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第7話 上にまいりま〜す

「ここからはずっと登りですから、気を引き締めて行きましょう」


旅の道連れ州知事のおっさんがはりきっている。でも私は不安だ。


「平地の人間が高原都市なんかに行ったら、悪い病気にかかるって、本当ですか?」


「小鳩」や「大顔」も不安そうにしている。


「みんなじゃないですよ」

「で、でも寝る時にはちゃんと地べたに寝ないと、寝台の上に寝てたら朝には冷たくなってるって、、、」

「嘘ですよ。だいたい、酒に強い人間と図々しい人間は、大丈夫なんです」


だから私たちも大丈夫って言いたいのかな。

ああ。山、山、また山。しかも高いよ。禿げてるよ。これじゃあ野菜も果物も期待できない。


私は道中口にした果物を思い出した。芒果。拳ほどの実を飲む。まずよーく揉んで柔らかくなったところで一箇所穴を開けてそこからちゅうちゅうと吸う。繊維が多くて食べられないけど濃厚な果汁が嬉しい。木葡萄もいい。枝ではなく幹にくっついた小さな丸い果実をむしり取り、白くて甘い果肉を堪能する。実際は皮が厚くて種が大きいから、あまり食べるところはないけど。牛心梨の上品な味わいもいい。鰐梨に蜂蜜をかけたのもいい。


お肉もよかったな。鎧鼠。ちょっと赤身で鳥肉に似ていて、もっと柔らかい。大蜥蜴もいいよね。少し固い白身魚みたいで。もっともっといろんなもの、食べたかったなあ。これから先はトウモロコシとジャガイモしかないかもしれないよ。


しょぼくれて歩く私を「大顔」が励ます。下らない洒落など飛ばすが面白くない。ハッキリ言っていらつく。


「大顔」の本名は「長男」だけど成長するにつれて身体も大きいが顔も見る見るうちに大きくなり、ついには両親さえ「大顔」と呼ぶようになったという。これはこれで面白い男で、結婚の宴の司会などやらせれば盛り上がること間違いない。新しい事を始めるのは好きだがいつも途中で放り出す、有言不実行の男だとお父様は評価していた。


今日の晩御飯は何かなあ。「大顔」のおしゃべりを聞き流しながら私たちは山道を登って行った。


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