何をお探しですか?
いよいよ
醜い人間のエゴが顔を出し始めます。
夜明け前…
蚊取り線香の火が消えかかる頃
まだ薄暗い車内を一人
忍び足で出ていこうとしていた。
滑り出す様に車内から飛び出すと一目散に昨日コッフェルを仕掛け口を湿らせる程度の水を手に入れようと走り出した。
(昨日目印にコッフェルを埋めた穴のすぐ横に棒を立てたんだ…
何が悲しくて…
ウサギの生き血なんて飲まなくちゃいけないんだよ
アッチの方角が明るい…
あの方角の先にコッフェル…
水があるんだ…)
彼は急ぎ足から駆け足に変わっていた。
砂浜が見える
(奴等を出し抜いてやったぞ!!
これで!!水は俺の…
俺一人の物だ)
彼は誰も居ない砂浜に向かい
叫び声とすら思えない
奇妙な雄叫びを上げて砂浜に飛び出した。
彼の目に飛び込んで来た光景は…
何本もの棒が立ち並ぶ
光景だった。
『いつの間に?こんな事を』
彼は呟く様に一人ごとを口にした。
(だが…まだ誰も掘り返して居ない…
みんなが来る前に全て掘り返せば良いじゃないか?)
彼は気を取り直し
砂浜を手で掘り返し始めた。
ひとつ目の棒の側には何も無かった。
二つ目、三つ目、四つ目
五つ目の棒の側が
異様に柔らかい
彼は慎重に砂を払い
中のコッフェルを取り出した。
二口分の水が溜まってる。
一気に彼はコッフェルに口を付けて飲み干した。
コッフェルをに多少の沙が付いて居ようと構わずに
『ウガアァァァ!!
塩水じゃないか!!
畜生!!』
彼は一目散に機関車へとかけ戻り
車内へと飛び込んだ。
『貴方がお探しなのは
この水ですか?
それとも…
甘くて瑞々しい、この
果物ですか?
太田さん!』
と涼しい顔でカモメが訊ねた。
明日もお楽しみに




