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The Law of the World  作者: k2taka
第1部
25/93

mistake

 時間は過ぎて行った。

 夜はすでに明け、太陽が昇り始めた。

 西側へと避難した者たちは地面に雑魚寝したり、壁にもたれながら身を寄せあって夜を明かした。

 緊急の炊き出しが行われ、備蓄していた食料によって一先ず、食事に関して数日は持ちこたえられそうだった。

 だが、そうした間も懸命に作戦会議は行われた。

 下手に攻撃をして藪蛇を突いてはいけないと、都市の港側から8kmは立ち入り禁止とした。

 瓦礫と化したその地で、海魔である海神の妹『ティリュース』はただ静かに瞳を閉じ、姿勢を崩さず佇む。

 朝の陽ざしを背に受けながら佇む海魔の姿。

「こう言っては何だが、女神であったと信じられる美しさだな、女性的な部分は。」

 それを見ていたグフトが呟く。

 ここは都市中央にある議事堂の最上にある物見の間。

 今はアルフェ―サーと二人だけだ。だからこその発言でもあった。

「不謹慎ですよグフト殿。・・・まぁ確かに美しいですがね。」

 アルフェーサーが資料を見ながら注意する。

「あぁ、正直あれほどの質量を維持していることが神の偉業と言わざるを得ないな。

 しかも、物理攻撃も魔法も効かないとすれば、本当に手段はあるのか?」

 配給された黒茶を口に含みながらグフトが問う。それに対してアルフェ―サーは不敵に笑う。

「今のところは…。ですが必ず作りますよ。」

「ほぅ。その言葉は心強いな。ならば我らはその策に乗るまでだ。その時は遠慮なく言ってくれよ。」

「はい、頼みます。」

「ウム。では我は少しニルベス殿を見てこよう。」

 そう言い残して部屋を出て行った。

 あれからニルベスは再び怯え、動き出した若者たちに説教を始めた。

 しかし誰もその言葉に耳を貸さず、すっかり意気消沈したニルベスは控えていた歴史機関の者たちに連れられて、議事堂の一室で軟禁している。

 万が一にも外で要らぬことを言われないようにとの配慮だったが、一段と老けたその様子では、出て行く事はないだろう。

 逆にこの騒動の後で、再び歴史機関の活動ができるかどうか心配なほどであった。

「ま、何にせよ今はそれでいい。本来はもっと情報をくれたらありがたいのだが、無いものねだりは出来ないな。」

 そう言ってまた資料の束をめくる。

 今見ている資料は、海神トリスタンを崇める『トリトン教』から借りた資料だ。

 海洋に関わる敵なので、都市にある教会から急ぎ借り受けたのだった。

 実際、数名の司祭はあの姿に当たりを付けているみたいだったが、今の現状でそれを言う愚かさを知っているらしく、また、魔に染まってしまった神の妹を許すわけにいかぬと言った思いも感じられた。

「それにしても海神か…。資料を見る限り、まさに海そのものという感じだな。」

 海神は海を意のままに操るとされている。そして、如何なる攻撃も受け止めて跳ね返す。故に攻撃が効かないと記されている。

(確かに冒険者たちの攻撃もそんな感じで捉えられるか…)

 今は落ち込み、避難所で居る冒険者たちの攻撃を思い出しながら、記された内容に納得する。

(という事は、海そのものが形を成している…。海…、海水…!)

 ハッとした表情で再びその姿を眺める。そしてそれまで気にしていなかった周辺を注視する。

 望遠筒で身の毛もよだつ蛇の蠢く頭部。それまで蛇しか気にしてなかったが、思っていたことが確認できた。

「はははっ、やはりそうか。」

 そう呟くと同時に、スーヴェルが部屋に現れた。それも慌てた様子で。

「アルフェ―サー様、気付いたことがあります!」

 その視線を受け、にんまりと笑ったアルフェ―サーはニヤッとして応じた。

「ああ、私も今ちょうど気付いたことがあるんだ。」

 一瞬驚いてからスーヴェルも微笑む。

 そして互いに情報を交換し合った後、作戦会議が始まった。


 海魔が港より上陸してちょうど一日と言う時間が経過した。

 太陽は高く、光が熱を帯びて大地を照らす。

 その中で、遂に海魔は動き出した。

「海魔、動き出しました。」

 報告を受けて、一同が窓側へと移動する。

 因みに『海魔』という呼び方であるが、海神の妹であろうとも現在は敵である。そして一番認識し易く、呼び易いという事で結局「海魔」という名称で呼ぶことに決まった。

「いよいよです。」

 スーヴェルが呟く。それに応じて横にいる武官たちが「そうだな」と頷き、アルフェーサーが作戦の開始を発令した。


 海魔となった女神ティリュースは思う。

(思ったより時間がかかった。ここに住むヒトは侮れない)

 もっと容易くヒトの町を壊せると思っていた。

 だが、海面から眺めていたこの町は予想より広かった。

 それもそのはず、人口数十万のヒトが集まって住むこの都市は、南北に13km、東西に至っては22kmにも及ぶ広さで、都市内を馬車や、広い用水路を渡る小舟によってヒトは移動しているのだ。

 港から上がりまっすぐ移動してきたが、未だ侵攻は全体の3分の一に満たない。

 ここで思わず足止めを食らい、何よりこの姿になってしまったことは大きな誤算である。

 この姿になってしまうと、それまでの形態と違って魔力の伝達が変わってしまう。

 しかも、この姿にされたのは初めてなのだ。

 故に全身を上手く動かすためには丸一日の時間をかけて魔力調整する必要があった。

 そして今ようやくその作業を終えて活動を再開したのだった。


 俯き加減だったその淡い緑色にきらめく体が、ゆっくりと胸を反らすように体を起こした。

 その動きを見て監視していた兵士たちが騒ぎ、聞きつけた住民たちがどよめきながらその姿に視線を向ける。

 およそ20m弱の巨体。かなり離れた西の防壁付近からでもその存在は捉えられる。

 様々な視線を受ける海魔と呼ばれる魔物の姿は、住民たちの目に美しく見えた。

 非常に美しい女性の姿をしており、淡い緑色に輝く姿は彫刻の様だ。

 しかし、その巨体を持ち上げる巨大な触手とハサミの付いた長い腕は魔物であることを意識させるのに十分だった。

 さらには長い髪のような蛇の群れ。その異質さに住民たちは恐怖を隠せない。

 

 やがてその長い2本の腕が動いた。

 地面に置いていた腕が持ち上げる。

 それは振り上げるという感じでなく、ゆっくりと左右に広げるよう持ち上げた。

 持ちあがる間に腕は短くなり、肩と水平に並ぶ高さの頃には女性の体に釣り合うだけの長さになっていた。

 そしてハサミの部分が開く。

 皆が固唾を飲んでみている中、そのハサミの間の空間に水の球体が浮かび上がった。

「ウォーターボール!」

 魔法使いが叫んだ。

 それはファイアボールのように水球を撃ち出すだけのごく初歩的な呪文。

 しかし、そこに込められた魔力と水量が桁違いである。

 溜めることで水球は威力を上げる。

 そして発動された!

 直径3mほどの水の塊が物凄い勢いで放たれ、7kmは離れた位置にある南北の防壁を直撃。

 そしてそのまま勢いよく壁を貫いた。

 高圧化された水は鉄のように硬く、石造りの防壁など簡単に壊してしまった。

 その威力に唖然とした後、もしもこちらが狙われたらという恐怖が蔓延した。

「くそっ、失念していた。グフト殿、至急作戦開始しよう。」

 相手が魔法を撃つことを考えていなかったため、その威力に肝を冷やされたアルフェーサーは、即座に作戦開始を発令した。


 その連絡を受けて各防壁上は騒がしくなった。

 今回使用するのは弩弓。それを少し改良して木箱を発射させるようにしている。

 命令を受けて予め用意していた木箱を一気に放った。

 木箱は大きい曲線を描きながら海魔に命中する。

 その木箱はあっさりと吸収してしまう。そして触れた物を一度吸収してから押し返す。

 木箱はフタが外れやすく細工されており、海魔に当たった瞬間にフタが緩み、その中身が海魔の体へと吸収される。

 その中身とは砂だった。木箱自体は弾かれるが、砂は水分を吸収して同化してしまう。そう、作戦の一つは砂による海水の吸収であった。

 砂浜で水を含んだ砂が一瞬で乾く。だが乾かないときはずっと砂が水を吸収したままだ。

 吸収した砂は触れることができるし、如何様にも加工ができる。

 それをヒントに数万トンもの砂を用意した。

 海水という体にダメージを与えるため、固体化させる方法を思いついたのだった。

 また、地上からも馬に乗った者たちが砂袋を積んで特攻する。

 危険は承知で馬で近寄り、その足に砂袋を投げ込む。

 それぞれ8本の脚は自重を支えているため、機敏に動かない。なので動きさえ捉えていれば、そう易々と踏まれたりする心配はなかった。

 海魔は再び攻撃してくるヒト達を鬱陶しく思い、追い払おうと腕を振る。

 それによって踏み潰される者もいたし、再びウォーターボールが発射されて破壊された壁やヒトもいる。

 そのような攻防が繰り返されて10分。遂に一本の足が変色して固まる。

 淡かった緑色が黒っぽくなり、砂を吸収しなくなった。

 同時にその足が動きを極端に鈍らせ、海魔自体の動きも鈍りを見せる。

「よしっ!効いているぞ。」

 海の砂浜に波が打ち寄せた後を連想した。砂は水をかけるとその水を吸い表面は硬くなる。

 だからこそ、この変色した足に対してならばと砂を持って来た戦士が足を斬り付ける。

 ザクッと言う音を立てて刃が通った。

「よし、攻撃が通るぞ!」

 それを聞いて砂を運んだ戦士たちがその足を斬り付けた。

 数名が力いっぱいに斬り付けた結果、その変色した足が斬り落とされた。

「QuAaaaaaaaaaaaa!」

 海魔の口からつんざく様な悲鳴が発せられる。その声をまともに浴びた戦士は耳をやられ、別の足に踏み潰された。

「慌てるな!今はとにかく砂を浴びせるんだ。」

 勝手に攻撃した者たちを見て、グフトは命令する。

 戦士として、結果に焦るのは禁物だと教えているが、何とかしたいという思いから悲しい結果を迎えてしまったのだろうと察する。

 祈りは終わってからだと思う一方で、この作戦が十分に成果をもたらせられると知ることが出来た。

 その事については賞賛を送る。

「完全に動きを殺してしまえっ!それから叩くぞ!!」

 この号令から、海魔と戦士たちの戦いは次第に戦士側へと傾いて行った。



「砂が足りないか…。」

 スーヴェルが歯噛みながら呟く。

 あれから数時間経過し、海魔の足はそのほとんどが黒く変色していた。

 また、日光に照らされた結果か、砂が熱を持ち海水を蒸発させた。

海魔の体から水蒸気が立ち上り、最初に比べれば明らかに一回り小さくなっている。

 しかしその長い腕は健在で、砂の蓄積量に関しても、足の付け根辺りまでしか変色していなかった。

 緊急で用意したため、もう砂は残ってはいない。

 そして戦士たちも、疲労の色が濃く見えていた。

 無理もない。祠防衛の後急ぎ足で戻って、僅かな休憩の後でこのような巨大な魔物相手に戦っているのだ。

 これ以上無理をさせるわけにはいかないと判断した。

 そこに…、

「せっかくここまで押したのに…。」

 スーヴェルが悔しそうに呟く。

 だが、そこをアルフェーサーは注意した。

「スーヴェル君。こうした場合は落とし所を見余ってはいけない。

 倒してしまえるならそれに限らないが、相手は神の域に住む存在であり、完全に沈黙した訳でもないんだ。

 再び来襲することも考えられるが、今度は予め準備もできる。

 何よりこちらに余力がないのに、相手を追い込むのは愚策だ。」

 長い経験からの助言でもあった。

 だけど、スーヴェルは若く、今日は今まで我慢してきた感情から解き放たれている。

 そして己の考えがここまでうまくいって過信してしまっていた。


「グフト殿、少し様子を見ましょう。本当なら攻めたいところですが…」

「追い込まれた野獣は何とやらだな。ウム、了解だ。」

 アルフェーサーの伝令に対して、グフトは理解を見せる。

 流石は戦士ギルドの長であり、戦時中の流れを分かっていると思う。

 あれから足をさらに2本切り落としたところである。左右1本ずつ落とし、残るは5本。

 多分であるが、これを落してしまえば身動きはとれなく出来るだろう。

 でもそうしてしまうとどうなるか?そこが分からない…。

 あれだけ強力な魔法を使うのだから、下手をすればこの都市全てを呑みこむ強力な魔法がかけられるかもしれない。そうなればこちらの負けが確定である。

 もともと、海魔を退かせることが目標だったのだから、このまま相手の様子を見て対応するので良いと、長年の勘が働いていた。

 しばらく膠着した状態が続き、やがて海魔はゆっくりとだが海へと移動を始めた。


 海魔からすれば、ここまで痛めつけられるとは思っていなかった。

 もっと簡単に倒す事が出来ると思っていた。

 だが、矮小なるヒトはその知恵によってこれだけの抵抗が出来るのだと思い知らされた。

 こんな事で死ぬわけにはいかない。

 そう本能が働き、向こう(ヒト)はまだ何か策があるかもと知れないという疑念から、今回は退くことを選んだのだ。

 傷が癒えたら、また違う手段で攻めればいい。それにこの傷が癒えるまでは出向くことができないと、あの命令に従わなくても済む。

 そんな自由奔放な性格だけに、今はとにかく逃げることを選んだ。


 やがて港周辺まで戻り、あと少しで海に着水する。

 ヒトらは追撃しては来ないようだと安心して戻っていた。

 そして海魔はおろか、ヒト達も忘れていた。

 否、一人だけそれを待ち望んでいた。

 上陸してすぐ、油をまく陽動として威嚇した騎馬兵たちに頼み並べた木箱。

 その上を海魔が通る。

 「バキっ」

 木箱が潰れる音がした。そしてそこから轟音と共に、爆発が起こった。


「何が起こった!」

 アルフェーサーが叫び問うた。そして望遠筒で確認する。

 海を前にして、海魔が倒れていた。その足は砕け、最早後ろ2本しか残っていない。

「よし、かかった!今です。今攻撃すれば倒せる!!」

 喜びを露わにスーヴェルが叫んだ。そしてアルフェーサーは思い出した。

 陽動の騎馬に砲弾の入った木箱を置かせていたことを。

「クッ、しまった…。なんて事を・・・。」

 変態し、しかも海神の妹と言うことなどもあって、すっかり忘れてしまっていた。

 確かこの木箱はスーヴェルと相談して行った。

 完全に忘れていたが、スーヴェルは覚えていたらしい。

(くそっ、忘れていた私も大概だが、報告してもいいだろう?調子付かせ過ぎたか…)

 最早後悔しかなかった。そしてこれは自分の失態だと割り切り、グフトに伝令をする。

「すまない、グフト殿。上陸時に仕掛けて置いた罠が発動してしまったみたいだ。臨戦態勢で備えてほしい。」

「くっ!分かった。」

 怒りを滲ませるグフト。しかし、もうそれを追及しても始まらないのだ。

 どう転ぶか分からない状況で、グフトは戦士たちに戦闘配備を発令した。


「何故叩かないのですか?せっかくのチャンスじゃないですか!」

 アルフェーサーに言い寄るスーヴェル。その発言に、アルフェーサーは冷たく言い放つ。

「黙れ。」

 このようにしてしまったのは自分の責任だ。

 だからこそ、ここで彼を説教した所で何も良い結果にはならないと思った。

 しかし、そんな気持ちが分からないスーヴェルは更に告げる。

「ここまで都市をやられたのに、次また来るよりも、ここで倒してしまった方が良いじゃないですか。」

 そこでアルフェーサーは怒鳴りつけた。

「黙れと言ってるだろっ!」

 流石に怒鳴りつけられてスーヴェルは口を閉ざす。そしてアルフェーサーは一度溜め息を吐き、声を戻して叱った。

「ここまで君のおかげで上手く行ったのは認めるし、感謝もしている。だがな、これ以上は明らかにやり過ぎなんだ。

 戦争という状況において、追い込むのは余力がある時だけなんだ。だが、余力もなく逃げる道もなくなってしまった時、相手は死を覚悟でこちらを滅ぼしに来るぞ。

 そうなった時、被害者に対してお前はどんな責任がとれる?

・・・この木箱の件は私の失念の責任だ。これに関して気にする必要は無いが、周囲の状況も見ずに自分の考えだけを通そうとするようなヒトにはならないでくれ。」

 そう言ってスーヴェルを視界から外した。

 言葉を受けて、スーヴェルは放心し、俯く。

(ぼ、僕は精一杯やったのに…やっぱり僕は誰にも認めて貰えないのか?)

 まだ彼は、ヒトの話を聞けない只の若者でしかなかった…。


 しかし事態は最悪の状況へと移行する。

 倒れた海魔は叫ばなかった。

 足を失い、仰向けに倒れているだけだ。

 そして、海魔の瞳は今もずっと閉ざされたままである。

 なぜなら、女神ティリュースは洗脳されているのだから。

 そしてその思考は、彼女の頭に植え付けられた宝珠に在り、それが彼女の髪を蛇のように変え、身体をおぞましく変態させたのだ。

 その海魔は思った。

(もう、この体は使い物にならないな)と…。

 神魔大戦前に甘い言葉で惑わし、その体を犯し、そして己自身の宝珠をその額へと移植させ、己のモノとした。

 やがて、その体を様々な形に変えて弄び、レッドドラゴンに目を付けられたりしたが、今まで凌いできた。

 だが、矮小なるヒトにここまで痛めつけられたのは、この体が限界に来ているのだろうと思った。

 このままやられても、自分は宝珠として残り、良きモノを見つければそれに移ればいい。

 それまで少し休めばいいだけどし、せっかくだからコイツ等を消してしまうとしよう。

 そう決意したのだった。




 海魔が倒れたのを見ながら、その動きを注視する戦士たち。ここから何が起こるか分からない状況に、緊張が走った。

 やがて海魔の頭が動く。

 そして、上を見上げる様にして、顔をこちら側に向けた。

 戦士たちが防御を構える。が、グフトが急ぎ叫ぶ。

「直線状から避けろ!」

 そう言いながら横に跳んだ瞬間、海魔の口が開かれ、高圧の水がレーザーのように発射された。

 水は一直線に飛び、進路上の戦士を一瞬にして消してしまう。

 そしてそのまま西へと飛び、西の防壁を破壊して空の彼方へと消えていく。

 水が去った後、鋭利に斬り取られた遺体の一部や、建築物が残った。

 そして今回初めて、避難民に被害が出たのである。

「くっそがぁぁぁ・・・、お前たち、前へ出るぞ!あの口を黙らせるぞ。」

 グフトが叫び、戦士たちが一気に駆けだす。

 それに対して海魔の背中が突如変異する。甲羅から細長い針のようなモノが8本出る。

 そして海魔の体をうつ伏せにさせると、その8本の針は足の様になってその体を起こした。

 そして海魔が真下に向かって口から白い球を次々に吐き出す。

 その球はやがてひび割れると、中から亜人が現れた。

 甲殻類の亜人らしいが、今まで見たことのない種類であった。

 体長は2m。硬そうな甲殻に覆われている。それらが迫りくる戦士たちを相手取った。

 先頭を走った戦士が剣で斬りかかる。激しい音でその亜人の肩に当たるが、刃はそれ以上通らない。

 直ぐに退こうとしたが、その前に亜人の鋭い爪が戦士の腹部を貫き、そして投げ捨てる様に地面へ投げ捨てた。

 強敵である。その間も球は生まれ、最終的に30もの亜人が生まれ出た。

「数で勝ってるんだ、押し切るぞ!」

 戦士たちが一斉に掛かって行く。だが、亜人の強さは相当なものでいとも簡単に散っていく者が後を絶たない。

 それならばと、隔壁の上から弓矢で攻撃を仕掛けるハンティングギルドの者がいた。

 狙いを海魔に定めて矢を放つ。

 しかし、海魔にその矢は通らず、手前で髪の蛇が矢を叩き落として行った。

更には、魚の顔をした亜人が隔壁上に水を吹きかける。

 矢を放った後の状態だったため、逃げ遅れたハンターに水がかかると、そこから次第に溶けていく。

「うわぁ!」

 叫んでもすでに溶け始めた衣服や身体。そのまま隔壁と共に溶けて亡くなってしまったのだった。

「俺たちが出る!お前たちは下がっていろっ。」

 戦士たちの中から数名の者が現れた。

「おぉ!十傑だ。」

 みんなの中から希望の声が出た。戦士ギルドにおける頂点ともいえる『戦士十傑』。

 世界中にて活躍し、現在祠に2名配置しているため、そこには滞在していた5名がいた。

「断罪のグリフト、早槍のリーケン、魔法剣セイル、鉄壁のライダン、百拳のガダン!すげぇ顔ぶれだぜ!」

 大斧を操り、如何なる者も断つと言われるグリフト。槍の扱いが目に留まらぬ程速く、対峙し一瞬で相手を仕留めてしまうリーケン、魔法剣士として如何なる敵にも万能なセイル、大きな盾と鎧で、様々な攻撃を遮断するライダン、そして己の拳で十傑まで昇ったガダン。

 それぞれが世界中に名を知らしめた豪の者であり、今のイデアメルにおける最高の戦力でもある。

 さらに、

「ワシも相手仕ろう。」

 剣術ギルドからもコジュウロウをはじめ、10人がやってきた。

 そして、それぞれが相手する亜人を目にすると、一斉に掛かって行ったのだった。


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