第9話 首都の別宅にて
ひと月ほどの旅が終わり、「四つの州の国」の首都に着いたのは春の終わりのことだった。
「ようございましたねえ、お嬢様。よい季節にお着きになられて」
別宅に住む者たちが迎えてくれる。石造りのかなり広い家だ。首都はどこも石造りの家、石畳の道だ。立派な道だけど、ちょっと狭いようにも感じるのは旅をしてきたせいだろうか。
旅の道連れ州知事のおっさんと従者たちは後日打ち合わせに来ることを約束して去って行った。
部屋に案内されて寛ぐ。ひんやりとした空気に、家が恋しくなった。庭の木陰で果汁でも飲みたいよお。「小鳩」がもらってきてくれたのは何やら水っぽい飲み物だった。
「トウモロコシと果物と水を煮立てたものらしいですよ」
悪くはないが、果汁ほど美味しくもない。
夕食は一人で食べる。「小鳩」に給仕してもらって鳥肉と乾燥ジャガイモの煮込み、トウガラシ、豆、トウモロコシのパンなどを食べる。野菜が少ない印象。
「お嬢様のためにご用意くださったようです」
おお!大量の落花生。嬉しい。ここじゃ採れないだろうにね。ぽりぽり。美味しい。
翌日は「大顔」と交代予定の「四十」に案内されて太陽の神殿の下見に行く。てっきり神殿は一つだけだと思っていたら、広い敷地内にポツポツ建物があって、全部まとめて太陽の神殿と呼ぶらしい。巫女たちが暮らす神殿はその中の一つだった。神官たちだけの場所もあるらしい。どれもきっちりと石を積み上げられた非常に立派な造りだった。
数日後におっさんがやってきて、神殿に入る日取りなど打ち合わせをする。私を推薦した責任者ということで当日は同行してくれることになった。そのあと「四十」と「小鳩」は北州に帰る。神殿に使用人は連れて行けないが、別邸の者が時折面会に来てくれる事になっている。心強い。
ところで「四十」は、てっきり父親が40歳の時に生まれたからだと思っていたら、母親が年上で40歳だったってさ。やられた。