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The Law of the World  作者: k2taka
第2部
82/93

時空魔法(第2次ライディン防衛戦)

北門にて、巨大な悪魔が消えた。

それと同時に、恐怖を巻く存在が現れた。


一方のライディン中央部では、十分に戦うことの出来ないナッチョンたちを凶刃が襲う。

 それより少し前にもどる。そこはライディンの町中央部。そこでナッチョンが胸に刃を受けて倒れる瞬間、周囲一帯を不思議な光が包んだ。

 死を覚悟したナッチョンたちであったが、その光によってみるみるうちに受けた傷が消えていく。

「何事でござる?」

 確かに殺したと思った矢先、その者たちの傷が消えていく状況を見てジュニュキールは分身を解いて用心する。

 こんな魔法は聞いたこともない。唯一これほどの回復魔法を使う者がいても、それはこの場になどいないはずなのだ。

 だから信じられぬ程の回復術を目の当たりにして、シノビは最大限に警戒を強める。

「あなたのした事を無かったことにさせてもらいました。」

 声を聴いて視線を向ける。すると大通りの向こうから杖を天に翳し、左手を突き出したまま歩いてくる少女の姿があった。

 その姿は前回の戦いで自分たちに大きな被害を及ぼし、仕留め切れなかった今回のターゲット。

 ジュニュキールは即座にその命を絶たんと動く。刀でその首を狙うが、突如横から黒いモノが襲い掛かり、その一撃を咄嗟に刀で受ける。そして今度は白いものが下から捕まえようと腕を伸ばす。その攻撃から身を翻し避けると、更に三種の色を有したモノが襲い掛かってきた。

 強力な打撃が襲い掛かり、避けようのない状態で防御を固める。突き込まれた拳に地面へ倒されるが、即座に身を転がして態勢を作る。

「獣でござるか…。」

 攻撃してきた三体の猫たちに視線をめぐり、改めて主であるウミミンを見据える。

「この子達がいるから、そう簡単にはやられないよ。」

 互いに臨戦状態で睨み合う中、ウミミンが叫ぶ。

「ナーゼちゃん、攻撃じゃなくみんなを守って。ナッチョちゃんたちは警戒のままその場にいて。下手に動くと攻撃されちゃうからね。」

 傷のない体となったナーゼたちが、驚きの表情ながらウミミンの言うとおりに身を固める。皆、傷が治ったというかもともと傷など負っていない状態で立っている。

 それを見てジュニュキールは悟る。

「貴殿、時空魔法を使えるでござるか?」

「じくうまほう?」

 聞き慣れない言葉にナッチョンが首をかしげる。するとそれを聞いたディアが驚いた顔でウミミンを見つめた。

「なんですって!本当に扱えるのですか?」

「ディアちゃん解説お願い。」

 興奮したような表情のディアに、ナッチョンが上手く流れをまとめながら促す。

「ええ、魔法とは本来六つの系統があるとされていますの。

 攻撃的な「破壊魔法」、状態異常などを回復させる「救済魔法」、一時的に身体能力を高めたりする「補助魔法」、生活などで明かりを灯したりできる「変性魔法」、相手を惑わせるための「幻惑魔法」、そして私たちみたいに精霊などを使役する「召喚魔法」の6つが基本とされていますの。

 そしてこれ以外でも実際に扱うことは出来ないけど存在するとされる「回復魔法」と「時空魔法」という二つがございますの。

 回復魔法はその生物が死んでいない限りに傷はおろか体力までも完全復活させる「ヒーリング」などがあげられますわ。

 そしてもう一つの「時空魔法」。これは時間や空間を操る魔法とされ、神話の世界でのみ存在するとされていますの。

 この魔法についてはその位しかわからず、実際に使われることなど誰も見たことはありませんわ…。」

 いまだ驚き覚めぬディアの言葉に、みんながウミミンを見る。そしてナッチョンが顔を向けて言った。

「でもウミミンが使ったみたいだよ?」

「ですから、信じられないのでございます。誰も見たこともない魔法だけに、それがどのようなものかも分かりません。だからこそ、私は驚くしか出来ないのでございます。」

 するとナッチョンはイマイチ納得できていない様子で、ウミミンに話しかけた。

「ウミミン、時空魔法使ったの?」

 敵を前にして緊張感の無さはこの上ないが、気になることは聞かずに居られないのがナッチョンである。

「神樹があるおかげだよ。攻撃を受けてすぐの状態だったから、みんなの体の時間を巻き戻させてもらったの。」

「分かったぁー、ありがとうウミミン!」

 あっけらかんとお礼を言うナッチョン。そこにディアが半ば呆れた顔でナッチョンを見る。

「世紀の大発見なのですわよ!そんな悠長な感じでいられますわね。」

 魔法に通じるディアだけに、今の状況に困惑している。だからこそ、ナッチョンの態度に合点がいかず、きつい口調になってしまった。

 だけどナッチョンは普段通りに言葉を返す。

「う~ん、そりゃすごい魔法なのはわかるんだけどさぁ、ウミミンだから出来ちゃうって思っちゃうんだよね。

 それに、何よりもこうして生きてられるのはウミミンのおかげでしょ?だったらちゃんとお礼言わなきゃね。」

 そう聞いてディアたちは興奮していた自分の気持ちを落ち着かせることができた。そう、自分たちは救われたのだ。ならばそれに対してお礼を言うナッチョンが正しいと気づく。

「…そうでしたわね。ウミミンさん、ありがとうございました。

 そして声を荒げてしまって申し訳ありませんでした。」

「良いってことだよ。私だってすっごい食材とか目の前にあったら同じことしそうだし。」

 そんな和やかな雰囲気の中、ナーゼが上から声をかけた。

「まだ戦闘中。気を緩めないで!」

 注意されて慌てて気を引き締めなおす一同。その間にもウミミンの猫たちがジュニュキールと激しく戦い合っていた。

 三体の連携でジュニュキールを襲う。もっとも素早いじょんじーが牽制し、さんごが繰り出される攻撃全てを弾き守る。そして隙あらばみぃちゃんが攻撃を繰り出すのだが、互いに有効なダメージを与えることなく時間は過ぎる。

 ウミミンは時に繰り出される飛び道具を花弁で防いだり、蔦を絡ませようと補助的な魔法を唱えるが、それでもこのシノビを倒せずにいる。

 それだけジュニュキールは強力な悪魔であり、互いに攻めあぐねていた。


 そんな時だ。突然周囲の空気を震わせるような叫び声が聞こえた。それにいち早く反応を示したのがウミミンであり、それが一瞬の隙になる。

 ジュニュキールは懐からナイフを取り出すと、それをウミミン目掛けて放った。数は三本。

 そのうち二本はサンゴによって弾き落されたが、一本だけ色の違うナイフは一直線にウミミンへと向かう。

「あぶないっ!」

 ナーゼの声で咄嗟に魔力に盾を張るウミミンだが、そのナイフはウミミンの右肩に深く刺さる。途端にウミミンの体にしびれが走り、力が抜けたように倒れた。

「ウミミン!」

 そうなっては猫たちも主人を心配して動きが止まる。その間に三体とも蹴り飛ばされてしまう。

 体がしびれるウミミン。ナイフにしびれ薬を塗っていたことを知り、直ちに体内の調査を行う。

 でもその間は身動きできず、横向きに倒れた視線の先で、紅い悪魔が刀を抜きながら迫ってくることに気づいた。

「一瞬の隙が命取りとはまさにこの事でござるな。」

 その状況にナーゼたちが動こうとするが、それを牽制するようにジュニュキールが影縛りの術をかけた。

 ひとかたまりで留まっていたため、身動きできない一同。

「お主らは後で始末する。おとなしく見ているでござる。」

 そしてウミミンの元まで来ると、じっと見降ろしてから両手で刀を握る。

「貴殿は惜しい能力を有してござるが、それ故に危険な存在にござる。お命、頂戴いたす。」

 そう告げて刀を振り下ろす。さすがに体を動かせないウミミンも死を覚悟した。

 見ているしかできない一同から悲鳴があがる。


 その振り下ろされようとする刀が、突如軌道を変える。ジュニュキールの頭部に向かって風の刃が襲い掛かったからだ。

 それを両手で持った刀で弾く間に、ウミミンの周囲の地面が波立ち、それに飲み込まれてウミミンの姿が消えた。

「何奴?」

 邪魔をされて歯噛みするジュニュキールが刃の飛んできた方向へ視線を向けた。その先は建物があり、屋根の方を見ても人影など見当たらない。しかしシノビである紅い悪魔は、即座にその場所を見破る。

「そこっ!」

 建物と建物の間の狭い影。とてもヒトが通れそうにない場所目掛けてナイフを飛ばすと壁に刺さり、同時にその周辺の風景が歪んだ。

「あちゃぁ~、ばれちゃいましたかぁ~。」

 ゆったりとした女性の声がした。妙に間延びしたその声と共に、影の中からヒトの姿が浮かび上がる。汚れた白いコートを羽織った長身の女性。

 濃い青色の肌にパールサンド色の長い髪を揺らしながら、右手をナッチョンたちの方に向けた。

 すると地面が盛り上がり水のように土が引くと、先ほど大地に飲み込まれたウミミンがそこに現れる。そして動けなくなっていたはずのしびれ薬の効果も消えたのか、すぐに起き上がったウミミンは、杖を両手で構えると現れた女性に礼を述べた。

「助かりました、ありがとー。」

「は~い、後でモフモフさせてくれたらいいですよ~。」

「…じょんじーを貸します…。」

 しぶしぶといった風に答えるウミミン。そして戻ってきた猫たちの中、じょんじーが珍しく驚いた表情で体毛を逆立たせた。

「フッフッフ~それはもう、十分なお返しですねぇ~。やる気出てきましたよ~。」

 舌なめずりをしながらじょんじーへウインクを送ったのは、妖艶な色気を持つダークエルフだ。その姿を見てディアとリプスが目を見開き、声を揃えてその名を叫んだ。

「「エフィーっ‼」」

「は~い、ディア、リプス、ひさしぶりですね~。」


 かつてダークエルフの集落でもひと際美しいと評判だった少女がいた。しかしその内面は集落ではかなり変わっており、一度集落からいなくなった時期があった。

 それから数十年たって戻ってきたが、すっかりヒトの生活に慣れたそのダークエルフは再び集落から飛び出していった。

 それでも時には顔を出しては村長たちと話したり、ディアたちと一緒に遊んでくれたこともあった。

 一言でいえば人懐っこい性格で間延びした独特の口調で話すそのダークエルフの名は『エフェメル』。

 かつてこのライディンの町において『リオン』『シーニャ』に次いで知られている名前である。

 そう、リオン達と共に世界中を旅していたあのエフェメルが現れたのだった。


「さてと~、あまり時間はかけられませんからね~…。」

 緊張感に欠けるような発言だが、言い終えるや否やその姿がつむじ風を残して消える。

 ナッチョンやバオにしたら文字通り、『姿が消えた』と見えた事だろう。

 しかしその姿は音と共にすぐ確認できるようになった。

 ジュニュキールの目の前まで肉薄すると、手にある細い刀で斬りかかっていた。それを自らの刀で防ぐ赤い悪魔であるが、互いに僅かな距離の中で刃を交え合う。

 姿は見えていてもその刃は見えず、二人の腕は余りの早さで見えず、叩き合う金属音が鳴り続く。

 今まで見たこともないエフェメルの戦闘に、かつて遊んで貰っていたリプスなど目を丸くして驚いている。

「まさか、エフィーがあんなに強いなんて!」

 リプスのちょっとした呟きに、バオが漏らす。

「お爺ちゃんから聞いた話だけど、隠密ギルドの副長は凄腕のダークエルフだって言ってた。」

 そう言い終えた時、目の前にいるウミミンが杖の先で地面を叩いた。

 それによって叩かれた地面から1mほどの土柱が立ち、エフェメルたちの方へ向けて次々と土中が立ち並んでいく。

「エフィーさんっ!」

「はぁーい!」

 刃を交え合っていたエフェメルが背後からの声に応じると、さっと後方に飛びのく。

 同時にエフェメルのいた場所に土中が立つと、柱が割れて無数の蔓がジュニュキールに襲い掛かった。

「フンっ!」

 逃れようにも蔓の勢いが速く、刀で斬る手段を選んだ。

 だけどその選択は間違っており、蔓は刃に振れると包み込むように絡めとり、そのままジュニュキールの体を縛り上げる。

 『空蝉』という技で逃れようと試みるが、蔓はウミミンの魔力によって変幻自在であり、当然ジュニュキールを捉えて逃さない。その腕に絡みつくや否や、瞬く間に蔓は悪魔の全身に伸びて巻き付いた。両手両足はおろか、顔だけを残して体中を縛り上げる蔓。

 空中で蔓によって大の字に縛り上げられたジュニュキールは、周囲を見回してから出せない吐息を漏らす動きを見せた。

「さすがにこれは抜け出せぬでござる…、無念。」

 そう言った後、その身体は次第に霧と化す。その魔力を巻き付いた蔓が吸い上げており、魔力が切れた髑髏はこの世から排除された。


 紅い悪魔が消え去ると同時に蔓は枯れて大地に戻る。そして周囲の無事が分かると、ディアとリプスがエフェメルの元に駆け寄って行った。

「エフィ・・・?」

 募る話でもと思ったそこでエフェメルが左手を突き出して止める。せっかく再会できたのだからと怪訝に思った二人であったが、即座にその異変を感じ取った。

 エフェメルの見つめる北の方角で、凄まじいほどの存在が感じられた。それは魔力に似た圧倒的な力を有し、同時にその周囲にいる者達の生命力がじわじわと小さくなっていく。

 このままでは生命力を吸われて死んでしまうと感じたディアの目の前で、ウミミンとエフェメルの姿が消えた。

「あれ?さっきのヒトは?…ウミミンもいなくなってる!」

 ナッチョンがキョロキョロと辺りを見回しながら言うと、ナーゼは北門の方を見て語る。

「二人は北に向かって移動している。」

「あっちで何か起きているの?」

 非戦闘員であるバオでさえ、その異常さを感じて震えながら尋ねる。そんな振るえる肩を抱きながらナッチョンは北を見る。

「かなり強い相手がいるみたいだね。

 でもウミミンたちも行ったし、何よりワオちゃんがいるんだよ。きっと大丈夫!」

 その言葉にバオは薄ら笑みを浮かべる。自分たちの安全のためにリーダーであるワオリや戦闘部隊のみんなが頑張っているはずだ。

 だからきっと大丈夫だと信じようとする。

「戦いは任せて、私たちは出来る事をやろう!まずは片付けだね。」

 ナッチョンが声を掛けてそこに居る面々で散らかった周囲を片付け始めた。そしてナーゼも近くに隠れていた者たちを呼び集め、再び食事の用意に取り掛かる。

 でもみんな言葉にはしないが、心の片隅でその異常な状況を感じていた。その恐怖を与える存在が、自分たちにとって最も親しみあるリーダーの気配と似ているという事を。


お読み頂きありがとうございます。

夏が終わって寒くなって参りました。コロナだけでなく、インフルエンザや

普通の風邪にも注意しなければなりませんね!


さて今回は、ライディンの町内部のお話を一先ず終わらせるため、短い内容でお送りしました。

実際はもう少し長い本文を用意しておりますが、区切りよい所でと思ってここまでにしております。


そしていよいよ、あのニコニコお姉さんが再登場しました。

ここから第1幕に出ていたヒト達を少しずつ出していく予定です。

当初の予定通り、ここではエフェメルに登場してもらった訳ですが、あの頃よりも更にレベルの上がった彼女です。

そして彼女は常にリオン達の傍にいたわけですが、今回の登場でその辺りの事も書いていこうと予定しております。でも先に北門の方及び、今回の戦いを終わらせなければなりません。そのため、もう少しお待ちくださいませ。


一先ず短いながらも続きを掲載出来ました。今月末には、また掲載できればと思っております。

これからラストに向けて物語が動く予定です。

拙い物語ですが、お読み頂けることを嬉しく思いながら筆を走らせております。

次回もまたご覧頂ければ幸いです。


それでは今回はここまでに致します。

寒くなって参りました。皆様どうぞご自愛くださいませ。

では失礼いたします。

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