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第19話 南の風さん家の事情

「わたくしは成人して間もなく、父を亡くしましたの」


夕食後、「南の風」嬢と私は今日の訓練について話をしていた。


「弟は幼く、母は泣くばかりで頼りにならず、わたくしがしっかりしなくてはと、とにかく弟には厳しくしましたわ。恨まれているかもしれませんね。でも西州のためには必要なことでしたから。

信頼できる者たちで周りを固め、これと見込んだ娘と弟をようやく結婚させましたわ。少々強引だったかもしれませんけれど。

この後わたくしが西州のためには出来ることといえば、少しでも良いお相手と縁を結ぶことですね。そのために首都まで来たのですけれど、今日のようなことをしては、もう、貰い手はないでしょうね」


「南の風」嬢は寂しそうに微笑む。いえ、そんなことないです。あなたは美しい。皇子様に罵声を浴びせている瞬間も。きっと、趣味の合うお方に出会えます。私は心の中でそう励まして、落花生を差し出した。


同時に私も考えてみる。巫女留学とは言っても私たちはある意味人質だ。今は平和だけれど、もし属州と中央の間に戦争でも起これば即、盾にされる。きっと東州と南州ではお兄様がそうだったように子息を留学させているに違いない。自分の力ではどうにもならない事があるのだ。私は大好きなお兄様の顔を思い浮かべた。



翌日。日の出とともに訓練が始まった。皇太子様も私も、影ながら見守る。


「敷地内100週!」

「ひーっ!」

「捕まえろ!」


「腹筋50回!」

「プギャー!」

「押さえつけろ!」


「腕立て伏せ50回!」

「、、、、、、」

「おい、起こせ」



今日も第一皇子様は死んだ動物のようになってお持ち帰りされて行った。

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