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初めて投稿します。
ド素人の作品ですので、軽い気持ちで軽く読んで頂ければ幸いです。
2,3話で終わる予定・・・
名前のない世界では、かれこれ数千年ほど前から王国、帝国、聖国という三大強国と呼ばれる国々が近隣の小国を巻き込みながら三つ巴の戦争を繰り広げていた。
しかしある時、その状況が一変する。
争い合っていた三つの国が手を取り合い、同盟国として戦わなければならない存在が現れたからだ。
その相手の名は魔王。強大な力を持ち、更に魔の性質を持つモノ達を従え、支配地を拡張すべく周辺の諸国を襲撃。魔王軍が侵攻した土地の人々は皆殺された。女も子供も、王も民も、命乞いをする者も無慈悲に惨殺して行った。全ての人間たちがその土地から姿を消し、人間たちは恐怖した。
ある者は言った。魔王は我々への罰なのだと。同じ人間同士で殺し合いを続ける愚かな人類への神からの罰なのだ、と。
「このまま勢力を拡大させては、いつか自分たちの国にも必ずやってくる」
「魔王を討たねばならぬ」
「同じ人間同士で争っている場合ではない」
三つの大国の主たちは同盟を組んだ。
同盟軍を結成し魔王軍へと挑んだのだが、同盟軍は惨敗。数十万規模の被害を出し、人類は希望を絶たれたかのように思われた。
だが、魔王が死んだ。人間の、一人の青年に殺されたのだ。
人々は歓喜した。その若者を英雄と称え、世界の救世主として奉り上げた。
魔王が消えると同時に魔のモノ達の力も衰え、魔王軍に奪われた土地を奪い返すべく、同盟軍は魔のモノ達の掃討を行った。
世界には再び魔王の居ない、平穏な日々が訪れた。
それから数年後、倒された筈の魔王が再び現れた。
それは愚かにも人間たちが再び争いの火ぶたを切って落とそうとしていた時であった。
戦場へ突如として現れた魔王は、手を一振りするだけでその場に居た数千の兵士達を屠った。その場に居た者達は再び現れた存在に恐怖し、我に返った者から逃走を試みるが魔王の追撃になす術なくあえなく散っていった。
運よく生き延びた者がこう言った。
「あれは救世主様だった……。あの場に現れた魔王は、居なくなられた救世主様だった!!」
英雄、救世主と呼ばれた青年はある日突如として忽然と姿を消していた。
魔王軍によって被害をもたらされた国々の慰問に回っている最中の事であった。
そんな彼が魔王として再び現れた事に世界中が混乱を極めた。彼は本当に救世主なのか。あれは本当に魔王なのか。あの存在が何者なのかは関係がない、我々の脅威となるのであれば倒さねばならぬ。
人類と魔王軍の戦いが再び幕を開け、今回も甚大な被害を出しながらも魔王討伐に成功した。少数精鋭の若者たちによって……。
そんな事を何度繰り返したのだろう。
倒しても必ず復活を遂げる魔王に人類はついにお互いで争うことを辞めた。いつ、何処に現れるか分からない存在に対抗すべく、各国は戦力を温存し共に手を取り合う道を選んだのだ。
何度倒しても復活を遂げる魔王に、人類はただ待つだけではなかった。
魔王を倒した者達の中の誰かが次の魔王となっている。それが判明したのだ。
無残に散り行く英雄達、世界を救った自分たちが何故殺されなければならないのか。地面に転がった首が恨みの籠った目で壇上に座る王を見上げる。
「許せ、英雄たちよ」
苦渋に見た祖国の王の顔を、人類を救った者たちが見ることはない。
各国の代表者達は世界を救った者達を英雄と称えながら、人類の為の尊い犠牲として葬ることを決定したのだ。
未来ある若者を、それも魔王を倒せる程の力を持った者達を失うのはその国にとっても大きな痛手であった。しかし、魔王の脅威と比べれば小さな犠牲でもあった。
これで終わる筈だった。
この犠牲を最後に、人類は魔王という呪縛から解放される筈であった。
だが、再び魔王は復活を遂げたのであった。
それから更に数百年が経ち、五人の若者達が魔王を討つべく帝都グリッツェンから旅立って行った。
その旅路は決して楽なものではなく、何度となく死線を潜る事になるのは明白であった。
しかし、彼らの瞳は力強く、何があろうとも必ず自分たちの任務を遂行してみせるという決意が現れていた。
彼らは知っていた。失敗すれば命はないという事、無事に使命を果たせても自分たちに未来がない事を。
各々の決意を胸に彼らは進んでいく。国の為、大切な人たちの為に、その若く輝く命を散らすことを厭わずに。
果たして彼らは魔王を本当の意味で葬る事は出来るのであろうか。
どのような結末が彼らを迎えようとも、ただ願おう。
彼らの旅路に幸多きことを――。