7話目 異世界におけるネコミミとのコミュニケーションのとり方
「あー日が暮れてきた」
まぁあれだけ時間かければ日も暮れるか…。
言葉が通じないため身振り手振りのパントマイムをすること30分。ようやく俺が彼女について行くことを伝えられた。意思疎通が終わった頃には二人ともぐったりとしていた。ネコミミ少女は俺の前をぴょこぴょこふらふらと楽しそうに歩いている。
彼女を見ていると人間と違うところがいくつか出てきた。まず、目に見えるところでは耳、しっぽ。あとは目の瞳孔。それから走るときは犬の獣人と同じように4足歩行(走法)になることだ。
「なぁネコミミ少女ぉ。あとどれくらいなんだい?夜までには着くのかい?」
「……」
少女はこちらを向いて無邪気に首を傾げる。まぁ伝わらないよな…。でも落ちてきた時に見えた集落の方向には向かってるみたいだし、そこに向かってるんだとしたらそろそろ着きそうなものだけど…。
「ん?どした?」
俺が集落までのだいたいの距離を考えていると、少女は俺のパーカーの裾をぐいぐいと引っ張ってきた。
少女は道の端へと俺を連れて行き、そこにあった看板をバシバシと叩く。
「あーなるほど、ここに向かってるのね。まーでも読めない…。」
「お主の学校で習っていた文字に似ている気がするが、あれとは違うのか?」
「あれは英語。そもそも世界が違うんだから向こうの言語がこっちにあるわけないだーろが。まぁ仮に英語だったとしても、読めないけどな!」
「そこは誇るところではないであろうが…。」
ネコミミ少女は俺と残鬼のやり取りが終わったのを確認すると、パーカーをさらに強く引っ張り道の先へと連れて行く。引っ張られながらもついて行くとすぐに森が開けてきて、落ちてきたときに見えた集落がみえて来た。
「あぁー。なんつーか、ファンタジー?ゲームで言うとこの最初の村って感じだなぁ」
いかにもRPGに出てきそうなこの村。村の入り口の左右には結構広い畑が広がり、畑の中心には整備された用水路が流れている。村の奥には5つの風車がゆっくりと回っていて中からゴトンゴトンという音が聞こえる。民家は10~20といったところだろうか、村の中心にある井戸のようなものを囲むように建っている。でもところどころ塀が壊れていたり、火事でもあったりしたような残骸だけの納屋などがあり、若干寂れているイメージ。俺のことを見て驚いている村人が数人、半分くらいは家に入ったかと思うと中から更に家族を連れて出てきた。村人も全員ネコミミ男女問わず。猫と犬の世界なのかね、ここは?
村に入ると少女は両手で「ちょっと待ってて」という仕草をすると、村の中で一番大きい民家へと入っていった。
「なーんか周りの目が痛いよな。」
「ま、まぁ敵意は無いようじゃし…」
村人達がこっちを見ている。興味津々な目で。30人くらいで俺を囲んで。
でも近づいてこない…。
耳打ちされてる。
指差されてる。
もう無理!頼む!早く帰ってきてくれ!
そう思っていると少女は村人を掻き分け村長のような爺さんを連れてやってきた。
「おかえり。」
俺が声を発すると村人達はビクッと一歩後ずさり。まぁここの人から見たら宇宙人でも見ているようなもんなんだろうなぁ。
村長と少女は俺を引率してくれた。村人達は割れるように左右にわかれて道を作った。先ほど村長と少女が出てきた家へと俺は招きいれられた。村長(わからないけど、多分村長だろ)は家に入ると中にいた俺よりもちょっと若いくらいの男と何やら話しを始める。
「ん?」
俺はまたパーカーの裾を引っ張られる。振り向くとネコミミ少女がイスを引いて「ここに座って」と言わんばかりだ。俺は「ありがとう」と言ってイスに座る。少女はぱたぱたと奥のキッチンへと向かっていった。
「さて、どうすっかね。とりあえず村にはたどり着いたけれど、言葉は通じないし長居も出来ないし。」
「そうじゃな。そうなるとやっぱりセイジとサキに会うのが先決じゃな。」
「こりゃあ大変だぞ…。3日やそこらじゃ帰れないかもしれないのか…クソッ。」
元の世界のヨウコが何より心配だ。アイツさえいなければ別に元の世界なんて戻れても戻れなくてもどうでもいいのに…。
「とりあえず、焦ってもしょうがねーし。まずは出来ることからやるしかないな。地図かなんか貰えればいいけど」
村長は若い男と話し終えた後、若い男は出かける準備をしてどこかへと出かけていった。ネコミミ少女は奥のキッチンにいた俺と同じくらいの歳の女の人から、お茶のようなものを貰ってテーブルへと持って来てくれた。
「飲んでいいの?」
俺が聞くと少女はコクンと頷く。言葉はわからないけれど聞いてることはわかるって感じ。
「じゃあもらうかね。」
一口飲むフリをする。いや、毒とか疑ってるわけじゃないけどさ。なんていうか常に最悪を考えてる俺の性格ってやだな。これも全部あの事務所のせいだ。
「どわっ」
少女は突如俺の膝の上にダイブしてきた。膝の上で体勢を整えると俺のことを見てニッコリと笑う。こっちの世界じゃ常識なんだろうか?それとも猫だった頃の名残なのだろうか?とりあえず頭を撫でながらまた耳をピコピコしてやるとうれしそうな声を出す。
「あーなんか世の男がロリコンに落ちる理由がわかる気がする。」