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The Law of the World  作者: k2taka
第1部
40/93

リュナエクラムでの戦闘(後編)

 集落の北側に辿り着いたリオン。そこで見たのは非道な行為だった。

 動けなくなった獣人は首輪を付けられており、そこから伸びる鎖で両手を縛られた状態で地面を引き摺られていく。

 その中で一部の女性の獣人は兵士たちに裸にされて辱めを受けており、一方では瀕死の者をいたぶる様に槍先で突いて反応を見ながら笑っている者もいる。更には傷を負ったヒトの兵士は、すでに息絶えた獣人を何度も剣で斬り付けて憂さ晴らしをしている。

 そんな状況にリオンは嫌悪した。

 やがてリオンの姿を見つけたヒトの兵士が大声を出した。

「おい、新しいのが来たぞ!」

 その声に反応して兵士たちの視線がリオンに向けられる。それから戯言が飛び交う。

「なんだなんだ、ガキじゃねぇか。」

「でも見ろよ、何かスゲェ装備してるぜ。」

「ホントだ。ガキには過ぎた装備だな。」

「おい、その装備を置いて行くなら見逃してやるぞ。」

 バカにした口調で最後に大笑いする兵士たち。その間も残虐な行為は続けられており、リオンはその様子に見覚えを感じた。

「なるほど。ゴブリンと同じだね。」

 そう聞こえる様に呟く。特に悪気がある訳でもなく、見て思ったままの感想を述べたリオンに、兵士たちの表情は一変した。

「なんだとっ?おい、もういっぺん言ってみろ。何と同じだと?」

 手前にいた兵士が腰の剣に手をかけながら睨みつける。しかしリオンは言われたまま、はっきりと叫んだ。

「やってる事がゴブリンと同じだって言ったんだよ。」

 途端に剣を抜く兵士たち。それまで獣人たちを相手していた者たちが武器を構える。

「このガキ、もう謝っても許さねぇ。」

 明らかなる戦意。それを目にしてリオンはニヤリと笑った。

「それは僕も同じだよ。見てて良い気分しないから覚悟してね。」

「死にやがれ!」

 リオンの挑発に手前の兵士が斬りかかる。それをリオンはシールドで叩き返す。彼からすれば何てことないただ盾を前に突き出した行為だが、それを受けた兵士は振りかぶった状態で体前面を強打され吹き飛び、地面に転がった時には絶命していた。

「!? ヤロォっ」

 同僚の死を目の当たりにして次にいた兵士が掛かってくる。しかしそれも盾で叩きつけると、受けた兵士は身体の正面を潰された状態で吹き飛んだ。

「クソッこいつ強ぇぞ!」

「ヒトを呼べ!それに将軍に報告しろ。」

 リュナエクラムに押し掛けたラビューズ軍は、突如現れたリオン相手に再び臨戦態勢をとることになったのだった。


 ラビューズ軍第3大隊長『ベッヘル・ライルビー将軍』は戦後の紅茶を楽しんでいた。今回商人たちからの要請で出撃したが、栄えあるラビューズ家の一団がかような任務に就いた事を納得してはいなかったが、上からの命令とあって仕方なく遂行したわけである。そしてようやく獣人たちを大量に捕える事が出来て、先程用意してあった輸送車全てを送り出したところだ。

 そして今もまだ捕えた獣人はいるが、一先ず新たな輸送車が届くまでは待機することにしている。

「それにしても、思った以上の成果でしたね。」

 まだ若き副官が喜ばしげに告げるが、ライルビーはジロリと睨み返す。

「当たり前の戦果だ。せっかく獣共を攻められるかと思えば、かような捕縛目的な進軍。面白くも無いわ。」

「将軍はこの作戦がお嫌いでしたからね。ですがそれが王からの勅命でしたからきちんと成果をあげられてホッとしてます。」

「全く、王も商人どもの話など聞かずに良いものを…。」

「将軍、それ以上は流石にお口が過ぎます。」

 副官の注意に苦虫を噛んだ顔をしながら残った茶を飲み干したライルビー。ともかく今は次の輸送車を待って、それを乗せれば任務完了である。

「獣共ももう少し骨のある者が来ればと思ったが、流石に無理であったか。」

「はい。南は亜人たちが押し寄せ、かなりの被害が出ているとのことです。こちらは無駄な戦闘を避けるためにこれ以上の進軍は止めておりますので、多分強者は南へと配置されているでしょう。」

「そうだったな。獣共も運がない。我らに下れば死なずに済むのに、最早この集落は終わりであろうな。」

 獣人たちに対して少しの憐れみを感じはするが、所詮は下等なる存在だと見下しているライルビー。彼は特に関心も持たず結果を予測するのだった。

 その時、テントに兵士が駆け込んで来た。

「緊急故失礼します。」

「何事だ?」

 副官が尋ね返すと、一呼吸整えて兵士は告げる。

「南側より突如武装した戦士が現れ、兵士2名を殴殺されました。」

「何だと?」

 ライルビーの厳しい視線が向けられた。その迫力に兵士がたじろぐと、副官が慌てて質問する。

「それはどのような戦士だ?獣人なのか。」

「いえ、見た目は子どもです。全身を蒼銀の鎧で固め、巨大なランスと盾を持っております。」

「それで、殴殺とは?」

「はい、両名ともシールドバッシュ一撃で倒されてしまいました。」

 盾で相手を叩きつける基本的な盾技『シールドバッシュ』。それはあくまでも相手の隙を突いたり牽制に用いる技であり、武装した兵士を一撃で倒すと言うことは想像しにくい。

 報告に信じられないと言う表情を見せる副官。しかしライルビーは立ち上がると装備を確認し始めた。

「面白い。それほどの強者を見に行くとしよう。全軍戦闘態勢。尚、輸送に当たっている者は引き続きその任務に当たれ。」

「ハッ!」

 兵士は敬礼するとテントから出ていく。そして副官は慌てて将軍を止めようと言葉をかけた。

「お待ちください将軍。得体の知れぬ相手だけにいきなり向かうのは危険です。」

「何を言うか!報告を聞くだけで心躍ってしまうは強者と分かるからだ。ならばワシ自ら相手するが一番被害が少なく済むだろう。」

 興奮して先ほどとは違う目の輝きを放つライルビー。副官は内心で「この戦闘狂が」と罵りながらも、こうなった将軍は止められないと諦めながら共に向かう準備を始めた。

「つまらぬ戦と思っていたが、これは面白いことになりそうだ。」

 そう言ってライルビーは兜を被り、勢いよくテントを出て行った。


 テントから出たライルビーと副官は馬に跨って南に向かう。集落からおよそ2kmの場所に陣を敷き、そこで作戦を指揮していたのだ。そして向かう途中で縛られた獣人たちと、それらを監視する兵士たちの姿が多くあった。

 やがて集落に入ると馬を下りる。そのまま向かうには狭く、歩いたところでそれほどの距離は無いため、出迎えた兵士に連れられて問題の戦士のいる場所へと向かった。

 そしてそこに辿り着いた副官は自分の目を疑った。

 美しい蒼銀の鎧を纏った子どもがいる。もしかすればホビット族かもしれないが、肉付きなどを考えればヒトの子どもだと思われる。その左手には全身をすっぽり覆うほどの大きな盾と、右手には身長を超す大きなランスがある。

 そして何より驚かされたのがその周囲に倒れる自分たちの軍の兵士たちだ。

 見える限りに積み上げられた兵士たち。もうその体に生気は無く、全てが亡骸だと判断できる。

 蒼銀の鎧の向こう側では解放された獣人たちが震えながらも自由になれたことを喜んでいるようだ。

 そして今もまたこちらの兵がその戦士に掛かっていくが、蒼銀の鎧は巨大な盾をバッシュするだけで兵士は吹き飛ぶ。そして飛ばされた兵士の顔や体の一部は押し潰されて死んでいた。その間にも兵士たちは向かっていくが、またも盾で薙ぎ払われ吹飛ばされる。

 その2回を見てわかるが、あの鎧の子どもは凄まじい膂力の持ち主なのだ。しかもランスが主武器ならば右手が利き腕だろう。それなのに利き腕じゃない左手でこの威力なのだ。

 近づいてはやられると思った副官は、即座に近くの兵士に弓矢の用意を指示する。だがその指示は直ぐに取り消されるのだった。

「あれだけの盾使いに矢を射った所で無駄だ。」

 ライルビーが止めたのだ。その顔に笑みを浮かべながら…。

 それを見て副官は慌てて注意する。

「将軍、ダメです!もしもの事があったら困ります。」

「うるさい、武人としてあれほどの相手を見て心躍らぬのか。いいか、もしもの時は直ぐに撤退を指揮せよ。その際、獣人たちはその場で破棄し、逃げる事だけを考えるんだ。」

「ちょっと待ってください…将軍!」

 そう告げるとライルビーは、止める副官を気にも止めずにリオンの方へと歩いて行った。

「全く将軍は・・・。ご武運をっ!」

 副官は愚痴りながらも将軍の勝利を信じて疑わなかった。今までの戦いの中で、勇猛なるライルビーが負けた姿など見たことがないのだ。だからこそ彼の副官となれたことを誇り、彼の為に尽くすよう努力してきたのだ。そして今回もきっと勝利するだろうと期待していた。


 次々に来る兵士を叩き伏せるリオン。ヒトと戦うのは初めてであるが、正直あまりにも弱かった。今の所剣や手斧、また槍で掛かって来るが、全て盾で叩き伏せて終わっている。

 リオンは決して相手を舐めている訳ではない。辿り着いてから視界に見える獣人を救っていこうと用心しながら歩いている。そこにヒトの兵士が襲い掛かってくるのだが、その武器を防ぐために盾を突き出しているだけなのだ。それをまともに全身で受けて兵士が吹き飛んでいく。

 最初にそれを見て思わず「え?」と思ったリオンであるが、情けをかける必要も無くそのまま盾で相手の攻撃を防ぎながら倒している。

 普通一般的に盾を扱うとしたら、しっかり盾を動かない様に構えて、襲い掛かる攻撃を通さない様にする事だろう。しかしリオンの盾の使い方は違うのだ。

 実際に盾を扱う熟練度は相当なもので、レッドドラゴン相手に必死でその攻撃を防いでいたわけだ。レッドドラゴンの攻撃を盾で受けるには当たる寸前で押し返さないとそのまま吹っ飛ばされて盾の意味がない。だから攻撃を単に受けるなどと言う行動は行わず、シールドバッシュしながら攻撃を相殺する『インパクトガード』を自然に行うのだ。

 そう言う概念の無いラビューズ軍の兵士たちは、リオンがシールドバッシュで攻撃しているとしか思わない。リオンからすれば弱いと思うだろうが、これは余りにもリオンが強すぎるためにそう感じるだけなのだ。そうでなければ、獣人たちがこうも簡単にやられるわけではないのだから…。

 やがて兵士の波が途絶えたと感じた時、目の前に体格の良い男が現れる。口ひげをはやした40歳くらいの良い面構えをした男。装備も兵士と違って良い物を使っており、纏う雰囲気は戦場を生き抜いた風格を漂わせていた。

「ワシはラビューズ軍第3大隊長、ベッヘル・ライルビーだ。」

 そう名乗ると、じっとリオンを見つめた。一騎打ちでの名乗りあいであるが、リオンはそうした作法を知らない。だからライルビーは話をする事にした。

「これより貴公と話がしたいので、まずは名を教えて貰えるか?」

「僕はリオン。おじさんがこのヒト達の中で一番偉いヒト?」

 おじさんと言う言葉に兵士たちが怒り立つが、ライルビーはニヤリと笑って対応する。

「この場ではそうだな。このリュナエクラムへ攻め入っている者たちの総指揮を任されている。」

「それじゃ、おじさんが止めるように言ったらこんなゴブリンみたいなこと止めてくれるの?」

「ゴブリン?」

 流石にムッとしたが、周囲で行われていたであろう獣人たちに対する行いを見れば、そうとられても仕方ないと思った。だが、邪悪な亜人と一緒にされる事は許せない所である。

「なるほどな。君からすればそう見えたかもしれないが、我らヒトからすれば獣人の方がそれに近い。故に我らヒトが彼らを導いてやらねばならん。」

 至極当然と言わんばかりの口調。それを聞いてリオンが難色を示すのも仕方ない事である。

「変な事言うね。獣人は獣人の生き方があるのに、それに口出しするのはヒトの傲慢じゃないかな?そんな考えだから、ゴブリンと一緒のことするんだね。」

 またもゴブリンと同様に見られ、今度はライルビーも聞き捨てられなかった。

「まだ言うか。子どもと思って甘く見ていたがしっかり躾けてやらねばならぬようだな。」

 そう言って腰の剣を抜く。その様子に周囲の兵士たちが息をのんだ。

 グランデュシュテルン王朝ラビューズ王国軍第3大隊長ベッヘル・ライルビー将軍。彼の家系は戦士の貴族で、幼いころから武術の訓練を受けて来た彼は、若くして将軍職に就いたエリートである。しかしそれは彼自身の素質に努力を重ねてきた結果であり、ラビューズ軍において最も剣技に秀でている猛者であり、グランデュシュテルン王朝内でもトップクラスの戦士である。

 そんな彼が剣を抜く場面はなかなかないため、その強さを見ようと兵士たちの視線が集まる。

「構えろ。我が剣を持って我が正しさを示してくれるわ。」

 そう言われて挑まないリオンではない。

「それじゃ相手するけど、ぼくが勝ったら連れ去ったヒトたちを解放してね。」

「よかろう。ならばワシが勝ったらリオン、お前を連れていくとしよう。」

「いいよ、負けるはずがないから。」

「ぬかしおる。ならばあとは剣で語るのみ!行くぞっ。」

 ライルビーが襲い掛かった。盾を前に構えて勢い良く駆け出し、右手の剣は脇を締めてどのようにでも繰り出せるようにしている。

 迎えるリオンは盾を前にランスを横に向けて構える。これまでの兵士たちも同様の構えで対応してきたが、余りの弱さに攻撃を繰り出す事もなかったのだった。

 しかし流石は将軍である。鋭い踏み込みから一気に間合いを詰めて来た。リオンはそれまでと同様に盾を前に押し出す。それをライルビーはひらりと右横へ躱すと、盾を持つリオンの左腕目掛けて剣を振る。そこにリオンが盾を傾けるように動かせて弾くと、ランスで薙ぎ払う。

 弾かれて体勢を崩したライルビーだが、その体制のまま迫るランスに自分の盾を当てると、リオンの力を利用して間合いを取る様に跳ぶ。

 全身鎧を着こんで重い筈だが、見事な宙返りを決めながら着地したライルビー。そこへリオンの追撃が入る。ランスを構えて突撃してきたのだ。

 予めそれを念頭に置いていたライルビーは着地した瞬間に盾を構える。直に飛び退いたり、横に移動してもそこをランスで突かれるのが分かっている。だからこそ寸前まで見極める必要があった。

 迫るリオン。そのランスの先が盾に触れる瞬間、盾を少し当てながら左に身体を捻る。するとリオンの突進力を利用して体の旋回速度が増し、ちょうどリオンの真横に来た所で右手の剣をリオンの首目掛けて斬り付けた。

 至近距離からの横斬り。リオンは首をすくめながら右手を横に突き出した。ランスの握り部分はナックルガードが付いており、その強度からして十分な打撃武器になる。ライルビーの腹部を攻撃して剣の間合いを遠ざける。

 その拳にライルビーは盾を挿し入れて腹部を守るが、衝撃が体全体に掛かって弾き飛ばされる。それによって右手の剣も遠ざかり、鎧の首を守る部分を掠めるしかなかった。

 そしてようやく間合いが開き、両者は直ぐに構え直す。

「ほぅ、なかなかやるではないか。今のを躱すとは思ってなかったぞ。」

 ライルビーが嬉しそうに語る。その左手は未だ痺れており、その痺れを消すために話術で時間を稼ぐつもりだ。

「おじさんこそ。今まで僕の鎧に武器を当てたのは師匠以外だとおじさんだけだよ。」

「ほほぅ、それは光栄な事だ。そこまでの力、ここで亡くすには惜しいな。どうだ、我が下に来ないか?」

「行かないよ。僕はおじさんたちのやってる事が許せないんだ。なのに仲間に入るなんてある訳ないでしょ。」

「クッ、言ってくれる…。」

「さ、痺れはとれた?そろそろ行くよ。」

「・・・了解だ。」

 悟られていたことに歯痒さを感じながら、ライルビーは構えをとる。まだ少し痺れは残るが、戦えないと言う状態ではない。何より先程の打ち合いで十分攻められると確信しており、次は容赦なく倒すつもりでいた。

「さて、次は本気で行く。容赦できぬ故、覚悟せよ!」

 そう見栄を切りスッと構えたライルビー。じっとリオンを見つめて勝つための手順を組み立てる。

(先ほどのように攻めて来られると厄介だが、その方が隙が突きやすい。ならば受けに回ってカウンターで倒すとしようか…)

 そう考えているとリオンが何気なく言った。

「長引かせる訳にはいかないよね。うん、ぼくもようやく回復したよ。」

(回復?我が兵士を相手に疲労していたのか…?いや、この者、南より来たはず。という事は亜人たちはどうなった?これ程の手練れならば亜人を放置するとは思えぬ!)

 そう思いライルビーは尋ねようとした。

「貴公、南のあじ・・・」

 しかし言葉は止められる。突如リオンから発せられた闘気によってだ。それは先ほどまでとは全く違い、ライルビーすら身を固めてしまうほどに凄まじかった。

 背筋に冷たい汗が流れる。喉が渇き、血流は激しい。そして今まで感じたことも無い恐怖感が手足を震えさせた。

「さ、待たせたね。本気で行くよ。」

 何気ない言葉。それに対してライルビーは何とか言葉をひねり出した。

「な、何者だ?」

 それに対してリオンは答える。

「さっきも言ったよ。僕はリオン。ただそれだけだよ。」

 最早ライルビーは諦めていた。先ほどまでならば勝てると思っていたが、これほどまでの強大な力を前にしては、どう足掻いても自分は助からないだろう。下手をすれば国にまで被害をもたらすと思い、即座に指示を出す。

「副官っ!勝負後、速やかに獣人は全て解放し全軍退却せよ。いいか、先の全獣人を含めてだ。これは命令だ。」

 そう叫ぶとライルビーは数度深く呼吸をした。そして雑念を振り払うとリオンに向き合う。

「時間を取らせたな。さ、再戦だ。」

 覚悟を決めたライルビー。そうすると先程の恐怖は消え、今は高揚感を感じている。

「ちゃんと攫ったヒト達を返してくれるなら、他を攻撃はしないよ。」

 ライルビーが望んでいることを感じ取り、リオンは約束する。

「感謝する。そして我が最後にこれほどの者と戦えることもな。」

 武人として強き者と戦う喜び。それを貫いた人生であり、その結果将軍まで辿り着いた。そして最後に己では決して辿り着けそうもない闘気を持つ者と戦える。ライルビーは幸せを感じていた。

「武人ベッヘル・ライルビー。参るっ!」

 そう叫んで駆けだす。もう小細工など無粋だ。己の力の一撃を相手に打ち込む。ただそれだけを考えて純粋なる戦士は新たな世界へと旅立った。


 将軍の最期を目にして副官は涙する。

「お見事な最後でした・・・。」

 勝負は一瞬。両者が駆け寄り、リオンのランスが先にライルビーを捕らえ、そして貫いた。

 副官は歯を食いしばるとリオンに向く。

「ライルビー将軍の命令により、獣人たちは全て開放する。そして我らは退却致すので、手出しは無用に願いたい。」

「分かった。でもちゃんと全員解放してね。」

「心得ている!」

 憎しみが沸く。無理難題を言う将軍であったが、尊敬できる人物であった。それを倒した仇を殺したいと思うが、それを良しとしないのは将軍の最後の命令があるからだ。それに自分が立ち向かった所で無駄死にするだけであり、部下たちを窮地に追いやるだけでもある。

 副官としてやるべきことはこの情報を持ち帰り、次なる対策を講じる事である。

「先の輸送車に伝令!今すぐ引き返させろ。そして他の者は退却の用意だ。」

 言うや否や兵士たちは我先にと逃げていく。リオンの闘気に充てられて、恐怖しかなかったようだ。それを目の当たりにして副官は歯噛みする。そんな中、数名の近衛兵は副官の周りに寄ってくる。

「将軍のご遺体は丁重にお運びしろ。」

「ハッ。」

 そう言ってライルビーの遺体へと向かう近衛兵たち。様々な感情が渦巻く中、彼らがいてくれて良かったと思えた。

 ほどなくして先の輸送車が戻った。不満げな兵士たちであったが、ライルビーの最後の命令と聞いて扉を解放する。

 ようやく痺れの取れた獣人が襲い掛かろうとしたが、そこへやって来たマドカの制止で事無きを得た両軍。解放後、ラビューズ軍は言葉も交わさず即座に退却したのだった。


「此度は誠に感謝しかありません。」

 リオンを前にマドカが深く頭を下げた。同時に後ろにいたリュナエクラムの住人約2000名も低頭する。

「どういたしまして。でも、そんなにかしこまらないで良いですよ。」

 リオンが礼を受け入れるとマドカ達は頭を上げた。向こうではシーニャがサーシェスとミムジアナを連れて負傷者の手当てを進めている。ヒトであるシーニャだが、その献身的な救助活動に獣人や鳥人、その他の住人達も態度を軟化させていた。

「それにしてもぉ、ヒトは何をしに来てたんでしょうね~?」

 エフェメルが問いかける。それに対して囚われていたホビット族の男が答えた。

「さっきの奴らが話ししていたのを耳にしたんだが、何でも今まで奴隷売買していた所が止めたため、奴隷を調達しようと軍を出したって言ってましたね。」

 それを聞いてピンときたエフェメルたち。ライディンの影響が早くもこんな形で現れるとは思っていなかったのだった。

「あ~、これはちょっと責任感じちゃいますね…。」

「どういうことなの?エフェメル。」

 思わず言葉を漏らしたエフェメルにマドカが尋ねる。それでライディンの町でのことを話したうえで、エルフの郷の事やここまで来た自分たちの目的まで事細かに伝えた。

 それに対してマドカは再びリオンへ低頭する。

「そうでしたか…。遠路はるばるよくぞお越しくださいました。せっかく来て下さったのですがご覧のようなありさまです。なのでお引き受けするにも先に復興を考えなければならない状態です。申し訳ありません。」

 丁度そこに手が空いたサーシェスがやって来て挨拶を返す。

「こちらこそ、大変な時にすみません。私たちの事は気になさらず、これからをお考えください。」

 サーシェスが言うのも仕方ない事だ。住民はある程度の人数が残った。しかし今までより規模が縮小し、何より住居が跡形もない位に破壊されている。これでは生活していくこと自体が大変である。

「ありがとうございます。落ち着く事が出来ましたら、お迎えさせてくださいませ。」

「はい。」

 マドカもサーシェスも集落をまとめる役割であるため、互いの考えがよくわかる。共に暮らせたら、良い友として町を繁栄させていけそうな気がした。

「ん~、それでしたら姉さんも一緒にまちづくりしてはどうですか~?」

 エフェメルの言葉に二人が顔を同時に向けた。

「どういうことなの?」

「言った通りですよ~。姉さんもマドカさんと一緒に1から町づくりに加わるっていう事です。そうしたら住む場所も出来て良いこと尽くめじゃないですか~。」

 サーシェスの問いかけにエフェメルが答えると、サーシェスは気付いたように「あっ」っと呟いた。一方マドカは別の質問を投げかける。

「でも、共に生活するとしてここはもう住めないわ。まずは新しい土地から探さなければならないのよ。」

「ですね~。そこでマドカさんに相談です~。」

 不思議そうに見つめるマドカ。そこでエフェメルはリオンの方に向いてウインクする。しかし、リオンは何の事だろうと首をひねった。

「ちょっとリオン君~、エルディヴァン殿との約束を忘れたんですか~?」

 そう言われてリオンも思い出した。

「あっ、そうだった!」

「あらあら~、リオン君もそう言うとこあるんですね~。それじゃ私から話しますね~。」

 そう言ってエフェメルはライディンの長エルディヴァンの話をする。彼自身が今回人身売買を取りやめた経緯やそこにリオンが携わっている事。そして種族の垣根を越えた街づくりと、その為にリュナエクラムの長と話したがっていると言う事をそのまま話した。

「そのような事が…。」

 マドカは驚く。そしてその話は真実だと捉える。

 エフェメルとは旧知の仲だ。南のダークエルフの集落から旅立ち、この町にも時々寄って様々な情報を教えてくれたりするマドカ自身にとっても大事な友人である。

 そして今回連れて来た強力な力を持つリオンと言う少年。先ほどの話の中であのレッドドラゴンの弟子と聞かされたが、それで色々納得できる位に強力な少年である。

 強者故にその存在を肯定すると言う考えが獣人にはあり、リオンが言うのであればその話に乗っても良いと思う。しかしその為にヒトと共に暮らすと言う事に引っ掛かりが出来る。

 このような状況に追い込まれたのはヒトのせいである。そしてこれまでもヒトには多くの迫害を受けて来た。だからこそ、バーデュンやホビット族たちと共に自分たちを守る生活の場を作ってきたのである。それがつい先ほど砕かれたところなのだ。

 ヒトを信じられない気持ちがある以上、マドカはその話を受ける気にはなれなかった。それはエフェメル自身も理解できる。

「先ほどの件のすぐ後ですからぁ、マドカさんが受け入れられないのは解りますよ~。でも、私やリオン君はそのヒトを信じて良いと思ったんです~。」

 エフェメルの言葉を疑うつもりはない。でも彼女はずっとヒトと付き合ってきているからこそ、ヒトを信じることが出来るのだと思う。今まで敵対していた限り、すぐにはそういう訳にはいかないものだ…。

 黙り込んで難色を示すマドカ。これ以上はどうにも手立てが見つからないとエフェメルはリオンと困り合う中、それを一変させる者が駆けて来た。

「おかぁしゃま~。」

 垂れた犬耳を揺らせながら小さな犬ヒトの子どもが走って来たのだ。そして勢いよく跳ねると、マドカの胸元に飛び込み、母親はしっかりと抱きしめた。

「ワオリ、今は大事なお話してるのよ。」

 マドカが強めに注意するとワオリは眉を下げる。

「ごめんちゃいでしゅよ。」

「はい、ちゃんと謝れたわね。・・・?その頬はどうしたの。」

 ワオリの頬には小さなテープが貼られていた。するとワオリは向こうの方を指差して言う。

「あのおねえちゃまに、手当てしてもらったでしゅよ。木の枝がかすっただけでだいじょーぶって言ったでしゅが、お顔は大事にしなきゃねってお薬ぬってもらったでしゅ。」

 見れば、シーニャの周りに子どもたちが集まって傷を手当てして貰っていた。その周囲にはそれまで死にそうだったものが穏やかに横たわっていたりする。

「そうだったのね・・・。ちゃんとお礼は言ったの?」

「もちろんでしゅよ!」

 胸を張るように言うワオリの姿にそれを見ていた者たちの心が和んだ。

 そこにエフェメルが言葉をかける。

「シーニャちゃんはヒトですがぁ、ワオリちゃん達を見てすぐにここを助けようって言ったんですよ~。

 それで私はぁ「同族を殺すことになる」って言ったんですがぁ、平和に暮らすヒトを脅かすのは正しくないからって言ったんですよ~。

 ヒトにだって良いヒトもいれば悪いヒトもいます~。だから、マドカさんがぁ一度エルディヴァン殿と話してみてぇ、信頼できないとなったら別の場所を一緒に探しましょ~。話し合いには私も立ち会いますからぁ、まずはそれからでどうですかぁ~?」

 そう言われては断る訳にはいかないし、話しても良いとは思った。だけどちょっときっかけが欲しかったマドカは、胸にいる娘にそっと尋ねてみた。

「ねぇワオリ。ヒトと一緒に暮らせるか相談してるんだけど、母はヒトとお話しても良いかしら?」

 するとワオリは垂れた耳を一瞬立たせ(その後すぐ垂れる)期待を込めたキラキラ眼で捲し立てた。

「お話するでしゅよ!さっきお話して聞いたでしゅが、ヒトの町はおいちぃものとか色んなものがいっぱいあるらしいでしゅよ。仲良しになれるでちたら、それがイチバンでしゅよ。」

 馬車で移動している中で聞いたのだろう。かなり前向きな意見にマドカが断る理由など最早どこにもなかったのだった。


 こうしてリュナエクラムの集落は地図から消える事となった。しかしそこに暮らしていた様々な種族の者たちは持てる荷物を手にリオン達と共に南下する。

 獣人たちの足は速く、ホビット族もまた走るのに特化した種族であって5日目にはライディンの北に辿り着いた。

 そして広い平野にリュナエクラムの住民たちがテントを広げると、リオン達はマドカを連れて町へと向かった。すると町の門ではエルデュヴァンとトーマスが立っており、警備兵たちが召集されていた。

「リオン殿!突如多勢の獣人が現れて驚きましたよ。」

 エルデュヴァンがリオン達を見つけて語りかけた。

「あ、ごめんなさい。いきなりだったから驚かせちゃったね。」

 リオンも兵たちが集まっていた理由を察して謝った。

「いいえ。リオン殿の馬車が見えたから私も慌てて出迎えに来た所です。…おや、そちらの方は?」

 エルディヴァンの視線がマドカを捉えた。そこでエフェメルが先に言葉を発する。

「リュナエクラムの長さんですよ~。」

 そう言われて周囲の者たちが驚く中、エルディヴァンは皆を下がらせながら前に進み出た。

「これはこれはようこそライディンへ。私がこの町を治めるエルディヴァン・ライドリュンと申します。」

 そう名乗って一礼を示した。その姿に一部の町の者たちは何故町長が頭を下げるのかと不満を抱いたが、それによってマドカは緊張を少し緩める事とした。

「これは丁寧な挨拶を痛み入ります。私はリュナエクラムの長マドカ。この度はわが友エフェメルより貴公からのお誘いの話を受け、訳あって住民たちとこちらまで参りました。突然の来訪に気を害させて申し訳ありません。」

 こちらもまた丁寧にあいさつを返す。キツネの耳と尻尾を有するマドカであるが、その姿は美しく品のある仕草に町の男たちは鼻の下を伸ばしたほどである。

「それでねエルドおじさん。後で事情話すから一先ず連れて来たヒト達をあそこで休憩させてあげて欲しいんだ。」

 リオンに言われて断ることなどできるはずもない。エルデュヴァンは承知すると、トーマスにその旨を伝えてリオン達を邸へと迎えるのだった。


「なるほど、そのような事が起きたのですか。」

 邸に付いて応接室に通されたリオン達。そこで働く者たちがマドカを見て驚き、次第に涙を見せた。マドカもまた驚き、それぞれに声をかける。

 そして通された広間。以前の夕食会をした場所でエルデュヴァンを前にシーニャ、リオン、マドカ、エフェメルの順に座っている。サーシェスやミムジアナはリュナエクラムの住人達の手伝いに残った。

 そしてそこでマドカの背後には邸にいるメイドや使用人が並んでいる。元々リュナエクラムで住んでいた者が多く、マドカの姿を見て嬉しさのあまりに覗き込んでいた所をエルデュヴァンによって部屋の端で待機しているよう命じられ、一同に並んでしまったのだった。

「はい~、まさかあのような事が起こるとは思っていませんでしたね~。」

 エフェメルが一通りの出来事を話し、今に至っている。

「それにしても、これほど多くの仲間がいたとは…、貴殿には礼を申します。」

 邸で働く者たちを見てマドカが礼を述べる。実際言葉を交わす中で、無理強いなどではなく、ここでしっかりと自分たちの意思で生活できていることを知り、マドカはエルデュヴァンに対する評価を上方修正している。

「とんでもない。今では彼、彼女たちに支えられて生活できているのです。その辺りについてはお気になさらず。」

 互いに気兼ねなく言葉を交わせるようになったところでティーカートが入ってきた。そしてそれぞれにお茶を配るのだが、この際メイドたちがマドカにお茶を出すために静かな攻防を巻き起こしていた。

「これ、お客様を前に失礼であろう。」

 流石に見かねて主人から叱られたメイドたちはしゅんとなった。結果、カートを押してきたメイドがお茶を用意する事となった。

「それにしてもこの者たちがここまで自分を押し出すとは…。すごい人気ですな。」

 エルデュヴァンの言葉。その言葉にマドカはメイドたちに視線を配ってから答える。

「とんでもない。久方に同胞を見て喜んでおるのでしょう。私も正直こうして元気な顔を見れて嬉しく思います。」

 そう言葉を交わしてエルデュヴァンは話を進めることにした。

「それでは、改めてお話を進めさせて頂こうと思います。

 私はリオン殿の考えに基づき、この町を大きくすることを目指しています。そこにはヒトだけでなく、様々な種族の方と共存できることを願っています。

 先に申し上げておきますが、以前までは私も獣人の方々に苦汁を飲ませてしまった事があります。その代表的な事が人身売買を目的としたオークションであり、中には幼い獣人に嫌な思いもさせてしまってます。

 ですが、リオン殿によってそれらの問題は解消されました。人身売買は取りやめ、これからは共に生きていきたいと思っております。

 その辺りをふまえ、マドカ殿はどのようにお考えかお聞かせいただけますか?」

 真剣な顔で話され、マドカも気を引き締めた。これから話すことによって自分を含め、生き残った2000名の命運を左右することになる。だからこそ、中途半端な態度は出来ないと決意した。

「正直申し上げます。私自身はまだヒト全てを信用できません。」

 その言葉に聞いていた者たちが驚きを見せる。そしてエフェメルとシーニャは残念な表情を浮かべ、邸で働く者のほとんどが悲しそうにしている。その中でエルデュヴァンは表情を崩さずしっかりとマドカを見ていた。

「それはつい先日の出来事が理由にあります。我らの集落を襲ったのはヒトの軍で、彼らは我々の同胞を捉えて奴隷にしようとしておりました。それに対抗して我々は戦いましたが、同時に背後から亜人たちの大軍が攻めて参りました。

 我々は共にまず亜人を倒すよう要請しましたが、彼らはそれを拒否し、しかも亜人たちと共闘するかのように我らを追いこんできました。

 それによって多くの同胞が亡くなりました。また、ヒトに対抗し続けて亡くなった仲間も多くいます。」

 その話に部屋の中は重くなっていた。

 ただ、お茶菓子を食べるリオンの咀嚼の音だけが鳴り響く…。

「そんな中で子どもたちを逃がす事にしました。親として子と別れる辛さはあの時初めて知りましたが、想像以上に悲しいですね…。

 ですが、そのおかげで私たちは救われました。子どもたちがリオン殿たちに出会ったおかげで、我々は九死に一生を得ました。

 本当にリオン殿たちには感謝しております。

 …そしてそこでまた知ったのですが、リオン殿たちが私たちを助ける様に言って下さったのがシーニャ殿でした。しかも傷ついた我々皆の命を繋げて下さったのもシーニャ殿です。そう、ヒトであるシーニャ殿が同族を敵に回して我らを救って下さったのです。

 そこで私は困惑しました。我々の命を奪ったのがヒトであれば、我々を救ったのもヒトです。ではヒトとは一体どのような存在なのかと・・・。」

 名前を出されてシーニャの頬が赤くなっていた。

 そんな中、リオンのお茶をすする音が鳴り響く…。

「そんな迷いの中でエフェメルから貴方のお話を聞きました。それでお話だけでもと思い、行き場のない皆を連れて押しかけさせて頂きました。

 驚かせてしまったのは誠に申し訳ありませんでした。

 でも、これまた正直な気持ちを述べますが、門で迎えられた時、多くの武装した兵士たちがいたのを見て、やはりヒトとは戦わねばならないのかと思ってしまいました。」

 ここでエフェメルが口を挿む。

「そこはマドカさん・・・」

「ええ、解ってるわエフェメル。私たちだっていきなり軍勢が攻めてきたらそうするでしょう。

 でもね、そこまで気持ちが弱っていたのよ。いっぱい考えながらここまで付いて来たの。」

 そう聞いてエフェメルは口を塞いだ。それを確認してマドカはエルデュヴァンに再び顔を向けて話す。

「そんな気持ちのままこのお邸にお邪魔しました。するとそこには私の知る顔がいっぱいありました。

 今後ろにいる同胞たちです。もういなくなってしまったと諦めていた者たちがこうしてイキイキと暮らしているのを見て、更に私は困惑しています。

 一体ヒトとはどのような種族なのかと・・・。

 でもその中で私はシーニャ殿や貴方を信用していいと思っています。ヒトと言う種族で考えず、個人的にそう接していいと感じているのです。

 ですから、まずはお互いを知っていく様にできれば、我々は共に生活することも可能ではないのかとも考えております。

 後ろの者たちは自らあなたと主従関係になっておりますが、主従関係などではなく、互いに手を取り合える仲になれればと切に願っております。

 私の単なる我が儘に過ぎませんが、そのような考えでも良いのでしたら、どうか共に進んでもらえませんか?」

 そう述べてマドカは口を閉じた。

 その話に周囲の者たちは身を震わせた。自分たちの故郷で仲間が大変な状況になっていた事を知った怒りや悲しみがあった。そんな中で懸命に同胞を思うマドカの優しさ。そして自分たちの姿を誇らしげに褒めてくれた言葉。

 邸で働いている者たちは敬い慕うマドカの称賛に喜び涙を流した。また、シーニャやエフェメルもその言葉にうっすら涙を浮かべて微笑む。

 エルディヴァンは深く頷き立ち上がる。そして右手をそっと差し出しながら言葉をかける。

「その信頼を損なわぬよう努めることをここに誓いましょう。種族の垣根を越えて共に暮らせる未来を築くためにも宜しくお願いします。」

 握手を求めるが、それにどう対応するか分からぬマドカにシーニャが声をかけ、ようやく立ち上がったマドカはその手を握った。

「こちらこそ、お願いします。」

 こうしてライディンは新たな仲間を迎え、より大きな街へと成長していくのだった。

 盛大な拍手の中、お菓子を欲しがったリオンはシーニャに叱られてしょんぼりしたのだった…。

お読み頂きありがとうございます。


相変わらず遅くなってしまい申し訳ありませんでした。


前回からの流れで、少し戦闘シーンを考えていたのですが、リオンがやられるという状況がイマイチ想像できず、今回のような形にしました。

あと、ライルビーをもう少し生き永らえさせようかと思っていたのですが、読み返して兵士たちの態度と矛盾がひどくなったため、戦士としての最後を迎えて貰いました。

そして最後の部分、マドカの言葉をこの回では重用させたいと思っていたので、色々とまとめるのに時間がかかったというのが今回のいいわけです(汗)


これからも掲載までちょっと長くなるかもですが、出来るだけ早く掲載できるようにしますのでお待ちいただけたらと願っております。


最後にあともう少しで1幕が終わります。

ここからライディンがどうなるのか。そしてエルディアとの約束。

そして第2幕の用意も進めております。


今後も楽しんで頂けますよう頑張りますので、どうぞよろしくお願いします。

それではまた次回まで失礼します。

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