契約
塚本は契約書に目を落とし何かの不具合があるかも知れないと
目を凝らした。
が…しかしシンプルな文言に何ら不具合は無く
カモメの言葉を信じるしか無いようだ。
今…カモメは太田の側に
片膝をつき太田に手を押しあて何事かブツブツと
呟いている。
カモメは振り返り
『応急的なヒーリングは施しましたが?
最終的な治療はやはり
現代医学には及びません
抗生物質や消毒、予防的な治療は必要です。』
『あんた…こんな…
簡単な文言で契約は有効なのか?』
と塚本が訊ねる
『十分です。
魂を扱うなんて悪魔堂くらいしか居ませんから』
『そうか…
じゃあ何か書くものはあるのか?』
と聞かれカモメはポケットから万年筆を取り出し塚本に渡した。
塚本は慎重に
契約書に塚本淳と書き込みカモメに手渡した。
『これで…契約は結ばれました。
塚本さん…後はあなたの美しい魂を美しいままに
保って下さい。』
契約書を鞄に仕舞い込み
カモメは
『片桐さん…ドアを開けてください…』
『しかし…野犬が…』
『構いません…』
片桐はドアを開けるスイッチを入れた。
『皆さん…もうそろそろ
時空の揺り戻しが来ます。片桐さんあの時代に戻ったら真っ先に米子駅に連絡して
救急車を手配して下さい
皆さんも軽い脱水症状位はあると思いますが
命に別状は無いと思いますよ。
ちゃんと…
命は守られたでしょ?
揺り戻しが近いとは教えなかっただけです。
これが悪魔が悪魔たる由縁です』
とカモメは外に出た…
その瞬間一瞬の霧に包まれ霧が晴れた時には
外の景色はの中に
左手に米子空港…
草むらだった所には民家や線路に沿う道路…
片桐や高橋真由美には見慣れた風景が戻っていた。
あれは…夢だったのか?
しかし…列車後部に横たわる太田を見て
片桐は無線を取り
米子駅へ連絡をとり
取り敢えず救急車を手配した。
高橋真由美は携帯を取り出しディスプレイに目を落とした。
そこにはあの日のままの日付と11時になろうとしている時刻が刻まれていた。
『夢でも見てたのかしら?』
と呟いた真由美に
塚本が
『夢じゃない…
ほら…そこに太田さんは
倒れてるし
霞網もろ過器も…
ある…全て現実だったんだ。』
その呟きの後に残る静寂に遠くから聞こえる救急車のサイレンが響いていた。
これで終わりです。
有難う御座いました




