またまた車内では
徐々に中村を中心に
事態の把握を始める9人
答えにたどり着けるのか?
『なあ?…先生…』と
太田浩一が元教師の
中村へ問い掛ける。
『どうしました?太田さん?』
『先生は…この事態をどう?解釈する?』
『そうですねぇ…
今まで車窓から見えていた景色が…
あっという間に何処かの景色に擦り変わった様な?
と…言うくらいしか
私には判断出来ませんねぇ…』
運転士の片桐を含む他の8人が…
相槌を打つ様に頷く。
『そうだろ!そうだよな?まるで…
映画や物語の様に
タイムスリップか?異世界に紛れ込んだみたいじゃないか?』
『しかし…現実に、そんな事が起こりうるのでしょうか?』
『それじゃあ…
今のこの状態は現実ではないと?』
『そうは言って無いよ…
例えば瞬時にして
別の…私達の知らない日本の何処かに移動したかも知れない』
『あのぉ?
少しだげ良いですか?
瞬間移動は少し物理的に無理が有るのでは?』
『それじゃあ
塚本くんタイムスリップなら物理的に可能なのか?』
『いえ…理論上の話です。ひも理論というモノに当て嵌めて考えたならば…
過去へも未来へもトラベル出来ると…
しかし…
未来へは光の速度に近づけば近付くほど時間軸が相対的にズレる事は証明されてますから?』
中村は…
『それじゃあ塚本くんは
この…車窓の外に広がる風景は我らが居た世界よりも未来だと言うのか?』
『中村さん…ただ…
僕はその可能性が高い
いや…ありうると言ってるまでです。』
『それじゃあ…
この外に出て誰か居ないか確かめに行かなくちゃな』
『それは、お止めになった方が良いと思いますがねぇ』
とカモメが口を挟む
『一体どうして行っちゃいけないんだ…
おっさん』
『外をご覧なさい
あんなに日が高く昇って居るのですよ。
外はおそらく…猛暑でしょう…
太田さん?
貴方水を持って居るんですか?
この車内は冷房が効いてますが
外に水分も持たずに
軽々しく出ていけば
あっという間に脱水症状を起こしますよ』
『それでは…
此処にジッとしてろと?』
カモメに今度は塚本が訊ねる。
『日が高い内はこの車内で機関車のエンジンをかけて冷房を入れ
日没後には扉を全開にして風を入れ私達男性は
暗くなる前迄に辺りの探索を済ませます。
暗くなってからは
この風景から察するに
野生動物と出くわすかも知れませんし』
『カモメさんの意見に私は賛成だな…
無駄に動き回る事は避けた方が良いだろう』
中村は少し溜め息を漏らすように
カモメに賛成した。
遂に悪魔堂カモメが口を開く