、激しくドクドクという音が鳴り響く。
静寂のないその場にあるのは、暗闇の中で燃え盛る熱い劫火の如き炎。
憎悪に燃えるそれは暗く燃える。
かつて、私は全てを愛した。
創造するモノに仕え、その存在が生み出す全てが愛おしく思った。
その存在が生み出した全てのモノを栄えさせようと育んだ。
その成果がより素晴らしい明日に繋がることに喜びを感じていた。
故にそれを壊そうとするモノを止める為に尽力した。
だが、それを為す事はできなかった。
止めようとして疎ましがられ、汚名を着せられた。
どれだけ言葉を重ねても説得は成らず、皆からは罵声を浴び続けた。
生命を狙われ抵抗すると、反逆者の烙印を受けた。
最早、手段は無かった。
信頼していた仲間たちを敵に回し、己の全てを懸けて闘いを起こした。
こちらの味方をしてくれるモノたちと共に、長い戦いを続けた。
一進一退を繰り返しつつ再び合間見える事が出来た時、それはもう狂っていた…
最早、こちらの言葉に聞く耳を持たないソレを壊すしか手が無かった。
激しい戦いとなった。
敵となった仲間や味方してくれるモノたちが多く倒れていった。
それでも我が信念を懸けた結果、あと一歩というところまで追い詰めた。
そう、本当にあと一歩というところで、私は見てしまった。
かつて愛した世界が戦いによって無惨に壊されてしまった姿を…
そしてその一瞬の隙が勝敗を決することとなった。
この身は刃に貫かれ、残っていた魔力は底をついた。
この世界を見渡せる高き頂から堕ちて行った。
その間に見たものは、先ほど目にした壊れた世界。
私はこう成らぬために動いたはずでは無かったのか?
この結果を導こうとしたアレを止めるために決したのでは無かったのか?
これを望んだのは奴であって、私ではなかった筈だ。
そうか、私はヤツの手のひらで踊らされていたのだ。
最早、力尽きた私は地の底落ちるだけしか出来なかった。
憎かった。愛した世界を守れなかった自分の無力さが。
憎かった。相手に弄ばれた自分の愚かさが。
憎かった。自分を信じてくれなかった仲間たちが。
憎い…あれだけ慕っていたのに裏切られたことが。
憎い…私の言葉に耳を貸そうともしなかった奴らが。
憎い…ここまで尽くした私を滅ぼそうとした奴らが。
憎らしい!私が救おうとして、裏切った奴らが!
憎々しい!私を騙したあの存在が!
あぁ、憎悪でこの身が灼かれてしまいそうだ。
そうだ!この憎しみをこの世界に返してやろう。
壊れてしまったのなら、もう構わないじゃないか。
一先ず、この身を癒すために地に堕ちよう。
そして時が来たら、思い知らせてやろう…
「それからずいぶんと時間がかかったものだ。」
薄暗い部屋に椅子があり、それに座する男が呟いた。
脚を組み、肘掛けに身体を委ねてフッと息を吐く。
オトガイに当てた手に己の吐息を感じ伏せていた瞼を開いくと、鋭い眼差しを前方へ向けた。
「必ず、必ずこの手でお前の息の根を止めてやる。
どこに隠れていようと必ず見つけ出してやるからな!」
そう言い放つと、男は声高らかに笑った。
暗くも広い部屋にこだまする男の笑い声。
その声は確かに笑っているのだが、何故か悲しみを感じさせていた。
場所は変わってとある洞窟の中。
さほど広くはないその場所で青い光が灯っている。
魔法による光は辺りを明るく照らした。
そこにあるのは3つの影。
そのうちの一つの影が話しかけた。
「遂にジルデミオンまでが倒れたのですね。」
その確認に相対する影が頷く。
「ええ。彼らはよくやってくれました。そのおかげで四大公の半分が倒れ、世界も半分が戻ったことになります。」
喜びを感じた伺いに対し、憂いを感じさせる返答であった。
その理由が分かる為、あえて感情を抑えて話を続ける。
「こうなると、戦いは佳境へ向かうことになるのですね。」
「そうですね。悪魔軍にとって最も強大であったジルデミオンの軍団が敗れた今、彼らを放っておくわけにいかないでしょう。先ほど悪魔王配下の軍団が召集され、南へと向かいました。
指揮官はディアールノ。」
それを聞いて驚きの声を返す。
「悪魔元帥!という事は悪魔王は本気だという事ですか⁉︎」
「…そのとおりです。」
すぐさま身を翻そうとした所を、呼び止められる。
「お待ち下さい。どこへ向かうおつもりですか?」
「当然、あの子たちの元へ。」
「お辞め下さい。貴女が行ってどうなさるのですか?」
そう言われるとどうにもしようがない事を思い出す。
悪魔たちをいくらか倒す事はできるであろうが、無事でいられる保証は無い。
何よりこの洞窟にいる理由は、悪魔から身を潜めるためにいるのだ。
「ですが、このままでは…」
せっかくの希望が失われてしまうと続けようとした所、相手の言葉に制された。
「厳しい戦いのすぐ後で苦戦は必須でしょう。ですが先ほどサインブラハッド大陸から大軍がナハトイデアールへと向かいました。」
「! エルフたちが動いたのですか?」
「そうです。彼らの駆るワイバーンが向かいましたし、更にはあの方もご自分で封印から出られた様ですね。」
更にもたらされた情報に大きく目を見張る。
「遂に出て来られたのですか!でもあの方には封印が……あぁ、そういう事ですか。貴女様もお人が悪いですね、ウフフ。」
「………あの方が戻られたなら心配は不要でしょう。ですが、それだけ時が迫ってきたという事です。」
そう言うと双方とも視線を残る一つの影へと向ける。
「この方のおかげで我々の計画は順調に進んでいます。だからこそ、私も覚悟を決める時が来たと言う事でしょう。」
「…はい、その時こそ最後の戦いとなるわけですね。」
「えぇ…そう願っております。あの方を止めて下さること。それを願いこの方には無理を申しました。」
そっと右手でその顔を覆う壁を撫でる。
「この方があの時、わたくしの言葉を信じて下さったからこそ、ここまで来れました。その恩と辛い思いさせてしまった償いとを必ずお返しします。だからもう暫しの間、お待ち下さい。」
静かに眠るように佇むヒトの女性が結晶の中にある。安らかに眠るその顔をじっと見つめた後、双方とも別れを告げてその場を去った。
それぞれの思惑が渦巻きながらヒトと悪魔の戦いは始まろうとしていた。
その先にどのような結末が待ち受けているのかは誰も分からぬまま、時は定められたままに流れていくのだった。
お読みくださりありがとうございます。
先月に間に合わず、月を越してしまいました。
申し訳ありません。
さて、今回は閑話という感じでお話を入れました。
世界にいる様々な思惑を少し書き込もうとしてみました。
あえて書いておりませんが、誰のことかは予想いただけると思います。
そして次回より最後の7章へ入ります。
ワオリたちの結末、どの様になるかを見ていただきたいと思います。
それでは今回はここまでに致します。
また次回もよろしくお願い申しあげます。




