車内にて②
『野犬を追い払う手立てが無い訳ではありませんが…』
『カモメさん…それはどんな手立てなのでしょう?』
『中村さん…ディーゼルの燃焼である軽油を青々と繁った中にばらまき火を着けます。』
『野犬に囲まれた中でそんな事を隙を見て行うことは不可能です。』
『勿論武器も作ります。が多分一人や二人の犠牲も出ます。
ですからここで…あなた方に
人の心を棄てて貰います。
どうせ…出る犠牲なら
最小限にとどめておくことも大事です。』
『それは…まさか?…』
『中村さん…いや…皆さん太田さんを囮に使います。
野犬達は当然の様に太田さんに集中して反復攻撃を仕掛けて来るでしょう。
そこは…みんなで武器を持ち援護しながら
誰かがタンクから軽油を抜き取らなければなりませんが…
背後が無防備になります。』
塚本が叫ぶようにして反論する。
『あんた!!それは最終選択だろ!!
人として恥ずかしくないのか?』
『塚本さん…私は人じゃありませんよ…最初にいいましたよね?
私は悪魔です。
わたくし共悪魔堂は巷には出回る事の無い物を取り扱うと…
塚本さん…貴方は正義感も強く自己犠牲もいとわない美しい魂の持ち主だ
わたくし共悪魔堂と契約を結びますか?
みんなの命は保証しますよ…』
『悪魔なんかに魂を売ってたまるか!!
片桐さん!この機関車を
移動させる事は出来ないか?』
片桐は
『レールの上なら移動は可能です。』
カモメが口を挟む。
『時間の揺り戻しが来るのか分からない内には
移動は避けた方が良いと
思うのですが
元の時代に帰れなくても良いのですか?』
『帰れなくても良いじゃないか…
悪魔に魂を売るよりはましだ!』
『このままだと…
真っ先に太田さんが衰弱し亡くなる事でしょうね
次には翼くんです…
そして女性が早いか中村さんが早いかでしょうね。
体力的に片桐さん…
塚本さんあなたたち二人です。
私が居なければ水の調達も食糧の調達も何も出来なかった貴方達が生き延びる時間なんて僅かだと思うのですがねぇ』
カモメのこの言葉に
誰一人口を開く事はなくただ静かな時間がすぎていった。
次回もお楽しみに




