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The Law of the World  作者: k2taka
第1部
3/93

続く世界の争い(序章)


 広い部屋。その中央には円卓があり、取り囲んで座る者たちがいる。

 窓のない仄暗い部屋にいくつものロウソクの明かりが淡く輝く中、その灯りに浮かぶ座する者たちの表情は一様に暗い。

 やがて、上座に座る老人が深いため息の後で呟いた。

「ふむ・・・。どうやら事態は思わしくない様じゃな。」

 先ほどの報告を聞いて、そこにいるみんなが同じ思いを抱いているのを代弁した。その事を理解していても、認めたくない一同は何の素振りも見せない。中には頑なに表情をこわばらせている者もいた。

「…6年前のゴブリンどもの襲来。退けはしたが、あれを機に亜人どもは再び勢いを増しておる。しかも奴らは『シュラハティニア大陸』中央部で城を拵えおった。…このままでは『封印』を解かれてしまうぞ。どうにか対策を立てんといかんぞ!」

 先ほどの老人が険しい表情で促す。その言葉に対面でいた体格のいい初老の男が言い返すように口を開いた。

「それは言われずとも分かっておる。だからこそ、どうすべきかを話し合いに来たのではないかっ!」

 怒りをぶつける様に叫ぶ。そのあまりの剣幕に隣にいた老女が、困った顔を向けて男を諭す。

「グフト様、落ち着かれませ。エンデル様は我らの代わりにおっしゃっただけですよ。」

 柔らかなその言葉に対し、『グフト』と呼ばれた初老の男は、その緑色の瞳で睨む。

「分かっておる。だが言葉にせずとも、ここに居る誰もがそうならぬ様考えておるはずだ!」

 聞きたくない言葉を聞かされた怒りを、この中では大人しい老婆にぶつけた。途端、老婆はビクッと身を震わせてから俯いてしまう。それを見て、グフトは慌てて言葉を取り繕う。

「あ、いや、あなたを責めているわけではありませんぞ、ヒュナン殿。そんなに悲しまないで下され。あ〜、そのぉ、怒鳴ったりして申し訳ない。」

 直情的な為、老婆を悲しませた罪悪感を感じて、グフトが取り繕う。

 すると『ヒュナン』は笑顔を見せて明るく答えた。

「ふふふっ、それでは少し皆で考えましょう。エンデル様も言葉には気をつけてくださいね。」

 先ほどの悲しげな姿が嘘のような表情に、グフトは少し苛立ちながら憮然とし、衝突の原因を作った『エンドル』も、長い付き合いだけにヒュナンの言葉に従うことにした。

「…気をつけよう…。さて、亜人たちの動きに対して『神仰』側はより信仰を高め、結界を強めようとしている。だが、どれほど結界を高めようと、今の世界にはデュリュヴ(悪魔信仰者)が存在する以上、期待は難しいだろう。」

 今までは信仰心で強化されていた結界も、デュリュヴ側の存在によって、以前よりも弱まっていることは明白だった。それは亜人たちが活発になることで証明している。

「世界中の国々が手を結べば、この事態を改善しうる事も出来るだろうに…。」

 眼鏡をかけほっそりした老人が言う。その言葉がかつて、この世界の未曾有の危機を救った『聖なる軍勢』を意味していることは、ここに居る誰もが容易に理解できた。


 亜人の現れる以前の時代、世界は未曾有の危機に陥った事がある。亜人より強力な存在『悪魔 ハーヴェンクロー』の封印が解かれた時だ。

 その悪魔は瞬く間に周辺の大地を灼き、近くにいる生物の命を弄ぶように奪っていった。また翼を持つため各大陸を渡り、その魔力と力でそれぞれの町や村を焼き払ったりもした。

 その危機に対して世界中の精鋭たちが集まり、最終的にハーヴェンクローを再封印したのだった。


 そんな歴史の事例も、300年も経った今では容易い事ではない。

 せっかく築いた協力体制は、それぞれの思惑や理念、それに文化の違いから、最早夢のようなおとぎ話になっている。

「獣人たちはまだしも、エルフは難しいでしょうね。」

 ヒュナンが諦めの愚痴を零す。これもまた、歴史における事件が招いたことだ。


 そもそもこの世界は『ヒト科』とされる人種の中で、いくつかの種類に大別される。

 大陸で最も多いこの会議に集まっている『ヒト系』があれば、敵対する『亜人系』もヒト科である。

 この他に、ネコやウサギとヒトが混じった『獣人系』がいたり、森に住む長寿種族の『エルフ』や地底に住む『ドワーフ』といった『精霊系』、エルフを小柄にした『ホビット』のような低身長の『小人系』などに分けられる。

 種族別でそれぞれ違った能力や文化を持っているが、取り分けエルフは長寿ゆえに知識も深く、プライドが高い。そんな彼らとヒトの間で僅か数十年前に大事件が起こったのは、ここに居るメンバーの誰もが記憶に留めている。その事件によって、現在エルフとは交渉の席が持てない。と言うのも、エルフが『魔法』によって、その姿を消してしまったからだ。


 この世界には『魔法』がある。それは神や悪魔が使っていたもので、人類が誕生した時、神は力の弱いエルフに対して魔法を授けたとされている。

 実際の理由は定かでないが、それからこの千年近くを練磨してきたエルフは、他の種族に比べて魔法に精通している。それから二百年後にヒトに伝えられたが、その時間差は大きいものであり、ましてやまだ寿命に達していない彼らは、より高い魔力を有している。そして、彼らしか使えない魔法も多く存在する。

「悪魔が復活した時、彼らの魔法は悪魔に対して有用な力だった。だが、今は我々だけで十分対応することはできよう。ましてや、あの事件はエルフが引き起こしたもの。こちらが下手に出る必要もない。」

 さっきまでと違い、エンデルの口調は厳しさを孕んでいた。

 彼の言うとおり、かつて起こったその事件で、向こうの強硬策はこちらに大きな被害をもたらしたのだ。だからこそ、ほとんどの者がその意見に納得していた。

 そんな空気を一変させるように、一人の女性が口を挟む。この中では唯一、年齢の若いその女性は、口元をフードで隠し、レザーアーマーを着込んだ姿でいる。更に深々と椅子に座り、足も腕も組んだ姿はふてぶてしくさえ感じる。

「今は封印の警護についての話ではなかったかな?」

 そう言われて、皆が咳したり、居住まいを正した。

 ここに居るメンバーは世界でも指折りの人物ばかりである。若輩者の言葉だが、確かな能力を有するその女性の言葉に目くじらを立てる者はいなかった。

 そして議長たるエンデルがまとめるように語りかける。

「…ブリュム殿の言うとおりだ。我々の目的は世界の維持。故に世界にある5つの封印については絶対に守らねばならん。

 予言によればあと二十年のうちに(わざわい)が起こるとされている。私はもうすぐ退位し、後継者に引き継ぐつもりじゃが、この予言だけは何としても阻止すべきと考えておる。幸いシュラスティニアは封印がないが、あれをそのまま放置すれば、世界中に飛び火しかねん。

それで私からの案なのだが、彼奴らの城へ斥候を送ってはどうか?ゴブリンの特性を考えれば、奴らがあのような大きな城を構えるのは理解しかねる。」

 その言葉に一同が互いの顔を見合わす。その中で、ブリュムという女性が、相変わらず腕を組んだ姿勢で問う。

「理解できぬとは、どの様な事なのです?」

「ウム。そもそも野生で活動するゴブリンだ。こそこそと隠れ住む様な彼奴らに城は必要か?ましてや頭脳が優れている訳でもなく、器用という言葉にも無縁な存在が、なぜにあのような巨大な城を築けるのか?私はあそこに指揮するものがいると思っておる。」

「もしや悪魔がっ!」

 周囲がざわめき、グフトが声をあげる。だが、エンドルは首を左右に振って見せた。

「否、奴らならばもっと魔力が働き、瘴気で大地が腐っていくだろう。」

 そう言ってエンドルは難しい表情をテーブルに落とす。何かを確信しているような趣き。だが、その口は開かれない。

 業を煮やしたグフトが先を促そうとした。その前に、細身に眼鏡の老人『リーディン』が尋ねる。

「新たな亜人の出現か?」

「ウム。確証は無いがな。」

 一同が重い空気を発した。新たな亜人の発生。それは敵に新戦力が加わるということ。更に言えることは、ゴブリン達を指揮し、巨大建造物を建築させるだけの知識と指導力を有していることが分かる。

 その説明にブリュムが立ち上がる。

「なるほどな。ではその任務、我ら『隠密ギルド』が承る。当然、奴らの動向も見張らせておこう。」

「ウム、よろしく頼みますぞ。」

 その返答を聞くや否や、ブリュムはそのまま戸口へと向かって行ってしまった。

 優先すべきことだと判断した為、至急行動に移るためだった。一人抜けたことで、この会議は自然と閉会することとなるが、それはいつものことであり、残った老人たちは世間話をするように会話を続けた。

広くも薄暗い部屋で開かれる今期の『定例会議』は、こうして閉幕した。



 世界中には様々な国があり、それ以外にも自治領として城塞都市なども存在する。そうした権力に左右されない組織として、世界中には多くの職業組合=【ギルド】が存在する。

 ギルドは戦闘や経済など営んでいる一方で、裏方的な仕事を熟すギルドもある。そんなギルドの長である『ギルドマスター』が定期的に集まって話し合い、世界の行く末を見守っているのである。そのため、世界はギルドによって守られているといっても過言ではない。そんなギルドマスター達は、現在最も世界に多く生存するヒト系の存続と支配の維持を優先している。


 会議室からひと足早く出てきたブリュム。薄暗い部屋から日射し射し込む明るい空間に出ても、表情を変えることなく天井の高い廊下を進む。大きな窓の外は緑が美しいが、彼女の気を引くことはなかった。

 やがて渡り廊下を抜けると、白塗りの壁で作られたホールに出る。そこには副官たる二人の男女がいた。男の方はどっしりした体格で、眉間にしわが寄るほど不機嫌な顔をしていいる。

 片や女性は暗い青の肌にパールサンド色の髪をした細身な女性で、ギルドマスターを見るや駆け足で近寄る。その女性的な部分は豊満で、男だと視線に困るほどである。

「お疲れ様でした。ギルマス(ギルドマスターの略)。」

 ブリュムは目礼して応えると、止まることなく先へと進む。その後ろに男女は付いて行く。ちょうど上から見れば正三角形の形に進む三人の先頭で、ブリュムが振り返ることなく呟く。

「我らに任務が下った。シュラハティニアの『ダーケルハイト』に斥候を送れ。」

 その言葉に男の顔は変わらないが、女の方は一瞬目を開き、すぐに微笑みを浮かべた。

「分かりました。攻める準備ですか?」

「否、あくまで偵察だ。議長の話だと亜人どもをまとめる奴がいるらしい。新たな種族の可能性もある。動向と一緒に探らせろ。」

「了解です。」

 女は応答すると、右掌を天井に向け、そこに何かがいるかのようにぼそぼそとした声で語りかける。そうした行動の横で、ブリュムは男に話しかける。

「ガング。」

 名前を呼ばれた険しい顔の男は視線を向ける。いつもの様に返事はしない。その視線を感じてか、ブリュムは話を続けた。

「お前は別隊を率いて西側から行け。可能なら殲滅しろ。」

「…よーどー(陽動)か?」

 アクセントのないぶっきらぼうな太い声。話の苦手な『ガング』はそう尋ねると、ブリュムは視線を向け頷いた。

「それもある。だがそれより気になるのが、ゴブリンがどう対応するかということだ。いつもどおりなら問題ないが、城を築いたということは、それなりの知識を有する者がいるということだ。ゴブリンたちに要らぬ知識を与えているやもしれんから、それを確認してくれ。」

「わか、た。」

「暴れるだけ暴れろ。ただし無茶はさせるな。こんなことで死なせるわけにはいかんからな。」

 そう言うと同時に、暗い青肌の女が手を元に戻す。

「ギルマス、20人ほどを用意しました。10名は先に潜ませて、残りはガン君たちと一緒に向かわせます。別動隊はアジトにいた200名だけですが?」

 その言葉にブリュムは満足げに褒めた。

「うん。エフェメル、ご苦労様。」

「ありがとうございます。」

 褒められて満面の笑みで返す『エフェメル』。こちらはガングと違って表情豊かで喋りも達者だ。だが、如何せん行き過ぎる事があるが…。

「それよりガン君、ちゃんとギルマスに返事しないとダメですよ。」

 早速始まる。エフェメルはガングを子供扱いする。実際、彼女は年上である。それもかなりの年上である。ガングはマスターよりも年上だが、二人を足してもエフェメルには全然足りない。と言うのも、エフェメルは『ダークエルフ』なのである。


 いわゆる『精霊系』と呼ばれる他種族なのだが、彼女は精霊系とは思えないほどヒト懐っこい。と言うのも、彼女は生まれて暫く(と言っても数十年)は部族の中でいたが、好奇心にかられて集落外に出た所をゴブリンたちに襲われた。

 ダークエルフは『エルフ』と袂を別った種族で、『大地の神 ライタン』を信仰している。故に暗い洞窟や地底へ行くことが多いため、本来の白い肌は暗い肌の色へと変わり、今では生まれながらに暗い青色になっている。そして、エルフと違い様々な栄養素を摂取したため、エルフよりも豊満な肉体をしている。

 それがダークエルフとしては幼いとされるエフェメルだったとしても、永遠という寿命を持つ精霊族たちは老いを知らない。そのため、ゴブリンにすれば性的欲求を満たす存在だった。そして連れ去られる時、彼女は当時の隠密ギルド長に救われたのだ。

 以来、彼女はこのギルドに身を置いている。最初はそのギルドの長に従っていたが、ヒトが寿命を迎える事を知り一時期は集落へ戻った。だが、ギルドでの日々が刺激的だった彼女は再びヒトの社会に戻った。

 そして今、彼女はブリュムに付いている。と言うのも、このギルマスは世話になった先代の可愛がった少女だからだ。だからずっと仲良く過ごしてきた。そして彼女がギルドマスターになった時、彼女自身の願いで副官となった。

 そこでもう一人付いたのがガングだった。彼はブリュムよりも無口だったため、何かに火が付いたように彼女は話しかけているのだ。


「エフィー、それくらいにしてやれ。」

 構いだしたら止まらないエフェメルに戸惑うガング。そんな彼にブリュムが助け舟を出すと、エフェメルは空返事をしながら正面に向いた。

 既に建物を出て、そのまま街を進む。石畳の道路に、カラフルなレンガ造りの建物が並んでいる。ここは魔法都市。魔法使いギルドの拠点がある『魔法宮殿 マギルパラティス』のある研究の街だ。ちょうど先ほど出てきた建物がそれであり、今回はエンデルが議長だったため、この地でギルド長会議を行ったのだ。

 ここは世界中の魔法使いが憧れる魔法研究の最先端で、カラフルな建物はその色に因んだ魔法の研究施設である。


 ここで魔法について説明をすると、魔法と言えば何でもアリと言う訳ではない。

この世界の魔法は『マナ』という魔法力の源を糧として、超常の現象を発生させる事を指す。故にまずはマナの所有量が関係する。

 種族の問題や個人差はあり、誰もが魔法を使えるわけではない。マナ自身は誰もが所有しているが、生命力に基づくために過度の使用は死に繋がる。だからマナを消費して死ぬことが無いよう、致死的状態において魔法は発動しない。

 他に魔法を使うためにはその『理』を覚える必要がある。それを理解し、そのイメージが働かなければ魔法は繰り出せない。

 例えば魔法の中には松明の代わりに灯りを灯す魔法がある。これは光を作り出すために、ある一定のマナを作り出し、そこに光の元素を呼び込む作業をしなければならない。

 ではその光の元素はどのようにして生まれるか。また、その元素にどのような働きを与えるかを細かく指示しなければ使えない。勿論、魔法による他への影響なども熟知しなければ、大災害を起こす危険もある。大災害とはならなくても、殺害や違法行為を行うことも可能だ。

 こうした様々な情報や事例を研究し、魔法を安全かつ便利に扱えるよう研究しているのが魔法都市なのである。今も向こうの建物の方で大きな爆発音が鳴ったが、この街の研究棟では日常当たり前のことなので、いちいち気に留める者はいない。

 ブリュムたちも同様だが、少ししてエフェメルが二人に言った。

「さっきの爆発は薬の制作に失敗したんですって。何の薬だったんでしょうね。」

 興味津々なエフェメル。ブリュムはため息を吐いて視線を向けた。

「エフィー、あんまりここで精霊魔法は使うな。感付いて人だかりなどできては厄介だ。」

「は~い。」

 またも空返事気味だが、大好きなブリュムの頼みに好奇心を押さえるエフェメルだった。


 この『精霊魔法』と言うのは、この世界の元素に宿る精霊を操る魔法の事で、この魔法に関してヒトは理解できない。と言うのも、一部の人種しか精霊と会話出来ないからだ。

 今、エフェメルは『風の精霊』と会話したのだ。

 さっきも会議から出たブリュムに言われて使い、隠密ギルド本部に斥候と遊撃隊を用意させるため、数百キロ離れたギルドへ言葉を運んだのだ。

 その結果を向こうの精霊使いがこちらへ運ばせたので、先ほど報告も行えたわけである。さっきは魔法宮殿内という事もあり、他者の目は気にする必要は無かったが、街の中だと僅かなマナの動きさえ感付く者がいる。そういうヒトの魔法使いは、その解明を試みたがると言う訳だ。

 そしてブリュムは視線をそれぞれに向けながら命令を下す。

「ガングはこのまま宿に残り、迎えの船と同時に向かってくれ。私とエフィーはこのままギルドへ戻る。」

 マスターの指示に両者が頷く。そして街の入り口で別れた女性二人は、その先にある港へ向かう。二人はマントに就いたフードを被り、『ポトラマ』行きの船に乗り込んだ。そして一般客に紛れながら大型客船に乗り込んで行った。


 惑星エアルス…最大全長約20,050キロの楕円形小型惑星。海と陸地が同じくらいの面積があり、5つの大陸と小さな島々が海に浮かんでいる。

 一年は360日。一月は60日あり、月の呼び方はそれぞれ『ブルーム』『サーリム』『シーヴァス』『レリーブ』『フェースティン』『ダーマン』とそれぞれの時期に因んだ神の名で呼ばれる。

 太陽と二つの月があり、1日は24時間ある。自転による太陽と月の流れによるもので、公転と季節によって月日が変わっていく。月は大小に分かれ、それぞれ『大月ダイゲツ』と『小月ショウゲツ』と呼ばれる。大月が外側を回るため、両方の月が綺麗に満月で重なる日を月の変わり目としている。

 そもそもこの星は出来て間もないと言われている。元は水に覆われた惑星だった。数千年前にその上空で神と悪魔がおり、小さな島では多くの動物たちも暮らしていた。

やがて神は大地を作った。恵みをもたらさんと作られた大陸。そこで悪魔は暴挙に走り、世界を我が物にせんとした所で神と衝突。結果、神側が悪魔を異次元の世界へ封じ込めた。だが、傷ついた神たちも肉体が限界だったため、肉体を戦いによって壊れた星に捧げ、同時に産みだしたのが我々ヒトだと言う。以来、この地上は我々ヒトが生活している。

 以上が幼きよりヒトであれば必ず耳にするこの世界の始まりのお話。

 それから数百年。それぞれの地で文化を作り、多くの種族が文明を築き上げた結果、世界は変化を続けていく。だが、一方でヒトの欲望も増していき、大陸によっては争いの絶えない状態が続いている。そしてそのような状態が、悪魔の存在を呼び覚ましてしまう。

 光天歴666年。冒険をしていた者が、興味本位である祠の鏡を割ってしまった。それによって現れたのが悪魔ハーヴェンクローだった。

 愚か者の行いによって世界は暗黒に傾きかけたが、世界中が手を取り合った結果、悪魔は封印できた。しかし、それから数年後、世界にゴブリンたちが現れる。ハーヴェンクローによって封印が弱まり、悪魔側のヒト種である『亜人系』が誕生してしまったのだ。

 以来、亜人たちとは戦いの日々が続いている。同時に、ヒトはまたも己の支配欲に任せて戦争を行う。これはそんな世界が広がる星の話である。


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