網を編む
『皆さん…ちょっとこちらへ集まって下さい。』
とカモメは呼び掛けた。
それに誘われる様に
みんなが集まる。
『ああ…真弓さん…
この解した糸の中心を摘まんで貰えますか?』
『はい…こうですか?
『では…ここら辺りをこう摘まみこれを…こうして
菱形に結びます。
この要領で皆さん
網を編んで行きましょう。』
長い沈黙の間
黙々と作業は続き一枚目の網が完成した。
『皆さんは二枚目に取り掛かって下さい。』
カモメはと言うと…
荷物棚のパイプを外し網の端に取り付け
『中村さん…これ…何だか分かりますよね?』
元教師であった中村は定年を迎えている。その中村が
『ほう?霞網ですね?
霞網の使用が禁止されてから…
何年…いや何十年経ちましたかねぇ?』
みんなの視線が中村に一斉に集まる。
『本当に懐かしい。
私達が子供の頃は
夜中にこれを仕掛けに行ったものです。』
『中村先生?
それはどうやって仕掛けるのですか?』
と塚本が訊ねる
しっかりと…塚本の目を見ながら
しかも他の皆にも気を配りながら
流石に元教師と言える呼吸で話し始める。
『鳥と言うものは夜には目が見えません。
珠に例外はいますが…
殆どは夜目が利きません。
ですから空が白みがかると一斉に飛び立つ習性があります。
これは長い時間同じ場所に留まると蛇や猫に教われる可能性が高くなるからです。
この習性を利用し
暗い内に網を仕掛けて
文字の如く一網打尽にするのです。』
『流石…元教師
私の説明は要らなかった様ですね?
そういう事で明日には
焼き鳥が食べられるかも知れませんよ。
さあ…
皆さん後一枚…霞網を作りましょう。』
次回もお楽しみあれ




