足早な説明会
「第三回、暇神主催サバイバルゲームへようこそ!」
俺は気付くと、狭い部屋の中央で、ジャージ姿で椅子に腰かけていた。
目の前の真っ暗なテレビから話し掛ける声を聞こえる。
「こ、ここは……?」
「あなたは前世にて死亡が確認されました。ですが、あなたは運がいい、やり直す機会をあげましょう!あなたがこのゲームで百人中五人以下になるまで生き残れば、何でも一つ、願いを叶えましょう!同じ人生を任意の時点からやり直したり、金持ちになってみるのも良し、転生先を選ぶなど、様々な願いを叶えられます!」
「え、俺って死んだんですか?」
「はい、資料によると一月一日、死因は窒息死、場所は自宅、食事中のようですね」
くっ、正月早々、俺の身に何が起きたというのだ!
なぜかわからないが思い出せない!
「まずはルールの説明をします。ゲームの舞台は機械などの文明が発達していない異世界。言語は日本語で統一されています」
動揺している間に説明が始まってしまった。
とりあえず真面目に聞くとするか。
「参加者の方は最後の五人になるまで殺し合いをしていただきます。参加者の百人を”サバイバー”と呼称することとします」
「なっ!殺し合い!?無理無理!俺、虫くらいしか殺したことないし!」
「サバイバーの皆様には、一人につき一つ、神からの奇跡的贈り物、ギフトが送られます。ギフトを何にするかはそちらで決めていただいて構いませんが、度が過ぎるものは我々でアレンジ、または制限をつけさせていただきます」
俺の無理無理発言を無視して、どんどん説明が進んでいく。
「ギフトの内容は、物、地位、能力、才能、知識、情報など、何でも構いませんが、不老不死などは却下とさせていただきます」
ギフトの内容が生き残る鍵か。これは難しいな。
「また、暇神の気まぐれにより、サブギフトが一方的に贈られることがあります。こちらは通常のギフトに比べて効果が低くなっております」
サブギフトか。
ご褒美、ということかな?
「状況の硬直化を防ぐために、途中でルールを追加、変更することがあります。最初の追加は一年後、またこの部屋に呼んだ時に説明します」
「ルール変更あり!?えげつねぇ!」
「ルールは基本的にサバイバーの皆様が積極的に殺し合えるように変更していく予定です。最初の追加時に、サバイバーがお互いを認識できる細工を施す予定ですので、そのあたりも考えてギフトを考えてください。最初の一年間で、ギフトを有効活用して、殺し合いの準備をしていただければ幸いです」
いきなり殺し合いではないのか、助かった。心の準備的に。
「他のサバイバーを殺すと、いいことがありますので、楽しみにしていて下さい。ギフトの内容は、自分で考えるか、暇人の方々に決めていただくおまかせコースがあります。ちなみに後者の場合、サブギフトが送られます」
これは自分で考えた方がいいだろう。
サブギフトは気になるが…。
「自分で考えます」
「かしこまりました。では今からギフトの内容を考えてください」
「え?」
「持ち時間は六十秒です。では開始」
「え、ちょ、まっ!」
いきなり制限時間付きかよ!やばい!どーしよう!超焦る!
殺し合いで生き残るために必要な、神からもらえる、奇跡的な力!
「ま、魔法とか?」
「残り四十二秒でカウントをストップします。少々お待ちください」
と、止まった!焦ったけど魔法って結構いい選択じゃないか?その気になればなんでもできそうし。
とりあえず今のうちに却下された場合の次の候補を考えておこう。
「(というわけで魔法ということですけど)」
ん、声が漏れているのか?なんか聞こえるぞ?
「(ざっくりしすぎだろ!)」
「(なんでも使えたらおもしろくないよね。制限つけたら?)」
「(一度見たことがあるもののみ、とかでいんじゃね?あいつの世界魔力なかっただろ?)」
「(それって始めはなんにもできないじゃん。でもおもしろそ、ぷぷ!)」
「(じゃあ回数制限もつけちゃう?一日三回とか)」
「(三回は少なすぎだろ、そんなら普通に魔術習ったほうが良くね?)」
「(魔術と魔法とじゃ話が違うでしょ)」
「(んじゃそんな感じでまとめといてー)」
「(かしこまりました)」
なんか恐ろしくテキトーに決められた気がする。
「お待たせしました。審議の結果、あなたのギフトは”一日三魔”。一日に三回、魔法を使えます。魔法は、発動を見たことがあるものなら使用可能、魔法の回数制限は一日三回、深夜十二時に三回分回復するものとします」
「……なんか適当に決めてませんでしたか?」
「……いえ、暇神による厳正な審議の結果ですのでご安心を」
ていうか暇神ってなんだ。
「では最後に異世界でのあなたの名前を決めていただきます。この名前は一度決めたら変更ができず、サバイバーは自分の名前を偽ることができせん。名前は今から考えるものか生前のもの、または暇神の方々に決めていただくおまかせコースがございます。ちなみに後者の場合、サブギフトが送られます」
ワンモアチャンス来た!!
「おまかせコースで!!」
「かしこまりました。少々お待ち下さい」
「(ということですが)」
「(きたか!)」
「(百人目だ、これがラストチャンス!)」
「(キラキラネームにしようよ!キラキラネーム!)」
「(至高の名をプレゼントしようじゃないか)」
「(じゃあカントリー・マームとか?)」
「(ポテチ・ラブノスケなんてどうよ?)」
「(やはりレタス・チャーハンで)」
「(お前ら、そんなんだから、『やっぱり自分で決めます!』とか言われるんだよ)」
「(そうだよ!キラキラしてない!)」
俺はとんでもないことをしてしまったかもしれない。
それから十分程経っただろうか。
「(もうめんどくせーな、百人目だからヒャックとかでいんじゃね?)」
「(ハンド・レッドは?)」
「(レッド・ハンド)」
「(ドンド・ハッレ)」
「(キラキラしてない!)」
「(うっせーな、じゃあもうキラ・キイラでいーよ)」
「(お、意外といんじゃね?)」
「(じゃあ決定ね、キラ・キイラで)」
「(サブギフトはいかがいたしましょう?)」
「(((((あ、忘れてた)))))」
「(噂だがキラキラネームはいじめられやすいらしいぞ?)」
「(妬みね!)」
「(では責任持っていじめられないようにしてやろうではないか)」
「(じゃあサブギフトは『仲良し』で)」
「(異議なし!)」
「(かしこまりました)」
「大変お待たせしました」
ホント待たせすぎだろ。てゆーか全部聞こえてるし。
「あなたの名前はキラ・キイラ。ギフトは『一日三魔』のほかに、サブギフト『仲良し』となります。こちらは少しだけ敵意を向けられにくくなる、という効果です。ただし敵サバイバーは対象外となります」
……微妙。
「初期装備としてこちらを用意しております。こちらの画面にてご確認下さい」
真っ暗だった画面に白い文字が浮かび上がった。
キラ・キイラ 15歳 男
ギフト 一日三魔
サブギフト 仲良し
装備 布シリーズ
革の靴
「ではキラ・キイラ様、これよりゲームを開始します」
「あ、ちょっと質問があ…」
「いってらっしゃいませ」
神はいつだって説明不足。