表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
The Law of the World  作者: k2taka
第2部
77/93

凶獣 ヴェルフェゴトン(ウェドノ火山の戦い 後編)

惑星エアルス。神々が作り上げた光天歴は1000年を迎えて終わり、新たな時代は悪魔たちによる魔天歴へと変った。


そしてワオリたちの活躍によってシュラハティニア大陸が解放され、世界は悪魔や亜人たちを倒そうと動き始める。

そして時は経ち1008年。


ノルズウェッド大陸北部のウェドノ火山地下にあるドワーフ族の故郷にて、悪魔大将軍の一人 アンチェシルヴの手によってドワーフ達も倒れる中、目的であったドワルブ城に眠る古の兵器を起動できた。

 それはかつて栄えた超古代似て作られたヒト型決戦兵器であり、その戦闘力は悪魔四天王に匹敵するほどであった。

その強力な力の前にヴェルフェゴトンが真の姿を現したのだった。

 火山近くの地底において、怒号が響く。重く憎しみのこもった叫びをあげるのは体長10m弱の黒き怪獣。大きな口を広げて放たれた咆哮は相手を威圧するほどの魔力が込められた『ショックカノン(咆撃)』だ。

 その怒りの咆哮に大地は揺さぶられ、脆くなった建物は崩れる。

 一方の白き騎士はキシキシと正面からの咆撃を真正面から受け止め、即座に相手の能力を調査し始める。怪獣となったヴェルフェゴトンの体長と推定質量。角や牙などの注意箇所。そして現在受けている攻撃に関するデータおよび被ダメージのチェック。

 様々なデータを常に算出し次の動作を計画すると、白い騎士は正面へと突っ込んだ。迷いなく全力で踏みだした右足に左足が続く。巨体とは思えぬほどの突進力に、上空から見ているアンチェシルヴは目を見開く。

 だけど怪獣もまた、予測していたのか突っ込んできた騎士へと右腕を突き出した。

 相手を止める為ではなく、相手の突進力を利用した張り手だ。

 だがその攻撃を予測していた白い騎士は更に速度を上げると左に躱す。ヴェルフェゴトンの右わきに入り込むためだ。突き出された右腕を避けると、ガラ空きとなった脇腹へグッと握った左拳を突き入れる。

 硬い鱗に覆われたヴェルフェゴトンであるが、白い騎士の拳も硬度を有しており、更に突っ込んできた速度を乗せた攻撃は十分にダメージを与えた。

「ゥガアアアアアアアアア!」

 思いも寄らなかったダメージに怪獣が吼える。だが、即座に張り出していた右手を払うように振り回した。致命傷ではないが、随分と久々に感じる痛みを与える敵を寄せておくなど愚かである。払い除けようとした動作に、白い騎士はまたも反応よく後ろへ飛び退く。掠りもせずに引いた騎士を正面に見据え、ヴェルフェゴトンは改めて身構えた。

 固唾を飲んでその様子を観察するのは、ただ一人の観客であるアンチェシルヴだ。上空から眺めているが、気を抜けば二人の戦いに巻き込まれてしまう緊張感がある。

 負傷したヴェルフェゴトンだが、すでに魔力によって傷は修復している。膨大な魔力を持つだけに、負傷への大した心配はない。

 しかし相手に対しての不安は大きい。自分では太刀打ちできなかった古の巨大兵器。ドワーフの城の隠し扉の向こうから現れたが、その戦闘力は悪魔の中でも上位にいる自分を凌駕し、トップクラスのヴェルフェゴトンに肉薄している。

 鉄よりも硬い素材で作られ、動きは本来のゴーレムよりも生物の動きのように滑らかだ。故に単調でなく動きに強弱を感じる。

 そうなると攻撃予測が立てづらく、避けるのが難しくなる。

 ゴーレムというと強力だが鈍重な動きをイメージする者がいるが、この白いのはスマートな印象で、それでいて素早い。そしてその威力はヴェルフェゴトンへダメージを負わせられるのだから脅威と言うしかない。

 悪魔はその身に様々な結界や障壁を張っており、当然魔力だけに限らず物理的なダメージに対しても防御は働く。悪魔同士の戦いではその結界・障壁を解除させてダメージを与えるのだが、上位の者になるほどに様々な効力が何重にも重ねられていて、レベルが違えばその結界・障壁を崩す事も出来ずに倒されてしまうのだが、ダメージを与えるという事はその者の魔力値と同等以上の魔力を有していると考えられる。

 悪魔は魔力によって生存している。言わば悪魔の戦いは魔力を削り合う戦いだ。

 そんな強敵に、ヴェルフェゴトンが次なる攻撃を開始した。


 怪獣の目の前に魔方陣が浮かぶ。魔力を放つための発射口で、そこから槍の形をした巨大な炎が撃ち出された。

 うねる様な勢いある炎の槍は一直線に白い騎士へと向かう。

 速度のある槍を白い騎士は広い空間のある左へ難なく躱すが、次の瞬間、躱された槍は白い騎士目掛けて爆ぜた。爆発と共に、無数の炎の弾が白い騎士を襲う。

 突然の変化であったが、白い騎士は更に距離を取ると、躱しきれない炎の弾に対して障壁を展開して防いだ。

 一方、躱された炎は廃墟に降り注ぎ、町を燃やし始める。潤いのない寂れた町は瞬く間に炎に覆われ、辺りは火の海と化した。

 白い騎士は即座に熱遮断の障壁を展開する。同時に周辺の状況を分析しつつ、目の前の敵の動きを注視した。

 ヴェルフェゴトンに至っては炎に囲まれようと、己の身を覆う鱗によって全く影響はない。そして炎の海と化した中で、再び白い騎士に向かって突進した。相手が障壁を持っている以上、魔力の打ち合いは全く役に立たないと察したからだ。

 ふわりと浮いたと思った瞬間、物凄い勢いで白い騎士へと頭から突っ込むヴェルフェゴトン。警戒していた白い騎士は、その突進を避けるではなく迎え撃つ体勢をとる。相手を行動不能にするためには、肉弾戦しか方法がないからだ。

 巨大な質量に速度を加えた突進が、両腕を胸の前でクロスさせた白い騎士とぶつかり合う。激しい衝突音と同時に衝撃が発生して、周辺にあった火の海は消し飛ぶ。

 怪獣をクロスした腕で防いだ白い騎士だが、ズズズッと地面を削りながら後退りさせられた。

 しかしそれを受け止めた瞬間にすぐさまクロスの内側にあった右腕を旋回させ、その顔面に拳を叩き込む。

 一方のヴェルフェゴトンも突進の勢いを以って右腕を突き出した。

 大きな鈍い音がして、両者の顔に双方の右拳が撃ち込まれた。白い騎士のマスクはへしゃげ、ヴェルフェゴトンの顔は潰れる。

 しかしそれを気にもせぬまま、互いの左腕が相手の顔を穿つかのように突き出された。

 グシャッと言う音を立てて互いの顔が陥没する。

 そんな損傷を受けつつも、互いに攻撃の手は緩めない。白い騎士は損傷を無視したまま動き、ヴェルフェゴトンは即座に負傷部位に魔方陣が現れて魔力によって再生していく。

 白い騎士も、損傷を回復させることは出来る。しかしそのためには大量のエネルギーを回復に専念しなければならない。戦いながら回復するという事は出来ても、行えばエネルギー切れを即座に起こしてしまう事は明らかだ。

 ヴェルフェゴトンに至っては大量に所有する魔力を用いて回復と攻撃を繰り広げている。こちらも有限であるため、早い時間で相手を滅する必要がある。

 お互いが短期決戦を望む中で選ばれたのが至近距離での肉弾戦。互いの魔力と意地によるごくシンプルな殴り合いが繰り広げられた。

 攻撃の一つ一つに相手の障壁を解除させるための魔力を纏わせている。更にダメージを与えた個所には、回復遅延の効果を付与させる。

 単純な殴り合いの中で高度な戦術が盛り込まれており、明らかに高次元な殴り合いが繰り広げられていた。


 アンチェシルヴは固唾を飲んで見つめる。その激しい戦いに自ずと興奮してしまう中、激しい戦闘音をも掻き消しそうな程重く響く音を耳にする。

「何の音…?まずい!」

 彼女が耳にしたゴゴゴゴという腹の底に響くような思い音。それは何かが勢いよく流れようとしている音だ。

 王国はウェドノ火山の地底に存在している。その近くにはマグマが流れており、そのエネルギーを用いて王国は反映してきた。つまりこの音はマグマが活性化している音であり、それが何を意味するかは容易に考えられる。

 活性化した理由は、そこで今も強力な二体の魔力が激しい戦闘を繰り返したことで、ずっと静かだった地底エネルギーが活性化させてしまった訳である。

「ヴェルフェゴトン様っ!火山が噴火いたします。」

 思わず叫んだアンチェシルヴだが、目の前の敵を打ち倒さんとしている最中だ。それに気を向ける余裕などない。

 一方で白い騎士が飛び出してきた辺りから激しい警報音が鳴りだし、王国全体にその危険を知らせる警報音がこだまする。

 当然その管理下に置かれている白い騎士は、事態を感じ取って退避行動を迫られた。

 己の意思で戦うものとそうでないもの。そこに決着が喫した。

 ほんの一瞬白い騎士の動きが鈍る。予め用意されていた過去の命令に捕われたため、攻撃が緩んだ。

 そこを見逃すはずも無く、ヴェルフェゴトンは右腕を大きく振りかぶり、その体に叩き込んだ。

 強力な攻撃に白い騎士の身体が後方へ反らされた。そこへ更に追い打ちの左拳が白い騎士の顔に叩き込まれる。無防備な状態での攻撃に、へしゃげていた白い騎士の頭部が大きく破損した。

 そこへヴェルフェゴトンがその体を素早く回し、巨大な尻尾で白い騎士を叩きつける。

 遠心力を伴ったその攻撃に白い騎士は弾き飛ばされ、数キロ向こうにある洞窟の壁に激しく体をぶつけた。硬質な素材で出来ているため、白い騎士は壁にめり込んだ状態で動けない。

 動けない相手へのトドメとばかりに、ヴェルフェゴトンは両手を地面につけて四つ脚の姿勢を取る。巨大な翼を広げると、その翼から周囲の魔力を吸い取る様に淡く光り出す。

 睨みつけるは壁に埋もれた白い騎士に向け、大きく口を開く。そこへ周囲から小さな光の粒子が舞い、怪獣の口内に紫の光が溢れ出す。

「あぁっ!」

 それを見てアンチェシルヴは慌てて離れようとする。既に上空に退避しているが、今からヴェルフェゴトンが繰り出そうとする極大の魔力に恐怖を感じてならない。

 一拍して、怪獣の口から紫色の光線が放射された。口の大きさそのままの太い光線だが、すぐ目の前に現れた魔方陣によって更に太さを増し、紫光線は白い騎士の身体を丸ごと呑み込んだ。


 大地が揺れた。森がざわめき、小さな虫が慌てて飛び立つ中、ウェドノ火山がその頂から真っ赤な炎と黒煙を吐き出して吼えた。

 固められていた溶岩の塊が噴火によって割れて地面へと吹き飛ぶ。

 やがて黒煙は空を覆い、火口からは煮えたぎる溶岩が数度、爆発したように吹出していく。そして抑圧された地底から解放された真っ赤な溶岩が次第に火山を染める。暗い中で美しさを感じるほど真っ赤な火山を、遙か遠くにいるエルフたちが驚愕の目で見つめていた。

「ノルズウェッドのドワーフ達は絶えたのですね…。」

 偵察に出ていたエルフの視界が、魔法によってそのまま『遠目の水晶』という大きな水晶体に映し出される。そこにいるのはエルフの重鎮たちだ。各々が手鏡ほどの大きさの水晶を眺めて悲観に暮れる中、女王セリディアが呟いた。

「このままでは世界は滅び、我らもその道を辿ることになろう。そうならぬよう、戦わねばならぬ。」

 その言葉に、重鎮たちから意義の声があがる。

「ですが陛下、我らは一度多くの同士を失っております。ましてやあの悪魔を倒すことが果たして出来ますでしょうか?」

 記録には無いが、この地へ戻る前にエルフは悪魔と戦っている。しかし、魔法と弓矢を主な武器とする彼らは悪魔との相性が悪く、多くの犠牲を払い、最終的にリオンが駆け付けてくれたことで悪魔を倒すことは出来た。

 だがその戦いで森は傷つき、彼らは生きられなくなったことからこちらに移り住んでいるのだ。


ここはノルズウェッド大陸の南にあるサインブラハッド大陸。エルフたちが隠れ住む森の奥深くに位置する女王の間。かつてナハトイデアール大陸にあったそのままの状態がそこにある。

 実際にはこちらがオリジナルであり、向こうは別荘のようなものであった。だからこちらを手本として向こうが形作られたわけである。

 そんなエルフたちの故郷である完全なる結界で包まれたこの地は、不老長寿のエルフたちに永遠の安らぎを与えてくれるのだが、結界はあっても、外からの影響はじわじわとやってくる。判りやすいのは泉の清らかさが次第に闇の汚染を受け、森の実収穫も僅かずつだが減っているである。

「出来ぬからこのままじっとここで消滅を待つのか?」

 セリディアの言葉に言った重鎮が口を噤む。当然他の者達も視線を逸らせながら何も答えない。

 その様子に仕方ないと分かりつつ、女王は語るように言う。

「先の大戦前に我らは悪魔と戦い、その結果リオンに助けて貰って生き延びた…。被害によって戦える者がいなかったために、先の大戦でエルフは参加できず、多種族から冷たい目で見られておるのもわかっておる。

 されどあの時、我らはリオンと約束しておったではないか!もしもリオン達が敗れることあらば、次はわらわたちが軍を率いて悪魔たちを止めると。

 そのためにここまで装備などを強化し、レッドドラゴンから竜たちを預けられた。」

 語るセリディアの視線の先、小窓の向こうにはヒトが乗るに十分なほどの体躯をしたドラゴンたちが、胸当てや兜をかぶって待機している。

 まだ幼かったドラゴンたちと共に、エルフは独自の空間で鍛え続けていたのだった。行き急ぐ必要もないエルフであるが、自分たちを救ってくれたリオンとの約束を果たすために悪魔たちとの戦いの準備をしてきたのだ。

「我らは今こそ立つべきだと思わぬか?」

 顔は外へ向けながら、視線だけをそこに居座る重鎮たちに向ける。すると一番若い男が挙手して尋ねた。

「陛下、我々だけで果たして戦う事…いえ、勝つことは出来ましょうか?」

 装備などはしっかり整えてきた。しかしながら、自分たちがあの絶対強者であったリオン以上になれたとは思える自信がない。

 それはセリディアとて同じ。あの『幻獣 ドラゴニクス』であったリオンが手も足も出なかったのだ。到底、彼ほどに強くなったなど思える訳がない。

 だが彼やその姉によって救われた者達がいる。

 彼らから様々なものを学んだ者たちがいる。

 そして何より、彼らの想いを受け継ぎ、戦い続けている者たちがいるのだ。

「我らだけではない…、忘れておらぬか?わらわが養子とした娘がどこにいるのかを。」

 その言葉に重鎮たちがハッとして顔を上げた。皆の顔に生気がみるみる満ちてくる。

「我らはユズナたちと合流し、まずはナハトイデアールのジルデミアンを討つのじゃ!

 しかる後に南半球を統治し、彼らと共に悪魔を追い払おうぞ!」

「「「ははぁーっ!」」」

 皆が畏まり、了承する。それを見届けてセリディアは右手を振り上げて叫んだ。

「さぁ、進軍の準備を致せ!今こそ我らエルフの力を、憎き悪魔たちに見せつけるのじゃ。」

「「「御意!!」」」

お読み頂きありがとうございます。

前回お話したとおり、巨大ロボと怪獣の戦いとなりました(笑)


さて、ここで裏話ですが、今回のヴェルフェゴトンの姿について、当初はウルトラ怪獣のレッ〇キングという怪獣をベースに連想しておりました。(怪獣と聞けば一番最初に浮かんだからです)

ですがどうにも魔法を使うイメージではありませんでした。

という事で色んな怪獣に関する画像を検索しながら、龍の姿と悪魔の姿を融合させた作品を見つけて、それに合わせた内容で書き直してみました。

私に画力があれば、その姿をお見せできるのですが、絵に関してはさっぱりなためにご容赦くださいませ。


さて、そんな感じでアコースとドワーフの連合軍のお話はここまでとなりました。

ですが、いよいよエルフの軍が動き出します。

同時に、次回はやっとナチュラルフロンティアに話を向けさせますので、ワオリたちをお待ち下さった方々、もう少し辛抱くださいませ。


それでは今回はここまでと致します。

どうぞ皆さま、大変な時期でございますがご留意くださいませ。

ではまた次回まで失礼いたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ