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ロマンチックな出逢いをしたいと思っていた時期が、私にもありました。

1話ずつ2作品投稿しております。

もしよろしければ、「特殊民間委託型犯罪撲滅捜査官、略してトクソー」の方もよろしくお願いいたします。

「ふぅ、今日のノルマおーわりっと。さっさと会社に戻ろっと。」


東京のとある会社に勤める私こと、柊 綾乃は、営業先から会社に戻る途中だった。


「あーもう、暑い。太陽が眩しすぎるよー。ん?」


見上げた先には、都会では珍しくない高層ビル。その屋上に、フェンスを乗り越えビルの縁にたち、今にも飛び降りそうな人の影が。


「ちょっ、ヤバイじゃん!!」


警察呼ばなきゃ!でも、今からじゃ絶対間に合わない。ここは、一か八かで!


綾乃は、普段では考えられないほどの猛スピードで思考を完了し、その細い足で懸命に階段をかけ上った。


「はぁ、はあ…。こん、なのっ…きつ、すぎるっ…。」


綾乃は、普段の運動不足を呪った。営業で歩き回ってるし、もと運動部だから大丈夫!という、今となっては訳のわからない謎の自信に満ち溢れていた、当時の自分を殴り倒してジャーマンスープレックスを決めてやりたかった。


「しかっ、も!何で今日にっ、限ってっ、エレベー、ターがっ、点検中なのよぉっ!」


何という不運、何という悲しき運命。エレベーターには、まるで綾乃を阻む門番のごとく、点検中の掛札が堂々と垂れ下がっていたのだ。


「はぁ、はあ、やっと…着いた…。」


ようやく屋上に着いた。良かった、まだ飛び降りていない。綾乃は、ホッと胸を撫で下ろした。


「あのー、そんなところに居たらあぶないですよー!」


何事もコミュニケーション、まずは会話からよね。恐らく二十歳前後の青年であろう、男性の背中に向かって話しかけてみる。


「んー?お姉さん、それって僕の事?」


綾乃と青年の距離はおよそ5メートル。その距離から顔をまじまじと見ると、目の下にはくま、寝癖そのままのボサボサ頭。顔のパーツが整っているだけに、もったいない気がする残念イケメン。後ろ姿とは全く印象の違う彼に、少々ビックリした。


「君以外に居ないでしょ!さあ早く、こっちに!悩みだったらいくらでも相談に乗るから!」


必死で説得する綾乃だが、当の青年はどこふく風だ。片手でフェンスに掴まって、体重を宙に預けている。手を離せば、一瞬で彼の命は彼の肉体を離れてしまうだろう。


「ごめんね、お姉さん。僕の悩みってさ、死ぬことでしか解決できないんだよ。じゃあね。」


フワッ


彼は、命綱ともいうべき自分の手を、フェンスから離した。とうとう崖っぷちから手が離れてしまった。そして、力強くビルの縁を蹴った。その瞬間、彼の肉体は重力に逆らえず、地面に一直線に落ちていった。


「ひいっ、嫌ァァァァァ!!」


ゴキャッ


綾乃は救えたはずの命を救えなかったこと、人が死に向かって走り出した瞬間を見たことに対して、悲鳴をあげた。その悲鳴のメロディーは、一際大きな音によって、フィナーレを迎える。耳を覆いたくなるような異音。人が、人であったモノに。肉体が、肉塊に。飛び降りた彼の存在を、この世から抹消した音…。


綾乃は、フラフラと足を引きずりながら、階段を下りていく。今下りれば、確実に彼の死体を拝む羽目になる。普段の綾乃なら真っ平ごめんだ。

しかし、このときばかりは自分に責任があると思っていた。彼の最期を見たものとして、避けて通るわけにはいかない。その覚悟で、ビルのドアを開く。


「…!?な、なんっ、で…。」


綾乃の目には、信じられない光景が映っていた。


「ハァー、また死ねなかった。もう108回目なのにー。」


脳がイカれた?それとも神経?そうじゃなければ、目が腐った?そうでもなけりゃ、この状況をどう説明してくれるのよ?


「ん?どうしたの、お姉さん?まるで、死体が蘇ったみたいな顔して?」


ニコニコと笑顔で話しかけてくる彼の服や顔には、自らの体内から放出したであろう血がベットリとついていた。それにも関わらず、彼は平然と私に話しかけてきたのだ。


「ちょっ、な、あなたっ?何で、何で生きてっ、さっき飛び降りてっ!?」


全く言葉が追い付かない。あまりにも衝撃的すぎて、思考がフリーズしている。出来ることと言ったら、息をすることと、文になりきれない単語を吐き出し続けることだけだ。


「フフッ、面白いね。慌てすぎだよ、お姉さん。自己紹介しとくね、僕は伊織。一応疑問に答えとくと、僕は老いもしないし、死にもしない。俗にいう不老不死ってやつなの。」


はっ?ちょっと待って?ふろうふし?あの、ふろうふし?そんなのがいるの?この科学の世界で、そんな魔法みたいな?しかもそれを、私に話していいの?


さまざまな思いが綾乃の中を駆け巡る。脳のキャパシティなどとっくに突破しているため、ただただ呆然とすることしか出来ない。

そんな綾乃を、伊織は興味深そうにニヤニヤと眺めるのだった。


大学受験まで後、4か月程と相成りました。今回は、2作品を1話だけ投稿し、どちらも2話以降を、大学に受かってから投稿を再開しようと思います。私事ではありますが、応援していただけると嬉しいです。早く合格して、続きが書きたいです。

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