8話目 意志疎通
更新に間が空いてしまいましたが、環境は整いました!
週1ペースで行きます。
「け、結局。ロクに寝れなかったのう…」
「全くだ。考えたって答えなんて出ないのにな。」
あの後村長に部屋を貸してもらい、残鬼と朝まで話しあった。セイジとサキを探す為にどうするか、どうやって元の世界へと戻るか、俺達をこの世界へと引き込んだあの女は何者なのか、ここは一体どういった世界なのか…。
話したところで謎は解けず、深まるばかりだが話さないわけにはいかなかった。
「俺、今から寝るわ。おやすみ」
空はもう明るくなっていたが俺はベッドへのそのそと向かう。整えられたシーツにボサッっと倒れる。
「残念じゃが、そうはいかないようじゃな。」
「なんで?……あーなるほどね」
残鬼が思わしげに言うから何だろうと思ったが、すぐに理由がわかった。部屋の外からパタパタと足音がこちらに向かってきていた。足音は部屋の前で止まり、コンコンとノックされる。
「どーぞ。……って言葉通じないか…。」
俺は今し方横になったベッドの誘惑を振りほどきドアを開ける。
ドアをノックしたのはネコミミ少女だった。少女はニコニコ笑いながら俺のパーカーを引っ張って半ば強引に居間へと連れて行こうとする。
「ちょ、ちょい。俺寝たいんだけど…。」
「諦めるんじゃな。お主こんな邪気のない笑顔で接してくれる少女の頼みを断って惰眠を貪る気か?」
「邪気を含んだ笑顔で言うやつに言われたくないね。という訳で俺は寝る。」
そう言って無理矢理部屋に戻ろうとするとネコミミ少女は「えぇー…」という顔をして耳を垂れ下げ悲しそうな顔をする。
「お、おい。そんな悲しそうな顔…そこまで落ち込むことないだろう?」
「どうするのじゃ?ユウキ?」
「あーもうわかったよ!」
どうにも弱いね…全く。
俺はネコミミ少女の肩をポンポンと叩き、行こうとする意志を見せると少女はパァっと笑顔に戻り、再びパーカーを引っ張って居間へ連れて行く。
居間には朝食が用意されており美味しそうな匂いを漂わせていた。俺が席に座るとネコミミ少女も席に座る。昨晩出てきた夕食もそうだったのだが全般的に菜食料理ばかりのようだ。というか野菜しかない。
「うーん。昨日食ったグリンピースみたいなのがまたあるな、苦手なんだがな…」
とはいえご馳走になる身としては食べなくては、我慢。
そんなこんなで朝食をいただいていると外へと繋がっているドアが開き、2人の少年が入ってきた。
一人は見覚えがあった。昨日俺がお茶をもらっていた時に村長と話しをして外に出て行ったきり姿を見なかった少年だ。だが、もう一人は見たことがない。なぜなら彼がこの村にはいなかったイヌミミだったからだ。
俺はあのネコミミ少女を襲ったのがイヌミミ男達だったからてっきりイヌミミ族とネコミミ族(勝手に命名)で対立してるものだと思っていたんだが、どうやら違うみたいだった。
イヌミミの少年は俺を見るとネコミミの少年に確認をとり、俺の前に来てお辞儀をした。俺もあわせてお辞儀をする。イヌミミ少年は俺に向かって人差し指と中指を向け、何かを詠唱し始める。すると新宿であの女が使った魔法陣と同じようなものが輪になる。
「なっ!」
完全に不意をつかれた。少年の指から白い光が出て俺の周囲をクルクルと回って消えた。何かされたようだ。俺はイスに立てかけていた残鬼をとり、刃を少年へと向ける。
「ま、待って下さい!落ち着いて!」
少年は両手を上げてビクビクする。
「あ、あれ?言葉がわか…る?喋れてる?」
「え、えぇ。言語理解の術法をかけました。じ、自分はマルタといいます。え、えと…突然でごめんなさい。」
マルタと名乗った少年は元からなのか刀にビビったのかはわからないが、言葉につっかえながら話す。
「あ、いや、こっちこそごめん。」
「いやーやっと話せたねお兄さん。あたしはリリ。お兄さんの名前は?」
ネコミミ少女が嬉しそうに話す。
「俺はユウキ。あーなんて言ったらいいんだろう。とりあえず遠いところから来ました。」