第16話 笛の練習
今日はお掃除の後、機織りの授業だった。実家ではお母様に教えてもらって木綿生地を織っていた。でもここにある織物はものが違う。細くて上質な獣毛だ。色も鮮やか、模様も複雑この上ない。「日の御子様」がお召しになったり、褒美として与えられたりするという。
練習用に用意された織機を試してみる。踏み板を踏んで、横糸を渡し、筬で組み込む。なかなかいい調子。「南の風」嬢と交代する。彼女は初めてなのか、もたついている。
「わたくし、このような細々した仕事には向いておりませんわ」
巫女の仕事って、みんなこんなもんじゃないかな。
次は踊りの練習。太鼓の音に合わせ体を動かす。早々に「南の風」嬢はお褒めの言葉をもらっていた。彼女、体育会系?さらには太鼓も叩いてみたいという。それもすごかった。例えば「ドンドドン、チャッチャッ」と叩くことは簡単でも、それをずっと続けるのは難しい。踊りの一曲分、さらにもっと続けるのは。しかし彼女は平気な顔で叩く。即興まで入れている。ますます体育会系が疑わしい。
「南の風さん、すごかったですよ」
授業後に話しかけてみる。
「そうかしら。ありがとう。でも、西州ではあのくらいではまだまだですわ。夜通し叩けるくらいでなければ」
それって、独身女性の仕事じゃないような気がするんですけど。西州ってどんなとこ?
自由時間は外で縦笛の自主練習をする。練習は出来るだけ外でするようにと教えられた。狭い場所で吹くと音が響いて、上手くなったと勘違いしてしまうから。音は出来る限り大きく。指使いの練習もする。
ピーーポーーぺーーポーーピーー。次は倍の速さでピーポーペーポーピーを二回。さらに倍の速さでピポぺポピを4回。一音ずつ上がっていき、今度は下がる。息が苦しい。
「よっ。なかなかいい音だな」
皇太子様と第七皇子のご登場。
「はっ。ありがたき幸せ」
「楽にしろ。石っころが散歩したいというから、ちょっと覗いただけだ」
「散歩は兄上が言い出されたことですが」
「余計なこと言うんじゃない」
丁度休憩しようと思っていたところなのでおやつの落花生をお勧めする。
「固っ。歯が折れるぞ」
「でも、味はいいですね」
「これが硬いとは。殿下は軟弱な歯をしておられるか」
「普段は柔らかいもんばっかり出されるからな。でも、よく噛むと美味いな。気に入った」
ほう。貴人の食生活とは軟弱なものなんですね。
「次はオレが何か持ってくる。何がいい」
「それがし、果物が好物でござる」
「よし。分かった。楽しみにしとけ」
私は笛の練習が楽しみになった。




