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メリーゴーランドの噂に関する調査

 2年B組。近藤ユキ。

 インタビュイーの発言のみ書き起こし。


メリーゴーラウンドの噂?

知ってるよ。勝手に回ってるってやつでしょう。うん。本当。証明できるのかって? 僕の部屋に来てみればわかるよ。っていっても、いつ回るかはわからないんだけど。でも、今度の金曜の夜はきっと回ってくれると思うな。

こないださ、転校生が来たでしょう。ちょっといかつい感じの。そうそう、そいつ。頭悪そうなやつ。授業中も漫画読んだりゲームやったり。ああいうやつは絶対将来問題を起こしたりするんだよ。ほんと、人間失格って感じ。まぁ運動はできるかもしれないけどね、でもプロになれるわけでもないでしょ? 学生のうちだからこそ許されるわがままみたいなもんでさ、正直意味なんてないよね。ちょっとスポーツできるくらいでいばるなって感じ。その点僕は夜遅くまで勉強してるし、この間のテストだって学年で二十位だから、将来は約束されてるようなんもんだと思うよ。別に自慢とかじゃないけど。……ああ、そう。それでなんの話だっけ? うん、メリーゴーラウンドの話ね。見えるんだよ僕の部屋から。ほら、僕のうちって高層階だから、景色がいいんだ。窓の方には建物もないから遠くまで見えるよ。よかったら今度……あっ、うん。メリーゴーラウンドね。さっき見えるっていったじゃない。少し遠いんだけど、光るとわかるよ。夜中だからね。廃園になった遊園地なんてまわりなーんにもないじゃない。真っ暗な中に一つだけポツンと光るわけだから、そりゃ気づくでしょ。僕本当に一生懸命勉強してるからさ、つい夜中になっちゃうんだよね。どうしてもこう、手が抜けない性格っていうか、頑張り過ぎちゃうタイプだから、僕って。学校の授業ペースは駄目な奴らに合わせてるから。僕みたいに上を目指す人間はやっぱ自分で努力しないといけないよね。騒ぐだけしか脳のない猿とか、それに媚びを売るビッチにはわからないかもしれないけど。えっ、失礼だって。君のことじゃないよ。君はそういう種類の人間じゃないってわかってるから。僕とまともに会話できる人間っってあんまりいなくてさ。知ってる? 知能指数に差がありすぎると意思の疎通が難しくなるんだって。だから僕がクラスの奴らと話が合わないのも仕方ないんだよね。やっぱ人間って同レベルの人間と付き合うべきじゃない? 君もそう思うでしょ? ……へぇー。そう。まぁいいや。結局のところ個人の自由だし、損するのは君なわけだから。で、その転校生。花岡大輝。あいつさ、なんか調子のってるじゃん。いつもギャーギャーうるさいし。ほんと死んでほし……。あっ、ちょっと言い過ぎたかな。でも調子乗ってるのはほんと。取り巻き達といっつも騒いでんの。花岡とメリーゴーラウンドの関係? ないよ。っていうか、関係ができるのはこれからじゃないかな。でさ、その花岡が最近ボクにちょっかいを欠けてくるんだよ。友達になりたいのかもしれないけど、ああいう輩とは付き合わないようにしてるんだ。付き合う相手は選べってママに言われてるし。そもそも僕はああいう動物みたいな奴らが大嫌いだから。どんなことをされるのかって? ……どうでもいいでしょ。大したことじゃないよ。ちょっとしたイタズラっていうか……。あいつら脳みそないから。脳みそないやつになにされても気にならない。いじめ? そんなわけないじゃん。なんで僕があんな底辺どもに……。はっ? いや、違うから。先生に相談? 余計なことしないでよ――ああっ! 違うって言ってるだろっ! いい加減にしろっ! 

 ……いや、いいよ。僕の方こそ大きい声出してごめん。でもいじめとかじゃないから。ほら、動物園のふれあいコーナーで小猿にハンカチ盗まれた、とかそういう感じ。それにもうすぐ解決するから。

……あの遊園地さ、他にもいろいろ変な噂あるでしょ。ジェットコースターで変な事故があったとか、子供がいなくなるとかさぁ。開園してすぐのころに遊びにいったことがあるけど、もうその頃からなんだか変な雰囲気だったよ。薄暗いっていうか、妙に気分が悪くなるみたいな。あのメリーゴーラウンドにも乗ったなぁ。全然、変なことなんてなかったけど。とにかく雰囲気が悪かったからさ、潰れるだろうと思ってたら案の定すぐに潰れちゃったよ。で、今は有名な心霊スポットになっちゃったわけ。うん。君さぁ、市内の出身じゃあないよね。だったら知らなくても仕方ないのかなぁ。僕たちだって聞かれなければわざわざ話そうとは思わないし。あそこさぁ、本当にまずいんだよね。僕はほら、科学的な人間だから、幽霊とか悪霊とか信じてないけど、信じてる人が結構いるみたいなんだよ。ほんと、非科学的で笑っちゃうんだけど。でも、僕もあそこに行けと言われたら嫌だなぁ。――えっ、行ってみるつもりだったの? 止めておいた方がいいよ。あそこはほんとに何人も人が消えてるから。ほんとに、冗談じゃなくて。だからこの話知ってる人もあんまり喋りたがらないんだよね。僕はほら、君のためだから特別にこうして教えてあげてるけど。それにしても君があそこに行く気だったなんて……行く前に僕に止めてもらってよかったよね。ねっ? うん、どういたしまして。あそこはねぇ、ほんとうに良くない場所なんだよ。夜になったら絶対に入っちゃ駄目だね。昼間だったらたまに入っていく人もいるけど……。それもあんまりおすすめはしないかな。君は知らないだろうけど、僕の通ってた中学校でも何人かいなくなっちゃってるから。やっぱり転校生とか市外出身の奴らだったよ。あいつらもホント、ウザくて馬鹿でさ……。僕のことが羨ましいのかちょっかいをかけてくるんだよね。ほんとそう。小学校でも中学校でもいたけどさぁ、まさか高校に入ってまでそんなのがいるとは思わなかったなぁ。あいつらがいなくなってスッキリしたよ。ああいう社会の害悪は早めに取り除いちゃった方がいいんだ。あいつらはね、あそこでいなくなってよかったの。どうせろくな人生を歩めるわけがないんだから。……どうしたの? なんか気分が悪そうだけど。ああ、あんな奴らの話をしたから気分が悪くなっちゃったんだね。ごめんね。いなくなっても人の気分を悪くするなんてほんとクソだな。でもあいつらがいなくなった時の爽快感は忘れられないよ。またあれが味わえるなんてゾクゾクするなぁ。

――花岡がさ、あんまり僕にしつこくするもんだから、遊園地のこと教えてあげたんだよ。もちろん危険だって、危ないってちゃんと伝えたんだよ、僕は。騙して行かせるとか、そんな卑怯なことなんて大嫌いだから。でも、なんでああいう奴らって、危険なところに行きたがるんだろうね。危ないから止めたほうがいいっていったら余計に面白がっちゃってさ、絶対行くっていい張ってんの。今度の金曜日だって。だから僕、金曜の夜はずっと窓に張り付いてようと思うんだ。……あのね、これはたぶん僕だけしか知らないことだと思うんだけど、特別に教えてあげる。メリーゴーラウンドが回るときって、誰かが消えたときなんだよ。あのメリーゴーランドが回った日からしばらくたつと、行方不明者が出たって噂が流れてくるから。ちゃんと調べたんだ。実験もしたから間違いないよ。くそぉ、待ちきれないよ。金曜の夜が楽しみだなぁ。メリーゴーランド回るかなぁ。回ってくれると思うんだけど。君もそう思うよね。そしたらきっと、僕も嬉しくてくるくる回っちゃうかもしれないな。ねぇ、あのメリーゴーランドはさ、きっと嬉しくて回ってるんだよ。行方不明になった人たちって、いったいどこに行くんだろうね。

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