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第11話 南の風と木洩れ日と

「それでは、これより南の風様をご紹介させていただきます」


隣の推薦人が語り始める。父である西州の長が亡くなったあと、年の離れた弟を助け、いかに苦労したか。それでも信仰心と「日の御子様」への忠誠心を忘れず、民を助け、導き、慈愛の心を忘れずに生きる彼女はいつしか密林の女神と慕われるようになった。他部族の侵入を許さず、西州の発展に心砕く彼女は誠に得難い女神でございます、と締めくくった。


凄いよ。そんな人と同じ日に神殿入りなんて。私なんて普通のことしかやってこなかった。何だか惨めな気分。間が悪いったら。


「そうか。大儀なことだな」

「南の風でございます。宜しくお願い申し上げます」


綺麗な共通語で挨拶した彼女はバッとマントをめくり上げた。毛織り物のマントの下は何やら毛皮のようだった。黄色地に黒っぽい斑点のような模様。それはとても露出度の高い衣装だった。


こりゃあ勝負に出たな。ヘソ出しだよ。密林の民族衣装かあ?こうなったら、ものすごく好かれるか、激しく嫌われるかどっちかじゃない!?私ははらはらしながら見守る。


「これは、、、豹か?」

「豹ではございません。ジャガーです。色違いで真っ黒いのもございます」

「そう、か。良かったな」


何がいいんだろう。皇太子様何だかお疲れのご様子。


「続いては、木洩れ日様をご紹介させていただきます」


気をとり直しておっさんが話し始める。すると不思議なことがおこった。おっさんは生身の人間とは思えないような女神か天女かというような女性の話をはじめた。老神官を慕い、彼のためなら命さえ投げ出す覚悟。国を思い、農業で民を導き、みなに慕われ、奇跡を起こす彼女。最後は彼女の起こした奇跡のオンパレードだった。話が終わって気づいたけど、これって、私のことだったの?


「なるほど。ご苦労であったな」


殿下にお返事しなくては。


「ご、尊顔拝し奉り、恐悦、至極に、存じまする」

「普通に喋れ」

「それがし、これが普通にて、御免」

「ふざけるな」

「御勘気被りまして、誠に遺憾にござる」

「もう良い」


殿下は何やら疲れ切ったご様子だった。


「いずれにせよ、この神殿に入れる成人男子はごく僅かだ。お前たちも高望みなどせず、しっかりと勤めに励むように」


「南の風」嬢の方からから「チッ」という声が聞こえたような気がした。


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