わたしはかなしいのだろうか
かなしみの紫に満ちた
忍び寄る薄闇の夕暮れにも
過ぎ去った午後の日溜りは
昼光色の輝きを止めない
やわらかな木蔭を縫って
崖へと向かう道を往く
幼子の手を引いて
怒涛への憧れを抱いて
わかっているような
わかるはずのない行く末を
呼んでいる わたしの声
愚かで、けれどどこか弾んで
かたつむりのように
頼りない殻を背負って
雨を喜び 照りに耐えて
生きている狭さと確かさもまた
きりとられた空の薄い雲のよう
失い続けるのではなくて
わたしに見えないように
青にとけるかなしみ
枯れない滝壺のよう
静まりかえった頭のどこかで
白い手がおいでおいでしている
薄い裳裾が頬をなでる
それでも陽光は強くて
みどりの果てからの風は
ざわめきを止めない
わたしの中でも
ダイヤモンドの一閃になりたくて
きっと今もこうしてそちらを向いている
全ての色のはじまりのほうを
わたしはかなしいのだろうか
お読み頂いてありがとうございます。