3話目 新宿攻防1
世の中には裏というものがあるものだ。
経済、政治、文化、戦争。まぁ、俺達はその全ての裏を担っているというかなんというか。
とにかく、俺達は退治屋だ。ただし人外の。
ある時俺はうちの神社の宝物庫の掃除をしていた。俺はなにげなく箱に入っていた日本刀を手に取っただけだったのに…まさかこんなファンタジーの世界に足を踏み入れることになるとは…。
まぁそこでこの刀、残鬼と出会った。まぁこの残鬼がとんでもないジャジャ馬で乗っ取り乗っ取られを繰り返していたわけで…。そんな時にセイジとサキに出会い、助けてもらいながらも色々あって今の事務所に所属することになった。
この事務所R&R(本当の名前はラピッド&ラビッツと言うのだが、俺が全力で嫌がった為にこの形になった。命名したのはサキ。)は人外専門の討伐依頼を請け負っている。妖怪、宇宙人、幽霊。主に政府の重鎮が世間に隠しておきたい異形の者の退治だ。
異形退治の殆どはIWという秘密国家機関が行うのだが、そちらで処理できない依頼がたまに俺達のところに来たりする。まぁ昔IWに所属していたおっさんのコネなのだが…。
「しっかしまぁー。大道芸でもやるんですか?このメンツは?」
新宿南口駅を出てすぐの横断歩道をわたったあたりに長い棒を背負った制服姿の女子高生、竹刀でも入ってそうなこれまた棒を背負った私服大学生、アタッシュケースを持った金髪ホスト。その三人が辺りをキョロキョロとしながら立っているのだ。
帰宅しようとしているサラリーマンなどがジロジロと俺達を見てくる。
「あ、あたしだって恥ずかしいんだから。男のあんた達はちょっとくらい我慢しなさいよ!」
「こらこら、そろそろ8時になるよ。何が来るかわからない以上…」
セイジがそこまで言いかけたところで東南口の方から大きい爆発音が聞こえた。
「事前処理出来なかったな。」
「言ってる場合じゃないでしょ!早く!」
赤信号を無視して俺達は東南口へと向かう。ルミネの近くは東南口から逃げてくる人で溢れ返っているためそれを避けつつなんとか東南口へとたどり着いた。
「マジかよ…。」
見覚えのある風景がぶち壊れていた。東南口前のエレベーターは跡形も無く、二台のエスカレーターは半壊。階段は上がれたものではない、というより原型が無い。あたりに飛び散っている血の量からかなりの人間が犠牲になったに違いない。
「あの女?」
サキは東南口を出て左にあるデパートに設置されている特大モニターの前に浮いている人間を指指す。どうもカラスのような黒い羽の生えた女性型をしている。
「犠牲0は無理だったか…。」
セイジは二丁拳銃をその女に向けて乱射する。撃たれた女は俺達の所へゆっくりと降りてくる。セイジの弾はなんというかバリアーのようなものに弾かれて届いていないようだ。
「ユウキ!バリアー斬ってくれ!サキはその後一発頼む!」
「あいよっ」
俺は残鬼を呼び出す。柄から出てきた残鬼はすぐさま敵を認識すると俺の後ろに隠れた。
一閃。
敵との間合いを瞬時に詰める。と、言っても今の俺は人間とは思えないほどの速さだ。周りのギャラリーから見たら消えたも同然だろう。
手ごたえがあった。多分バリアは切れただろうけど居合いが早すぎたためだろうか、本体は切れなかったようだ。まぁ、あとはあいつに任せよう。一番強いのあいつだし…。
「ありがと、ユウキ。」
サキは袋から柄がテープでグルグル巻きになっている薙刀を取り出す。そのテープというのが警察が進入禁止のときに使う『KEEP OUT』によく似ているが、文字は『KEEP OUT』ではなく『☢CAUTION!!☢』と書き換えられている。薙刀を取り出し、刃を地面のコンクリートに突き刺す。柄を敵の女の方に向け自分は薙刀に乗っかるような体勢になる。
「カクヅチィィィィィィイイイイイイイイ!!!!!!」
サキが叫ぶと薙刀の刃から爆炎が上がり、爆炎の勢いでサキは女へと突進する。それはもうジェット機の如く。おそらく突き刺したのだろう。わかんないけど多分。突進が当たったと同時に敵は衝撃で木っ端微塵に吹き飛んでいたからだ。しかもついでに後ろにあった特大モニターどころかデパートの5階あたりが爆炎で吹き飛んでしまっていた。
「やりすぎだ。バカ…。」
セイジが頭を抱える。サキは薙刀から出る炎で魔法使いの箒のように降りてくる。
「ごっめんセイジ。やりすぎた!」
「あーもういい。一旦隠れるぞ。ギャラリーが集まってくる前に。」
「おっさん。どうもそーいう感じに行かないみたいだ。」
俺は気配を感じて新宿の空を見上げる。頭上には同じように黒い羽の生えた女が三体。旋回しながら舞い降りてくる。
女達は常に俺たちに何か話しかけて来るのだが、何語なのか、そもそも地球にある言語なのか?意思の疎通は出来ない。
「何言ってるのかわからないけれど、取り合えず敵意あり!潰すよ!カクヅチ。」
サキは『☢CAUTION!!☢』と書かれた進入禁止テープを薙刀から取り、ハチマキのように額に巻くと爆炎を上げて突っ込んでいった。