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いつの間にか眠っていたようで、気が付けば独房の中は闇に包まれていた。あれから一体どれ程の時間が経ったのだろう。
立ち上がり、穴から差し込む僅かな光を頼りに鉄製の扉まで近づく。扉を叩こうと腕を持ち上げ、止めた。いくら乾いているとは言え、魔王の血が付着した手で何かに触れるのが躊躇われた。
声を掛けてみるべきかと思ったが、それも止めた。どうせ近い未来に失うこの命、静かにその時を待とう。
それから更に時間が進み、穴から差し込む光が強くなり独房を明るく照らしている。あれから一睡もせず、壁の一点を見つめ続けていた俺の耳に、乱暴に扉を叩く音が聞こえて来た。
鍵を解錠するガチャガチャと言う音が止んだと思えば、錆が所々目立つ扉を勢いよく開け放ち一人の兵士が中に入って来た。その様子をぼんやりする頭で眺めていると、兵士は持っていた槍の先をこちらに向け叫び声を上げる。
「陛下がお待ちだ!出ろ!」
昨日ここまで誘導してきた騎士達とは違う、明らかに一般の兵士と思われる男がこちらに槍を向けたまま顎で廊下の方へ促す。
やっとか……。そう思いながら大人しく指示に従い廊下に出ると、待ち構えていた別の兵士に手錠を掛けられた。
「この手錠には魔力を抑制する効果が付与されている。抵抗しようとしても無駄な足掻きでしかない。大人しく付いて来い」
勿論抵抗する気も逃げる気もない。しかし、何の躊躇いもなく腕を触られた事、手錠が何故必要なのか分からない。最後の最後に命が惜しくなり、逃げようとするとでも思っているのだろうか。でも、魔王の血が付着している身体に躊躇いなく触れるのは何故だ。乾燥していればその効果は無くなるのか?
手錠を掛けた兵士に先導され、後ろにはブツブツと何かを呟きながら、槍を持った兵士が続いていた。
「……裏切り者……さっさと……いいのに……」
何と言っているのかハッキリ聞き取れないが、良くない内容であることは分かる。裏切り者とは誰の事だ?さっさと何をすれば良いんだ?その声を拾おうと後ろの兵士に意識を集中する。
「皇帝……皇子が魔王…………おいっ!さっさと進めこの愚図!」
自然と歩みが遅くなって居たのだろう。それに気づいた槍を持った兵士が顔を歪め罵声を飛ばす。槍を構えられ慌てて前を歩く兵士との距離を詰める。うっかり切り付けられでもしたら、俺たちのしてきた事が全て無駄になってしまう。
先導する兵士は此方を一瞥しただけで何も言わず、地上へ続く階段を黙々と上っていく。木製の扉が開かれると太陽の光に全身を包まれ、それと同時に、遠くの方から賑やかな音が聞こえてきた。
「……歓声、だ」
目を見開き、呟いた声が震えた、気がした。声の聞こえる方へ近づこうと足を踏み出す。
一目で良いから近くで見たい。人々の喜ぶ姿を、笑顔を、俺たちの結果を表すものが直ぐそこにある。皆にはその光景が見えているだろうか。今すぐ城壁を乗り越え、その先の光景を目にしたい。俺たちはやったんだ。英雄になれたんだ!
自然と俺の足は走り出そうとしていた。
「そこまでだ。それ以上離れるな」
剣を首元に突き付けられる事によって進行を阻まれる。思わず睨み付けた先に先導していた兵士の姿があった。
「賑やかだろう?何があったのか気になるか?気になるだろうな!だが殺人鬼のお前が知る必要はない!」
それまで無表情だった兵士は徐々に顔色を赤く、最後には真っ赤に染めそう叫ぶ。
その時になってこの兵士の正体に気が付いた。
「マリアの、おにい、さん……」
「きっ気安くマリアの名前を呼ぶな!」
マリアの兄はその言葉に怒りを露わにし、マリアと同じ金色の髪を振り乱す。
突然の仲間の身内の登場に、そして投げかけられた言葉と感情に俺は動揺を隠せなかった。
「どうしてここに……それに、殺人鬼って……」
「それは自分がよく分かっているだろう!平然とした顔で抜け抜けと……。俺たちがどんな想いで日々過ごして来たと思っているんだ!よくも……よくもマリアを!」
「ちょっと待てクリス!殺すのは不味いだろ!」
振り上げられた剣に咄嗟に身構える。振り下ろされる瞬間、割り込んできた槍持ちの男が俺を後ろへ突き飛ばし、何処から取り出したのか、短剣で剣を受け止めていた。
「こいつがマリア達を……!こいつさえ居なければ、マリア達がっ!」
「落ち着け!俺たちの任務はこいつを、無傷で、皇帝陛下の前に連れて行く事だろう!冷静になれ!」
地面に尻餅をついたまま二人のやり取りを茫然と見つめる。
訳が分からなかった。マリアの兄は俺たちに課せられた使命の内容を知らなかったのか?それともマリアではなく、俺が帰ってきたことに対して不満を抱いているのか?それに殺人鬼って……殺人鬼って何だよ!
暫くして落ち着きを取り戻したらしきクリスの背を叩き、槍持ちの兵士が俺の腕を掴み強引に立たせる。
聞きたいことは沢山あったが、到底聞けれるような雰囲気ではない。それから俺たちは一切言葉を交わすことなく、謁見の間へ続く扉の前に立っていた。
扉の横に立っている兵士たちが動き出す前に、俺はこれが最後になるのだからマリアの兄に何か伝えなければという使命感に衝き動かされ、乾いてしまった口を開く。
「あの……マリアは立派に任務を果たしました。マリアだけじゃない。グレン、レイス、マシュー、皆立派に任務を果たしました。だから俺も……」
「はっ、ははははは!」
最後の任務を必ず果たして見せます。そう続けようとした言葉を、クリスの笑い声によってかき消される。
笑い声は段々小さくなっていき、その表情には明らかな嘲笑が滲んでいた。憎悪の籠った瞳が俺を射抜く。
「精々苦しんで死ぬがいい」
謁見の間の扉が開かれ、その中へ足を踏み入れる。背中に突き刺さる視線が痛い。
何故彼にここまで恨まれなければならないのか解らない。一体俺が何をしたって言うんだ。
真っ直ぐ見据えた先に、高い位置に座る皇帝が座っているのが見えた。その一段下に数人の騎士、更にその下には数十名の豪華な衣装を着た、貴族や官職が左右に分かれ立ち並ぶ。
左右をマリアの兄たちよりも重装備な兵士に挟まれ、中央を進む。皇帝の顔がはっきり確認出来る辺りまで連れて来られると、右側の兵士から跪けと囁かれた。
大人しく指示に従い膝を床に付けるが、重苦しい雰囲気とこの場に居る者たちが囁き合う不穏な声に、何かがおかしいと今更ながら思い始める。
「ヴァイス・シュラーゲン。今からお前の罪名を言い渡す」
段上に一番近い場所に立っていた腹の出た男が、一歩進み出るなりそう言い放った。
俺は勢いよく顔を上げ、その男の顔を凝視する。
「死罪!皆さまそれでよろしいですかな?」
「それ以外あるまい」
「この裏切り者を死罪で終わらせるなど!軽すぎる!」
「市場での引きずり回し、激しい拷問も受けさせるべきだ!」
「しかし、いくら鍛え上げられた選ばれし者であれ、生を望むのは生き物の性。それに彼は若い。多少の情状酌量の余地を」
「なぁにが生を望むのは生き物の性だ!こいつは殺人鬼だ!共に鍛錬に励んできた仲間を殺して生き残るような鬼畜だ!畜生にも劣る存在だ!死罪だけでは甘すぎるわ!」
「何を……、何を言っているんだ!」
好き勝手に声を上げる貴族、官職連中に顔から血の気が引く。立ち上がり掛けた体を左右の兵士に押し付けられるが、構わず声を上げる。
「死罪!?裏切り者!?何故そうなるっ」
両肩に強い力を加えられ、更に金属製の手袋に頭を鷲掴みにされ押さえつけられる。
「陛下!あなたは昨日俺の報告を確かに聞いた筈だ!」
「黙れ!今になって往生際の悪い奴だ!」
「お前は今回、人類の命運をかけた魔王討伐の作戦において、魔王を目前にして怖気付き自らの命を優先させ仲間を裏切った。ちゃんと目撃者も存在している!魔王を討ち破り、この世に平和をもたらした英雄にしてこの国の皇子!ディスクレート様だ!」
腹の出た男の口から出て来た名前に息を飲む。
ディスクレートだと?あの、アルゼン山脈で連れの者たちと遭難していたあいつが、魔王を、倒した?マリアとレイスの回復魔法とこちらの食料を渡してやらなければ、山を越えることも出来ず野垂れ死んでいた連中が、魔王を倒した?
「ディスクレート様。お疲れの所大変恐縮ではございますが、当時の状況をご説明お願いいたします」
人垣をかき分けるようにして、緩くうねる銀髪を手でかき上げながらディスクレートが現れた。ニヤリと意地の悪い笑みが向けられ、一瞬だけじゃない殺意が芽生える。
「うむ。あれは我々がアルゼン山脈を越え、更にその先のタニーニャ湖を目前にしていた時の事だ。魔物に囲まれた数人の男女を見つけ、救援に駆けつけようと、我々が装備に手を掛けようとしたその瞬間!こいつが!金色の髪の少女を魔物の群れの中へ突き飛ばしたのが見えたのだ!」
指を差され、聞かされた内容に驚愕する。
「奴の狂気の行動に、他の者達は呆気に取られていたのだろう。為す術なく、彼らはこいつの剣の犠牲になり……。仲間たちの遺体に群がる魔物たちの間を潜り抜け、こいつは逃げ出した!自分の命を優先させた卑怯卑劣な人間!正に外道!我々は魔物を全滅させ、食い荒らされた者たちを埋葬した。あぁ、あの光景は今も目に焼き付いて離れない。助けを乞う彼らの姿が夢に出て来る度に、救えなくてすまないと、詫びるしか出来ない自分が何と情けない事か……」
可哀そうに……、そう言ってハンカチを取り出し目元を拭うディスクレートに、周りから労わる声が掛かる。何という三文芝居。反吐が出る。全くの出鱈目に言葉が出ない。
「この殺人鬼の後を追おうとも思ったが、帝国の、いや、世界中の人々の為に!何を優先すべきか思い直し、我々は魔王の元へ向かい、そして、討ち滅ぼしたのだ!」
両手を天に掲げるディスクレートに周りから盛大な拍手が巻き起こった。ディスクレートはそれに満面の笑みで応える。
途中までの話は、どうでも良くはないが置いておくとして、最後の台詞だけはどうしても許せない。途中で断念し、引き返していったお前たちが魔王を倒しただと?
沸々と言い様のない憤りで頭の中が燻られる。
酷い作り話。酷い茶番。侮辱だ。俺だけじゃない。勇敢に死んでいった仲間たちへの冒涜だ。許せない。許せる筈がない!
「ふざけるなぁ!がぁああああ!」
得意げなディスクレートへ一矢を報いてやろうと、黒い炎を生み出そうと魔力を解放しようとしたが、その魔力は外へ解放される事無く体内で暴発、全身の骨が砕けるような衝撃が俺を襲った。
その場でのたうち回る俺を見て、ディスクレートや周りの連中がさも愉快と言わんばかりに笑い声を上げる。
「馬鹿め!その手錠は魔力を内側へ逆流させることが出来る。強い力を発動すればする程、自分が受ける衝撃が大きくなるのさ」
「なんとも無様な姿でしょう」
「自分で自分を痛みつけるとは、物好きな奴だ」
「さてさて、ディスクレート様の大変貴重なお話も拝聴出来ましたことですし、この者の処分を決定いたしましょう。皇帝陛下、死罪で、ご許可を頂けますでしょうか?」
「よい。早急にこの犯罪者を処理せよ」
嘲る声に交じり聞こえた皇帝陛下の声。
「まっ、待って……ください」
激痛の中、今にも立ち去ろうとする皇帝に藁をも縋るつもりで声を掛ける。この際俺は犯罪者でも何でも良い。けれど、仲間たちだけは、仲間たちの死だけは不名誉なものにしないでくれ。
「仲間たちは、果敢に、戦った。それだけは、認めて、ください」
痛みで涙や鼻水、口から涎を垂れ流し、醜態を晒しているのは理解している。それでも精一杯頭を下げ、汚名だけは取り消して貰えるよう願い出る。
声を掛けられた事を不快に思ったのか、皇帝陛下は酷く冷たい目で俺を見下ろす。
「お前たちは失敗した。それが公表された事実だ。……見ていて不愉快だ。さっさと連れて行き処分しろ」
ゴミを払うような仕草をした後、背を向け立ち去る皇帝に、目の前が絶望に染まる。
処理……まるでゴミのような扱いじゃないか。
「命を懸けて魔王を倒した俺たちを、ゴミ扱い。おまけに……」
あいつらは俺たちの名を公表し、歴史に名を遺す英霊として祀り上げると言っていたのに、聞こえて来た声は裏切り者、失敗した者達、敗北者などなど。更にはディスクレートが魔王を倒した等という出鱈目まででっち上げている。
許せるか?許せるものか。皆は何のために死んだ?誰の為に戦って死んでいった?英雄として名が遺せる事が俺たちにとって最大の希望だった。
憎い、憎い、憎い。ディスクレート、皇帝、あの場に居た全ての人間、いや、世界中全ての人間が憎い。
戦う事無く、街で平穏に暮らしていた何も知らない愚か者ども。勝手に期待し、失敗すれば罵る身勝手な者ども。
「許せない。殺してやる」
みしりと、何かが軋む音が聞こえ、目線を下げると手錠に亀裂が入っているのが見て取れた。
「ヴァイス・シュラーゲン!その場に跪け!」
慌てた様子で魔力なしの兵士が俺の肩を掴む。その拍子に手錠が割れ、地面に落ち砕け散る。
「て、手錠が!」
体を反転させ、兵士の顔をじっと見つめる。焦げ茶色の瞳は動揺に揺れ、その中に恐れ、怯えが見て取れた。
「俺が恐ろしいか?」
手を伸ばし、兵士の首を掴む。触れた場所からそいつの心が伝わって来た。恐怖、動揺、その中に僅かな葛藤を見つける。
「へぇあんた……。俺を殺すのに躊躇いがあるのか?殺されそうなのに?」
「ほう家族も魔力なしだったのか……、父親が先の作戦に駆り出され戦死、ね。可哀そうに。お前もこの世界の犠牲者か」
兵士の瞳から彼の記憶が俺の中へ流れ込んで来る。そして見つけた、帝国やその他の国々への確かな恨み。
不思議な感覚だった。こんな能力持っていなかった筈なのに、自然と受け入れている自分が居る。何の違和感もない。寧ろ体の奥深くから力が湧いて来て、凄く気分が良い。城で瀕死になって居たのが嘘のようだ。もしかすると、これが魔王に変貌する兆しなのだろうか。
「力が欲しいか?その恨みを晴らせる程の力が」
「お、俺は帝国へ忠誠を誓っている!お前を処刑すれば報奨金が出る……それで故郷へ帰るんだ!」
槍を捨て腰に差していた剣を抜き、構える兵士。その剣先が震えているのが見て取れる。
「その故郷に帰ってもお前を待っている人は誰も居ない。あんたの家族、仲間は捨て駒にされて皆死んでいる。それに、帝国があんたを生かしておくとは思えない。俺を上手く殺せたとしても、次はあんたが殺される。口封じのために」
分かっているんだろう。笑いそう囁けば、顔色を青くした兵士が奇声を発し剣を振り上げた。
「嘘をつくなぁあああ!」
敢えてその剣を躱さず体で受ける。ザクリと肩から胸の辺りまで切られるが、多少の違和感があるが痛みは全く感じなかった。切られた場所を手で触れてみるが血の滑りを指先に感じず、見下ろしてみると、切られた筈の場所には服が破れているだけで、肌には傷一つ付いていなかった。
「ひっ!ば、化け物っ!」
「化け物とは酷い」
おどけて見せるように肩を竦め、一歩兵士に近づく。
「く、来るな!」
牽制するように空中で振り回される剣を素手で掴み、止める。軽くそれを引っ張ると、簡単に兵士は俺の懐の中へ飛び込んできた。
「こ、皇帝陛下は約束してくれた。今回の作戦が終われば、皆無事に故郷へ送り届けると!」
「そう言っておけばあんたが従うと分かっていたんだろうな。だが、あいつらが約束を守る事はない。希望を持たせ、用が済めば叩き潰す。それが奴らのやり方だ。俺もあんたも掌の上で踊らされていたんだよ」
剣を放り投げ兵士の首を片手で掴み、もう片方の手を胸元へ添える。鎧に阻まれていた指先が、吸い込まれるようにその中へ沈む。激しく上下する胸の筋肉を通り越し、血管、骨、その先の荒々しく脈打つ心臓に手が届く。
「憎くないのか?大切な家族を殺した帝国が、この世界の人間たちが。俺は憎くて堪らない。命を懸けて魔王を倒した仲間たちを貶め、辱めたあいつらが死ぬほど憎い」
青ざめ恐怖に顔を引き攣らせた兵士の顔を覗き込む。
「もう一度聞く。力が欲しいか?望むのならば、その恨みを晴らすには十二分の力を与える事が出来る。どうする?復讐を果たすか。それともこの場で死を迎えるか」
そっと心臓を掴む掌に力を籠める。大量の汗を流し、目を見開く兵士。その瞳の中に答えを見つけた。
「……興醒めだ」
この兵士はまだ郷の仲間たちが生きていると信じていた。世界の人々の為に命をなげうった父親に尊敬の念を抱いている。肉親を失った悲しみ、世界に対する恨みはあるが、それ程強い想いではない。そして、俺に対する哀れみ。
手を胸から引き抜き、兵士を突き飛ばす。地面に叩きつけられた兵士は、呻き声を漏らすがちゃんと生きている。
「このまま殺してしまおうか、そしてその足で帝国へ戻り全てを破壊する。帝国だけじゃない、世界中の国々を、人を、破壊し尽そう」
「そ、そんなことは、さ、させない」
近くに投げ捨てられていた剣を手に立ち上がる兵士のその姿に、どことなく既視感を覚える。はて、何処で見た光景だったかと目を瞑り、首を捻っていると、胸に強い衝撃を受けた。
目を開けた先に自分の胸に深々と突き刺さった剣の柄が見えた。
それで思い出した。あの姿はグレンだった。魔王に止めを刺す前のグレン。
俺代わりに皇帝から押し付けられた聖剣を掴み、この兵士と同じように魔王の心臓を貫いた。引き抜かれる剣、それに合わせる様に噴き出す真っ赤な血。倒れ、痙攣し、事切れる魔王。それを見事に再現していた。それがどことなく面白く思え、自然と口角が上がる。
目の前が暗くなり、意識が沈んでいく。
「ヴァイス・シュラーゲン。君の最後の任務は果たされた。ゆっくり眠ると良い」
意識が途切れる間際、確かにそう聞こえた。