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The Law of the World  作者: k2taka
第2部
66/93

想いを強さに…(マドカとワオリ)

惑星エアルス。神々が作り上げた光天歴は1000年を迎えて終わり、新たな時代は悪魔たちによる魔天歴へと変った。

そしてワオリたちの活躍によってシュラハティニア大陸が解放され、世界は悪魔や亜人たちを倒そうと動き始める。

そして1007年。


今までのように上手く行くと思っていた。

必ず救えると思っていた。

だけど自分の不注意で死なせてしまった愛する母。

更には今まで傍にいてくれたダンガも、眠っている間にいなくなってしまった。


何もかもがなくなってしまった気分だ。

もう、何もしたくないと思った。

母と一緒にずっといたいとだけ願った。


そしてワオリは、母の遺体を背負ってみんなの前から姿を消したのでした。


 瘴気溢れる大陸の中で、そこは神聖な気配に満ちていた。森の奥で川の流れがあり、その川が落ちる場所、滝があった。

 水が落ちる激しい音の中、ここは少し木が少ない場所で、夕暮れの空が見える場所でもある。そこに一本の高い木があるのだが、それが周辺の霊気を高めてこの場所を神聖な空気で満たしている。実はこの木こそが【霊木】であり、地脈の通るパワースポットなのだ。

 そんな場所に冷たくなった母親を連れたワオリ。霊木の下には座らせる場所があり、そこにマドカを座らせると木にもたれさせた。両手は膝の上に置かせ、近くの花を摘んで母の膝をお花いっぱいにする。

「おかぁしゃま、きれーでしゅね…。」

 幼い頃の喋りに戻ったワオリ。小さい頃に母と花畑で遊んだ記憶のまま、花を摘んでは母親に付け、花の王冠を作ってその頭に飾る。美しい母が一段と綺麗になるが、死んでしまったその顔に艶はなく、あの頃のような美しさは感じられない。

「どうちてでしゅかねぇ?」

 分りきっていることなのに、あえて現実から逃避するワオリ。

そう、今はとにかく全てから逃げたかった。


 あの聞こえてきた話でダンガも亡くなったことを知った。

 今まで一緒にいてくれたダンガおじちゃん。その存在にどれほど助けられたことか…。

 悪い事や危険なことについては真剣に叱ってくれた。困っていたら助けてくれた。何より、母のいない時は必ず傍で見守ってくれていた。

 そんな大きな存在がいなくなてしまった。ワオリの顔から笑顔がなくなっていた。

「もう、あたちつかれちゃったでしゅよ…。」

 最愛の母が目の前で死んで、気を失っていた間に何も言わずにいなくなってしまった祖父のように慕ったダンガ。

 出来ると思っていたのに、全く何もできなかった不甲斐ない自分。それと同時に、これまではダンガがいて一緒に前へ進んでいたのに、いなくなって何もできない自分がリーダーとして、みんなは実際どう思うだろうか?そんな不安が更に追い打ちをかけた。

 一度は母が死んだと思い、それに報いようとがんばってきた。だけど、生きていたことを知って心が乱された。

 「絶対また一緒に!」

 そんな思いで無茶な作戦を実行し、そして自分が不甲斐ないせいで死なせてしまった。

「もういやでしゅよぉーーーーーー!」

 絶叫するワオリ。その大きな瞳から涙が流れる。

 まとまらない考えに、つくづく自分が嫌になる。

 そしてこうなってしまった現実が嫌だ。

 何より、もう母の笑顔が見えないことが一番イヤだった。

 ひとしきり大声で泣き、暫くして泣き止んだワオリは母の横に寄り添う。

「もう、こうしておかぁしゃまと一緒におねんねするでしゅよ…。ずっとこうしていっしょにいまちょうね…。」

 生きる事を放棄しようとしたワオリ。そんな事を誰が望むだろうか…。

 隣の眠る母がそんなワオリを叱りたくても出来ない今、それを見ていた一組の男女も迷い、足を踏み出せずにいた。


 そんな所で声がした。明るく幼げな声だ。

「それで良いの?」

 でも、その声は重みがあった。優しそうであって、今のワオリを問い正そうとする強い意志が含まれた声。

 ワオリは聞こえた声に視線を彷徨わせて探す。すると滝の向こう側からぴょこぴょこという感じで小さな人影が歩いてきた。その頭にはうっさうさのウサ耳が揺れ、水色の髪がふわふわと揺れる。幼そうな丸みのある顔だが、眉尻が下がっていて何だか困り顔な少女。白い衣装を纏い、その右手には杖があった。

 そしてその少女はワオリの前まで来ると、再び問いかけた。

「本当にそれで良いのかな?ワオちゃん。」

 真正面に立ち、まっすぐに見つめてくる赤い瞳。その顔を見てワオリのそれまで眠そうだった顔がハッとして目覚める。

「ウ、ウミミおねえちゃまでしゅか・・・?」

「そーだよー。久しぶりだね、ワオちゃん。」

 ニッコリ返してきたその笑顔を見て、ワオリの顔は再びくしゃりと歪み、そしてその小さな体に抱きついた。そしてわんわんと大きな声で泣き始める。

 そんなワオリの背中に手を置いて優しく抱きしめるウサ耳の少女。彼女の名は【ウミミン】。かつてリュナエクラムで住んでいて、ワオリにとって姉のような存在である。

「うんうん、いっぱいいっぱい泣いていいよ。悲しい気持ちをいっぱい出しちゃって…。そして全部出しちゃったら、一つ一つ気持ちを整理していこうね。」

 その優しい手は泣き止むまでずっとワオリの背中を離さずに、支えるように抱きしめていたのだった。


 それから暫くして泣き止んだワオリ。ウミミンは膝を突き合わせるように座り、その言葉を一つ一つ聞いていった。今までこっちの大陸を離れてシュラハティニア大陸でいたこと。そしてそこで4大公のパルドスを倒して、大陸を平定させたこと。そしてようやく戻った矢先に母が生きていると知って強行し、思いも寄らない結果になってしまったことを事細かに説明していった。

「うんうん、確かに辛いことだけどウミミはよくがんばったと思うよ。そっかぁ、マドカさんとダンガさん、遠くに逝っちゃったんだね…。」

 僅かに涙ぐむウミミン。かつて世話になった二人だけに本当は泣いてしまいたいが、そうするとワオリも泣いてどうしようもなくなると思い我慢する。

 そして傍らで眠るマドカの姿を見て、お祈りをする。そんな時だ。ハッとしたウミミンは、マドカの手を握る。それから何度か頷きを見せると、ワオリに振り返って言った。

「ワオちゃん、マドカさんとお話する?」

「え?」

「お話したい?」

「したいです、したいですよ~!」

 驚いた顔でそれを願う。するとウミミンは立ち上がると杖を両手で持った。

「じゃお話させてあげるけど、ひとつだけ約束ね!絶対に、一緒に居たいと言ってこっちに帰ってこないなんて無いように。実はそれでマドカさん怒ってるよ。」

「何ででしゅか!」

「当たり前でしょ。母であるマドカさんはワオちゃんに一生懸命生きて欲しくて庇ったんだよ。なのにここで一緒に生きるのを辞めるようなこと言ってたら、マドカさんが怒らない訳ないでしょ?」

 そう言うウミミンもプンプンした。しかし、しょげるのを見てすぐに戻すと、その手に触れる。

「だから今しっかりとマドカさんの気持ちを聞いて来なさい。ちゃんとウミミがお話させてあげるから、それでマドカさんといっぱいお話して頑張る気持ちを取り戻して。」

 そう言うと再びマドカの横に座らせてその手にマドカの手を握らせる。

「手は離さないでね。」

 そう言ってウミミは杖を持ち上げ、左右へ大きくゆっくりとそれを振り回した。


 次第にワオリは眠りに誘われ、次に気付いた時は同じ場所だった。でも、ウミミンの姿はない。その代わり…

「ワオちゃん。」

 隣から声がした。それは聞きたかった優しい声。

「おかぁしゃま…。」

 穏やかな優しい母の顔がそこにあった。抱きつこうとしたが、手を離さないようにと言われたのを思い出し我慢する。隣り合って座った状態でぎゅっと握りあった手。ワオリは十分嬉しかった。

「さてと、先に叱っておこうかな。」

 早速マドカから死のうとするような言葉についてこってりとしぼられた。そんなために私は育てたんじゃないと涙ながらに言われ、ワオリはもう言わないと決心し約束した。

「はい、それじゃ色々お話しましょうね。」

 それから先ほどウミミンとしたようなお話をするワオリ。これまでやってきた一つ一つを説明し、それに対して優しく母は応対してくれた。辛いこともあったが、それを優しく慰めてくれる。嬉しい事や楽しい事は一緒に笑ってくれる。こうしてお話するのは夢の中のようだった。

 そして時間は過ぎてワオリは願う。

「またこうしてお話しできないですか?」

「うん…本当はしたいけど無理なのよ。私の体は星に帰らなくちゃいけないの…。命あるモノはやがて死を迎える。それが自然の法則でだからこそ命は尊いものなの。花は枯れてもまた新しい花になるでしょ?そしてヒトもまた新たな存在になっていくの…。だからもう、こうして一緒にお話は出来ないわね。」

「うぅ~寂ちぃでしゅよ…。」

 悲しげな我が子を見て胸が痛む。だけどそれはどうにも出来ないのだ。

「でもねワオリ。私から一つだけあなたに渡すものがあるの。お話は出来ないけど、ずっとワオリと一緒にいるから、それでがんばってほしいわ。」

「何でしゅか?」

 マドカは胸に手をやると、そこから輝きが現れた。

「これは私の想い。ワオリにこれから強くて優しいヒトになってほしいと願う想いなの。だから、寂しくなったらそっと胸に手をやって私の想いを感じ取ってね。いつまでも母は貴女を思い見守ってるから。だからがんばれ、ワオちゃん。」

 そう言ってその輝きをワオリの胸に持って行くと、スッとそれはワオリの胸に溶け込んでいった。

「そろそろ時間ね。ウミミちゃん、ありがとう。」

 マドカが虚空を見ながら感謝した。そしていま一度ワオリを見るとその体を力いっぱい抱きしめた。

「ワオリ、私の娘に生まれてきてくれてありがとう。本当はもっと一緒にいてあげたかった。だけど周りにはあなたを思ってくれるヒトはたくさんいるわ。だからそのヒト達と一緒に頑張って

この世界を救ってあげて。そして幸せな生活を送ってね。それが私の願いよ。

 ワオリ、本当にありがとう。愛してるわ。」

「あたちもでしゅよ、おかぁしゃま大好きでしゅ。愛してましゅ。おかぁしゃまに産んでもらえて、あたちは本当に幸せでしゅ。だからおかぁしゃま、心配いらないでしゅよ。ありがとうおかぁしゃま!また必ず会うでしゅよー!」

「私も、また会いましょ…」

 だんだんと意識が遠のく中、互いに再開を願って親子の会話は終わりを迎えた。


 そして目を開けた時、優し気に見つめてくれるウミミンの姿があった。隣には眠る母がいる。でも、先ほどまでと違ってすごく穏やかな笑みを浮かべた表情だった。

「おかえり。しっかりとお話してきた?」

 ウミミンの言葉に力強く頷くと、立ち上がって母の手を揃える。

「ありがとです、ウミミお姉ちゃま。いっぱいお話しできました。」

「そっか、うんうん。よかったね。」

 そして二人はいっぱい花を摘んでマドカの体に飾った。

「それじゃ、マドカさんを送るね。」

「あい、お願いするです。」

 そう言うとワオリが祈りを捧げる中、ウミミンは杖を持って振り回し、小さな舞を踊る。その舞によって周囲から淡い光が浮かび、辺りは幻想的な世界となった。

 そんな中でマドカのもたれる霊木が淡い光を宿すと、その光にマドカの体も光る。

「森羅万象よ、偉大なるキュウビのマドカを、どうか星々の輝きの末端に届けたまえ!」

 そう唱えた瞬間、霊木がマドカを光に変えた。その際、飾られた花はもちろん、その髪にある簪も共に光となって霊木の光と一体化した。

「おかぁしゃま、簪が一緒ですからあたちとずっと一緒ですよ。」

 そう笑顔で送り出すワオリ。そして光は空へと打ちあがり、ワオリの頭上で星が輝いたのだった。


「さてと、そこにいるお二人さん。こっち来ても良いですよ。」

 ウミミンが声を掛けるとユズナとゼフィルートがやってきた。その姿に驚くワオリ。

「ワオちゃん、ずっとさっきから見守ってくれてたんだよ。」

「そうだったですか…。」

 驚くワオリにユズナが少し怒った顔で人差し指を伸ばす。

「ワオちゃん、心配したでしょ!勝手にどこかに一人で行かないで。それと悩み事があったらちゃんと相談してね。」

「あい、ごめんなさいです…。」

「はい、謝ったので許します。」

 笑顔で許し、それからウミミンに顔を向ける。

「えっと、ワオちゃんのお姉さんかな?」

「ん~、義理のお姉さんてとこかな?ウミミンて言います。よろしくね。」

「ウミミンちゃんね。私はユズナ。ハーフエルフよ。そしてこっちがゼフィルート。みんなはゼロて呼んでるわ。」

「はじめまして。」

 ウミミンが挨拶すると、頭を軽く下げるゼフィルート。

「ゼフィルートだ。今回はワオリを助けてくれて礼を言う。」

「こちらこそだよ。二人とも、ワオちゃんを心配して来てくれたんでしょ?」

 それにしっかり頷くも、ユズナは少し照れ臭そうだった。

「ワオちゃんをそう思ってくれてありがとう。よかったね、ワオちゃん。」

「あい、ありがとうです。」

 ひとまず挨拶を終えてユズナが質問した。

「えっと、さっきのは結局マドカさんはどうなったの?」

 何もわからないまま事が運び、気付けばマドカの遺体が光になって消えたことに疑問した。それをウミミンは丁寧に答える。

「このエアルスを構成する光の粒子となって、世界中どこにでも行けるようになるんです。そして己の心が最も落ち着く場所で長い時間をかけて霊気と化していき、やがてエアルスに帰化します。」

 ウミミンの説明に首を捻るワオリ。難しい内容なので理解が付いて行っていないようだ。しかしユズナたちはそれを理解する。特にユズナは地脈を感じられる数少ない存在だ。そしてそれをワオリに教える。

「つまり、この星に生まれ変わって、ずっとワオちゃんを見守ってくれてるってことだね。」

「うん、そういうこと。」

 それを聞いて嬉しさが募ったワオリは胸に手を当てて喜んだ。その胸にある輝きが一層母を身近に感じさせてくれて、ワオリは寂しさをようやく乗り越えられたのだった。


「それで、ウミミンちゃんはこれからどうするの?」

 ユズナの問いにワオリとゼフィルートの視線を集める。そしてウミミンは一度考えるように瞼を閉じると、強い決意を持ってユズナを見つめた。

「ウミミはこれまでずっと探してるものがあります。そして今やっとそれの在りかを知ることが出来ました。」

「探し物?」

「そうです。」

「それじゃそれを探しにまた行っちゃうですか?」

 せっかく会えたのにという寂しさを感じるワオリ。母とお別れしたところで姉と慕うウミミンには傍にいて欲しいと願う。

「そうしようかと思ったんだけど、ちょっとワオちゃんと一緒に居てもいいかなぁ~って思ったりするんだよね。」

 それを聞いてワオリが満面の笑みを浮かべた。

「だから暫くは一緒に居させてもらおうかと思うんだけど、良いかな?」

「もちろんですよ!やったですよ。」

 もろ手を挙げて大喜びするワオリ。その横で見つめる三人。

「やっぱり心配か?」

 ウミミンの妹を見る優しくも悲しそうな瞳に、ゼフィルートが尋ねた。それに視線を向けてはにかむ。

「確かにちょっと心配だけど、ちゃんとお別れできたから大丈夫と思うよ。それよりも、ダンガさんもいなくなったら、みんなの方が大変じゃないの?」

 ウミミンの指摘にごまかしなど出来ず、ゼフィルートは嘆息する。

「その通りだ。そこにワオリがいなくなってどうしようもなくなっている。」

 そしてユズナが考えながら口を開いた。

「今回の事で、みんながすごく落ち込んでるの。でもそれを乗り越えなきゃいけないのは分ってるけど、何からすべきか私もさすがに困っちゃってて…。」

 するとウミミンは今まで気にもしなかったことを指摘した。

「それじゃ、再び組織作りしていくべきだね。今まではどういう風に動いてたの?」

 組織という言葉に面食らう男女。お互い顔を合わせてからユズナが答える。

「今まではダンガさんが全て作戦を決めて、そこに私たちが意見を出し合い、それからワオちゃんが決定して開始していたわね。」

「という事は、全部ダンガさんがやっていたってこと?」

「ああ、そう言う事だ。」

 そう聞いて呆れた顔を見せるウミミン。

「それじゃ、今混乱するのも当たり前だよ!よく今までそれで行けてたね。」

「まぁ、それだけ人望があった問う事かな?」

「でも、ダンガさんは戦闘指揮がメインだから、向こうの町の運営なんかはどうしてるの?ワオちゃんが決めてるの?」

「いや、何でもライディンの町を真似して、各自が相談し合って勝手にやっているらしい。諍いが起きた場合は我々が間に入って収めて、そうでない場合は全てお任せみたいな感じだな。」

 ゼフィルートが淡々と答える内容に、更に呆れた口が開いたままのウミミン。

「えっと…ちょっと待ってね…。はっきり言って、よくそれでやって来れたねって思うしかないんだけど。この際だからきちんと役割を決めて、そして担当者を作るべきだと思うよ。何もかもを一人が請け負うなんて出来るわけないんだから、それぞれの得意分野を一度きちんと整理するべきだと思うな~。」

 ウミミンの言う事は大きくなった町ならば、きちんと役割分担して責任を持たせるべきだという事である。お互いが相談し合ってやって行くのは良い事だが、何もかもをやってる人任せでは必ず衝突や問題は発生する。それらを上手く回していく責任者を置くことでリスクを出来る限り回避する。それが大きな組織の在り方でもある。

「その辺りも一度戻って話し合うべきじゃないかな?」

 その言葉で4人は隠れ家へと向かったのだった。


「ワーオーちゃーん!」

 戻ってきた4人の姿を見てナッチョンが額に青筋をたてて怒鳴ってきた。その剣幕にワオリはぶるぶると身を震わせた。

「どーして何も言わずに出て行ったりしたのっ!みんなが心配するじゃないかっ!!」

「ごめんなさいです!」

「ごめんじゃなーい!こんなに心配させてぇ~、ご飯抜きだよっ!!」

「それは嫌ですよ!反省してるですよ。ご飯食べたいですよー!!」

 そんな寸劇のようなやり取りに、ユズナが間に入る。

「ナッチョちゃん、それくらいで許してあげて。ちゃんとこうして戻ってきたんだから…。ワオちゃんも、こんなにみんなが心配してくれてたんだってしっかり反省してね。」

「う~、とりあえずユズナッちに免じて許してあげるとするかぁ。」

 渋々のように後ろを向くナッチョンであるが、無事に戻ってきてくれたことにグスリと鼻を鳴らした。泣きたいのを見せないように気持ちをしっかりさせる。

 そこにパラヤとレンがやってくる。そしてワオリに一礼すると挨拶を行った。

「ワオリ様、おかえりなさいませ。」

「おかえりなさいワオリ様。いきなりいなくならないで下さいよ。ホント心配しましたよ。」

「うんただいまです。心配かけてごめんなさい。」

 二人に謝った後、そこに集まってきたメンバーたちに向かってワオリは声を大きくして言った。

「みなさん、ただいまです。心配かけちゃってごめんなさいです。」

 その声に皆が「おかえりなさい」と返事してくれた。中には申し訳なさそうな態度の者達もいる。どうやらあの時噂話をしていた面々らしいが、後でパラヤに聞くと、自分たちから「あんな話してたのを聞かせてしまったからワオリ様が出て行ってしまったのかも」と正直に名乗り出て反省したらしい。

 それもこれも、自分が弱気になって周りを見なくなってしまったせいだと思ったワオリは、椅子に上がって皆を見渡すと、お腹に力を込めて声を発した。

「少しお話させてくださいです。今、あたちたちは皆が悲しみに抱かれてると思うです。強くなったと思ってこの地に戻り、みんなが協力してお母さまを救い出すお手伝いをしてくれました。それについては本当にありがとうです。

 だけど結果は失敗。更には今まであたちたちを引っ張って来てくれたダンガおじさんもいなくなってしまいました。

 あたちは、お母様を死なせてしまったことで全てが嫌になってしまいました。それでお母様と一緒に静かな場所で眠ろうと思ったです。」

 それを聞いてざわつく。でもワオリの言葉は続いた。

「だけどお母様とお話することができて、あたちは怒られました。あたちを生かすためにした事を無駄にしようとしないでと言われました。

 きっとダンガおじさんも同じだと思うです。皆に生きて欲しいから、あたしたちを逃してくれたんだと思うです。

 だからそうした思いを無駄にしないためにも、これから更にがんばっていくべきだと思うです。今回の事を忘れず、更に強くなってこの世界を救いに行こうと思ってるです。

 それがお母さまの願いであり、そしてみんなが幸せに暮らすことを望んでいたです。

 そのため皆でもう一度一緒に頑張っていきたいです。一緒に頑張ってくれますか?」

 その言葉にその場にいる皆が涙を流した。

 みんなで救いたかった恩あるマドカ救出の失敗。更に追い打ちをかけるようにダンガの喪失。意気消沈した時にワオリがいなくなって自暴自棄になりかけていた。

 だけどそのリーダーは一回り大きくなって戻ってきた。何があったかはまだ分からない。でも、自分たちを必要だと言い、そして再び目標を与えてくれた。

 目の前で自分を庇って母親を失くすなど、どれほど辛い事かと今更ながら感じるが、それを堂々と話したうえで前を見つめる強さを示した。流石マドカ様の娘だと思う。

「俺の方こそ、ぜひ一緒に連れて行ってください。」

 レンが真っ先に涙を流しながら叫ぶ。続いてパラヤも、

「感動いたしました。今一度、何があってもワオリ様に付いていくと誓います。」

と宣言する。それを皮切りに、みんながワオリを称え、今一度結束を固めたのだった。

「ありがとうです皆さん。それではみんなでまた頑張っていくですよぉー!」

「「「オオォ――――――!!!」」」

 割れんばかりの雄叫びがあがり、皆がやる気に満ちた。それを見てゼフィルートは隣にいるウミミンに耳打ちする。

「そうそう捨てたものじゃないだろ?」

 組織ではなくても、ワオリというリーダーがいる事で皆が同じ方向に進もうとする集団性。それを目の当たりにしてウミミンは満面の笑みを浮かべて答えた。

「本当だね、ワオちゃんすごいや。これならまだまだ強くなれるね。」

 そう二人で話していると、ワオリがウミミンを呼んだ。

「ウミミおねえちゃん、こっち来て下さいですよ。」

 みんなの注目を浴びて少し照れ臭そうにしながら、ウミミンはワオリの隣に進んだ。その途中でリュナエクラム出身の者達から声が上がる。

「お母様とお話しできたのは、このウミミお姉ちゃまのおかげです。知ってるヒトもいると思いますが、昔一緒に遊んでくれたあたちのお姉ちゃんです。今まで旅をしていたんですが、しばらくは一緒にいてくれるという事です。だから、皆さんも仲良くして下さいです。」

 そして場所を譲って椅子から下りるワオリ。代わって上がったウミミンは、みんなにぺこりと一礼すると、そのウサ耳がミョンっと揺れた。それだけでユズナなどハァ~っと憂いの溜息を漏らす。

「えっと、ウミミンと言います。しばらくお世話になりますが、よろしくお願いします。えっと…」

 そのまま少し考え込んだウミミンは下にいるワオリに尋ねる。

「ワオちゃん、ちょっと教えて。」

「なんですか?」

「ここって何て名前なの?」

「ここは隠れ家とみんなで呼んでるですよ。」

「ううん、そうじゃなくて、ワオちゃんたちの集団の名前。まだ聞いてなかったなと思って。」

 その瞬間、皆がざわめきだし、ワオリもさっきまでの堂々とした姿が急にそわそわし始める。ユズナやゼフィルートに助けを求めるが、両者もまた「そう言えば!」などという表情しか出来ない。ナッチョンなど「あぁ~~~~」っと大きな声を上げている。

 そしてワオリはその場で皆に呼びかけた。

「緊急会議ですよ!あたちたちの名前を決めるですよぉ―!」

 組織化のためのまず第一歩がこうして始まるのでした。


お読み頂きありがとうございます。

昨夜からずっと涙を流しながらキーを叩いています(´;ω;`)


マドカ救出作戦からすでにこの結末は考えていました。

第2部開始時はマドカはすでにいない設定だったのですが、

ワオリが強くなるためにあえて再登場させました。

ですがそれによって私自身がこれほどダメージを受ける事になろうとは…

想像以上に悲しみを感じて、確認のために読み直してもまた涙涙という状態です。

ちょっとこれは失敗だったかと思いましたが、ここに来てウミミンを登場させることで

納得のできる良い結果になれたと自分自身思っております。


ダンガに至っては当初よりここまでの予定でした。

ただマドカとワオリの事が予想以上のダメージだったため、

もう少し熱い最期(戦闘シーン)を書いてあげるべきだったと今は反省してます。

もし機会があればその辺りを加えることにします。


さて今回出て来たウミミンに関してですが、ここでネタバレしちゃいます!

実は彼女はこの世界の理に精通し、悪魔王デュートが何を探しているかも知っています。

彼女の探し物とは彼より先に見つけ出して保護するつもりです。

というとこまではネタバレしておきますね。

そして戦闘力に関してですが、今の世界のトップ5の一人であると言っておきます。

近いうちにまた戦闘を予定しておりますが、その一端をご覧頂けると思いますので、

今後に期待して頂けたらと思います。


次回は組織づくりの内容ですが、昨日から今日までの内容が重かったために

少し笑える内容にできたら良いなと願っております…。

どうぞこれからもよろしくお願いします。

それではまた次回まで失礼します。

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