8話 名物宿屋
7話の続きです。楽しんで読んで貰えるように書いたのでよろしくお願いします。
中央広場に戻り、そこから北の道へ宿屋を目指す。
辺りが薄暗くなってきて、日が落ちてきた。
村に幾つも設置されている光の魔道具が一斉に灯し出す。
北の道を歩いて行くと、オーガの宿と書かれている看板が見えた。
何!?オーガの宿って、俺の宿?・・・
何この偶然!?
ちょっと怖いんだけど。
まさか、ここじゃないよね?
すると、ロウさんは店の前で止まった。
「オウガ、着いたぞ!ここだ。」
案の定、ここだった。
オーガって何だろう。俺の事じゃないだろうし、気になる…
「ここですか?」
「おう!」
「ロウさん、ちょっと聞くんですけど、ここに書いてあるオーガってどう言う意味ですか?」
俺は看板のオーガの部分に指差した。
「オウガはオーガを知らないのか?」
ん?親父ギャグかよ!
まぁ、本人はそう言う意味で言ったんじゃないだろうけど。
「はい、聞いた事ないですね。」
「オーガはだな、簡単に言うと魔物だな。鬼人種の一種でな、巨大な体に頭には角を生やして、世にも恐ろしい顔をしてるんだ。」
「えっ、そんなのがいるんですか?」
「ああ、北にある鬼山を棲家にしているから見たいなら行ってみるといいぞ。」
いや、別に行きたくはないな。
それにオーガって付けてるって事は、オーガのように恐ろしい店主だったらどうしよう…
そんな不安の中、ロウさんの後に付いて入った。
2人の足音だけが聞こえる。
あれ?ライさんが付いて来ていない。
振り向くと、ライさんは店前で待っていた。
「俺ここの女将苦手なんだ。兄貴に付いて行ってくれ。」
何それ!?
ライさんが苦手って…余計不安が高まる。
「ライの事は気にするな。」
いやいや、気にするなとか無理だし。
中に入ると、受付があった。
レジとかは無くお腹ぐらいの高さがある台と冒険者登録の時にあった手を置いた魔道具が上に付いている箱がある。お金を出し入れする箱だろうか。台の奥には客が入らないように仕切りがあった。
「おーい、誰かいるか?」
「なんだい?泊まりかい?ってあんたかいっ!」
奥から50代ぐらいの女の人が来た。
「母ちゃんいたのか。」
えっ?母ちゃん?
って事はライさんが来たくなかったのはお母さんに会いたくなかったからだろうか。
ふくよかな身体に髪型がお団子ヘアーのようで違う。お団子ヘアーはてっぺんが丸いが鬼の角のように尖っていた。お団子ヘアーではなく、お角ヘアーとでも呼ぼう。
すると、二人の母親は眉間に皺寄せて拳を強く握っていた。
「ロウ!、ライは帰ってないのかい?」
どうやら、ライさんに怒っているらしい。
「いや、外にいる。」
ロウさんはライさんの居場所をすぐ言うと笑っていた。
ロウさんもこう言う事するんだな…
「そうかいっ!」
そう言うと、母親は外に出た。
「ライっ!!!」
外から馬鹿でかい声がした。
「うわっ母ちゃん…」
「あんた、昨日はよくもアタイの気に入ってた花瓶を割ってくれたね!」
これぞ鬼のような声色で説教していて、宿の中まで聞こえてくる。
それは怒るわ。
御客さんもいつもの事のように見ていた。
その様子を見ているとどうやら、二人の母親はこの宿の名物女将らしい。
説教を終えて、母親とライさんが入ってくる。
「ほんと、全く困ったダメ息子だわ。」
「ごめんって言ってるじゃねーか。」
その様子は、言い訳をしている子供みたいだった。
表情から察するにこってり絞られたみたいだ。
「それで、その子は誰なんだい?」
「こいつはオウガって言うんだ。」
ロイさんは、俺と出会ってから今までの事を話した。
「それは災難だったね!私はアニー、この子達の母親だよ!」
アニーさんと握手をした。
「よろしくお願いします。」
「いつまで泊まるんだい?二人が連れて来たから安くしとくよ。」
どうしよう…お金を持ってない。
「あの…お金持ってなくて…」
「そうなのかい?」
「お金も落としたんじゃねーか?」
ライさんはすっかり立ち直って話を聞いていた。
「職業カードと一緒に落としたのかもねー。でも、冒険者登録はできたんだろう?うちは、後払いで構わないから稼いでからでも払ってくれたらそれでいいよ!それに、その肩の子も魔物登録してる子だろ?その大きさなら部屋に入って大丈夫だからね。」
アニーさんは、見ず知らずの俺にも優しくしてくれて懐が深い人だった。
「ありがとうございます。すぐ払えるように稼いで頑張ります!」
でも、この世界のお金事情を知らない俺としては何としても稼がないといけないし、お金がないと生活が出来ない。
明日から早速、冒険者組合で依頼を受けようと思う。
アニーさんから12番と書かれた番号の鍵を渡された。
その後、ロウさんとライさんに別れの挨拶して二人はそれぞれの家に帰って行った。
ロウさんもライさんも結婚していて奥さんがいるらしい。
それに、ロウさんには5歳の子供もいるらしい。
2階にある12番の部屋に行って中に入ると、一人用の部屋で広くはない。6畳ぐらいの部屋に窓があって、シンプルにベッドと机と椅子が置かれているだけだった。
全然狭いけど、ベットがあるだけ幸せを感じる。
昨日はバナナの葉の上だったから身体中が痛かったけど今夜はぐっすりと寝れそうだ。
すると、ドアからノックする音が聞こえる。
コンッ!コンッ!
「オウガはいるかいっ?」
「はい!」
ノックをしたのはアニーさんだった。
「今日は、まだご飯食べてないんだろ?食堂に来なっ、作ってあげるから!」
「ありがとうございます。あのお風呂とかってあるんですかね?」
「ハッハッハッ、あんたなにっ言ってんだいっ!そんな貴族様が入るのがうちにある訳ないじゃないかい!」
そう言って、大笑いしたアニーさんは食堂に行った。
嘘だろっ。
お風呂に入りたかったのに、ここの人達はどうやって体を洗うんだ?
見たところ、シャワーで浴びる所も無いし井戸も無い。
まさか、川で浴びるとか言わないよな…
俺は熟睡している二郎を机に置いて、食堂に向かった。
食堂は1階の受付の真横に部屋があった。
食堂らしく、長机と椅子がファミレスの置き方と同じように置いてある。
「オウガ、来たかい?肩の子は連れて来てないんだね。腹減ってるだろう?これ食いなっ?」
そう言って、肉の塊が乗った皿を渡してきた。
その肉の塊は、レッドバイソンという魔物の肉らしい。
レッドバイソンは、ドライ村の草原周辺にいる魔物らしく群れで動き獰猛な性格で人を見たら突進してくる習性があってドライ村では恐れられているみたいだ。
危険たがしかしその肉は絶品なので、数日に一回冒険者に依頼をして狩ってきた物を一頭買いをして食堂で出していると聞いた。
今日アニーさんが用意してくれた晩御飯は、レッドバイソンのステーキに見た事のないトゥールという生野菜とトウモロコシを粉にしてこねた生地を焼いただけパンだった。
そして、デザートに半分に切ったバナナがあった。
ロウさんがいつの間にか渡したのだろう。
それを食べてアニーさんにお礼を言った。
「美味しかったです。ありがとうございました。」
「いいんだよ!バナナっていう果物美味しいわ、ありがとね!後、これ持っていきなっ。魔物用だから、食べるんじゃないよ?」
「ほら、行きなっ!明日の朝も待ってるからね。次は肩の魔物も連れてきなっ!おやすみ。」
「はい、おやすみなさい。」
自分の部屋に戻った。
部屋に戻ると、体を揺らし二郎を起こした。
二郎は、眠たそうな顔をして机の上でゴロゴロする。
『もう、なんだモヴ?』
「これ貰ったんだけど食べるか?」
袋から取り出すと、生肉が入っていた。
でも牛って肉食わないよな?
そう思っていた。
『腹減ったから食べるモヴ』
予想外な答えが返ってきた。
「えっ?食べるの?てか、食べれるの?」
『何言ってるんだモヴ?魔物と一緒にされるのは嫌だけど雑食だモヴ』
二郎はまだ眠いのか欠伸する。
「だったらこれ食べてからまた寝なよ。俺ももう寝るから。」
二郎は肉を丸呑みし、また寝だした。
俺もベッドで横になり、明日の事を考える。
服も2日連続で着てるし明日で3日目、流石に汚い。
風呂も入りたいし、どうにかしないと。
そんな事を考えていたら、寝落ちした。
続
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