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プロローグ
あの日、僕宛てに1通の茶封筒が届いた。
達筆な文字が表面に書かれただけのなんともないそれが、あまりにも僕に不釣り合いで。僕は布団の上に放り投げた。”鑑 智也様“と書かれた文字が舞う。
どうせろくでもない手紙だ。年金やら貯金やら、金に飢えた老人たちが若者に送る手紙の1つに過ぎないのだろう。開けてみたところで、ニートな僕には関係のないことなのだから。
いつからだろう。社会との関わりが、とてつもなく面倒くさく感じ始めたのは。
いつからだろう。社会に溶け込んでしまう自分が恐ろしく感じ始めたのは。
僕が思うに、きっと、それは昔からだ。
そんな自分から逃げ出したかったのかもしれない。そんな現実から目をそらしたかったのかもしれない。
何年前かの3月26日。僕の誕生日。
何日か前の3月26日。僕の誕生日。
その日、僕は静かに茶封筒を開いた。