酒のみの歌
惑星エアルス。神々が作り上げた光天歴は1000年を迎えて終わり、新たな時代は悪魔たちによる魔天歴へと変った。
そしてワオリたちの活躍によってシュラハティニア大陸が解放され、世界は悪魔や亜人たちを倒そうと動き始める。
そして1007年。
東にあるダークエルフの集落へ向かったゼフィルートとヤーグ。
そこでかつての仲間たちと再会を果たし、ダークエルフたちを仲間に入れる手筈を付けたのだが、
長老の孫プダラが一人で攫われた仲間を救いに向かい、そして命を失った。
その命を持って攫われた恋人を悪魔の手から救い出し、悪魔はゼフィルート達によって始末された。
しかし、恋人を失った攫われしダークエルフ『ディア』の心は深く沈んだままであった。
変わり果てた孫の姿を見て、ブダネは悲しみに暮れたがそれは少しの間であった。長としての使命感からロックホールの者たちを集め、ナチュラルフロンティアへと移動を開始する。
戻って来たディアたちに労いの言葉と、すぐ助けに行ってやれなかった詫びの言葉をかけ、ディアからはプダラの最後について話を聞いた。
ディアにしてみたら自分のせいでプダラを死なせる原因となってしまった訳である。如何様に罵られ、罰を与えられようともそれを受ける覚悟はあった。
それが一言の恨みも無く逆に、
「あいつが守ろうとしたお前をワシは大事にしたい。だからお前はこれからあの子の分まで元気に生きてほしい。」
優しいその言葉にディアがその場で泣き崩れたのは言うまでもない。
一方のゼアナとリプスは虚ろな表情のまま、未だに毒が抜けきらない様子でボーっとしている。歩くことはおろか、食事などさえもされるがままの状態で、移動には背負われて行くことになった。
そして一行は森を進む。総勢100名ほどの大所帯での大移動だ。その中で20名がマフモフ達元ライディンの住人であり、残る80名弱のダークエルフの中で半数の者が衛兵だ。
それぞれが森の中を東へ向けて移動する。中には幼い者や年老いた者や背負われた者もいて、なかなか思うように進めない。普通で歩けば5日という距離も、その速度からすれば倍はかかると見られた。
「ヤーグ、すまないが先に飛んで小舟を用意して貰ってくれ。浅瀬だから帆船は来られないだろうが、小舟を何隻か出して貰って向かおう。」
「了解です。」
初日を何とか移動した後、夜になってヤーグを先に向かわせる。
「ヤーグ君、お願いするニャ!」
両手を振りながら見送るマフモフ。その隣で精悍な顔つきになったディアもまた少し恥ずかしそうに小さく手を振って見送った。
命を投げ出そうとした時、プダラの意思を無駄にするなと気付かせ救ってくれたことで、皆に合流した後にディアはヤーグにお礼を伝えた。
それに対してヤーグは、
「ぶ、無事だったんだから気にするな」
などと妙に緊張した面持ちで返答した訳であるが、あの時無茶をさせた事で嫌われてしまったかとディアは申し訳なく思っている。
そんなヤーグが緊張しているのは、あの時の彼女の一糸纏わぬ姿と胸を掴んだ左手の感触が忘れられないだけである。女性と付き合った経験など無いだけに未だ照れてしまっているヤーグだが、流石にその見送りを無碍にする訳にいかない。
「必ず仲間と迎えに来るから、気を付けてな。」
そう言い残すと一気に飛び上がって行ってしまった。
それを見てからマフモフがディアに声をかける。
「ディアちゃん、ヤーグ君は別に怒ってニャいようだニャ。良かったニャンね。」
「ええ。せっかくプダラに助けて貰った命を救い、そして気付かせて下さったから、感謝しておりますの。」
互いにニコッと笑みを見せ合う。そして一行はその日はその場で一夜を明かすことにした。
火を焚いてそこで雑魚寝するダークエルフや獣人たち。疲れからぐっすりと眠る者がいる中で、スッと離れていく人影があった。ディアとマフモフである。
二人はゼアナとリプスを連れて近くにある泉へと向かった。
10日もの間、悪魔に弄ばれていたため、身体中から異臭が漂っているのである。それを薬草の臭いで誤魔化していたが、やはり獣人であるマフモフ達は何かと鼻に来てしまう。
ましてやディア自身、身体を洗い流したかった。その為、泉で3人の体を洗う事にしたのだ。
夜の暗闇の中で冷たい泉に身を沈める。ディアはリプスを、マフモフはゼアナを抱いて泉に入る。そして先に意識のはっきりしない二人の身体を水で擦っていく。
「ごめんなさい、マフモフ。冷たいのに付き合せてしまって。」
「大丈夫ニャよ。あたいは水に入るのは好きニャ。」
「そう、ありがとう…。」
そう言って二人の身体を洗っていく。一通り洗い終えて二人を泉から上げると、マフモフが後の世話は行い、ディアは自らを洗っていく。
髪を洗う中、蒼い粉が流れ出していく。それがプダラの血が固まった物だと分かっているが、いつまでも血生臭いままにしておく訳にはいかない。自分は彼から大事な物を託されたのだ。その心を胸に秘め、こびり付いた血を洗い流していく。
(プダラ…、本当に感謝しております…)
流れ落ちて行く蒼に、我知らず涙を流していた。そして身体を水で擦っていく。あの悪魔に好きなように触らせてしまったことで、本当ならこの身体を新しく変えてしまいたいほどだった。
だけどそんな事が出来る訳も無く、せめてその体に残る悪魔の感触を懸命に擦り落とす。
だが、いくら擦ろうともその身に受けた屈辱の感触が消える事は無い。
何よりお腹の中には気味の悪い感触が残っている。それを何とかして取り除きたいが、残念ながら彼女にはその術は無い。
先ほどと違い、悔しい気持ちから涙が流れる。そんな状況をマフモフが心配そうに見守る。
「ディアちゃん、そろそろ上がるニャ。」
そう言われてようやく自分の身体が擦り過ぎて傷ついていることを知った。ヒリヒリと肌が痛むが、それよりも情けない気持ちが心を襲う。
更にはお腹の中に気味の悪い感触を感じながら、それ以降の日々を送るのだった。
幸いにして悪魔の襲撃は無く順調にライディンへ向かう一行。途中でゴブリンたちに襲われるが、その程度も凌げないアルツェンたちではなかった。ましてやゼロがいるのだ。被害者など出る事無くゆっくりと西へと移動していく。
そして3日後、ヤーグが戻ってきた。そこから少し北に進路をとって内海に出ると、そこに巨人を載せて海を渡った大型の筏が2隻置いてあった。それぞれに元海賊のクルーたちが乗って櫂を持っている。その先導にレイラが指揮していた。
「レイラさんにゃぁ~!」
かつてオークションで売られそうになった時、救ってくれたのがレイラであった。だからマフモフはその姿を見て感極まる。
「おぉ、マフモフかい。無事で何よりさね。」
涙を流しながら駆けて来た猫の獣人を、愛おしそうに抱き留めるレイラ。
「嬉しいニャ~、また会えてよかったニャ~。」
その胸に埋もれるマフモフは涙が止まらない。そんな頭を右手で優しく撫でる。
「あたいもだよ。よくぞ生きていてくれた。」
そう言うと後に続くかつてのライディンにいた仲間たちに目を向ける。
「あんたたちもよくぞ生き残っててくれたね。こうやって会えて嬉しいよ。」
その優しい言葉に残る19名の者たちが涙を流した。ここまで悲しみや苦しみを負ってきたが、その言葉で癒される思いがした。
「お初にお目にかかる。ワシはダークエルフの長、ブダネと申す。」
時間を見て、ブダネが横から声をかけて来た。それにマフモフを一旦放して相対するレイラ。
「あたいはレイラ。ナチュラルフロンティアの海洋部門を任されてる者さね。今まで仲間たちが世話になった様だね。心から感謝するよ。」
「いやいや、我らも彼らと共に居られたからこそここに居ますのじゃ。それより、こうしてお迎え頂けたことを感謝申し上げます。」
そう言って頭を下げようとしたが、それをレイラは止めた。
「おっと待っておくれ。それはあたいらの頭にしておくれよ。あたいらはその要請を受けてこうして来たんだ。
浅瀬なんで筏になっちまうが、歩いて行くより楽だよ。さぁ早く出発するから乗った乗った。」
ぶっきら棒だが、それがレイラにはよく似合う。その指示によってダークエルフたちが筏へと乗り込んでいく。初めての事に戸惑う者が多いが、大木でそれなるにゆったり乗れる巨大な筏に、彼らは直ぐに慣れたのだった。
「それじゃ全員乗ったかい?よしっ、それじゃお前たち。気合い入れて漕ぎなッ!」
「「「アイアイサー、マム!」」」
クルーたちが元気に返事すると、筏を陸から離して一斉に漕ぎ始めた。
その力強い櫂捌きに筏はグイグイと進んでいく。
「なかなか速いな。この様子だと明日には着けるな。」
ゼフィルートが感心しながら言うが、そこでレイラがニヤッと笑みを見せた。
「何言ってんだい。今日中には着くよ。」
「まだ距離があるぞ。…それとも何かあるのか?」
反論しかけるが、すぐに何かあるなと思い尋ねる。するとレイラが胸元から一枚の護符を取りだした。
「あぁ、ウミミンから渡された護符さね。これを筏に貼り付ける事で、どう言う訳か筏の速度が上がるんだよ。ここまで来るのに使ったが快適だったよ。」
「ホゥ、それは凄そうだな。」
ゼフィルートがまじまじと護符を見つめると、レイラが大きな声を発した。
「よぅし、それじゃ速度上げるよ。後ろとロープでしっかり結んだかい?それと乗ってる奴は腰を下ろしとくれ。立ってたら海に落とされるから、座って荷物とかもしっかり抱えとくんだよ。」
その声にダークエルフたちが慌てて座り込み、お互いに肩を寄せ合うようにして筏の中央に寄り添う。マフモフ達もまた同じくしゃがみ込むと、クルーたちも中腰の姿勢をとった。
そんな中でレイラは仁王立ちのまま筏の手すりを持つ。
「それじゃ行くよ!振り落とされんじゃないよ!」
そう言って手摺に護符を張り付けると、そこから空気の幕が筏の前方を覆う。そしてクルーたちが櫂を一漕ぎした途端、筏が物凄い速さで進みだした。
それによってダークエルフたちから悲鳴や驚嘆の叫びがあがる。しかし筏は氷の坂を滑り降りるような速さで周囲の景色を追い越していく。
「なるほど、水面と筏の間の抵抗を失くしている訳か。更に推進力増幅の魔法が加えられている。よくまぁ思いつくもんだ。流石だな。」
ゼフィルートが冷静に護符の効果を検証する。水面との摩擦を極力失くし、まさに氷の上を滑るような状況を作り出したうえで、魔法によるスピードアップ補助。海の上は波や風の抵抗を受けやすいために速度が上がらないのだが、これならば何の問題も無く進むことは可能だろう。
そんなゼフィルートを見てレイラが難しそうな顔を見せた。
「流石って、あんたも大概さね…。」
皆が座り込んでいる中、仁王立ちしているゼフィルート。同じく立っていてもレイラは手摺を掴んでいる。それなのにゼフィルートは腕を組んだままなのだ。空気の幕が前方に張ってある為、強い風圧を受ける事は無いが、筏であるため様々な影響はある。そんな中でゼフィルートは平気な様子なのだ。
「この程度、特に問題はない。」
やがてダークエルフたちの声も収まり、落ち着いた様子で話し声が聞こえてくるようになった。それから3時間ほどして、筏は無事にライディン港へと辿り着くのだった。
護符を剥がす前に櫂を逆に回転させることで速度は落ちて行く。そして速度がある程度落ちた所で護符を剥がし、通常の速度となった所でライディン港に接岸させた。
港と言っても桟橋はクイーンエストリア号などに繋がっており、筏は皆と横の浜辺へと上陸させる。
「さぁ着いたよ。」
ダークエルフたちが周囲を見渡す中、ブダネが前方にある巨大な神樹に目を奪われる。
「あれは神樹ではないか!しかもあれほどの大きさ。よくぞまぁ無事であったものじゃな。」
大地を崇めるダークエルフだが、ブダネは元エルフである。「森と知恵の神セイバス」から「大地と創作の神ライタン」を崇める様になったためにダークエルフとしてその身が暗い肌へと変わってしまったが、エルフとしての知恵はしっかりと残っている。同時に神樹を崇める心もあり、その場で祈りを捧げたのだ。それに伴って他のダークエルフたちもそれに倣った。
「ライディンにあんニャ樹は無かったはずニャ?」
一方で元住民たちは様変わりした町の様子を不思議に思う。現在、港と言っても桟橋以外は何もない。建物の無い中、神樹がある中心部に大きな建造物が見受けられる。中には巨大なヒトの姿も見受けられた。
そんな中、こちらに向かって走ってくる姿がある。数名の姿があるが、その先頭は小柄な少女だ。イヌ耳と尻尾のあるその少女の姿に、マフモフが次第に笑みを作る。そして大きく手を振り上げると
「ワオちゃんニャ~~~!」
「マフモフちゃーん!」
ワオリが嬉しそうに駆けて来ると、マフモフの名を呼び大きく跳ぶ。それをマフモフがガシッと抱きとめると二人は再会を喜んだ。
「会いたかったニャ~。無事でよかったニャ~。」
泣きながらその体を抱きしめるマフモフ。かつては同じ程の身長だったが、今ではマフモフが30cm以上大きい。
「それはあたちもですよ。良く戻って来てくれたですよ。」
そう言って抱き付いたまま少し顔を離すと、じっとマフモフの顔を見つめる。そして笑顔を向けて挨拶した。
「おかえりですよ。みんなもおかえりですよ~。」
マフモフに笑顔で挨拶を送った後、すぐに近寄ってきたかつての住人たちにも笑顔を向けた。
その言葉にそれぞれが「ただいま」と返答すると、ようやく故郷に帰って来たと実感して泣きだす者が現れた。その連鎖でマフモフ達20名が涙で喜びを分かち合った。
「お初にお目にかかる。ダークエルフの長、ブダネと申しまする。」
涙する仲間たちの横にやって来たブダネ。先にレイラから
「あれがうちらの大将さね。」
と告げられ驚きはしたが、その慕われる姿に納得をした。
未だマフモフに抱かれたままのワオリは、下ろして貰うと真正面にブダネを見る。
「こんにちは、初めましてですよ。あたしはワオリ、このナチュラルフロンティアのリーダーをしているですよ。
ようこそいらっしゃいましたです、ダークエルフの皆さん。」
その愛らしい姿にダークエルフたちも自然と笑顔を見せる。そしてブダネが膝を付くと、80名のダークエルフたちが一斉に同じ姿を見せた。
「我らダークエルフ、このままでは滅び行くのを待つしかなかった所、こちらに希望を見い出し、御前の保護に加わらせて頂きたく参りました。
如何なることも行いますので、願わくばその庇護に入れて頂けないでしょうか?」
ここへは呼ばれてきた訳であり、こうして畏まる必要など無いダークエルフである。しかし彼らはここまで来るのにその戦闘力や技術の高さをまざまざと見せつけられたのだ。最早ここまで来て戻る事など出来ず、今は生き長らえるために従属する覚悟を持ったのだった。
そんな態度にワオリは直ぐにしゃがみ、その顔を覗き込むように下から見上げた。
「何してるですか?ダメですよ、ちゃんと握手するですよ。」
自分を下から覗き込まれて驚いたブダネ。そして顔を起こした際にワオリは地面に置かれた右手をとって握手する。
「これからは一緒にがんばるですよ。よろしくお願いするですよ~。」
握手しながらにっこり微笑むワオリ。お互い膝を付いた状態で視線が同じ高さになっている。だから相手と同等だという訳ではないが、その態度にブダネは感動した。
「御身は素晴らしき方ですな。改めて我らダークエルフ、共に生きるために努力致しましょう。よろしくお願い申しますぞ。」
「あい、よろしくですよ。」
互いに握手した事でナチュラルフロンティアにダークエルフが正式に加わる事となった。
そしてワオリから遅れて二人が到着する。ウミミンとユズナだ。だが、ここで急にダークエルフたちが緊張した面持ちとなる。明らかな敵対の姿勢。それはユズナの姿が現れた途端であった。
「え?」
突如として敵意を向けられたことにユズナは足を止める。そしてダークエルフたちの視線に肝を冷やす。そんな状況でゼフィルートが即座にユズナの前にやって来て間に入った。
突如として見せた敵意に、ワオリがブダネに問いかける。
「どうしたでしゅか?」
するとブダネは立ち上がりワオリに問いかける。その姿は先ほどの柔和な感じが無く、冷たい印象を受ける。
「こちらにはエルフたちがいるのですか?」
「いないですよ。」
「ではあのエルフはどう言う事なのですかな?」
あまりに冷たい物言いに首を捻るワオリ。
「ユズナおねぇちゃまの事ですか?ユズナおねぇちゃまはあたしの
大事な仲間ですよ。」
「…エルフと共に過ごす訳にはいきません。この話、やはり無かったことに…」
そこまで言いかけて、突如言葉が出なくなった。この状況にウミミンが風に沈黙の魔法をかけて漂わせたからだ。
「ちょっと待ちなさい。一方的に話を進めて何ですかそれは?一先ず話し合いをするべきじゃないのかな?」
少し怒った様子で、この中では最も大きい魔力を持つウミミンだけにダークエルフたちは戦慄を覚えて立ち止まった。そしてようやくユズナが話しかけた。
「『袂を別った者とは相容れず』ですか。」
その言葉にダークエルフたちが皆ビクッと身を震わせ、そしてユズナを睨む。だが今度はユズナは怯む事無く前へ進む。
「エルフでありながら、森でなく洞窟に移り住むなど以ての外。今後は我ら相容れぬものとする。確かそうエルフ側から言われたのですよね?」
そう問いかけながらワオリの傍に赴き、ブダネの真正面に立つ。その間にウミミンへ視線を合わせ、沈黙効果を解いてもらう。
「そのとおりじゃ。かつてワシが受けた言葉はそれであり、以来お主らエルフとは敵対にある。」
ブダネの言葉に、ユズナは表情を変えず言い放つ。
「はっきり申しましょう。バカげた話はもう終わりにしませんか?」
「バカげたじゃと!貴様こそふざけるではないわっ!」
あからさまな挑発にダークエルフの不機嫌が殺意を纏う。それに反応するゼフィルートとワオリであるが、それをウミミンが手で制する。
「あの時、エルフの方から言われ、以来蔑むように扱われてきた。なのにここに来てバカげたとはどういうつもりじゃ!」
殺気立つ中ユズナの美しい顔は曇りもせず、薄紅の唇が言葉を告げる。
「当時の事は存じませんが、それも覚悟で袂を別ったのではないですか?」
そう言われてムッと唸るブダネ。その傍にいるプロイムも同じく唸った。
二人は他の仲間たちとエルフの郷から離れたダークエルフ。つまりダークエルフという種族の始祖である。元々はエルフとして生きていたが、その閉鎖的空間の中で道に興味を抱いて旅に出た。その先で知ったのは大地神ライタンの恩恵によって作り出された様々な創作物や料理。だからそれをエルフの郷に取り込めば、より楽しい生活になるのではと感じたのである。
しかしそれは森の神背あるセイバスを裏切る行為である。だから許されないと知って諦めたものの、興味は尽きず自分たちでやっていくと決めたのだった。
そう、自分たちは許されぬことをするのだからその覚悟を持とうと…。
「ですが、長い時間の中で互いに違えた傷は大きくなる一方だったのでしょう。ですが今この時代にそれは大事な事ですか?」
大事かどうかと言われれば、違える事は不要な事であろう。悪魔によって自分たちは滅亡するしかなかったのだ。滅亡するよりも、自分や子孫を残す選択をするのが大事である。だけど、
「確かにお主の言う事が正しいのじゃろう。しかしここまで来てそうすんなりと納得できるような生き方をしておらん。」
ブダネがそう言って口を閉じた。ユズナの言い分は分かるが、この数百年間によって感情は割り切れなくなっているのだ。長がそうであるために、一族が理解できるはずなどない。
するとユズナは一度大きく深呼吸をした。そして目を閉じる。
皆が訝しげに見つめる中、少し時間をおいて再び目を開いた時、その姿は変わらないが明らかに纏う雰囲気が違った。特にその雰囲気に驚くのが元エルフであったブダネとプロイムである。
「…久しぶりじゃな。」
ユズナの唇から発せられた言葉。その声も先ほどと全く違う懐かしい声となっている。
「ば、ばかな!」
その声に狼狽える二人。そしてユズナの瞳が2人を捉えると、明らかに若いユズナの前にブダネとプロイムは平伏した。
「「し、失礼いたしました。お久しぶりでございます。」」
二人そろっての挨拶に、ダークエルフたちが驚き固まるが、すぐに真似て平伏した。
「畏まるでない。それはこの子が最も嫌う事である。」
そう言われて顔を上げる二人。そしてようやく状況に理解した。
「御身の前で失礼いたします。セリディアさま。」
突如ユズナの雰囲気が変わった理由。それはその体にエルフたちの長『ハイエルフ セリディア・コヌ・リュヌイール』が憑依したのだった。
ハイエルフであるセリディアはエルフとダークエルフにおいて母なる存在である。つまりエルフたちの始祖に当たるのが『ハイエルフ』である。かつてはその庇護の中で暮らしていたため、ブダネもプロイムも畏まらなければならない存在である。彼らが相対するのは『エルフ』であり、『ハイエルフ』はそれに当たらないとしている。
「よい。今しがたユズナから連絡を受けてこの身を借りておるだけじゃ。皆も楽にして良いぞ。」
そうは言われても楽な姿勢を出来る者などいない。それだけ高位な存在としての威圧感が漂っているのだ。それでプロイムが皆に体を起こすよう言った事で、ようやく顔を上げたものがほとんどだった。
「突然驚きました。まずはお声を聴く限りにご健勝の事とお喜び申し上げまする。」
「うむ、そなたも息災で何よりじゃ。さて、あまり時間も無かろうから話をしよう。」
そう言ってユズナの姿をしたセリディアは、一度大きく息を吸ってから語り始める。
「ブダネ、プロイムよ。この子は正確にはエルフではない。本人は語らぬであろうが人との間に生まれたハーフエルフじゃ。」
「なんですと!」
エルフが他の種族と交わるなど考えられない事から驚きは大きい。だが話は進む。
「そしてかつてわらわたちはヒトと相対し、この子に長い苦労を掛けた。だからこそこの子はそうした種族間での諍いによって最も被害に遭った子なのじゃ。
じゃがな、それを救ったのも我らエルフでないヒトたちであり、その中にはお主等の仲間もおった。」
それを聞いてハッとするブダネ。ニコニコ顔で集落から出て行った限り帰って来なかった少女の顔が思い出される。
「それでわらわは思い知らされたのじゃ。憎しみ合う事は愚かであり、助け合う事で成果が得られるという事を。
大体話は分かっておる。お主等とエルフの者共が仲違いしてしまったのはわらわの不徳の致す事じゃ。赦せ。」
そう言って頭を下げるセリディア。その態度に今日一番の驚きと狼狽を見せるダークエルフ二人。
「めめめ滅相もございませぬ女王陛下!我らが覚悟をもって成した事でございます。そのお言葉で我らも今一度思い直しました。陛下のお言葉、心より感謝申し上げます。」
再び平伏する二人。結局その雰囲気に呑まれるしかない二人であった。
「うむ、今このような状況故、悪魔たちに対し手を取り合うようにしよう。」
そう言うと今度は横にいるゼフィルートに目を向ける
「ゼロ、ユズナが世話になっておるな。息災で何よりじゃ。」
そう言われて軽く低頭するゼフィルート。
「陛下もご機嫌麗しく何よりです。」
「フフッ、畏まりおって…。また機会あれば参るが良いぞ。」
「はい。」
たったそれだけの挨拶であるが、それで十分だった。そしてユズナの顔がやや下に向く。
「初めてであるな、若き主導者よ。いつもユズナが世話になっておる。」
「???ユズナおねぇちゃまじゃないですね。どちらさまですかね?」
全く話についていけていないワオリ。慌ててゼフィルートがユズナの義母に当たるヒトだと説明して納得を見せる。
「わかったですよ!ユズナおねぇちゃまのおかあしゃまでしたか。初めましてですよ、ワオちゃんですよ~。」
その様子に突然大笑いを始めるセリディア。
「あ~、久々に笑うたわ。ウム、改めてわらわの名はセリディア。エルフたちの長をしておる。今はユズナに身を借りておる故、機会があればその時に会って挨拶しよう。」
「あい、またお会いしますですよ。」
「ウム、その時が来ることを楽しみにしておるぞ。」
そう言ったセリディアは最後にウミミンへ顔を向ける。
「久しぶりだな。」
「はい、ご無沙汰しています。お元気そうで何よりです。」
ずいぶん親しげな両者の会話に皆が目を向ける。
「そなたも何よりじゃ。すまぬがユズナの事、よろしく頼むぞ。」
「はい、優秀ですから教え甲斐があります。」
それを聞いてセリディアは微笑む。ユズナの顔であるが、その顔は我が子を褒められてはにかむ感じだ。
「あと、あの子たちの事もそなたに任せるぞ。」
そう言って視線がディアたち3人に向けられた。それをウミミンはにっこり笑って「承知しました」と請け負う。
「苦労を掛ける。会った時はまたあれを馳走するからそれで許せ。」
「本当ですか?では楽しみにしております。」
瞳をキラキラさせるウミミン。普段は年上の様な落ち着いた姿でいるが、この時ばかりは幼い子供の様であった。
「うむ。…ではここまでじゃな。では皆の者、さらばじゃ。」
そう言い残しセリディアは瞳を閉じる。そしてフッと辺りを支配していた気配が消えて再びユズナが瞳を開ける。
「…女王陛下は戻られたようですね。」
そう呟く姿は本来のユズナであった。あまりの変わり身に皆が呆気にとられる。
そんな中でブダネが問いかけた。
「お…、お主はセリディア様とどういう関係なのじゃ?」
突如として現れた崇拝する人物と目の前にいる少女の変化がイマイチ受け入れられない為の質問である。
それに対してユズナは微笑を浮かべ答える。
「私の母は亡くなりました。それで私の保護者となって下さったのがセリディアさまなのです。今エルフたちは完全なるエルフの国で居るため、ヒトとの混血である私はそこに入れません。ですので神樹がある場所で通信しているのですが、ここの神樹に関しては先ほどのようにお招きする事も出来るみたいです。」
信じられないという表情を浮かべたままだが、実際にそれを目の当たりにした以上は納得するしかない。そう自分に言い聞かせたブダネは表情を引き締め、ユズナに頭を下げた。
「…申し訳なかった。お主に言われた通り、元はワシらが自分から成した事じゃ。それから長い年月をいがみ合っておったから、すっかり忘れてしまっておった。
お主の言う通り、今はそれ所ではない。気付かせてくれたことを感謝し、暴言に対して謝罪させておくれ。」
「謝罪を受け入れます。ですからどうか頭を上げて下さい。」
互いにわだかまりは消えてブダネは改めてワオリに仲間になることを願った。
「仲が良くてもケンカもするですよ。だから気にすることはないですよ。」
そしてダークエルフたちが正式にナチュラルフロンティアに加わる事となった。
「これにて一件落着ですよ~。」
そうワオリが締めくくろうとした時、その背後から「待った」の声があがる。
「まだだよ。」
視線がウミミンに向かう。そう、先程セリディアがウミミンに何かを願っていた件である。
「ウミミおねぇちゃま、なにかあるですか?」
ワオリの質問にウミミンの瞳がディアたちに向けられる。
「そこの三人の方。今のままでは町に入れませんよ。」
みんなの視線がディアたちに向けられる。そしてダークエルフたちは悲しそうな表情を見せ、二人は眠る中、ディアは俯いてしまう。
「どうしてですか?」
ワオリが尋ねる中、ウミミンは三人をじっと見つめる。そしてユズナに顔を向けた。
「ユズナちゃん、分かるかな?」
それは教え子に対する確認の様であった。ついさっきセリディアに頼まれたため、より一層そういう意識がウミミンに芽生えている。
対してユズナはディアたちを見つめる。
「んー、何かがあるのは分かります…。彼女たちの中に別の気配が…。」
するとウミミンは二回頷いて答えを伝える。
「うんうん、とりあえずその感覚は覚えておいてね。
みんなの表情を見ている限り分かっているようですのでズバリ言います。
そこの三人、悪魔が憑いていますね。」
それを聞いて驚くワオリとユズナ。レイラもまた驚いてすぐに戦闘態勢に移る。だけどその途中でゼフィルートが手で制した。
「大丈夫だ。今は心配ない。」
そう言うゼフィルートがウミミンに向いた。
「彼女たちは悪魔に暫く囚われていた。」
それだけ言えば、容易に想像できるだろう。周囲には筏を陸に引き揚げているクルーたちもいる。あまり詳しく言うのは彼女たちにとって良くないと判断したためだ。
そう聞いてユズナとレイラは事を察する。そして苦虫を噛み潰したような表情をした。ワオリは「痛そうでしゅよ~」とずっと叩かれていたと思って憐れんだ表情を向ける。
「なので今はこの町に結界がある以上、彼女たちは入ることが出来ません。」
そうウミミンが言い切ると、突如ヤーグが横から突っかかるように言った。
「で、でもそれは悪魔が悪いわけであの子達は被害者じゃないか!悪魔が憑いてるからって見殺しにする訳にいかないだろ。」
その態度に皆から注目を集めるが本人は気にしていない。まっすぐと驚いた表情のウミミンを見つめる。
「ワシらも、この子達が入れぬならば町に留まることは出来ませんな。」
ブダネが言うと、他のダークエルフたちも「同じ意見だ」や「この近くで自分たちは暮す」という意見が飛び交う。
そんな声にディアは嬉しさを感じるが、自分たちのせいで皆に辛い思いをさせられないと思う。
「みんなありがとうございます。ですが、せっかくこのような素敵な場所があるのですから、私たちだけ他で暮らします。」
そう決意して言うディアだが、アルツェンがそれを遮る。
「言うな!」
娘が父を見る。
「今までお前を救ってやれなかったんだ。それに比べたら町に入れないくらいどうという事はない。」
「お父様…。」
ディアが涙を流す。そして周囲も貰い泣きを始める中、ヤーグが再びウミミンに訴えた。
「あんな良い子なんだ。見捨てて良い訳ないだろ!」
するとウミミンは首を傾げ、それから少し大きめの声で伝える。
「誰が誰を見捨てるって?言ったでしょヤーグ君。今のままでは入れないと。」
その言葉に皆の視線が集まる。ヤーグに至っては「へ?」っという締まらない顔で見つめる。
そこへゼフィルートがヤーグの頭を軽く小突きながら言う。
「誰も見捨てるなんて言ってないぞ。何先走ってるんだお前は。」
頭を抑えながら周囲を見渡すヤーグ。ようやく自分が一人勝手な事を言いながら喚いた事に気付いて赤面しながら後ろに下がる。
そしてウミミンがユズナに語る。
「ユズナちゃん、悪魔は様々な方法で生き延びる術を持っています。例え身が滅びても、その分身体を残すことで生き長らえる事が可能です。だから今回はそれらを浄化することにします。」
「はい。」
そして今度はワオリに向いて伝える。
「ワオちゃん、ウミミとユズナちゃんはあの3人を浄化して町に連れて行くね。だから先に他のヒトを町に案内してあげてくれる?」
「分かったです、任せなさいですよ!」
ワオリはそう胸を張って答えて、後ろのヤーグに手伝いを呼びかけてから、ダークエルフやマフモフ達を町の中心部へと連れて行く。
「レイラさんはこっちを手伝って貰えるかな?」
ウミミンの呼びかけにレイラは快諾すると、ディアたちを入れて6人は西の岩陰へと向かう。
そこをクルーたちが興味に惹かれて付いて行こうとしたが、ゼフィルートがそれを止めた。
「神聖な儀式だ。見に行って悪魔が憑りつかれるなど、俺の手間を増やすことはしないでくれ。」
凄みを効かせた言葉にクルーたちも町の方へと戻って行った。
岩陰は丁度囲うようになっていて、海から以外は誰かに見られるような事はない。
ウミミンはダークエルフたちに衣服を脱ぐよう指示した。ディアは自分で脱げるが、後の二人にはレイラとユズナが付いて世話をすることにした。
衣服を脱いだディアの姿を見て、三人は明らかに動揺する。
いくらか傷はあるのだが、それよりも自分の肌を擦り続けて出来た擦り傷があまりにも痛々しい。それもつい最近出来た傷ばかりである。
「…擦っても擦っても、悪魔の嫌な臭いが消えないのです…。」
涙交じりの言葉に、ユズナとレイラも涙が浮かぶ。そしてウミミンはディアに寄り添い、その体に触れた。
「大丈夫だよ。その臭いも全て消してあげるからね。だから先にこの傷を治しておこうね。」
ウミミンが呪文を唱える。すると淡い光がディアの全身を包み、少しの時間で体にあった傷が全て消え去った。
「軽い傷だから直に治ったけど、根本的なのはこれからの浄化で治すからね。」
そう言うとウミミンは杖を両手で持ち、海面に向かって大きく左右へ振り祓う。するとウミミンから手前に広がる海面が渦巻き、やがて穏やかな波の無い水面が現れる。その穏やかな一帯は淡い光を放ち、神聖なる気配を漂わせていた。
そしてウミミンは5人に振り向く。
「準備できたから、みんなその光の中に入ってね。」
言われてレイラとユズナが、ゼアナとリプスを水面へ運ぼうとすると、ウミミンは二人を止めた。
「あ、ごめんなさい2人とも。二人も裸になって入って。」
「えぇっ!」
「なんだって!」
突如言われて驚く二人だが、乗りかかった以上は言う通りに従うしかない。ディアたちダークエルフは細身ながら逞しい体型をしているが、女性的な曲線がはっきりするほど魅惑的な体付きである。特にゼアナとディアは胸が結構ある。そんな彼女たちを傍目に衣服を脱ぐ二人。
「全く…もう歳くっちまってるから、若いしかもダークエルフたちと一緒にいるのは辛いんだがね。」
そう言いながらも義手も外したレイラだが、余分な脂肪など無い引き締まった体をしている。とても初老とは思えない見事な体付きで、身体中には海賊時代に負った傷が無数にある。
一方のユズナは恥ずかしげに胸や下腹部を手で隠しながら周囲を気にする。
「大丈夫だよ。ここは周囲に見られない様にしてるし、ゼロさんに見張って貰ってるから。」
それを聞いてホッとするユズナ。こちらもまた見事なスタイルで、折れそうな程にくびれた腰にナッチョンがいつも羨む胸やお尻をしている。その姿にレイラが思わず見惚れて口笛を吹いた。
「これは眼福さね。」
「や、やめてください!」
再び隠すユズナであるが、ウミミンが2人に先を急がせた。
それで5人は何も身に付けぬ状態で光る海面の中に入る。
「それでは始める前に説明するね。今、ディアさんたち3人は憑かれているどころか、体の中に悪魔がいます。」
「なんだって!」
レイラが驚く。そしてディアはビクッとする。
「あぁ、嫌すまない。しかしどういう事さね?」
「多分体内へ侵入された際に宿されたのでしょう。だからディアさんが体から臭いが消えないと言ったのは、その悪魔を宿しているからです。」
ディアがハッとする。いつも体内に何かがあるという不安がここではっきりしたのだ。
「それでこれからその悪魔の分身体を浄化してしまいます。場合によってその中から逃げ出し、ユズナちゃんとレイラさんに憑りつく可能性を考えて二人にも中へ入って貰った訳です。」
するとユズナが問いかける。
「それじゃもしウミミンちゃんに憑りついたら!」
それに笑顔を見せ答えるウミミン。
「それこそしめた物だね。ウミミの体に触れた途端に浄化しちゃうからね。その術を発動している間、発動者にも同じ作用が宿るので問題ないよ。」
そこまで聞くと最早心配はない。それにもしもここから逃げようとしても、ゼフィルートが待機しているのだ。後は無事に儀式が終わることを待つだけだ。
「それならもう心配はないさね。ウミミン、やっておくれ。」
レイラの掛け声でウミミンが杖を両手で握り天に突き上げる。そしてそのまま大きく円を描き先ほどのように杖を左右に大きく振った。
それに伴って次第に海面の光が強くなり、やがて光の水が雫となって舞い上がっていく。それを体に受けたディアはお腹に痛みを感じた。
「レイラさん、ユズナちゃん、二人を抱き締めて逃がさない様にして。
ディアさんも我慢してその場にいて。その痛みが悪魔の分身体がいる証拠で、何とか逃げ出そうともがいているからもう少しの辛抱だよ。」
ウミミンの言葉にレイラとユズナが抱いている力を強めた。それと同時に眠っているはずの二人がじたばたともがき始める。ディアに至ってはお腹を両手で覆い、苦しげに中腰の格好になる。
そして雫はやがて雨のように下から上へと巻き上がる。そして更には渦が出来て、光の中で竜巻のように吹き荒れた。
「あぁぁぁぁぁ…!」
目を見開くゼアナとリプス。その目は白目で、正気になっていない。気を失っているその体を悪魔イクプタスが乗っ取ってその場から逃げ出そうとしているのだ。
「させないっ!」
ユズナとレイラが更に強く抱きしめる。それでももがく二人の力は強かった。そしてウミミンが右手を光の竜巻へ向けて叫んだ。
「邪なる存在よ、消え去れ!」
「「うぎゃあぁぁぁぁぁー!」」
ゼアナとリプスが同時に叫んだ。その声はとても女性の声とは思えない獣のような泣き声だった。
そして叫び声が納まると、二人の身体がフッと力が抜けて抱きしめる腕に重みが乗りかかった。同時に体から黒い霧が浮かび上がり、光の竜巻に消えて行った。
どうやら無事に成功したかとレイラとユズナはお互いに笑顔を見せたが、未だにディアは苦しそうで、ウミミンも右手を伸ばしたままだった。
「こっちはまだかい!しぶとい奴だねぇ。」
ぐったりするゼアナを抱き締めるレイラ。その目先で お腹を押さえながら膝を付くディアがいる。汗まみれになって苦しそうな姿は何かに堪えようとしているが、閉じた瞳から涙が溢れだしている。
するとウミミンが慌て叫んだ。
「ダメ!意識をしっかり持って!」
その言葉はディアの心に変化があったことを意味する。今彼女の瞳から流れ出る涙は悪魔の抵抗による苦しみからではない。悪魔はここに来て彼女にあの悲しい瞬間を思い起こさせる。
それは愛する者が自ら命を絶った瞬間。
悪魔は語りかける…
「お前のせいで彼は死んだのだ」と。
ディアはその言葉を否定する。しかしその否定に根拠は示せない。
悪魔は語りかける…
「そもそもお前が堕ちなければ彼は命を賭す必要は無かった」と。
ディアは首を振る。それはお前が私に酷い事をしたからだと。
悪魔は語りかける…
「お前が本当に愛していたならば抵抗できたはずだ」と。
ディアは叫ぶ。愛していたしがんばったが時間が遅すぎたのだと。
悪魔は語りかける…
「その通りお前はがんばった」と。
ディアは心が緩む。
そして悪魔は囁きかける…
「そんながんばったお前のお腹に彼の生まれ変わりがいる」と。
ディアは目を瞠って驚く。
悪魔は囁きかける…
「今その生まれ変わりが殺されようとしているぞ」と。
ディアは思う。何とか助けなければと。
悪魔は囁きかける…
「ならば我に全てを委ねよ」と。
それによってディアは…
その時だった。ディアの耳に歌が聞こえた。
それはディアに懐かしさを感じさせる内容の歌だった。
幼き頃に友と出会い、共に笑ったり泣いたりしながら友情を深めた。
やがて時間が二人を成長させるが、時代の流れで2人は離れ離れとなってしまう。
別れ、友を思いながら月日は過ぎていく。
そして再び会える日に、既に友は戦いで命を失くしていた事を知る。
再会叶わず深い悲しみに捕われる中、別れた時に交わした言葉を思い友の分まで精一杯生きようと誓う。
そんな哀愁の歌だ。歌うのはもちろんユズナである。
それは彼女が母から教えて貰った、ヒトである父の経験から生まれた歌で、とても大事にしていたと教えられた歌である。
その清らかなる歌声にディアの心が奮い立たされる。同時にその身をあの優しい彼の腕が抱きしめてくれた気がした。
一方で、ユズナの歌声によって悪魔が苦しみだした。それまでディアに囁きかけていた思念が霧散し、ディアは今何をしているかを思い出す。
「出て行って!私の身体から出て行きなさいっ!」
ディアが強く叫んだ。体に力を込め、心を強く奮い立たせる。
歌を聴いてプダラが自分に言った最後の言葉が蘇る。
「悪魔に弄ばれたりなど、もういたしませんわ!私は…私はプダラの分まで強く生きてみせますの!」
それがプダラの言葉に対する自分の決意だ。強くその決意を誓うディア。
ウミミンの施す浄化の術、ユズナの歌声、そして本人の強い意思が共鳴し、悪魔イクプタスの分身体は黒い霧と化す。ディアの体内からすり抜けていく黒い霧は、光の雫に溶け込んでそのまま空へと消えて行ったのだった。
悪しきモノの浄化が終わり、渦巻いた光の雫は治まる。これでようやく終わったと一息つくレイラたち。
「ありがとうございました。」
ディアがリプスを抱き抱えるユズナに礼を述べた。
「お役に立てて良かったわ。」
にっこり笑顔を見せるユズナ。そんな彼女にディアが尋ねる。
「素敵なお歌でした…。ですがなぜあの歌を?」
自分を奮い立たせるのに最も適した選択だった。その理由を尋ねるのだが、それについてはウミミンから答えがもたらされた。
「それは、今も貴女を守ろうとする意思がいるからだよ。」
そう告げられてウミミンへ振り向くディア。するとそこに思いがけない姿が見えた。
光の中で浮かび上がる男の姿。色は無く、透けて見える精神体となった状態のそれはディアを守ろうとする彼の思いであった。
「プ、プダラ…。」
涙でその姿を見つめるディア。思わず両手で口元覆う目の前で、プダラは落ち着いた表情の中、笑みを浮かべる。
いつも一緒だった彼がたまに見せる自分を思いやる優しい微笑み。あれからずっと私を見守っていてくれたのだろうと思ってしまう。
やがてプダラは空を見上げる。そしてゆっくりと光の中で浮かび上がっていく。
「待って、行かないで!」
思わず手を差し伸べて引きとめようとしたが、ディアの手はその体に触れることは出来ない。そしてウミミンが静かに伝える。
「もう、逝かなきゃいけないんだよ。留まったら苦しい思いをさせてしまうから…。だから最後にちゃんとお別れしてあげて。」
かつてワオリと一緒にマドカを送った時と同じように、杖を握りしめて送る準備をする。そしてゆっくりと杖を空に上げて左右に振り始めた。
だけど溢れる涙でディアは言葉を発しない。一方で上りながら微笑むプダラ。少し寂しげな表情だ。
そこでレイラが大きな声を張り上げた。
「あんたぁ!ちゃんと言うんだよ。ここでちゃんと言わなきゃ後悔しかないよ!辛くてもちゃんと言うべき事を言って送ってあげるんだよ!」
今までたくさんの別れを経験して来たからこそ、目の前で泣いてばかりの女性に喝を入れる。同じくユズナも叫ぶ。
「今しかもう無いんだよ。一言で良いから、直接想いを伝えてあげて!」
そんな声援を受けて、ディアは一度大きくしゃくりあげてから涙に濡れる瞳を空へと向けた。そして
「プダラァ、ありがとう。絶対あなたのこと忘れません!ずっと愛してますわ。」
捻り出すように言葉を発した。その言葉に精神体となった彼は満面の笑顔を見せた。
そして届く彼の最後の思念。それは周囲にいる者たちにも伝わった。
「ありがとう、どうか幸せになってくれ」
幼き日に交わした共に生きて幸せになろうと言った約束。だけどそれはもう叶える事も、叶えてあげる事も出来ない。
だからどうか自分の分まで幸せになってほしいと願う。それが死しても尚、愛する者を思う彼の気持ちであった。
そして満足したプダラはウミミンに頷く。それを受けて魂送りの言葉が唱えられた。
「森羅万象よ。この勇ましきダークエルフの御霊をこの星の元へと誘い給え…。」
その言葉にプダラであった魂は空へと消えていく。それを見送ったディアはもちろん、見守っていたレイラやユズナもその様子に涙が溢れていた。
全てが終わり海面の光は消える。静かだった海面に波が戻り、座り込んで涙するディアの身体を優しく打ち付ける。愛する者を失った実感に打ちひしがれるが、それに声をかけることは出来ない。
その間にレイラとユズナは抱いていたゼアナとリプスに服を着せて、自分たちの身繕いをする。
やがてウミミンがディアに声をかける。
「さぁ、体に障るから行こう。」
さっきまで聞こえていたすすり泣く声が聞こえなくなったのを見計らっての事だ。自分で動き出すためにも、そうしたきっかけを作ってあげる必要を感じたための声掛けに、ようやくディアも落ち着いたのか立ち上がった。
そして俯いていた顔を上げると、そこには強い決意に満ちた凛々しい表情があった。
「皆さん、ありがとうございました。おかげさまで体が軽くなりましたわ…。」
そう一旦区切る様に言葉を止め、今一度俯く。ほんの僅かな時間俯いた後、目尻に涙を溜めながら笑顔を見せた。
「…彼にもきちんとお話が出来ました。彼の分まで…がんばって参ります…。」
最後は涙で言葉を詰まらせながらディアは宣言した。それを優しい笑顔で見守った3人は、ようやくその場を後にした。
ダークエルフたちを迎えて、夜はまたみんなで宴会を行うナチュラルフロンティア。神木の周囲200m四方を広場とし、そこに皆が寄ってきて酒を飲み交わす。また、ナッチョンたち生活班が様々な料理を用意する傍ら、ダークエルフが持って来た食材で料理を振る舞った。
「おぉ、これは不思議な味付けだね!でもおいしい。」
ナッチョンがダークエルフの作った一皿に手を付けての感想だ。鳥を一羽まるまる香草の葉に包んで蒸し焼きにしているのだが、内臓を取り出し、そこに木の実などを入れて中と外から鶏肉の臭みを消して様々な風味を漂わせている。どちらかというと甘い肉の味になっているが、それに塩コショウを付けて食べると味が引き締まり、より味わいも深くなった。
「ありがとうございます。お気に召して頂けて何よりですわ。」
ディアが嬉しそうに礼を述べる。この料理は彼女と妹分であるリプスによる合作であった。ディアの隣で恥ずかしそうに頬を染めるリプス。大人しく照れ屋なダークエルフはコクコクと低頭する。
「これは是非とも教えてほしい料理だね。ワオちゃん、二人を生活班に…ってそれ所じゃないか。」
ナッチョンの横で一心不乱に匙を動かし、ひたすら食べ物を口に放り込むワオリ。相変わらず食欲旺盛で黙々と食べていく。そんな様子を前の席でにこやかに眺めるユズナ。ワオリの向こう側にマフモフがこれまた皿に顔を突っ込んでがっついている。その向こうでウミミンが座っており、ゆっくりと味わって食べていた。
「後でウミミの方から言うよ。二人が良かったら生活班で活躍して貰おう。」
「はい、よろしくお願い致しますわ。」
「お、おねがいします!」
落ち着いた風なディアと少し慌て口調のリプスが願った事で、二人の生活班入りが決定した。
「了解!二人はこのナッチョンさまが預かったぁ―!大船に乗ったつもりで楽しくやっていこー。」
片手を上に突き出して意気込むナッチョン。そんな様子をディアは楽しげに賛同するが、リプスは勢いについていけずオロオロとしてしまう。そこに隣から声が掛かった。ドワーフのバオである。
「ナッチョンちゃんはあんな感じだけど、みんなを良く見てて頼りになるからね。私はバオ。よろしくね。」
そう親しみやすく声をかけて貰ったため、リプスは嬉しそうに微笑む。
「よ、よろしく…お、おねがいします。」
「ふふ、緊張しなくていいからね。みんな仲良くやっていく仲間だから、これからゆっくり慣れて行ってね。」
優しく語りかけるバオ。ドワーフとダークエルフは同じ大地の神ライタンを崇拝し、相通じる物があるのか相性が良い。こうして会話をしたことで、バオとリプスは仲良くなっていくのだった。
「それにしても驚きましたわ。」
ディアの発言にワオリとマフモフ以外の同じテーブルにいる皆が目を向ける。注目されたのを確認して、ディアは周囲を見渡しながら言う。
「ここは様々な種族の方々が一緒に生活されているのですね。かつてライディンがヒトと獣人の町だと聞いておりましたが、まさかドワーフの方や巨人族の方もいらっしゃるとは思いも寄りませんでしたわ。」
視線の先、巨人たちが集まって酒を酌み交わしている。その中にナーゼの姿もあり、大なべの底が焦げ付かないように時折掻き混ぜている。
ディアの発言に隣に座るユズナが答えた。
「そうだよね。色んな種族のヒト達が一つの目標に向かって共に生活している。とっても素晴らしい事だよね。」
「そうですわね。」
ハーフエルフとダークエルフが互いに微笑み合って頷く。ハーフと言えどもユズナはエルフの郷出身だ。エルフとダークエルフはいがみ合う中だが、それもこの日解決した。最早このナチュラルフロンティアは種族の垣根を越えた生活共同体となっている。
彼女たちの後ろではドワーフの男性たちとダークエルフのブダネ達指導者が酒を酌み交わし、そこにレイラやゼアナも加わっている。ゼアナはサッパリした性格で、今回世話になったレイラと意気投合して仲良くなっていた。共に酒を飲み合い、年寄りたちと楽しそうに談笑している。
「あぁ~、呑み過ぎなければよいのですが…。」
楽しそうにジョッキを傾けるゼアナの姿を見て、ディアが心配する。でも、それをナッチョンがフォロー(?)する。
「んー、無理だろうね。みんないつもこのまま酔い潰れちゃうんだよ。互いに楽しく時間を過ごしながら仲を深めるんだし、それはそれで楽しんでる証拠だよね。」
「えぇっと…仲良くなるのは良い事と思いますが、酔い潰れるのは良い事なのでしょうか…?」
ディアが首を傾げる。そこにウミミンが答えた。
「大丈夫だよ。ここは神樹によって守られている清浄なる地。だからここに居るみんなの体調が悪くなることはほとんどないよ。」
ウミミンの言葉にディアは納得を示した。昼間にあれほどの術を繰り出し、自分を心身ともに救ってくれた人物なのだ。疑う余地など全くない。
そこでナッチョンがそっと呟く。
「まぁ、みんなが楽しく酔いつぶれるのは良いんだけど、悪酔いはよくないよね。」
その視線は巨人たちの方を見ている。豪快に酒を煽り、大きなボアの丸焼きを囲んで楽しんでいる巨人たちの中で、一人端の方で周りに比べて小柄な女性の巨人がいる。生活班で日夜がんばっているナーゼだ。
総勢500人以上もいるこのナチュラルフロンティアで、よく食べる人が多い。だから大きな鍋を使って煮込み料理などを用意している。それを掻き混ぜたりするのがナーゼの役割で、今も焦げ付かない様に大なべを掻き混ぜている。そんな真面目なナーゼに感謝しているのだが、やはりその容姿は助平な男たちを寄り付かせてしまう。正座しているナーゼの足下に寄って行って、下からその体を覗き見ようとする輩が鍋のシチューをよそって貰おうと集る。
巨人の中でもお人よしなナーゼはそうした下心を気にせず、頼まれて大なべからヒト達用の鍋にシチューを入れる。そうした動作で無防備になる肢体を酔った助平たちが鼻の下を伸ばしながら見上げる。それをナッチョンが見過ごすはずなどない!
「このスケベー共―!一生懸命掻き混ぜてくれてるナーゼちゃんの手を煩わせず大なべに飛び込みやがれー!」
席を立って急ぎ足で歩いて行くナッチョン。その右手にはどこから取り出したのか愛用の特製フライパン。
その姿を見て酔いの醒めた男たちは空の鍋を持ったまま霧散していく。
「全くあの助平共は~!」
ナッチョンが辿り着くと助平共は皆、退散していた。
「あら?皆いなくなってしまった…。」
シチューを掬ったヒト用のおたまを摘まんでいるナーゼ。少しほわ~っとした雰囲気があり、ナッチョンは心配でならない。だけど巨人族はそうした事に無頓着な所があるため、説得は半ばあきらめている。
「酔っぱらっているからね。せっかくだからそれ貰っていくよ。」
「はい。」
笑顔のナーゼにフライパンへシチューを注いで貰い、ナッチョンは席へ戻って行く。
そんな様子を眺めて不思議そうな表情のリプスにディアが尋ねる。
「どうかしましたの?」
突然尋ねられて慌てながらも、リプスは答える。
「あぁ…えっとね、巨人族って怖いヒト達だって聞いていたから、あんな優しそうな人もいるんだなって思って…。」
それを聞いて同感だと答えるディア。
「そうですわね。これからはこうした様々な方々と共に暮らしながら、色々学んで参りましょう。」
「うんっ!」
リプスが可愛らしく笑った。それにディアも笑顔で応える。
そんな背後から大きな声が聞こえた。程よく酔いの回ったレイラである。
「ユズナぁ~、一曲頼むさね。」
賑わいも一段落といった雰囲気で、とりあえず皆お腹に食事を入れた所だ。余興を楽しむには良い時間だろう。
「は~い。リクエストは?」
ディアの隣でユズナが立ち上がる。その手には竪琴があり、調律する様に弦を一本ごとに奏でて確認していく。
「そうさね、明るく楽しい曲をお願いするよ。」
「分かったわ。それじゃ、レイラさん達にピッタリな曲を一曲。」
そう言ってユズナの指が流れる様に弦を弾く。小刻みに弾かれる音がアップテンポで流れ、それを聞いた海洋部隊のクルーたちがこぞって手拍子を加えることで、より聞くヒト達の心を躍らせる。
「さぁ飲もう さぁ呑もう お酒を飲もう
大きな器にナミナミ注いで
仲間と一緒にさぁ呑もう
今日は上手くいったかな
辛いことがあったとさ
悲しい事もあったよね
生きてりゃ色々あるものさ
だからここ来て酒注いで
ともに肩組み歌い合おう
さぁ飲もう さぁ呑もう お酒を飲もう
さぁ歌おう さぁ踊ろう みんな陽気に騒ぎだす
共にお酒が飲めたなら きっと明日は良い事あるさ
さぁ飲もう さぁ呑もう 嫌な事は忘れてしまえ
さぁ歌おう さぁ踊ろう 楽しい時間を過ごし合おう
酒と仲間があるならば 明日もまた頑張れるさ♪」
酒飲みの間でよく歌われる歌だ。ヒトや獣人が酒場で歌う訳だが、そこまで泥酔したりしないエルフには縁のない歌だ。ユズナはこの歌も母から教わった訳であるが、実はヒトである父が一人旅している時に作った歌なのである。とある酒場の様子を見ていて歌った訳だが、陽気な曲にその場にいた客たちが共に大声で歌ったのが始まりである。
それが冒険者たちによって世界中に広まり、海賊たちが愛する歌にもなっている。
やがてその歌につられてクルーたちが一緒に歌うと、みんなが一緒に手拍子を行い、踊る者も現れる。ご飯に夢中だったワオリやマフモフも、その陽気に踊りだし、楽しい夜は遅くまで続けられるのだった。
お読み頂きありがとうございます。
今回は長くなりましたが、下手に区切らず一気に掲載させて頂きました。
そして幾つか気になられるところがあると思いますのでここで補足しておきます。
まず筏ですが、単に丸太を繋げたものではなく、そこに落ち込まないよう手すりで囲まれていると想像してください。巨人たちを載せるほどの大きさなので、かなり大きなボートのような筏となっております。
ナハトイデアール大陸は、浅い海が広がっているため、クィーンエストリアなどの帆船では直ぐに座礁してしまいます。なのでこういった底の浅い船が重宝される訳です。
そしてウミミンによってモーターボート(笑)と化しました。今後も出番はある予定です。
次にセルディアとユズナですね。
二人は地脈によって通信することは可能です。エルフたちがいる場所もユズナは知っておりますので、いざとなれば連絡は取りあえるのですが、エルフ側も今は大変な時期のため、そう簡単にいつでもというワケには行きません。
ただ今回、前もってダークエルフとは話を付けたいとセルディア自身が願っていたため、ユズナに対して分身体の一体をユズナへ憑依させました。
セルディア本体がユズナへ憑依した場合、その所有する情報量などによってユズナの脳が破壊されてしまう事から、こうした一部が制限時間付きで送られたわけです。
それ以外に関しましては、なんとなく想像して頂けるかと存じます。
ともかく、こうしてナチュラルフロンティアはまたも大きな集合体となりました。
以上を第4章として、次回は激動の5章へと入って行きます。
ナハトイデアール大陸編もクライマックスに近付いております。
同時に世界のも少し動く予定ですので、そこはまた次回のお楽しみにして下さいませ。
それではまた次回まで。




