車内にて⑥
そんな…塚本に対して
高橋真由美が優しく語り掛ける
『塚本さん…中村さんの言葉は気にしないで下さい
先程カモメさんに
過去を暴かれたばかりじゃ
なんの…説得力もありません。
人間…遅かれ早かれ何時かは死にます。
此処で取引をしてもあの時代に帰れなければ
同じ事です。』
『高橋さん…さて…
そんな…悠長な事が言えるのでしょうかねぇ?』
まさに、その時だった。
今まで静かに横たわって居た太田が小刻みに震え出した。
『太田さん!!』
看護師の白石佳江が慌てて駆け寄り
太田の脈を計り
額に掌を乗せた。
『かなりの!発熱です!!
もしかしたら
出血に依るショック状態かも知れません!!』
『みなさん…太田さんにはあまり時間は残されて無いようですよ?』
カモメの問い掛けに
塚本が口を開いた。
『本当に皆の命は保証してくれるんだな?』
『勿論です。
あなた方には多少の誤解があるようです。
それを少し訂正しておきましょう。
悪魔は嘘をついてはいけないのです。
相手を誘導するために
教えなければならない事を教えない事はありますが…
それと…もう一つ
決して人間には危害を加えてはならない!
この二つは絶対です。
と言う訳で…
喩え…塚本さんと契約を交わしても
塚本さんが寿命を全うするまで
魂の回収は出来ないのです。』
『と…言うことは
契約を結んでも今すぐに魂を地獄に持ち去られる事は無いのか?』
『そうです…契約である以上その美しい魂を
美しいままに保たなければならない
義務は発生しますが?
その代わり違う状況で塚本さんと出会っていれば
巨万の富と歴史に名を残す事を約束出来たのですが?
この場合は仕方がありません。
皆さんの命の保証と言うことで …』
『口約束でもいいのか?』
『太田さんは…急を要するみたいですので…
口約束でも構いませんが
ちゃんと契約書は交わしていただきます。』
と…鞄の中から契約書を取り出した。
『塚本さん…
ジックリ目を通しておいて下さい。』と塚本に一枚の契約書を渡した。
次回をお楽しみに




