第2話 それがあまり信用できそうにないおっさんで
「まあまあ、お嬢さん」
おっさんがなだめにかかる。
「これはとても名誉な話なんですよ。ご両親もお喜びですよ」
確かにそんな雰囲気はあるけど、認めたくはない。
「なに言ってんですか。太陽の神殿と言えば後宮みたいなもんでしょう。一生祈って暮らすか、側室にでもなるか、もしくは家臣に与えられるか。勝手に恋愛でもしようものなら相手の男共々死刑だって言うじゃないですか」
「今はそうでもないですよ」
「へっ?」
そんな馬鹿な。太陽の神殿の巫女と言えば悲恋物語のヒロインの定番ではないか。騙されてはいけない。しかしおっさんは続ける
「それでは試しに3年間だけの出仕というのはどうですか。お嬢さんは確か成人したばかりですから、18歳までということで。ちょうど適齢期には戻って来られますよ」
うーぬ。確かに15歳。成人だ。成人したからといってすぐ結婚、という人は少ない。女で18歳から20歳くらいまで、男は24歳過ぎが適齢期といわれる。しかし、、、3年間。無事で帰ってこられるのだろうか。不安もある。
だいたいこの州知事ことおっさんもあまり信用できそうにない。首都に妻子がいるはずなのに女を口説くときは(ここでは)独身だと言って憚らない。いやあ、こちらの女性は綺麗ですなあ。言葉が通じるのもいい。そう言って髪の薄い頭を撫でるのが癖のようだ。それに騙されて寄ってくる女がいるのも事実で、任期が終われば首都へ連れて行ってもらえると勘違いしている者もいるはずだ。だが今はそんなことどうでもいい。
お父様もお母様も、神殿に入ったあとの待遇などを話し合っている。嫌だと言っているのに。もともと普段から、私の意見など聞いてもらえていない。
私は助けを求めてすがるようにお兄様を見つめた。