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「あなたが・・・犯人です」

「あなたが・・・犯人です」


そう言ってすっとこちらを指差した。

涼やかな表情。

そして凛とした眼差しには一辺の曇りもない。


はぁ、とため息をつく。

声の主はまだこちらを指差したまま、目を輝かせている。


「で、何の用なんだ?」


一応問い返してやる。

常識人なので無視なんて真似はしない。


そいつはにっこり笑ってもう片方の腕を突き出す。


「弁当っ!」


「それが?」


「一緒に食べようっ!!」


「最初からそう言え・・・」


そう言って手で着席を促す。


「なんだよぅ、ノリが悪いなぁ」


「こっちはいつも通りですが」


それもそうだね、と笑う。

ついでにいつものメニューだね、とも付け加えられた。

ちなみにうどんをすすっていた。





高1、秋。


この不思議な関係もそろそろ半年近くになる。


入学当初。


何を思ったのかこいつはこちらに興味が湧いたらしい。


それ以来ちょこちょここうやって絡んでくる。





「・・・・ーぃ・・・・ぉーい・・・・おーーーい!」


その呼びかけにふと我に返る。


「あ、悪い聞いてなかった」


「その顔は悪いと思ってないね」


「よく分かるな」


「そりゃ君との付き合いも半年になるんだ、それくらい分かるさ」


ちょっと得意げだ。

確かに少し感心したけれど。


「で、何?」


「遊びに行こう!」


「唐突だな・・・」


「前にも話ししたよ!」


「そうだっけ?」


「そうだよ!」


言われてみればそんなことを言っていたような・・・

人の話しを聞き流すのは良くないな、と反省。


「悪かったな」


素直に謝る。


「素直でよろしい」


腕を組んでまたも得意げだ。

こういう表情をドヤ顔というのだろうか。

いや、どうでもいいか。


「それで誰と遊びに行くの?」


「いや、君とだよ!」


そりゃそうか。

最初からそう思っていました。


「で、何でこんなしょうもない人間を誘うんだ?」


はぁ、とため息をつき、やれやれと両手を持ち上げる。


どこか演技じみている。


「君はどうも自分のことを卑下し過ぎる嫌いがあるね」

「君は魅力的な人間だよ、もっと自信を持ったらどうだい?」


自信ねぇ・・・。

別に卑下してるつもりもないんだけど客観的な意見は大事だ。

有り難くご意見は頂戴しよう。


「君は普段休みの日はどうしてるんだい?」


「寝てる」


即答した。


「っ・・・・・・・・・」


絶句していらっしゃる。


「そんなの健全じゃないよっ!」


寝るのはそんなに悪いことなのだろうか?

夜更かしよりは健全だと思うのだが。


「取りあえずデートプランは任せてくれ!」


どんどん話しが進んでいる。

・・・・ん?・・・・・デート・・・・・?

なんか斬新なキーワードが飛び込んできた。


「デートなのか?」


「もちろん!」


デートらしい。


ごくごくありふれた昼下がり。

いつもと変わらないうどんをすすりながら。

斯くしてそれなりに大きな青春イベントがあっさりセッティングされたのだった。

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