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第1話 スカウト来たる

「嫌です! ぜーったいイヤ!」


私は思わず叫ぶ。


「何ですか、その口のきき方は。はしたない」


お母様がため息をつく。でもここで黙っていては良いようにされてしまう。目の前にいる州知事のおっさんに向かって私はもう一度ハッキリと言う。


「そのお話、お断りいたします!」




そもそも今朝、州知事のおっさんが我が家にやって来た時から何だかイヤな予感がしていた。私のお父様は「四つの州の国」の北西海岸地方に広がる北州を治める長だ。「四つの州」全てを支配するのは世界の中心である高原都市に住まう「日の御子様」だけど。お父様が長なら州知事は何なのと言えば「日の御子様」たち中央から派遣された監視役の役人であり貴族、それも上級貴族。


その上級貴族をおっさん呼ばわりするのはどうしてかと言えば、歴史問題が絡んでくる。お父様のご先祖はもともとこの地方の部族の長だった。「日の御子様」の領土拡張が始まったとき、ご先祖始め幾つかの部族は戦わず合併されることを望み、幾つかの部族は戦争やむなしと抵抗した。その結果最も強かった部族は滅び、ご先祖の部族が最大勢力となった。その後「日の御子様」によってすべての領土が「四つの州」に編成し直されたとき、お父様のご先祖は北西海岸を任されたのだ。


でも、長と知事のどちらが上かなんて明確には決まっていないので、私は心の中で勝手におっさん呼ばわりしている。決して口に出しているわけじゃない。


ところで私が何を嫌がっているのか、聞いてほしい。

「日の御子様」の住まう首都には太陽の神殿と言うのがある。太陽神を祀る場所だけれど、そこにはたくさんの巫女たちが住んでいる。彼女たちは神に祈りを捧げ、太陽神の子である「日の御子様」のために機織りをし、お酒を作って暮らしている。巫女に選ばれる条件は容姿が美しいこと。「日の御子様」と同じ民族であること。以下省略。


ところが長年同じ民族から若くて綺麗な女性ばかり集めてきたせいで、現在残っているのはブス、いえ、美しさに乏しい女性ばかりになってしまったというのだ。そうなったら「日の御子様」も男性貴族たちも、神事へのテンションダダ下がりってワケ。これではイカンと、他民族からも広く巫女を集めることになったらしい。


お父様に呼ばれて応接間に入ると、そこにはお母様、お兄様、そしておっさんがいた。おっさんは私をスカウトに来たと説明した。そこで私は叫んでしまったというわけ。冗談じゃない。首都に留学の経験のあるお兄様によれば、首都の人達って、男も女も背が低くて胸板ばかり厚くてカッコ悪いらしい。気候も悪いし、自然にも恵まれていないらしいし、同情しちゃうよ。お断りだね。



さてと。お父様、お母様、お兄様、おっさんを前にして、私はどうやったら諦めてもらえるかを考えていた。四人は既に合意の上だったとも知らずに。






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