天の恵み
『カモメさん…
ヘルメットで…
まさか血を受け止めるのですか?』
『この際…手段を選んでいる余裕は無いのです
今からこのカッターでウサギの頸動脈を切り裂き
ヘルメットで受け止めます』
カモメは躊躇せず一気にカッターの刃をウサギの脛動脈へ当て切り裂いた
滴り落ちるウサギの血を見て
『ウゲェ』と太田が気分を悪くする
片桐さん、中村さん、塚本さん、太田さん貴方達は私が見ている限り
一口も水分を口にしてないじゃありませんか?
哺乳類の血液の中には体外へ排出される電解質がまんべんなく含まれてます。
一口分程ですが
幾分体が楽になりますよ』とカモメはヘルメットへ口を付け中のウサギの血を啜った。
唇を赤く染めながら
中村さん…どうぞ…
中村も、片桐も、塚本も血を啜ったが
太田は頑として口にしょうとはしなかった。
カモメは…
『仕方ありませんねぇ
私は車内の女性にも飲ませて来ますが
後悔しますよ。
あっ中村さん…
ウサギの皮を剥いで肉を切り分け枝に差して焼いてて下さい』
『分かりました』
と中村はウサギの皮を剥ぎにかかった。
車内の女性たちにウサギの血を飲めませることに手間取ったが
太田を除く全員が口にした。
『ウーン良い香りがして来したね
皆さん外へ出ましょうか?』
枝にさし余熱で頃合いに焼けたウサギの肉から良い香りと油が滴り落ちていた。
串を一人に一本づつ手渡し思い思いにかぶり付いた。
『塩味でもついてれば美味しいのですが…』
『何で一口分なんだよ
肉はもっとあるじゃないか
もっと寄越せよ』
とおおたがカモメと中村に詰め寄ろうとする。
太田さん明日はやらなければならない事が山ほどあるのです。
明日は食糧の確保に迄手が回らないかも知れません。
残りの肉は海水に着けて保存食…星肉にします。
さあ…皆さん食べたら車内へ入りましょう。
塚本さん蚊取り線香をおねがいします。




