語られし真実(姉と弟)
大きな戦いの後で休息するナチュラルフロンティアの面々。
そこでエフェメルからかつてこの世界に名を轟かせた英雄リオンについての真実が語られる。
「旅が終わって、リオン君とシーニャちゃんは生まれ育った島に戻りました。」
中央広場で食事をとっていたナチュラルフロンティアのメンバーたち。誰一人物音を立てぬ中で、みんなの視線を集めた暗い青の肌をした美しい女性が語り始める。皆に聞こえる様に風の聖霊が、彼女の声を広場一帯で響くようにしてくれているので、皆がこれから聞くことになる出来事に耳を澄ます。
「元々、二人で生活できていたわけですし、共にのんびりと暮らしたいという思いで世界とは離れて生活していました。
だけど時代は急変していきます。」
そう言った後、エフェメルの視線がドワーフたちに向かう。それに気づいてベントとドゥイがハッとして顔を見合わせると、観念したような表情をしながら頷いた。傍にいる若いバオは不思議そうな表情のままだ。
二人の同意を受けたエフェメルは皆を見渡しながら話を続ける。
「シュラハティニア大陸において亜人たちの城が現れると、そこを拠点に亜人たちの進攻が始まりました。
そして最初に進攻したのが南のドワーフの王国。詳しいことはご存じの事と思いますので省きますが、シュラハティニア大陸は亜人種の集落が多く、ゴブリンやリザードマンたちがその城へと集い、大陸は次第に亜人たちによって支配されていきます。
当然それを阻止するために世界中の各勢力が阻止に入ります。
各勢力の増援によって亜人たちを倒せると思っていたのですが、その一方で亜人たちが行っていたのが悪魔の復活でした。
亜人たちとの長い戦いで多くの血が流れ、それが触媒として悪魔たちを呼び覚ますきっかけだったのです。
気づいたときにはすでに強力な悪魔が呼び出され、次第に戦いは劣勢。そして悪魔は己の主人のためにその身を捧げることで、四大公であるパルドスが復活したのです。」
ここまでの話を聞く間、ほとんどのメンバーがその内容に頷いていた。ここまでは世界各地で共有されていた情報であり、幼かったワオリたちとドワーフたち以外は大した反応は見せなかった。
その最初の犠牲者であるベントとドゥイの表情は重い。悔しさを滲ませ、奥歯を噛みしめている。
「それじゃ、私たちが負けちゃったから世界がこうなっちゃったの?」
まだ幼かったバオは、祖父に連れられて生き延びたことしか覚えていない。その理由が今になって聞かされ、いつもの明るい朗らかな彼女の表情が固く緊張している。
その言葉にドゥイが慌てて言う。
「そんなことはない!確かにあの戦いで儂らは敗れたが、それとこれとは別の話じゃ。」
当時、戦いに出ていたドゥイは身体を震わせながら怒鳴る。共に戦った仲間たちが倒れていくのを見たし、共に死を覚悟して戦おうとしたドズイであったが、当時の王から頼まれ己の気持ちよりデコールとバオを守る使命を優先した後悔は今も残っている。
あまりの怒鳴り声にバオが泣きそうな顔を見せると、ベントがドゥイの肩に手をやり、ドンクに目で合図した。それを受けてドンクが泣きかけたバオを後ろから抱きしめる。
「バオ、あの戦いでみんな勇敢に戦ったんだ。出来る事をみんなが精一杯したんだから何も気にする必要はないよ。」
「でもぉ…。」
「バオよ、そう聞こえたならば猶更ワシらはここで皆の助けとならねばならん。だから過去よりもこれからの事をしっかり見据えるんじゃ。」
ベントが落ち着かせるように語る。
そんなドワーフたちの様子に呑まれて、周囲は重苦しい空気を抱き静まり返った。
そして語り部は言葉を紡ぐ…。
「その方の言う通りです。あの戦いが発端としても、その目的を誰も見抜いてはいなかったのですから。
先ほども言いましたが、当時亜人たちの狙いは多くの血が流れること。当然ゴブリンたちに自虐的思考はありません。ですがその血が悪魔復活の糧となるため、悪魔たちは信仰によって亜人たちを誘導し、自分たちの復活への足掛かりとさせたのです。
ヒトと亜人によって戦いが起これば、当然多くの血が流れる。その血によって悪魔たちの封印が次第に解かれたわけなのです。」
するとここで、ワオリが首をひねり、エフェメルに尋ねた。
「血が流れたら悪魔が出てくるですか?」
純粋な疑問に、エフェメルでなく横にいたウミミンが答える。
「あのねワオチャン、【血】というものは生きている私たちの体に、とっても大事なものなのはわかるよね?」
それに大きくうなずくワオリ。
「でもね、実際に血がいっぱいあるのを見たら、どんな気持ちになる?」
「うぅ~、あまり良い気持ちはしないですよ。」
「うん。とっても大切なものなのに、実際目の当たりにすると嫌な気持ちを抱いちゃうヒトいるよね。そうした思いから大量の血を浴びた大地は【穢れ】を引き寄せるものとされているんだよ。
やがてそれが魔物を呼び、更に魔物の出す瘴気によってヒトが住めない土地になってしまう。
だけどその瘴気を糧とするのが悪魔であり、瘴気をマナに変えて悪魔はこの世界で生きているんだよ。」
「へぇ~、そうだったですか~。」
ワオリだけでなく、聞いていた他のメンバーたちも納得した顔になり、ここまでの話に理解を示した。ウミミンの話でドワーフたちもとりあえずは座って話を聞く体制になる。
「ウミミンがお話してくれた通りで、戦わせることで多くの血を流させることが目的だった悪魔の陰謀に乗せられた結果、多くの悪魔をこの世界に呼び寄せてしまい、より巨大な存在のために己の身と魔力を捧げる悪魔たちによって魔王パルドスが復活してしまいました。
これによってシュラハティニア大陸は悪魔たちの領土となってしまいました。
それから悪魔たちは他の四大公を復活させようと各大陸の封印破壊に乗り出します。
この地も一度は退けたわけですが、大公が復活したことによって悪魔たちの勢力が強くなり、そこから4大公全てが復活するのは時間の問題でした。
数多くの町や村、また国も滅び去り、強者と噂された強いヒトたちが倒れ、最早後がないという時、ようやく各大陸の残った強者たちが魔王の封じられた【シールゾルダー】の祠へと集結します。
そこで魔王復活を阻止しようとするヒトの軍団と悪魔たちとの壮絶な戦いが起こり、リオン君やパァムちゃんたちはこの戦いに向かいました。
聞いた話によれば、リオン君は4大公の一角であるジルデミオンと互角に戦ったそうです。
でも相手は4大公。他のヒトでは束になっても敵わず、他の3大公によって魔王デュークが復活してしまったそうです。
魔王デューク。その力は強大で、リオン君は全く歯が立たなかったのでした。」
その言葉に騒然となる。あれほど強く、誰からも愛された英雄が何もできなかったという事実に、彼を知る皆が絶句する。
「信じられないでしょうけど、これは本当のお話。実際にその場でいた私が見てきたのです。」
パァムが語る。その小さな体に力を込め、悔しさや悲しみを精一杯飲み込みながら言葉を発する。
「リオンおにぃちゃんの攻撃が全く効かず、逆に魔王の攻撃は目に見えず、気付いたときには傷を負わされるという状況でした。
私たちも他の大公によって地面に横たわる中、リオンおにぃちゃんだけは何度も立ち上がって挑みました。
だけど…、」
パァムが何かを飲み込む様にして言葉を止める。その時の恐怖や悲しみに泣きだしそうになるが、今はそうすべきではないと自分に言い聞かせる。こうしてここに集ったヒトたちに真実を伝えなければと両手を握り締めた。
するとその両肩に手が置かれた。ハッとしてみると、エフェメルが優しく微笑んで見つめてくれる。その瞳にも涙が浮かんでいるのが、日の光で輝いているから分かる。だけど、見守ってくれているその存在にパァムは深く息を吐く。
「エフィーさんありがとう、大丈夫だよ。
…ん、大事なことだからちゃんとお話しします。
だけどリオンおにぃちゃんは一度も魔王に触れることも出来ないまま倒されました。
そして魔王が最後に止めを刺そうとしたところで、レッドドラゴン様が現れたのです。」
「おぉぉ!」
思わぬ展開に唸り声がする。期待を込めた声があれば、今の状況を察して悲嘆する者もいる。
「レッドドラゴン様はやはり強く、4大公の部下たちが束になって襲い掛かっても物ともせず叩き伏せられました。さすがに魔王と4大公は戦う事をしませんでしたが、その最中でレッドドラゴン様のおかげで私たちは逃げることが出来ました。
当然リオンおにぃちゃんも逃がそうとされていましたが、魔王はそれを許さず、私は逃げる最中でレッドドラゴン様と魔王が戦い始めたところまでを目にすることが出来ました。
そこから私は意識を失い、気づいたら北の村にて眠っていました。」
ここまで話し終えて、パァムは再び大粒の涙を瞳に浮かべる。意識を失っている間にポォムが己を顧みず逃がしてくれた。そして瀕死の自分を救うためにサーシェスがその命をもって救ってくれた。そして村の人々が懸命に自分を支えてくれた。
気持ちをしっかり持とうとするも、やはりそうした事実に心が揺らいでしまう。だからこれ以上のお話は出来なくなってしまったパァム。
それを察してエフェメルが後ろから優しく抱きしめる。
「はい、大変な時の事を思い出させてしまってごめんねぇ。そしてお話してくれてありがとう、パァムちゃん。
それでは再び私がお話しますね~。
んんっ(咳払い)、実はこの戦いのとき、私は参加せずにシーニャちゃんの傍にいました。
シーニャちゃんの居る島に二人でリオン君たちの無事を願っていたのですが、突如浜辺に何かが落ちてきた音に気付き、確認しに向かいました。
するとそこにはリオン君の姿があったのです。
でも、その姿はもはや生きているのが不思議なほどでした。
そしてシーニャちゃんが抱きかかえる中、リオン君は・・・。」
さすがに言葉を詰まらせて俯くエフェメル。その様子を察して驚きと悲しみが広場を覆う。
「あれほどの強さを持ったリオンさんが…。」
「俺たち、魔王に勝てるのか?」
様々な声が不安を交えて響き始める。良い雰囲気ではないと誰もが察するが、自分自身も抱いてしまった不安は払しょくできそうにない。
世界中に名を轟かせた英雄が全く太刀打ちできなかったという事実に、せっかく上がっていた指揮が落ちていく。
その状況にユズナは不安を抱き、傍にいるゼロを見るが、彼は腕を組んで瞳を伏せたままだ。
頼れるウミミンも何か考え事をしている様で話せる様子ではない。
(せっかく勝ってこれからという雰囲気が…)
竪琴を置いて聞き入っていたユズナは何とか空気を換えようと考えるが、自分自身もリオンには世話になっていた身だ。そのリオンが亡くなったという事実に心が折れそうになっている。
(ダメ、リオンさんの事は残念だけどここで折れたらもう戦えなくなっちゃう!)
何とか気持ちを持ち直し、竪琴を奏でようと手に取る。
だけど、気持ち揺らぐ中で何を奏でて良いかが分からず、ユズナは竪琴を抱きしめたまま動かなくなる。
(ダメ、ダメだよ!何かしなきゃ!何とかしなきゃ!)
気持ちばかり焦るユズナ。だけどこうした状況を覆せるほど経験も機転も今のユズナには足りなかった。
静まり返る広場。さすがに元気印のナッチョンも何も言えず、チラリと皆を引っ張る友に目を向けた。
そのイヌ耳の少女はというと、なぜかプルプルと全身を震わせていた。だけど俯いた顔からどのような感情を抱いているかは伺えない。
「ワオちゃん?」
そう尋ねた声に皆の視線がワオリに向く。その瞬間、爆発が起こった!
「フヌヌヌヌヌヌヌヌゥ~、ゆるちまちぇんよー!」
怒りで舌がうまく回らなくなったワオリが吠えた。
その様子に目を向けていた皆がビクッと身を震わせる。瞳を伏せたりしていた者も「何事か?」という表情でワオリを見る。
「リオンおにぃちゃまをいじめたとは何事でしゅかぁー!まったく、まったく、ホント悪い人がいたものでしゅね!
みんなを泣かしたりいじめるなんて許しちゃおけまちぇん!
こうなったらおちりぺんぺんで泣かせるでしゅよぉーーーーーー!」
その場で立ち上がって地団太を踏むワオリ。その怒った様子に周囲は呆気にとられ、広場では「プンプンでしゅよー」の声がこだまする。
すると突然笑い声があがった。普段は絶対に見せない大きな声で笑うゼロ。その姿に周囲の皆がさらに驚いた表情をする。
そしてウミミンがニコッと笑い、ワオリに肩に手を置く。
「はいはいワオちゃん、今はその怒りを貯めて魔王と会ったときに爆発させようね。ほら、ゼロさんも笑わないで。」
「でもウミミお姉ちゃま、そのまおーっていうヒトは悪い子でしゅよ!おかあしゃまが言ってまちたよ、悪い子はおちりぺんぺんして反省させるって。」
(魔王を相手に悪い子って…そもそも魔王はヒトじゃないニャ)
隣で見ていたじょんじーがポーカーフェイスのまま心でツッコむ。それを意識共同体であるみぃちゃんが察して肉球で「しっニャ!」と黙らせるジェスチャーを送る。サンゴは食事にまっしぐらだ。
「うんうん、だから会った時にお尻を何度でも叩いちゃいなさい。だから今はお話の最中なんだからね。」
「あ、そうでした!エフィーさん続きをどうぞですよ。」
思い出したかのようにそう言って席に座るワオリ。すっかり先ほどまでの怒りは収まっており、そのマイペースぶりにゼロだけでなく、皆から笑いが起こった。
「はっはっはっは、さすがリーダーだぜ。」
「全く面白い子だねぇ。」
「さすがはワオリ様です!」
「おぅ、俺たちは悪魔たちと戦えるんだ。このまま魔王も倒そうぜ。」
「あぁ、俺たちならやれる、ワオリ様と一緒にがんばろう!」
さっきまでの暗い雰囲気を一気に覆し、その場にいる皆が沸いた。
「リオンさんには悪いが、魔王は俺が倒す。」
賑わう中でそっとゼロが呟く。その声を聞いてユズナがハッとするが、ようやく自分の心も軽くなったことで、自然と竪琴を奏で始める。
その曲に驚いた表情だったエフェメルとパァム。やがて二人は顔を向け合うと、穏やかな笑みを浮かべ合い、エフェメルは語りを再開した。
「途中で空気を悪くしてごめんなさいね~。でも、さすがは大公パルドスを倒したメンバーですね。私も、ここに来た甲斐があるというものですよ~。
それでは話を続けますね~。というか、ここからが大事なところとなります。皆さん、しっかりと聞いて下さいね。
コホン・・・、この時リオン君は確かに命を落としました。そしてシーニャちゃんと私は深い悲しみに号泣しました。あの時の悲しみは今も忘れられません。
だけど、そこである人物が現れたのです。」
思わぬ展開に皆が息をのむ。
「涙する私たちの前に現れたのはある女神でした。いえ、正確には女神だった方なのです。
今はその方の事を詳しくお話しできませんが、その女神様と私たちはある契約を結びました。」
「契約?」
ウミミンが呟く。それに頷きで答えるエフェメル。
「そうです。その契約のためにあまり詳しくお話しできないのですが、これによってリオン君の魂を救うというものでした。」
「リオンさんは生きているのか?」
ゼロが身を乗り出して尋ねる。それに頷きが返されると、ゼロは喉を鳴らして聞き入る。
「リオン君は生きています。そして今も戦っています。」
それを聞いて湧き上がる集団。諦めていたところでこの言葉がどれほど嬉しく、心強いものなのかは皆の嬉しそうな顔を見れば確かだ。
「ですが、それと引き換えになったことはいくつもあります。皆さんはご存じですか?この世界には命を復活させるという事がどれだけ大変なことであるかを。」
この問いかけに皆が面食らった表情になる。ユズナに至ってもかつてエルフ女王セルディアから教えてもらったことがある。
「よいか?ユズナ。この世界は様々なマナ(魔素)で満ち溢れ、それをうまく操ることでどのようなことも出来るようになる。それが魔法というものじゃ。
されどこれだけは覚えておくのじゃ。
【命】というものだけは如何なる魔法を用いても蘇らせることは出来ぬ。それはこの世界の規則を壊す行為であり、決して世界から許されぬものじゃ。だから命だけは大事にせねばならぬぞ。」
「そういえば、この世界は命を蘇らせる事は出来ないはずですよね。」
セルディアの教えを思い出してユズナが言う。するとそこにウミミンが付け加える。
「そうだね。この世界は命の復活に関しては厳しく、死によって魂は新たな場所へ導かれるとされているの。だからマドカさんも星となってワオちゃんを見守ってくれているんだよね。」
そう笑顔を向けるとワオリは得意げに、鼻息をフンフンさせながら言う。
「そうなのですよ!おかあしゃまはお星さまとなって、そしてこの町の樹にもなってあたちたちを守ってくれているのですよ。」
そんな微笑ましい姿を見てからエフェメルは答えを告げる。
「はい、その通りですね~。この世界は死を迎えると新たな姿や形となって転生すると考えられています。だからその流れに反する行為である『命を復活させる』ことは『禁忌』とされています。
ですが、かつて神話の世界ではそれが許された方もいたのです。
そしてその女神さまは一度だけそれが使えると仰り、リオン君の魂を救って下さいました。」
「おぉ~!」
歓声があがる。皆が期待を寄せる中、エフェメルの表情は重い。
「ですがそれだけの魔法を行うという事は、それだけの対価価値が必要となります。
魂を蘇らせるためには同等のもの…すなわち命を分け与える必要がありました。」
ここまで聞いてウミミンがハッとする。同じく複数名の者たちが何かを感づいて歯噛みする。
「当然ダークエルフである私ならばと考えていました。
ですが、それをシーニャちゃんが許してくれませんでした。
彼女は言いました。
「エフィーさん、エフィーさんは戦えるし長く生きられる。だからもしもリオンが困った時は助けてあげてほしい。私は戦えないし、長く生きられないから、私の分までエフィーさんが一緒にいてあげて。」と…。」
シーニャを知る面々が驚きの表情で顔を固め、そしてその瞳から涙を溢れさせる。
他人のため、己を犠牲にすることを厭わない優しいヒト。
暖かく、心を包んでくれる愛情を持ったヒト。
医者として世界最高の知識と技術に崇高な心を持った女性。
どれだけのヒトが彼女に助けられたことか…。
「私にはシーニャちゃんを止められませんでした。そしてそれほどの魂だからこそ、ドラゴニクスであるリオン君を救ってあげられたのです。
その言葉を聞き入れて、私は後を任されました。そしてシーニャちゃんの魂によってリオン君は復活しています。」
歓喜沸いた広場だったが、流石にそうした空気ではいられない。ある意味、リオンよりも世界で愛されたのはシーニャの方である。
島で生活しながらも、大変な患者がいると聞けば世界を旅し、ゼロに然り救える命があれば可能な限り難しい手術を施したり、未知なる難病の研究をしていた彼女によって、医学の進歩は凄まじい程に進歩した。
特に魔法を組み合わせることで、今まで不治とされていた幾つもの病気を完治させることに至ったことは、世界の発展にも繋がる偉業である。
そんな世界を救ったと言って過言ではないシーニャがいなくなったと聞かされて、喜べるヒトはいないだろう。
そんな中で、エフェメルは右手人差し指を自分の顔の前で立てて語る。
「一応はっきりとさせておきますけどぉ、シーニャちゃんは死んじゃった訳ではありませんからね~。」
「「「え?」」」
しんみりした中で一同が同時に面食らったような声をあげた。
「さっき言ったじゃないですかぁ~「魂を分け与える」って。
なのでシーニャちゃん自身は死んでしまったわけではありませんよ~。」
それを聞いて一同がどっと疲れた風に体に力を抜いた。
中には「何だよ、驚かせないでくれよ」呟く者もいたが、ウミミンがそこで尋ねる。
「だけど、普通に生活できないんでしょ?魂を分け与えるという事は、寿命もそうだけど活動自体も制限されてしまうはずだよね?ましてやリオンさんほどの生命力、いくらすごいと言われるシーニャさんであっても、ヒトだから大変なんじゃないかな?」
「さすがウミミンですね~。言うとおり、魂を分け与えた後、シーニャちゃんは意識を失い倒れました。かなりの負担が彼女を襲い、生きてはいますが目を覚ますことは出来ない状態です。
そんなシーニャちゃんを放っておくわけにはいきませんから、シーニャちゃんの身体はとある場所に封印しています。女神さまによって魂を分け与得る前にそうなるであろうとその方から言われていましたから、シーニャちゃんは自らの願いで封印しています。そして今その封印された体の在処は私と数名しか知りません。」
話を聞くだけのはずが、前もって言われた通り、一切の気を許さない状況となった。
ある程度の予想はしていたが、喜びも悲しみも織り込んで重要な話を聞かされた面々の思いは複雑だ。
その中でワオリが手を上げる。
「はいワオリちゃん。」
名指しするエフェメルにワオリは立ち上がってこう尋ねた。
「それで、リオンおにぃちゃんは今どこにいるですか?」
お読み頂きありがとうございます。
少し遅くなりましたが、まずは一番気になりそうな所を書き上げてみました。
最初、単にエフェメルの話を綴るだけで書き上げていたのですが、聞いている面々が大人しく聞き入るだけなど考えられないと思い、このような形としました。
まだ話は途中で、ちょうどキリが良いと思いここまでの短い文とさせて頂いております。
一先ず、本文にもありますが、リオンとシーニャは生きております。
ただ、本来のままというとこれはどうか?と思われる形となっております。
そこはまた次回書き込むことと致します。
とりあえず、ワオリが如何に我が道を行くかという事を知って頂けたなら何よりです(笑)
今回は短い分、次回は早い段階でお見せ出来ればと考えております。
リオンが今どの様に戦っているかを次回は書くと共に、新たな舞台を少し見せる事にもなる予定ですのでお待ちくださいませ。
それでは今回はここまでに致します。次回もどうぞよろしくお願い申し上げます。
ようやく春めいてまいりましたが、世界は未だに慌ただしいですね。
世界の情勢に然り、コロナに然りと新たな生活を過ごされていると存じますが、
どうか適度な緊張をもって、無理はせず頑張って参りましょう。
こうして折を見て物語を書きながら生活させて頂いていることに、感謝しております。
それでは次回まで失礼いたします。




