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The Lost Decade  作者: 染樹茜
プロローグ
3/4

0325 2300

 ミチと出逢ったのは3年前。


 勿論、ゲームの中で。


 明日20歳になる息子の為に母親がケーキやらなんやら徹夜で準備していた。絶賛反抗期中だった僕は部屋の明かりを消して、ぼんやりと光る画面の中で誕生日を過ごすことに決めていたのだが。


 『20になったら課金する』という目標を果たす為、フードを被りマスクをしてコンビニにiTonusカードを買いに行った。すれ違う人が見てきたのは、きっと僕がニートだからじゃなくて、その出で立ちのせいだったんだろう。今ならわかる。


 丁度そのお金で装備をひとしきり買い終わった頃。時計の針が一直線に天井を指して、僕は20歳になった。


 結局、大人と言われる年齢になってもなにも変わらないじゃないか、なんて生意気なこと思いながら新しい装備で“街”に出る。最近発売されたばかりの武器を手に入れるのを目的に少し散策をしながら歩いた。


 その時に全身黒装備のアバターが、ふと目に入る。そのとき思ったことを正直に言うと「やべえ。黒騎士かっけえ」だった。


 それがミチとの出逢いだ。


 僕は現実世界では取得していないコミュニケーションスキルを生かし、彼と友達申請するところまで漕ぎ着けた。


 何が驚きだったって、ミチの装備は課金しないと買えないものなのに、レベルが1だったこと。単純に何を考えているのかわからなかった。「強い装備を買えば強くなれると思った」と言った彼に対して間髪いれずに「馬鹿野郎」と答えたのは良い思い出である。


 その日からだ。


 ログイン時間が被れば2人でレベル上げに行った。勿論、ミチと僕とのレベル差が歴然としていた為、僕のレベルが上がることはあまり無い。でも、それでもいいと思った。


 誰かとなにかをする楽しさを、僕は始めて知る。


 今まで親の都合で転校ばかりで友達がいなかった僕に初めてできた友達だったから。だからミチとレベル上げに行く日だけ、家族とご飯を食べた。今までそんなこと無かったけど、そうしたくなるくらいミチに会えるのが楽しみで。原理はわからない。


 そして3年間、ずっとパートナーとしてミチと組み、一昨日の丁度同じ時間。


 僕が誕生日を迎えた時間。


 僕が茶封筒の封を開けた瞬間。


『テル。話を聞いてほしい』


 そんなメッセージが僕のもとに届いた。

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