表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/10

6話目 異世界でも犬猿?

 「疲れた…。」



 「ほれ、あとちょっとじゃ!頑張らんか!」



 かれこれ40分くらいは泳いでいるだろうか…岸までたどり着かない。思ったよりも大きい湖でこんなことならもっと岸の近くに落ちるんだったと今頃になって後悔し始める。



 「足つかねぇし、休めないのがキツイなぁ」



 しかも服が水を吸って更にキツイ


 しかしあと50メートルほどで岸にたどり着く、不毛だった水泳もようやく終わる。



 「あーやっと足ついた」



 残鬼がパチパチと手を叩くのを無視し、俺はザバザバと水を掻き分け岸へと向かう。落ちてくる時にこっちの方の岸の方角に集落のようなものが見えたため、とりあえずこっち側に向かったのだが湖の大きさからしてその集落も結構遠そうだ。



 「休憩!」



 俺は岸にたどり着くと近くの木に着ていた上着をかけて乾かす。とりあえず、持っていたケータイを取り出し開けてみるが液晶は暗転したまま反応しない。



 「まぁ、ついても圏外だろーな。」



 「これからどうするのじゃ?」



 「とりあえず、おっさんとサキを探すよ。その後帰る方法かな。というかここは別の星なのか、それとも別の世界なのか…。それすらハッキリしないしな。」



 「知的生命体がいるといいけれどのう。」



 「何?お前どこでそんなの覚えたの?」



 「こないだ見たテレビでの。地球の他にも別の生命がいるらしくての、そやつらは丸い円盤に乗って表れるらしいのじゃ!」



 「あーうん。わかった。お前帰ったらしばらくテレビ見るなよ。」



 話をしていると背後の方から結構な速さで駆け抜ける足音とそれを追いかける複数の足音が聞こえた。



 「人か?」



 俺は足音のした方へ向かってみる。小走りで足音を立てないように気配を消して向かうと、きれいに舗装された道に出た。



 「知的生命。いるみたいだな。」



 「ユウキ!あっちじゃ!」



 残鬼が指した方向に三人の人影が走っていくのが見えた。



 「行ってみますか」



 俺はその3人を追いかける。追いかけているうちにおかしいことに気付く。三人とも4足歩行(この場合走法だけど)頭には犬の耳。



 「なぁ、あれコスプレじゃないよな?」



 「コスプレ?なんじゃそら?」



 「いや、なんでもない。」



 まぁ異世界なんだし獣人みたいなんもいるのかね。



 走って追いかけていると三人の犬獣人は止まって立ち上がった。どうやら追いかけていた対象を追い詰めたようだ。俺は隠れて様子を見る。



 三人の犬獣人が追い詰めたのは猫の耳をした女の子だった。犬獣人達は猫の女の子を捕らえると持っていた袋に女の子を放り込む。



 「あやつら悪そうな顔しとるのぉ」



 「へっへっへ。こいつを奴隷市場に売りつければ当面は食事に困らねえぜ!って顔してるな。」



 「助けぬのか?」



 「残鬼は犬派?猫派?」



 「妾か?………犬派じゃ。」



 「悪いね、俺は猫派なんで助けるよ」



 「ふん。……どちらを選んでも助けるつもりじゃったろうに」



 俺は隠れていた草影から犬獣人の前に飛び出す。犬獣人達は俺を見ると目を丸くして驚く、ワンワンウォウウォウしゃべっているが何を言っているのかわからない。



 「とりあえず、殺しはマズいよなぁ」



 俺は残鬼に手をかける、すると犬獣人達も敵意ありと取ったのだろう。それぞれ持っていた剣を抜いた。俺は新宿東南口の時と同じように居合い抜きをする体勢に入る。

 ちなみにこの居合い抜きもそうだが、この人間離れした速さを出せる身体能力。話せば長くなるのだが残鬼のもう一つの力なのだ。この力、払った代償を考えると手に入れたくは無かったのだが…。



 一閃。



 俺は一瞬で袋だけを斬る。もちろん中の女の子を傷つけないように。

 犬獣人達はその速さに反応出来なかったようで、剣を構えたまま自分の持っていた袋が無くなっているのを確認すると口をポカンと開けて唖然としていた。



 「まぁーだやりますか?」



 俺は刀を向ける。すると犬獣人達は力の差を感じたのだろう、ガウガウと罵声を吐きながら犬だけに文字通り尻尾を巻いて逃げて行った。



 「一昨日きやがれ!って感じだな。いかにも悪いことしてましたって逃げ方が物語ってるよ。」



 ばたばたとずらかる三人をぼーっと眺める。


 なんか改めて別世界なんだって思うよなぁ。元の世界じゃ奴隷はおろか獣人なんていないしな。いや、この子が奴隷に売り出される予定だったのかどうかは聞いてみないとわからないか。



 「大丈夫か?」



 ネコミミ少女は目をパチパチして俺のことを見る。あーバカか俺。だめじゃん日本語なんて通じるわけが無いし。


 少女は執拗に俺に話しかけてくるのだが、何を話しているのかやはりわからない…。

 俺は女の子に目線を合わせ頭を撫でてやる。ネコミミが手にピコピコ当たってなんか不思議な感触。


 「ああ!妾はそんな風に優しくしてもらったこと一度も無いぞ!!妾の方が体が小さいのに!!」



 「お前は500歳越えてるだろーが!」


 女の子は残鬼を見て不思議そうな顔をする。あぁ精霊に驚いてるのか…ってあれ?この子残鬼のこと見えてるのか?


 「で、どうするのじゃ?この子は」


 「話が出来ねぇからなぁ。連れて行くにしても俺は何処に連れて行けばいいかもわからないし。そうだなぁ、護衛も兼ねてこの子について行くってのがいいかもな」


 「それが双方安全で一番良さそうじゃな。」


 「んじゃそういうことで。」


 俺は「よろしくお願い」と言ってネコミミ少女の頭を撫でる。なんかこのピコピコクセになりそう。少女は俺と残鬼を相変わらず不思議そうな顔で見ていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ