6話 ドライ村を目指して
5話の続きです。楽しんで読んで貰えるように書いたのでよろしくお願いします。霧の森の読み方を書いてなかったので付け足しました。追加、異世界人が話す文章の王雅をオウガに変更しました。
休憩を終えた俺達は、ドライ村を目指して外道を歩いていた。
今まで何処を見ても草原だった景色が外道を歩いてからは違う景色が見えていた。
左側に草原が見えて、右側には頑丈そうな柵が囲ってある広大なトウモロコシ畑が見える。
真ん中の道を境界線にして2つの世界の間を歩いているみたいだった。
すると、草原の方から突風が吹いた。
三人の髪が左から右へと乱れる。
前髪が目に掛かった。
特に三人の中で一番前髪が長く、左分けをしていたライさんは険しい顔をした。
「鬱陶しい…」
ライさんが呟いた。
風のせいで前髪が乱れたのが許せなかったんだろうか。
「自然相手にそんな事言っても仕方ないだろ。」
ロウさんが言って聞かせる。
「でも、魔物と戦う時は大丈夫なんですか?」
「オウガ〜、それは大丈夫に決まってんじゃねーか。」
「そうなんですか?」
「スキルを使ってるからな。でもよー、風ってよくねーよな?不意を突いてくるから。」
「…そうですね、ハハハ。でも、スキルを使うって何のスキルを使ってるんですか?」
俺は苦笑いして話を変える。
「はぁ〜、オウガ… スキルってのは普通人には教えないもんだ。」
横からロウさんが呆れて話に入ってきた。
「兄貴の言う通りだ。スキルってのは自分を守る手段、ましてやそれを特に赤の他人に教えてたら対策されて何をされるか分かったもんじゃない。別にオウガが悪いって言ってるわけじゃなくこれは最悪親や兄弟でも教えてはいけないんだ。わかったか?」
ライさんは急に真剣な顔をして話してくれた。
「そうなんですね。」
俺は確かにな!と思いその言葉に納得した。
「それにしても、何で王雅はスキルを知りたかったんだ?」
ロウさんが聞いてきた。
「いや、どんなスキルなんだろうと思って。」
これは自分の純粋な気持ちだ。
「ちなみに、自分のスキルは持ってるんだよな?」
ライさんが腕を組み何かを考えている。
「いや、あるにはあるんですけど俺のSPスキルは戦うのに向いてなくて・・・」
「そのSPスキルってのは何だ?普通のスキルじゃないのか?」
「俺も聞いた事ないな。」
ロウさんが聞いてきて、ライさんも頭を傾ける。
逆に普通のスキルってなんなんだ!?
二郎からSPスキルがあることしか聞いていない。
二郎に聞いてみないと。
なぁ、二郎。
『なんだモヴ?』
寝ていた二郎を起こした。
寝てるとこ悪いんだけど、昨日取得したのってSPスキルだよな?
『そうだモヴ?それがどうかしたモヴ』
今ロウさんとライさんの話を聞いてたらSPスキルを聞いた事ないって言うんだけど、それに普通のスキルがあるって事もきいたんだけどどう言う事?
『ああ、それモヴ?SPスキルは神具に触れると習得出来るって言ったの覚えてるモヴ?』
確かに、それは聞いたな。
『神具は貴重なアイテムでこの世界にそんなにないモヴ。主にこの世界の住人は普通のスキルを習得してるモヴ』
と言うことは、SPスキルは知る人ぞ知るって事か。
二郎、普通のスキルがあるんだったら早く教えてくれてもよかったのに。
『モヴは昨日スキル2種類とも神様のってちゃんと言ったモヴ!その2種類がスキルとSPスキルだモヴ』
確かに言ってたような気がする。だけど、2種類のって聞いたら普通2つスキルがあると思うじゃないか。
しかし、SPスキルじゃなかったですと今訂正した所で不自然に違いない。
ここは正直に話そう。
「SPスキルは普通のスキルではないらしくて、なかなか無いそうなんです。」
「そうなのか、だったらオウガが持ってるそのSPスキル1つ教えてくれたらさっきのスキル教えてやってもいいけどな。なんなら教えてくれたスキルの数だけ教えてやってもいい。」
提案を持ち掛けてきた。
「おい、ライ!お前何言ってんだ!?」
ロウさんが慌てる。
「兄貴、待ってくれ!」
ライさんはロウさんに手のひらを向ける。
「何だ?」
「俺はオウガだったらスキルを教えてやっていいと思ってる。まぁ、俺の勘なんだがよぉ。今まで話した感じだと悪い奴ではないと思うんだ。流石に、タダではないけどな。」
「いや、俺もそれは思うんだけどな。お前のスキルはお前と俺しか知らないし、それにオウガはスキルを教えてもいいと思ってるのか?」
「俺はいいんですけど、昨日初めて取得した2つのスキルしか持ってなくて。」
俺は正直に話した。
「2つも一気に!?」
「その2つってどっちもSPスキルってやつなのか?」
「はい…」
二人は相当驚いた。
「まて、オウガお前今何歳だ?」
ロウさんが急に冷静なり、歳を聞いてきた。
「22です。」
「22で最近初めて取得したのか2つも!?初めて聞いたぞ。」
「…普通、成人の16歳を迎えた朝に皆普通のスキルを授かるもんだけどな。」
二人は再び驚いた。
えっそうなの?
どうしよう…
俺は神妙な面持ちで答えた。
「いや、その時にスキルを授からなかったんです。それで周りから色々言われて…」
「そうなのか…辛かったな。」
「それでどうやったら普通のスキルを得られるのか知りたくて。」
「知ってどうするつもりなんだ?」
「スキルの効果を知ればどうやって習得出来るか分かるかと思ったんです。」
「そうだったのか。確かにスキルは習得するには経験を積まないといけないからな。でも、記憶障害でもそこは覚えてるんだな。」
ギクッ
やばい、なんとか誤魔化さないと…
ここまできて、ボロが出るとは思ってもみなかった。
「や、やっぱり、辛い記憶だと覚えてて。」
「まぁ、そうだよな。やる方は覚えてなくてもやられる方は覚えてるもんだよな。」
ライさんは同感してくれた。
日本にいた時の実体験を言ってみたけどなんとかなったな…
それに、普通のスキル習得の方法も教えてくれたし後々色んなスキルを習得してみてもいいかもしれない。
「で、どうする?スキルを教え合うか?」
「やっぱり、自分で経験しながら探していく方が楽しそうなんで頑張ってみます。」
「そうか、もし分からない事があったら相談しろよ?」
ライさんは弟分を気遣う兄貴肌みたいな所があった。
「ありがとうございます。何かあったらお願いします。」
そんな話をしながら歩いていた。
すると、遠くの方に何か看板が見えてきた。
…ん?
ド・ラ・イ・村… ドライ村って書いてある。
「あれって。」
「ああ、オウガ見えてきたぞ。あそこがドライ村だ。」
ロウさんがドライ村に指を指す。
やっと村だ!
村は柵で囲われていた。
それに入り口には門がある。
その門から馬車が出てきた。
行商人だろうか、荷台には人や物が乗っている。
その人達とすれ違い、段々と村へと近づいていく。
そして、ドライ村の門の前までやってきた。
門は木を加工して造られた大きい門があり、二人の門番がいた。門から左右に繋がってる柵は3メートルぐらいの高さがある。
うわぁー、大きい。
なんか昔の城門みたいだ。
「ロウ、ライ、帰ったのか?」
門番の一人が二人を見て、歩み寄る。
「マイル兄!」
「叔父さん、帰ったよ!」
叔父さん!?
叔父さんにしては若い。
見た目が20代後半ぐらいに見えた。
「ライ、マイル兄はよせって言ったろ!これでも今年で39だぞ。」
「いいじゃんか、若い見た目してんだからよー。」
「まったく、それよりそっちの坊主は誰なんだ?肩に見た事ない魔物乗せてるんだが大丈夫なのか?」
坊主って俺の事だよな。
「叔父さん、紹介するよ。この子は王雅、霧の森で出会ったんだ。」
「初めまして、オウガって言います。こっちは二郎です。魔物ですけど人畜無害なのでよろしくお願いします。」
深深くお辞儀した。
「おぉ、礼儀正しいな。俺はドライ村で村長の息子の一人、マイルだ。そしてこいつらの叔父だ。見ての通り、門番をしていてな職業カードを見せてくれるか?」
「それが魔物に追いかけられてる途中に紛失してしまって…」
「それは災難だったな。そういう場合は金はかかるけど新しく発行すればいいさ。」
マイルさんは笑って明るく話してくれた。
「それが、オウガは記憶障害みたいなんだ。分からない事が多いから色々と教えながら来たんだよな。」
ライさんがマイルさんに教える。
「そうなのか…俺にも分からない事があれば聞いてくれて構わないからな!そうだ、冒険者なんかどうだ?なぁ、ロウ。」
「俺もオウガに冒険者組合に連れて行こうと思ってな。」
「なら、早速行ってあげればいい。その魔物は冒険者組合で魔物登録するといいぞ。」
そう言って門を開けてくれた。
「オウガ君ようこそ、ドライ村へ!」
続
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次回の投稿は3日後の18時になります。
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