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~本気と全力と~

「おいおい!止まれ止まれ~~!!」 ドスッ!! 「げっふっ!!」

「!?」


 俯きながら走っていたため、何かに頭から突っ込み弾かれ尻もちをついてしまう。痛む頭部と臀部をさすりながら顔をあげると、声にならない声を上げユートが腹を押さえながら悶絶している。

 どうやら彼の腹におもいきり頭突きをしてしまったようだ。


「……ごめ…ん……大丈夫…?」

「だ、大丈夫だ。お前あのまま突っ込んでたら木に衝突してたぞ。」


 どうやら木に激突しそうだった自分を受け止めようとして、丁度いい角度で腹部に追突してしまったようだ。


「…ありが……と…」

「そんなことはいい。それよりあの風の球体はクレアの魔法か?」


 ユートの言葉に慌てて振り返ると、今まさにクレアが崩れ落ちるように倒れる姿が目に飛び込んだ。


「待てっ!」


 咄嗟にクレアの元に駆け寄ろうと足を踏み出すと、横合いから伸びてきた手に腕を掴まれる。

 手の主を睨みつけ振り払おうとするが、力を込め握られた手を払いのける事ができない。


「……なせ……」

「頼むから少し落ち着いてくれ……」


 早く助けに行かなきゃならないのになんでコイツは邪魔をするんだ……


「離せっ!」


 自分でもビックリする程の大声が出てしまった。ユートも驚いた顔をしていたが、握る手を緩めてはくれなかった。


「いいから落ち着け!訓練とはいえ俺の作戦で仲間がやられちまった。お前ほどじゃないだろうが、俺だって悔しいんだ。だけどな…月並みな言葉になるが、クレアの行動を無駄にするな!あれを見てみろ……」


 ユートの指し示す先には、ゆっくりとこちらに歩み寄る「飛剣」の姿があった。


「お前だけアイツに突っ込んで行って何ができる?それこそクレアの頑張りが無駄になっちまう……怒りや憎しみなんかは矢に乗っけて飛ばしちまえ。」


 ユートの言葉にハッなる。

『いいか……当てようとか外したくないなんて余計な気持ちは矢に乗っけて飛ばしちまえ……』


「矢を引く時は真っ新な心で……お前と違って全然上達しなかったが、俺も過去弓を練習した事があってな。その時師匠にどうしたら上達するのか尋ねたらそう言ってた……秘伝らしいぞ?」


『……心は常に真っ新に…世界に存在するのはお前と的だけだ。外しようがない……当てるんじゃなくて当たるんだ。ほれ、震えも止まっただろう?撃ってみろ……』

 初めての射手試しの儀前日、何度撃っても的に当たらず泣きべそをかいている時受けた言葉…その後師と仰ぐ人間との初めての出会いでもあった。


「落ち着いたか?手を放すからな?」


 目の前の男を見上げながら離された腕を胸に抱く。姿かたちが似ているわけではない、だがこの男からは記憶の師とどこか似た雰囲気を感じる。心がざわつく……


「痛かったか?すまん、強く握り過ぎた……」

「………別に……」

「落ち着いたみたいだな……頼むぜ…現状アイツに一泡吹かしてやるには、お前の弓が頼りなんだからな。」

「!!……勝てる…の?」


 正直驚きだった。この男はあれだけの実力差を見せつけられて、まだ諦めていないというのだろうか?実力の差が分かっていないのか、それともバカなのか……


「勝てる……かどうかは正直分からん……が、可能性はまだある!一人じゃ無理だが、二人ならまだやれる。」


 実力差が分かっていないわけではないはずだ。遠距離で攻撃していた自分よりも、近距離で戦っていたこの男の方が、その差を何倍も肌で感じているはずだ。それではバカの方か……


「………どうすれば……いい?」

「まず確認なんだが……お前鏑矢は持ってるか?」


 実力差は歴然なのに……クレアを虐めた奴に一矢報いてやりたい。どうやら私もバカな方らしい……




「………いけるか?」

「…………たぶん……大丈夫!」


 しばしの思案の後エリクが力強く答える。目に力も戻ったようだ。


「着弾までどのぐらいだ?出来ればある程度の時間が欲しい。」

「………30秒…」

「30秒か……」

「それ…以上だと……着弾地点に……誤差が…でる。」

「いや、十分だ。というか、俺の全力も20秒ってとこだ…」

「止め…られる?………あれを……」


 歩みを止め静かに佇む「飛剣」を顎で指し示す。先程までのふざけたテンションが嘘のようだ。


「何があったのか知らないが……嬉しいね、俺達みたいな新人に本気出してくれるっぽいぞ……」

「……………」


 先ほどまでのテンションと馬鹿みたいにまき散らしていたプレッシャーが鳴りを潜めている。代わりに「飛剣」の周りから纏わりつくような重苦しい空気が伝わってくる。たぶん、クレアが何かをしたんだろう。やるなクレア……今の俺達には最悪だがね……


「お前らを舐めてたことを、まず詫びよう……ここからは「飛剣」のアルト、本気で相手をしよう。」


 そう言って大剣を大上段に構える。「飛剣」漏れ出す空気が更に重くなる。


「頼むから……失望させてくれるなよ!!」


 ニヤッと凶悪な笑みを浮かべた瞬間、プレッシャーが爆発する。


「……………」

「くっ!エリク、怯むな!鏑矢だ。開戦の鏑矢を上げろ!」


 今すぐ逃げ出してしまいたい程のプレッシャーを払いのけるようにエリクに向かって声を張り上げる。

 エリクも後方で自分を鼓舞するように矢を番えると、空に向かって矢を放つ。


ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!


 けたたましい音を立てながら矢が空高く昇っていく。


「開戦の鏑矢か……粋なことをしやがるな……いくぞ!小僧共!」


 エリクが上空に放った矢は鏑矢という撃ちだすことによって笛を吹いたような音の出る特殊な矢だ。殺傷用ではない為一般的ではないが、仲間への合図や合戦時に開戦を告げる時などに用いられる。


「…射法~蛇~」


 真先に初撃を放ったのはエリクだった。距離を詰めるべく走り出した俺を追い越し、大上段のまま迎え討つ「飛剣」に矢が迫る。


「さっきよりも更に速い三連射か。だが、こんな真正面からの矢に当たっては…!」


 迫り来る矢を撃ち落とそうと「飛剣」の振るった大剣を、まるで意志をもって避けるように矢の軌道が曲がる。「飛剣」も咄嗟に体を捻り回避するが、避けきれずに足と肩に裂傷を負う。


「風魔法を使った軌道が変わる矢か!味な真似を……だが、これならどうだ!」


 間髪入れずに放たれる矢を大剣の刃を立てず腹側で矢を薙ぎ払う。風を乱され軌道を曲げる事ができない矢が、次々と撃ち落とされていく。


「…射法…………~風牙~!」

ゴゥーーーー!


 放った矢が撃ち落とされていくのを見たエリクが、今までの速射とは打って変わった溜めを行った矢を放つ。撃ち出された矢は、か細い矢が風を切る音とは思えない様な音を立てながら突き進む。


ガギィーーーーン!

「っっ痛ぅー!」


 矢は鉄製の鞘に収まったままの大剣の腹で受け止められ、まるでハンマーで殴りつけた様な音を立てるとポトリと力を失い落下する。


「高速回転させて貫通力を高めた矢か。お気に入りの鞘が……なんてことしやがる!」


 鞘の矢が当たった部分が、拳大にへこんでいる。


「楽しそうだな。俺も混ぜてくれ……よっ!」


 俺も刃の間合いまで距離を詰めると勢いのまま下から斬り上げる。


「小僧、横合いから入ってきて焦るんじゃねーよ。」

「俺もゆっくりやりたいんだけどな……今回は出し惜しみ無し、のっけから全開だ!」


バチッ!!


 双頭の刃が雷気を帯びて光り、大きな音が鼓膜を打つ。


世界が薄く幕を張ったように白く染まり、周囲の時間が停止する。


 正確には時間が止まっているわけではない。その証拠にゆっくりと、非常にゆっくりとではあるが、「飛剣」の大剣が迫ってきている。

 俺の能力、雷化の全力発動による思考の超加速が生み出す体感時間の遅延現象だ。全開で雷化を行うと、思考の加速が反応速度上昇を飛び越え、静止した世界に入り込むことができる。体感で通常時間の約10倍。1秒を10秒に感じる事ができる。

 一見すると最強の能力のように思えるかもしれないが、そんなに世の中甘くない。

 まず発動時間が短い。20秒、体感時間で200秒ほどで力を使い果たして動けなくなる。無理やりそれ以上力を使うと意識が飛ぶ。つまり20秒で決められなければ負けが確定。使いどころが難しい。

 なにより、加速するのは思考と反応速度だけで、俺自身が速くなるわけではない。周囲と同じように、俺自身もゆっくりとしか動けない。頭上からゆっくりと振り下ろされてくる大剣を、皮一枚でゆっくり横に避ける。刃を跳ね上がってくる大剣をまたも紙一重でかわす。

 使い勝手の悪い能力ではあるが、接近戦においてはそれなりの効果がある。まず相手の攻撃が見える。自分の速度は変わらないが、それは初動の速さで補えばいい。次に紙一重の回避がしやすいこと。動きに無駄がなくなるということは、相対的に相手よりも速く行動できるということ……

 

 自分の攻撃を紙一重でかわされることに焦れたのか「飛剣」が薙ぎ払うように大剣を振るう。

 後10秒…ここで仕掛ける!横をゆっくりと飛んでいくエリクの矢に、刃をかすらせるように薄く当てる。矢が「飛剣」の顔目がけて急激に角度を変え、躱しきれなかった「飛剣」の顔を薄く切り裂く。

 「飛剣」の視線が矢によって切れた一瞬の隙に、横薙ぎの大剣の下をくぐる。大剣の影で「飛剣」から見ると俺が消えたように見えるはずだ。


「な……きえ……し……か」


 「飛剣」が何かを叫んでいる。この能力を使うと、知覚が速くなりすぎて人が何を言っているのかわからなくなる……が、そんなことはどうでもいい!

 大剣の影から懐に飛び込み双剣を叩き込む。


 双剣術~双角~二連の突きが顔と胴を同時に襲う……ちぃ!浅い…躱され肉を少しえぐっただけだ…踏み込みが浅かったか?いや考えるのは後だ。今は攻め続けろ!

 双剣術~鋏~左右から襲う刃が大剣に阻まれる。

 一刀術~指切~大剣の腹を滑らせた左の刃で持ち手を狙いながら、続けて一刀術~影縫い~右の刃でつま先を突く。

 双剣術~鐘打~二刀で胴薙ぎ……をフェイントに双剣術~双角~続けて唐竹割と逆唐竹割…双剣術~顎~……

 

 俺の連撃をことごとく捌かれる。皮一枚、肉を薄く切り裂くことはできても決定打が入らない。

 後……2秒。これが最後か……下段にフェイントを入れて意識を下に……

 双剣術~峰走り~左の刃の背を右の刃が滑る。俺の技の中でも最速の一撃がガラ空きの腹を狙う。

 「飛剣」の腹から一筋の鮮血が飛び散る……が、切り裂いたのは皮一枚……0秒。時間切れ……

 

 世界に色と音が戻ってくる。刹那「飛剣」と視線が交錯する。


 俺の最後の一撃を躱しきった「飛剣」が

「なかなか良い攻撃だったが、まだまだ俺には及ばんな。」

 そんな声が聞こえてきそうな顔でニヤッと笑う。


 能力全開の代償として凄まじい疲労感が押し寄せてくる。膝が笑い立っているだけで精一杯だ。

 ちくしょう悔しい……剣技にはそれなりに自信があった。現役の冒険者とやりあってもそれなりに戦えると思っていた……だが、俺の今の剣技では目の前のこの男に手も足も出なかった。プライドはズタズタだ。

「完敗だ。俺は……なっ!」

 虚勢で悔しさを押し殺してニヤリと笑い返す。


「……射法…………~風牙~!」


 射線を開けるためにしゃがむというより、足に力が入らず膝から崩れ落ちる俺の頭上を、風の牙と化したエリクの矢が通り過ぎていく。少しでもズレれば俺に当たっていてもおかしくない程の絶妙なタイミング。ギリギリ過ぎて背筋から冷汗が流れる。


「がっ!……」

「よしっ!………」


 顔に吸い込まれるように着弾する矢を受け、短い唸り声と共に「飛剣」が大きく仰け反る。

 しまった!熱くなってやり過ぎた。勝った喜びもつかの間、「飛剣」に重傷を負わせてしまったかもしれない焦りが沸き起こる。下手すると死んでるか……

 回復の為にオルガを呼ぼうとしてふと気がつく。「飛剣」が倒れない……仰け反っている為、下からだと顔が見えない。エリクの鏃は万が一を考え、先端は潰してあるので突き刺さることは無いが、掠れば切れるし、まともに命中すれば当然ただでは済まない。それなのに血すら落ちてこない……


バキッ! 頭上で何かをへし折る音が聞こえる。


「エリク!避けろっ!」

「遅い!ぜやっ!」


 歯で咥えた矢を嚙み砕きながら「飛剣」が大剣を振り下ろす。

 飛ぶ斬撃が地面をえぐりながらエリク目がけて襲い掛かる。


「……ぐっ…」


 エリクは直撃こそ辛うじて避けたものの、爆風と巻き上げられた礫を受けて吹っ飛ぶ。


「惜しかったな小僧共。最後のはマジで焦ったぞ……期待通りの良い戦いだったぜ。」


 そう言って這いつくばったまま動けない俺を見下ろす。


「俺も少し焦ったよ……だが、アンタが期待通りの化け物で良かった……」


 這いつくばった姿勢のまま手を伸ばし、両足の鉄製グリーブに刃を当てた二刀に力を籠める。


「アルト!上っ!!」

「~雷豪~」

「なにを……がっ!」


 オルガの叫びと同時に能力が発動し、「飛剣」の体がビクンと痙攣し硬直する。




「まず確認なんだが……お前鏑矢は持ってるか?」


 そう聞いてきたユートをいぶかしげに見返す。勿論鏑矢は持っている。持ってはいるが、戦いの中で何に使うというのだろう。


「………持っては…いる。」

「鏑矢を撃つのと同時に通常の矢を打ち上げる事は可能か?」

「………できる……」

「それなら……」


 ユートの作戦は、成功するとはとても思えない案だった。鏑矢を隠れ蓑にして上空に矢を放ち、足止めした「飛剣」に当てる。要所だけを述べると簡単なようだが、実際にはとても難しいハードルを越えなければならない。

 矢が到達するまで化け物相手に足止めできるのか?そもそも難しい曲射で当てる事ができるのか?

 考え出すと不可能に思えてくるが、「飛剣」という化け物相手にはここまで難しいことをしないと勝てないのも確かだ。

 意識の外からの攻撃……今の自分達の力量ではそれ以外にないだろう。どうせ普通に真正面からやっても勝てないのなら試す価値はある。なにより自分の矢で勝敗を決められるところが良い。


「………いけるか?」

「…………たぶん……大丈夫!」


 本来敵が動き回る実戦ではほとんど使うことは無いが、丁度いい技がある……今回の条件にはピッタリと言っていい技だ。


「着弾までどのぐらいだ?出来ればある程度の時間が欲しい。」

「………30秒…」

「30秒か……」

「それ…以上だと……着弾地点に……誤差が…でる。」

「いや、十分だ。というか、俺の全力も20秒ってとこだ…」

「止め…られる?………あれを……」


 目の前の化け物をユートが足止めできなければ作戦は成り立たない。返答の代わりに二刀を構えるユートの背中を見つめていると、「飛剣」のプレッシャーが爆発的に増す。

 先程までも十分化け物だったが、今感じる圧力は更に粘りつくように重い。体が上手く動かない、手の震えが止まらず全身から嫌な汗が噴き出してくる。


「………鏑矢だ。開戦の鏑矢を上げろ!」


 合図にハッとなる。戦う前からのまれかけていた。こんな事ではクレアに申し訳が立たない。自分を奮い立たせながら弓に矢を番える。鏑矢と通常の矢を弓に番えると不思議と手の震えはピタリと止まった。

 これなら大丈夫……深く静かに息を吸うと天に向かって弓を引いた。


 そこからの戦いは驚くべきものだった。化け物じみた「飛剣」にも驚いたが、それ以上にその化け物と互角以上に渡り合っているユートに驚いた。矢による援護の効果もあるだろうが、それを抜きにしても驚嘆に値する戦い方だった。

 「飛剣」の攻撃をギリギリで避け、少しづつではあるが「飛剣」の体に二刀の爪痕をつけていく。

 20秒しかもたない。彼はそう言ったが、今の動きを後ろから見ていると20秒がけっして短い時間ではないことが良くわかる。どんな能力を使っているかは分からないが、相当無理をしているのだろう。

 ユートの限界時間目前で今まで以上の連撃を放ち始める。弓を引き絞りその時を待つ……5……一歩間違えればユートに当たるかもしれない……4……当たれば「飛剣」だって無事では済まないだろう……3……「飛剣」は殺すつもりでこいと言っていた、私達なんかに手酷い攻撃を受けることは無いと思っていたからだろうか?……2……ユートは、彼は本気で殺すぐらいの作戦を考え実行している……1……そして今、目の前の化け物と全力で渡り合っている。負けられない!「飛剣」にも、ユートにも!……0!


「……射法…………~風牙~!」


 矢を放つ。撃ち出された矢が、風魔法で高速回転しながらユートの背中目がけて一直線に突き進む。

 本当にギリギリのタイミングでユートが崩れ落ちるようにしゃがみ、「飛剣」の体が大きく仰け反る。

 ……当たった!?命中した瞬間はよく見えなかったが、流石に今のは避けられないはずだ。鏃の先端は潰してあるとはいえ、当たり処が悪く下手をすれば死ぬ。直ぐに治療をしなければ……そう思い「飛剣」から視線を切りオルガを探す。


「エリク!避けろっ!」


 ユートの声に慌てて視線を戻すと、大剣を振り下ろす「飛剣」の姿が目に飛び込む。咄嗟に身を翻し、飛んでくる斬撃を躱す。


「……ぐっ…」


 直撃こそ避けられたものの、強烈な爆風と礫に撃たれ吹っ飛ばされ地面に叩きつけられる。


「がっ!……くぅ……」


 息もできない程の強烈な痛みが全身を駆け巡る。感覚器官が狂い、天地が分からなくなる。

 どうやったのかは分からないが、あの攻撃が躱されたらしい。つくづく化け物だ……


「………~天に放ちし我が矢よ……」


 痛みで飛びそうになる意識を繋ぎ止めながら詠唱を紡ぐ。


「……我が意に従い星となり、敵を……討て。星よ落ちろ!射法……流星(ミーティア)~!」


 最後まで見なければ、そう思いながら射法を発動したところでエリクの意識は闇の中へ消えた。

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