第13話 石っころの皇子
何だろう。視線を感じる。今はお勤めの時間。黄金の神像を磨いている最中、私はまわりを見回す。
ーーーん?誰かいる?入り口付近でこちらをチラチラと伺う男の子に気がつく。迷子?誰か探してる?声かけてみようかな。
「あなた、何か探し物?」
「ん、、、ボク、「若年寄り」さんを探しているんです。それから「豹柄」さんも」
誰それ?
「昨日、母上と兄上がお話ししていたのです。この前神殿に入った二人の見習いのこと。とっても綺麗だけど、外見を裏切る強烈な個性、だって。しばらく体調の良くなかった母上が、とても楽しそうに聞いていらしたから、ボクも会ってみたいなあって思ったけど、どこに行けば会えるのか分からなくて」
ふうん。一緒に探してあげたいけど、心当たりはない。「南の風」嬢と私が一番の新入りだから、その前に入った人かな。そんな名前の人、いたかなあ。
「ねえ、南の風さん、心当たりある?「若年寄り」さんと「豹柄」さんですって」
「全然知らないわ」
やっぱり。どうしようかなと考えていたら後ろから怒鳴り声が聞こえた。
「こら!石っころ!黙っていなくなるから、母上が心配していらしたぞ。うん?なんだ、「若年寄り」と「豹柄」も一緒か」
なな、何と!「若年寄り」が私で「豹柄」は「南の風」嬢だった。
「兄上、この人はちっとも年寄り臭くありませんよ」
「オレと話すときはそうなんだ」
「な、何を申されるかと思えば、かような世迷言とは笑止でござる」
「本物ですね」
「こちらの人は、普通の衣装ですよ。豹柄が見たかったです」
「恐れながら、ジャガーでございます。梅花紋の中に黒い点がございます。真っ黒いのもございます。機会があれば着てお見せしますよ」
「それは楽しみです」
にっこり微笑むお方は皇太子様の同母弟の第七皇子様だった。本名は「硬い岩」様だけれど、皇太子様は石っころとお呼びになっている。
「だって「硬い岩」なんて、変な名前だろ。まあ、オレの後は流産が続いたから、丈夫そうな名前を付けたんだろうがな」
同母ということは異母もいらっしゃるわけで、第四皇子である皇太子様と第七皇子様は側室様のお子様、第一から第三皇子様は正室様のお子様だった。お母様が側室といっても「日の御子様」の血族の皇女様なので嫡子と同じ扱いになっているらしい。
「もっとも、側室たちの子、非公式な妾の子まで合わせたら、いったい何人いるのかオレにも分からん」
「それは、お盛んなことでござるな」
「ちょっと喋りかたを直した方が良くないか?」
「僭越ながらわたくしが指導いたしますわ」
「ええー。面白いのに」
私たちはひとときのお喋りを楽しんだ。




