第20話 南の風様、ご昇進
第一皇子改造計画が実行されてすぐ、皇太子様と私は見学をやめることになった。第一皇子様が「こんな惨めな姿を見られたくない」と泣いて懇願なさるから。進捗状況はおやつ会議の議題になった。
「今日の第一皇子様、ほふく前進がまるでお出来にならなかったので、少々鞭をくれて差し上げましたわ」
微笑みながらも怖いことを言う。
「すまん。この礼は用意してある」
「お気になさらず」
「そうはいかん。明日にでも四位に任ぜられるだろう。訓練が終了すれば即、三位だ。これは決定だ」
翌日、掃除中に「南の風」嬢は「月明かり」様に呼び出された。しばらくして上機嫌で戻って来る。
「わたくし、四位に任ぜられましたわ。でも、「月明かり」様ったら、何だかおどおどしたご様子で、<南の風さん、気を悪くしないで下さいね。噂で聞いたのです。あなたが第一皇子を鞭でいたぶって、皇子はことのほかお喜びになったと。この昇進がそのご褒美というのは、本当ですか?>と仰るのよ」
「それで、お返事は何と?」
「一部本当のことだから、ゆるく否定しておいたわ」
「それでは、肯定したようなものでは」
「その方がやり易いから、いいのよ」
「それから、木洩れ日さん。話し方は今まで通りでお願いしますわ。「様」を付けるのも、人前だけにしてちょうだい」
「いいの?じゃあ、そうします」
四位になった「南の風」嬢は掃除と料理を免除された。その分踊りの稽古に時間を使えると満足そう。
「わたくし、冬至の祭りで踊りたいのです。木洩れ日さんも、縦笛で選ばれるといいですわね」
「私の笛は、まだまだですから」
「でも、音はいいですよ。皇太子様も褒めておられました」
「でも、うーん、何というか、鳴らしているだけです。笛が歌っていないんです。説明しにくいですけど」
「それは分かるわ。わたくしも、太鼓の音が踊るのは聴けば分かりますもの」
私たちは授業に向かった。




