まだまだ車内では
『カモメさんはこの事態を如何に乗り切ろうと思われてますか?』
と…塚本はカモメに訊ねた。
『そうですねぇ…
先ず急がなければならないのは…
水の確保でしょうね。
塚本さん?
貴方の説が正しいと仮定しましょう。
すると…我々は時空と重力の歪みに嵌まり込んだとは言えないでしょうか?
時間と空間と重力が大変密接な関係がある事は…
広く世間に知られています。
時間に関しては未だに
学者の間でも意見が分かれる所ですが…
大まかな感じとしては
映画のフィルムみたいなモノに絶えず重力や慣性が働きかけていると理解してください。
我々は、まさに その中に嵌まり込んだ異物なのです。
いずれ…我々は
この時空から排除されるのでは無いか?
と思います。
これを…時空の揺り戻しと言います。
この…揺り戻しは、一年後…イヤ…一ヶ月後…
はたまた…明日かも
一時間後かも知れません。
我々は…それまで生き延びていなければならないのです。』
思っていた事態より遥かに事態が切迫している可能性を理解した乗客達の間には重苦しい空気が流れていた。
誰もが口を開く事すらも出来ず
ただ…車内に響くディーゼルエンジンがガラガラガラと耳につく
アイドリング音を響かせていた。
次第に西日が傾き
気温が幾らか落ち着いて来たのか?
『そろそろ…片桐さん
エンジンを切り
クーラーを止めて下さい
私達男性は飲料水になりそうな水を探しに行ってきます。
女性は
そこら辺から薪になる小枝や灌木を集めて下さい。』
とカモメが呼び掛けた。